51 / 51
最終編
エピローグ
しおりを挟む
それから数年後。
「お帰り、イリス。今日もお疲れ様」
「ドレイクも王宮の警備お疲れ様」
私が聖女の仕事を終えて、王宮内にもらっていた屋敷に帰ってくると、珍しくドレイクが出迎えてくれた。普段は私の方が帰りが早いのに。
「今日は早いのね」
「仕事が少ない日は皆が気を利かして早く返してくれるんだ。夫婦の時間を楽しんでくれってな」
そう言ってドレイクは恥ずかしそうに頬をかく。
「それはありがたいけど……確かに恥ずかしいね」
あの事件の後に婚約した私たちは、一年ほど前に無事結婚することが出来た。前世の記憶があるから全く気を抜けなかったけどどうやら運命は完全に変化していたらしく、私たちは何もなく穏やかな日々を送っていた。
そうそう、一つ変わったことと言えばメリアと破局してショックで引きこもっていたアレクセイは陛下の逆鱗に触れ、厳しい軍人と噂の将軍の元に修行に出されたらしい。将軍であれば彼の我がままで打たれ弱い性根を叩き直してくれることだろう。
ドレイクは聖騎士団長のまま管轄が王宮と聖女の警護に代わり、王都から各地の騎士団の指揮をとることになった。
私の方は前世と同じように毎日一時間の祈りを捧げる生活を送っていた。前世と変わったのは夜にこっそり恋愛小説を書いていることぐらいだろうか。世にだしてはいるが、ドレイクの協力もあって私の正体はまだばれていない。
「そう言えば最近、イリスの作品は作風が変わったってよく言われている」
「本当?」
「ああ。前はどちらかというと、報われない主人公が悪い男に引っ掛かりヒーローと状況を打開するパターンが多かったが、最近は甘々な純愛物が増えていると」
「え、そうなの? 全然気づいていなかった」
とはいえ思い返してみれば最近はそういう内容が増えているような気がする。理由は……まあ言わずもがなだろう。
自分で言っておきながらドレイクも言い終えた後に気づいたらしく、急に恥ずかしそうな顔をする。
「こほん、とはいえ、そのおかげで新しいファンも増えているようだが」
「それは良かった」
それを聞いて私は安心する。人生は長いのだから書く内容も時々は進化させていきたい。
そんな私にドレイクが急に真面目な表情に戻って尋ねる。
「そうだ、今日は何の日だか覚えているか?」
「うん、確か正式な結婚から一年だよね?」
「そうだ。だから実は今日は王宮の料理人に頼んで、特別なディナーを用意してもらったんだ」
「ありがとう!」
私はドレイクの心遣いに嬉しくなる。
こんな感じで私たちの結婚生活は平和に続いていくのであった。
「お帰り、イリス。今日もお疲れ様」
「ドレイクも王宮の警備お疲れ様」
私が聖女の仕事を終えて、王宮内にもらっていた屋敷に帰ってくると、珍しくドレイクが出迎えてくれた。普段は私の方が帰りが早いのに。
「今日は早いのね」
「仕事が少ない日は皆が気を利かして早く返してくれるんだ。夫婦の時間を楽しんでくれってな」
そう言ってドレイクは恥ずかしそうに頬をかく。
「それはありがたいけど……確かに恥ずかしいね」
あの事件の後に婚約した私たちは、一年ほど前に無事結婚することが出来た。前世の記憶があるから全く気を抜けなかったけどどうやら運命は完全に変化していたらしく、私たちは何もなく穏やかな日々を送っていた。
そうそう、一つ変わったことと言えばメリアと破局してショックで引きこもっていたアレクセイは陛下の逆鱗に触れ、厳しい軍人と噂の将軍の元に修行に出されたらしい。将軍であれば彼の我がままで打たれ弱い性根を叩き直してくれることだろう。
ドレイクは聖騎士団長のまま管轄が王宮と聖女の警護に代わり、王都から各地の騎士団の指揮をとることになった。
私の方は前世と同じように毎日一時間の祈りを捧げる生活を送っていた。前世と変わったのは夜にこっそり恋愛小説を書いていることぐらいだろうか。世にだしてはいるが、ドレイクの協力もあって私の正体はまだばれていない。
「そう言えば最近、イリスの作品は作風が変わったってよく言われている」
「本当?」
「ああ。前はどちらかというと、報われない主人公が悪い男に引っ掛かりヒーローと状況を打開するパターンが多かったが、最近は甘々な純愛物が増えていると」
「え、そうなの? 全然気づいていなかった」
とはいえ思い返してみれば最近はそういう内容が増えているような気がする。理由は……まあ言わずもがなだろう。
自分で言っておきながらドレイクも言い終えた後に気づいたらしく、急に恥ずかしそうな顔をする。
「こほん、とはいえ、そのおかげで新しいファンも増えているようだが」
「それは良かった」
それを聞いて私は安心する。人生は長いのだから書く内容も時々は進化させていきたい。
そんな私にドレイクが急に真面目な表情に戻って尋ねる。
「そうだ、今日は何の日だか覚えているか?」
「うん、確か正式な結婚から一年だよね?」
「そうだ。だから実は今日は王宮の料理人に頼んで、特別なディナーを用意してもらったんだ」
「ありがとう!」
私はドレイクの心遣いに嬉しくなる。
こんな感じで私たちの結婚生活は平和に続いていくのであった。
8
お気に入りに追加
2,058
この作品は感想を受け付けておりません。
あなたにおすすめの小説
追放された聖女の悠々自適な側室ライフ
白雪の雫
ファンタジー
「聖女ともあろう者が、嫉妬に狂って我が愛しのジュリエッタを虐めるとは!貴様の所業は畜生以外の何者でもない!お前との婚約を破棄した上で国外追放とする!!」
平民でありながらゴーストやレイスだけではなくリッチを一瞬で倒したり、どんな重傷も完治してしまうマルガレーテは、幼い頃に両親と引き離され聖女として教会に引き取られていた。
そんな彼女の魔力に目を付けた女教皇と国王夫妻はマルガレーテを国に縛り付ける為、王太子であるレオナルドの婚約者に据えて、「お妃教育をこなせ」「愚民どもより我等の病を治療しろ」「瘴気を祓え」「不死王を倒せ」という風にマルガレーテをこき使っていた。
そんなある日、レオナルドは居並ぶ貴族達の前で公爵令嬢のジュリエッタ(バスト100cm以上の爆乳・KかLカップ)を妃に迎え、マルガレーテに国外追放という死刑に等しい宣言をしてしまう。
「王太子殿下の仰せに従います」
(やっと・・・アホ共から解放される。私がやっていた事が若作りのヒステリー婆・・・ではなく女教皇と何の力もない修道女共に出来る訳ないのにね~。まぁ、この国がどうなってしまっても私には関係ないからどうでもいいや)
表面は淑女の仮面を被ってレオナルドの宣言を受け入れたマルガレーテは、さっさと国を出て行く。
今までの鬱憤を晴らすかのように、着の身着のままの旅をしているマルガレーテは、故郷である幻惑の樹海へと戻っている途中で【宮女狩り】というものに遭遇してしまい、大国の後宮へと入れられてしまった。
マルガレーテが悠々自適な側室ライフを楽しんでいる頃
聖女がいなくなった王国と教会は滅亡への道を辿っていた。
聖女を騙った少女は、二度目の生を自由に生きる
夕立悠理
恋愛
ある日、聖女として異世界に召喚された美香。その国は、魔物と戦っているらしく、兵士たちを励まして欲しいと頼まれた。しかし、徐々に戦況もよくなってきたところで、魔法の力をもった本物の『聖女』様が現れてしまい、美香は、聖女を騙った罪で、処刑される。
しかし、ギロチンの刃が落とされた瞬間、時間が巻き戻り、美香が召喚された時に戻り、美香は二度目の生を得る。美香は今度は魔物の元へ行き、自由に生きることにすると、かつては敵だったはずの魔王に溺愛される。
しかし、なぜか、美香を見捨てたはずの護衛も執着してきて――。
※小説家になろう様にも投稿しています
※感想をいただけると、とても嬉しいです
※著作権は放棄してません
【完結】逆行した聖女
ウミ
恋愛
1度目の生で、取り巻き達の罪まで着せられ処刑された公爵令嬢が、逆行してやり直す。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
初めて書いた作品で、色々矛盾があります。どうか寛大な心でお読みいただけるととても嬉しいですm(_ _)m
好きでした、さようなら
豆狸
恋愛
「……すまない」
初夜の床で、彼は言いました。
「君ではない。私が欲しかった辺境伯令嬢のアンリエット殿は君ではなかったんだ」
悲しげに俯く姿を見て、私の心は二度目の死を迎えたのです。
なろう様でも公開中です。
【完結】婚約破棄にて奴隷生活から解放されたので、もう貴方の面倒は見ませんよ?
かのん
恋愛
ℌot ランキング乗ることができました! ありがとうございます!
婚約相手から奴隷のような扱いを受けていた伯爵令嬢のミリー。第二王子の婚約破棄の流れで、大嫌いな婚約者のエレンから婚約破棄を言い渡される。
婚約者という奴隷生活からの解放に、ミリーは歓喜した。その上、憧れの存在であるトーマス公爵に助けられて~。
婚約破棄によって奴隷生活から解放されたミリーはもう、元婚約者の面倒はみません!
4月1日より毎日更新していきます。およそ、十何話で完結予定。内容はないので、それでも良い方は読んでいただけたら嬉しいです。
作者 かのん
不憫なままではいられない、聖女候補になったのでとりあえずがんばります!
吉野屋
恋愛
母が亡くなり、伯父に厄介者扱いされた挙句、従兄弟のせいで池に落ちて死にかけたが、
潜在していた加護の力が目覚め、神殿の池に引き寄せられた。
美貌の大神官に池から救われ、聖女候補として生活する事になる。
母の天然加減を引き継いだ主人公の新しい人生の物語。
(完結済み。皆様、いつも読んでいただいてありがとうございます。とても励みになります)
【完結】大聖女は無能と蔑まれて追放される〜殿下、1%まで力を封じよと命令したことをお忘れですか?隣国の王子と婚約しましたので、もう戻りません
冬月光輝
恋愛
「稀代の大聖女が聞いて呆れる。フィアナ・イースフィル、君はこの国の聖女に相応しくない。職務怠慢の罪は重い。無能者には国を出ていってもらう。当然、君との婚約は破棄する」
アウゼルム王国の第二王子ユリアンは聖女フィアナに婚約破棄と国家追放の刑を言い渡す。
フィアナは侯爵家の令嬢だったが、両親を亡くしてからは教会に預けられて類稀なる魔法の才能を開花させて、その力は大聖女級だと教皇からお墨付きを貰うほどだった。
そんな彼女は無能者だと追放されるのは不満だった。
なぜなら――
「君が力を振るうと他国に狙われるし、それから守るための予算を割くのも勿体ない。明日からは能力を1%に抑えて出来るだけ働くな」
何を隠そう。フィアナに力を封印しろと命じたのはユリアンだったのだ。
彼はジェーンという国一番の美貌を持つ魔女に夢中になり、婚約者であるフィアナが邪魔になった。そして、自らが命じたことも忘れて彼女を糾弾したのである。
国家追放されてもフィアナは全く不自由しなかった。
「君の父親は命の恩人なんだ。私と婚約してその力を我が国の繁栄のために存分に振るってほしい」
隣国の王子、ローレンスは追放されたフィアナをすぐさま迎え入れ、彼女と婚約する。
一方、大聖女級の力を持つといわれる彼女を手放したことがバレてユリアンは国王陛下から大叱責を食らうことになっていた。
妾の子と蔑まれていた公爵令嬢は、聖女の才能を持つ存在でした。今更態度を改められても、許すことはできません。
木山楽斗
恋愛
私の名前は、ナルネア・クーテイン。エルビネア王国に暮らす公爵令嬢である。
といっても、私を公爵令嬢といっていいのかどうかはわからない。なぜなら、私は現当主と浮気相手との間にできた子供であるからだ。
公爵家の人々は、私のことを妾の子と言って罵倒してくる。その辛い言葉にも、いつしかなれるようになっていた。
屋敷の屋根裏部屋に閉じ込められながら、私は窮屈な生活を続けていた。このまま、公爵家の人々に蔑まれながら生きていくしかないと諦めていたのだ。
ある日、家に第三王子であるフリムド様が訪ねて来た。
そこで起こった出来事をきっかけに、私は自身に聖女の才能があることを知るのだった。
その才能を見込まれて、フリムド様は私を気にかけるようになっていた。私が、聖女になることを期待してくれるようになったのである。
そんな私に対して、公爵家の人々は態度を少し変えていた。
どうやら、私が聖女の才能があるから、媚を売ってきているようだ。
しかし、今更そんなことをされてもいい気分にはならない。今までの罵倒を許すことなどできないのである。
※下記の関連作品を読むと、より楽しめると思います。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる