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廃嫡
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それから数日後のことである。
「エレナ様、旦那様がお呼びでございます」
突然、私は父上に呼び出された。マリーの口車に乗っかってしょっちゅう私に辛く当たる義母上と違い、父上は私には無関心を貫いていた。義母からすれば先妻の子である私は邪魔なのかもしれないが、父上からするとそういう感情すら湧かないのだろう。
そんな父上から私が呼び出されるなど珍しいことである。もしかしていよいよ結婚だろうか、と私はかすかな期待を抱きながら家の居間に向かう。
するとそこには父のウルス、オードリー義母上、妹のマリー、そして兄(母上が連れてきた方)のケリンと一族が勢ぞろいしている。いや、一人だけ、私の実の兄であるレイトだけがいなかった。
また、執事や主だった家臣たちも控えている。やけに物々しい。
この雰囲気だと私の結婚が決まったということではなさそうだ、と私は落胆する。
「よし、これで全員揃ったようだな」
それを見て父上が告げる。兄上は母に似たのか病弱で臥せりがちであり、今もそれで家族会議に顔を出せないのだろうか。
「皆も知っている通り、これまで我が家の跡継ぎであったレイトは病弱だった。公爵というのは広大な領地を治める他、王国の政治にも関わらなければならない激務だ。残念だが今のレイトには無理だろう」
父上は言葉とは裏腹に特に悲しんだ様子も見せずに言い放つ。
それを聞いて私は愕然とした。敵だらけの我が家の中で、兄上は唯一私に味方してくれる人物と言っても過言ではない。今が辛くても、いつか兄上が跡を継げば家で普通に過ごせるようになる。私はそう思っていたのに。
「そ、そんな!」
が、私以外の家族や家臣たちは全く意外そうな雰囲気は見せなかった。
「なぜみんなそんなに平然としているの!? 長男なのに家督を継がせてもらえないなんて、おかしい!」
が、私の言葉に義母上やマリーは刺すような視線で睨みつけてくる。
家臣たちは何も話す気はなさそうで、最初に口を開いたのは父上だった。
「何も廃嫡するという訳ではない。体調が良くなるまで暫定的にケリンに家督継承権を移すというだけだ」
「はい、微力ながら謹んでお受けいたします」
そう言ってケリンはそれ以上私の反論を許さない、とばかりに素早く頭を下げる。
父上の言葉は一見妥当なものであるが、レイト兄上にろくな医者もついていない以上、体調が良くなることがないのは明白であった。どうせ父上は今の母上が連れてきたケリンを後継者にしたいだけだろう。私に嫌がらせをするだけならまだしも、まさかそのようなことまでするなんて。
「もういいです!」
私はそう叫んで立ち上がり、部屋を飛び出した。
去り際、こちらを見た母上が嘲笑するような笑みを浮かべているのが目に入った。もしケリンが跡を継げばこの家は本当に義母上に乗っ取られることになる。とはいえ、今の私にはどうすることも出来なかった。
「エレナ様、旦那様がお呼びでございます」
突然、私は父上に呼び出された。マリーの口車に乗っかってしょっちゅう私に辛く当たる義母上と違い、父上は私には無関心を貫いていた。義母からすれば先妻の子である私は邪魔なのかもしれないが、父上からするとそういう感情すら湧かないのだろう。
そんな父上から私が呼び出されるなど珍しいことである。もしかしていよいよ結婚だろうか、と私はかすかな期待を抱きながら家の居間に向かう。
するとそこには父のウルス、オードリー義母上、妹のマリー、そして兄(母上が連れてきた方)のケリンと一族が勢ぞろいしている。いや、一人だけ、私の実の兄であるレイトだけがいなかった。
また、執事や主だった家臣たちも控えている。やけに物々しい。
この雰囲気だと私の結婚が決まったということではなさそうだ、と私は落胆する。
「よし、これで全員揃ったようだな」
それを見て父上が告げる。兄上は母に似たのか病弱で臥せりがちであり、今もそれで家族会議に顔を出せないのだろうか。
「皆も知っている通り、これまで我が家の跡継ぎであったレイトは病弱だった。公爵というのは広大な領地を治める他、王国の政治にも関わらなければならない激務だ。残念だが今のレイトには無理だろう」
父上は言葉とは裏腹に特に悲しんだ様子も見せずに言い放つ。
それを聞いて私は愕然とした。敵だらけの我が家の中で、兄上は唯一私に味方してくれる人物と言っても過言ではない。今が辛くても、いつか兄上が跡を継げば家で普通に過ごせるようになる。私はそう思っていたのに。
「そ、そんな!」
が、私以外の家族や家臣たちは全く意外そうな雰囲気は見せなかった。
「なぜみんなそんなに平然としているの!? 長男なのに家督を継がせてもらえないなんて、おかしい!」
が、私の言葉に義母上やマリーは刺すような視線で睨みつけてくる。
家臣たちは何も話す気はなさそうで、最初に口を開いたのは父上だった。
「何も廃嫡するという訳ではない。体調が良くなるまで暫定的にケリンに家督継承権を移すというだけだ」
「はい、微力ながら謹んでお受けいたします」
そう言ってケリンはそれ以上私の反論を許さない、とばかりに素早く頭を下げる。
父上の言葉は一見妥当なものであるが、レイト兄上にろくな医者もついていない以上、体調が良くなることがないのは明白であった。どうせ父上は今の母上が連れてきたケリンを後継者にしたいだけだろう。私に嫌がらせをするだけならまだしも、まさかそのようなことまでするなんて。
「もういいです!」
私はそう叫んで立ち上がり、部屋を飛び出した。
去り際、こちらを見た母上が嘲笑するような笑みを浮かべているのが目に入った。もしケリンが跡を継げばこの家は本当に義母上に乗っ取られることになる。とはいえ、今の私にはどうすることも出来なかった。
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