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最終編
自分の作品(3)
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私たちが広間に足を踏み入れると、玉座に陛下が座り、その両脇には大臣や将軍などそうそうたる顔ぶれが並んでいる。
そして私たちの向かい側にはアレクとマリアが蒼白の表情で座っている。彼らはおそらくすでに自分たちに勝ち目がないことを悟っているのだろう。
また、そんな私たちを囲むように見物に来た貴族や有力者たちがずらりと並んでいた。
そんな中口を開いたのは大司教だった。
「皆様ご静粛に。それではこのたびの聖女追放事件についての事実関係を発覚させるための裁判を始めさせていただこうと思います。まずは事実確認ですが……」
そう言って大司教は私が冤罪を着せられるまでの経緯を詳細に話す。アレクは時々口を挟もうとしたが、大司教の話している内容は事実に即していたため、アレクの異議は全て却下された。
「……と言う訳で、改めてアリス殿が聖女かどうか、神殿で用意した百合を用いて確かめさせていただこうと思います。そうすれば殿下が用意させた百合が本物だったかどうか分かるでしょう。それではアリス殿」
「はい」
大司教に呼ばれた私は前に出る。
そんな私に大司教は直接鉢植えを差し出した。私はそれに手をかざす。
すると、百合の花は私の魔力に反応してすくすくと成長し始めた。
それを見て参列した貴族たちは皆息をのむ。やはりアレクは自分の婚約者をマリアに差し替えるため、不当にアリスを陥れたのだ。
「こんなことはおかしい! これは何かの間違いだ!」
もはやアレクにはそう叫ぶことしか出来ない。
そんな彼に大司教は鋭い目を向ける。
「間違いではない。間違っているのはそちらが用意した百合だろう! その百合を出してもらおうか」
「アリスが偽聖女だと確認したので処分しました」
今度は震える声でマリアが言う。今のところ悪いのはアレクだけだが、偽物の百合が見つかればマリアまで罪に問われてしまう。そのためさっさと証拠隠滅を図ったのだ。
が、それを聞いた大司教は眉を吊り上げた。
「聖なる百合を処分するとは何事だ! 聖なる百合を何だと思っているのだ!」
「も、申し訳ございません」
「やはりあなたが用意したのは偽物だったということではないか!?」
「……」
罪を避けるつもりが、マリアは墓穴を掘ってしまったようだった。もっとも、百合を偽造した証拠が明らかになるよりは幾分かましだろうが。
もはやアレクにもマリアにも反論の余地はなく、しかもその様子は居並ぶ者たち全員に見られてしまっている。
そんな彼を見て国王は静かに溜め息をつく。
「残念だ、アレク」
「そ、そんな父上! お助け下さい!」
が、叫ぶアレクの周囲に近衛騎士たちが集まって武器を構える。
マリアも近衛騎士により囲まれていた。
「今後は近衛騎士の詰め所で取り調べを行う。大人しくついてこい」
「そんな! 俺は王子だぞ!? 武器を降ろせ!」
それを見てアレクはわめきたてたが、もはやその命令に従う者はいなかった。やがてどうにもならないと悟ったアレクは諦めたように騎士たちと、そしてマリアとともに歩いていく。
そして私たちの向かい側にはアレクとマリアが蒼白の表情で座っている。彼らはおそらくすでに自分たちに勝ち目がないことを悟っているのだろう。
また、そんな私たちを囲むように見物に来た貴族や有力者たちがずらりと並んでいた。
そんな中口を開いたのは大司教だった。
「皆様ご静粛に。それではこのたびの聖女追放事件についての事実関係を発覚させるための裁判を始めさせていただこうと思います。まずは事実確認ですが……」
そう言って大司教は私が冤罪を着せられるまでの経緯を詳細に話す。アレクは時々口を挟もうとしたが、大司教の話している内容は事実に即していたため、アレクの異議は全て却下された。
「……と言う訳で、改めてアリス殿が聖女かどうか、神殿で用意した百合を用いて確かめさせていただこうと思います。そうすれば殿下が用意させた百合が本物だったかどうか分かるでしょう。それではアリス殿」
「はい」
大司教に呼ばれた私は前に出る。
そんな私に大司教は直接鉢植えを差し出した。私はそれに手をかざす。
すると、百合の花は私の魔力に反応してすくすくと成長し始めた。
それを見て参列した貴族たちは皆息をのむ。やはりアレクは自分の婚約者をマリアに差し替えるため、不当にアリスを陥れたのだ。
「こんなことはおかしい! これは何かの間違いだ!」
もはやアレクにはそう叫ぶことしか出来ない。
そんな彼に大司教は鋭い目を向ける。
「間違いではない。間違っているのはそちらが用意した百合だろう! その百合を出してもらおうか」
「アリスが偽聖女だと確認したので処分しました」
今度は震える声でマリアが言う。今のところ悪いのはアレクだけだが、偽物の百合が見つかればマリアまで罪に問われてしまう。そのためさっさと証拠隠滅を図ったのだ。
が、それを聞いた大司教は眉を吊り上げた。
「聖なる百合を処分するとは何事だ! 聖なる百合を何だと思っているのだ!」
「も、申し訳ございません」
「やはりあなたが用意したのは偽物だったということではないか!?」
「……」
罪を避けるつもりが、マリアは墓穴を掘ってしまったようだった。もっとも、百合を偽造した証拠が明らかになるよりは幾分かましだろうが。
もはやアレクにもマリアにも反論の余地はなく、しかもその様子は居並ぶ者たち全員に見られてしまっている。
そんな彼を見て国王は静かに溜め息をつく。
「残念だ、アレク」
「そ、そんな父上! お助け下さい!」
が、叫ぶアレクの周囲に近衛騎士たちが集まって武器を構える。
マリアも近衛騎士により囲まれていた。
「今後は近衛騎士の詰め所で取り調べを行う。大人しくついてこい」
「そんな! 俺は王子だぞ!? 武器を降ろせ!」
それを見てアレクはわめきたてたが、もはやその命令に従う者はいなかった。やがてどうにもならないと悟ったアレクは諦めたように騎士たちと、そしてマリアとともに歩いていく。
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