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リリア編
リリア編 作中作(1)
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今日は久しぶりに婚約相手のオルトに屋敷に招待された。顔は目鼻立ちが整ったイケメンだし、会えば私のことを好きだとは言ってくれるし不満はないけど、何を考えているのか分からないところがある。
だからそんな彼の屋敷に招かれると聞いて、今度こそ愛の言葉を伝えてくれるのではないかと私は密かに胸を高鳴らせていた。
「よく来たね、リリア」
屋敷に着くとオルトが直々に出迎えてくれた。そして私の手をとると部屋へと案内してくれる。
「あの、ここは?」
今日は今まで案内された彼の私室や応接間、もしくはパーティーが開かれるホールではなく、なぜか離れにある建物に連れていかれる。こんな建物、前に来たときあっただろうか。
「君のために特別に作らせたんだ。きれいな庭だろう?」
言われてみれば離れの庭には色とりどりの花が植えられており、きれいだ。
「はい、ありがとうございます」
私は手を引かれるまま離れの室内に入る。そこは私好みの家具や調度品がしつらえられた私の部屋だった。しかも中には私の好きな本まで置いてある。
最初こそ無邪気に喜んでいた私だったが、だんだん疑念が芽生えてくる。いくら貴族でもこんな建物を私のために建ててくれるのは普通ではないのではないか。
「あの、時々しかこちらには来られないのにここまでしてもらうのは悪いです」
するとそれまでにこやかな笑みを浮かべていたオルトの表情が急変する。
「何を言っているんだい? 君は今日からここに住むんだ」
突然出てきた訳の分からない台詞に私は困惑する。
正直彼が何を言っているのか全く分からない。
「え? ……いえ、そんな話は聞いてないのですが」
「聞いたところによると君はこの前他家のご令息と親し気に話し込んでいたようじゃないか。婚約相手がいるというのに随分軽率じゃないかい?」
見るとオルトの目からは光が消えている。
ここで私はようやく身の危険を意識した。
今のオルトは普通ではない。
「ち、違うんです! あれはパーティーで話しかけられたから失礼にならない程度に……」
「うるさい!」
私が弁明しようとすると、突然オルトは大声を上げた。これまで聞いたこともないような威圧的な声に思わず私はびくりと体を震わせる。
「だめじゃないか、君は魅力的なんだから。ちゃんと自分の価値というものを正しく理解しないと。君があんな風に親し気に話したらそこら辺の男は勘違いしてしまうよ。だからそういう男を出さないために、僕は君をここに閉じ込めるんだ」
そう言ってオルトの目が怪しく光る。
閉じ込められるのは嫌なはずなのに、なぜかオルトの言葉に心のどこかで嬉しく思ってしまう私がいた。
「いえ、そんな、困ります……」
「何も困ることはないさ。君の相手は僕一人で十分だ。大丈夫、欲しいものがあれば何でも用意させるし、愛して欲しいときはいつでも僕が愛してあげるよ」
そう言って彼は乱暴に私の唇を奪った。私はなすすべもなく、身を任せるしかなかった。
*
「……なんか思ったより大変なことになってるな」
久しぶりに書いたせいか、なかなか大変な内容になってしまっている。ていうか、もはや名前以外元のオルトの要素は残っていない。そして性格もこれでは一途というより危ない人だ。
「でもまあ、これならリリアも失望してもう私にも頼まないでしょ」
出来が良くなかったのは少し残念だが、当初の予定通りではある。私はほっと息をついた。そして私は使いの者に文章を持たせてリリアの家に向かわせた。会った時に手渡ししたら絶対目の前で読みそうだから嫌だ。懸念だった小説を書き終えたその日は安らかな気持ちで祈りを捧げた。
今日は久しぶりに婚約相手のオルトに屋敷に招待された。顔は目鼻立ちが整ったイケメンだし、会えば私のことを好きだとは言ってくれるし不満はないけど、何を考えているのか分からないところがある。
だからそんな彼の屋敷に招かれると聞いて、今度こそ愛の言葉を伝えてくれるのではないかと私は密かに胸を高鳴らせていた。
「よく来たね、リリア」
屋敷に着くとオルトが直々に出迎えてくれた。そして私の手をとると部屋へと案内してくれる。
「あの、ここは?」
今日は今まで案内された彼の私室や応接間、もしくはパーティーが開かれるホールではなく、なぜか離れにある建物に連れていかれる。こんな建物、前に来たときあっただろうか。
「君のために特別に作らせたんだ。きれいな庭だろう?」
言われてみれば離れの庭には色とりどりの花が植えられており、きれいだ。
「はい、ありがとうございます」
私は手を引かれるまま離れの室内に入る。そこは私好みの家具や調度品がしつらえられた私の部屋だった。しかも中には私の好きな本まで置いてある。
最初こそ無邪気に喜んでいた私だったが、だんだん疑念が芽生えてくる。いくら貴族でもこんな建物を私のために建ててくれるのは普通ではないのではないか。
「あの、時々しかこちらには来られないのにここまでしてもらうのは悪いです」
するとそれまでにこやかな笑みを浮かべていたオルトの表情が急変する。
「何を言っているんだい? 君は今日からここに住むんだ」
突然出てきた訳の分からない台詞に私は困惑する。
正直彼が何を言っているのか全く分からない。
「え? ……いえ、そんな話は聞いてないのですが」
「聞いたところによると君はこの前他家のご令息と親し気に話し込んでいたようじゃないか。婚約相手がいるというのに随分軽率じゃないかい?」
見るとオルトの目からは光が消えている。
ここで私はようやく身の危険を意識した。
今のオルトは普通ではない。
「ち、違うんです! あれはパーティーで話しかけられたから失礼にならない程度に……」
「うるさい!」
私が弁明しようとすると、突然オルトは大声を上げた。これまで聞いたこともないような威圧的な声に思わず私はびくりと体を震わせる。
「だめじゃないか、君は魅力的なんだから。ちゃんと自分の価値というものを正しく理解しないと。君があんな風に親し気に話したらそこら辺の男は勘違いしてしまうよ。だからそういう男を出さないために、僕は君をここに閉じ込めるんだ」
そう言ってオルトの目が怪しく光る。
閉じ込められるのは嫌なはずなのに、なぜかオルトの言葉に心のどこかで嬉しく思ってしまう私がいた。
「いえ、そんな、困ります……」
「何も困ることはないさ。君の相手は僕一人で十分だ。大丈夫、欲しいものがあれば何でも用意させるし、愛して欲しいときはいつでも僕が愛してあげるよ」
そう言って彼は乱暴に私の唇を奪った。私はなすすべもなく、身を任せるしかなかった。
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「……なんか思ったより大変なことになってるな」
久しぶりに書いたせいか、なかなか大変な内容になってしまっている。ていうか、もはや名前以外元のオルトの要素は残っていない。そして性格もこれでは一途というより危ない人だ。
「でもまあ、これならリリアも失望してもう私にも頼まないでしょ」
出来が良くなかったのは少し残念だが、当初の予定通りではある。私はほっと息をついた。そして私は使いの者に文章を持たせてリリアの家に向かわせた。会った時に手渡ししたら絶対目の前で読みそうだから嫌だ。懸念だった小説を書き終えたその日は安らかな気持ちで祈りを捧げた。
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