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序章
二周目の目覚め
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「…………さい! …………きてください!」
おかしい、死んだはずなのに誰かが私を呼ぶ声が聞こえる。もしかしてこれが死神というやつだろうか。
だが、その割に横たわっている体を揺さぶる手つきは優しいし、声にも温かみがある。迎えに来たというよりは本当に心配している様子だ。
そしてだんだんと私に呼びかける声が鮮明になっていく。
「お嬢様、お嬢様! 起きてください!」
「……へっ?」
そこで私はようやく自分が起こされているのだと気づき、ぱちりと目を開ける。私が寝かされているのは見慣れたハイランダー家の自室のベッド。傍らで困った顔で私を起こそうとしているのはメイドのアリシアだった。
「もうお嬢様、今日は全然起きてこられないので心配しましたよ」
「え……あれ、私……」
私は目をこすりながら体を起こす。確か私は王宮で毒を盛られて死んだはずじゃ、と思いつつ自分の体を見る。すると体は今(というか死んだとき)より小さかった。
もしかして私は長々と夢を見ていた?
それともあれは時間が巻き戻ったのか?
「もう、どうされたんですか、お嬢様。今日はお茶会に出席されるとうかがっていたのですが」
私が混乱しているのを見てアリシアは呆れた表情で言うが、それどころではない。
私が見ていたのが長い長い夢だったのだとすれば、今は聖女として名乗り出る前なのだろうか。しかし夢にしては鮮明に記憶に残っている。
よく分からないが、とりあえずあれを一周目と呼ぶことにしよう。
とりあえず現状を確認しなければ。危機を脱した(?)ということもあって私は訳の分からない状況ながら比較的冷静だった。
「あの、つかぬことを聞くけど今日って何年の何日?」
「本当に体調でも崩されましたか? 今日はオルセイン暦百六十二年バラの月の五日目ですよ」
「そ、そうだったね、あはは……」
誤魔化しながらも私は必死で記憶をたぐる。確かその日が私が聖女として名乗り出た日だった。死ぬ直前の願いが叶ってこのタイミングに巻き戻ったのだろうか?
そんな都合のいいことが実際に起こるものなのだろうか。
「そう言えば、最近何か変わったことがあった?」
私は情報収集のため、そんな間抜けな質問を投げかけてみる。
こちらの世界でもやはり前代の聖女様は倒れたのだろうか。
「それはやはり聖女様がご病気になったことじゃないでしょうか? 早く次の聖女様が見つかるといいのですが……ってそんなことも忘れてしまったのですか!? 本当に大丈夫でしょうか?」
アリシアはますます私を心配してくる。
確かにそんな大事件を本当に忘れていたら心配されるのも無理はない、というぐらい国は大騒ぎになったものだがそれは変わらないらしい。
そこでふと私は自分の中に意識を向けてみる。すると確かに私には聖女の力が残っている実感がある。残っているという表現が適切なのかは分からないけど。
一周目の記憶だと私はこの日貴族令嬢の友人たちとの茶会に出向いて聖女の話をして、自分の中に芽生えた不思議な感覚をもしやと思って父に打ち明けた。そして王都に出向き、例の百合を咲かせたのである。
しかし一周目と同じように名乗り出て王宮に向かってしまえば同じ未来を辿るだけだ。
「ごめんごめん、私は大丈夫だから。さ、急いで出かける支度をしよう」
「そうですか……もし悩み事があるようでしたら教えてくださいね」
アリシアはまだ少しだけ怪訝そうであったが、それ以上は言わないでくれた。
おかしい、死んだはずなのに誰かが私を呼ぶ声が聞こえる。もしかしてこれが死神というやつだろうか。
だが、その割に横たわっている体を揺さぶる手つきは優しいし、声にも温かみがある。迎えに来たというよりは本当に心配している様子だ。
そしてだんだんと私に呼びかける声が鮮明になっていく。
「お嬢様、お嬢様! 起きてください!」
「……へっ?」
そこで私はようやく自分が起こされているのだと気づき、ぱちりと目を開ける。私が寝かされているのは見慣れたハイランダー家の自室のベッド。傍らで困った顔で私を起こそうとしているのはメイドのアリシアだった。
「もうお嬢様、今日は全然起きてこられないので心配しましたよ」
「え……あれ、私……」
私は目をこすりながら体を起こす。確か私は王宮で毒を盛られて死んだはずじゃ、と思いつつ自分の体を見る。すると体は今(というか死んだとき)より小さかった。
もしかして私は長々と夢を見ていた?
それともあれは時間が巻き戻ったのか?
「もう、どうされたんですか、お嬢様。今日はお茶会に出席されるとうかがっていたのですが」
私が混乱しているのを見てアリシアは呆れた表情で言うが、それどころではない。
私が見ていたのが長い長い夢だったのだとすれば、今は聖女として名乗り出る前なのだろうか。しかし夢にしては鮮明に記憶に残っている。
よく分からないが、とりあえずあれを一周目と呼ぶことにしよう。
とりあえず現状を確認しなければ。危機を脱した(?)ということもあって私は訳の分からない状況ながら比較的冷静だった。
「あの、つかぬことを聞くけど今日って何年の何日?」
「本当に体調でも崩されましたか? 今日はオルセイン暦百六十二年バラの月の五日目ですよ」
「そ、そうだったね、あはは……」
誤魔化しながらも私は必死で記憶をたぐる。確かその日が私が聖女として名乗り出た日だった。死ぬ直前の願いが叶ってこのタイミングに巻き戻ったのだろうか?
そんな都合のいいことが実際に起こるものなのだろうか。
「そう言えば、最近何か変わったことがあった?」
私は情報収集のため、そんな間抜けな質問を投げかけてみる。
こちらの世界でもやはり前代の聖女様は倒れたのだろうか。
「それはやはり聖女様がご病気になったことじゃないでしょうか? 早く次の聖女様が見つかるといいのですが……ってそんなことも忘れてしまったのですか!? 本当に大丈夫でしょうか?」
アリシアはますます私を心配してくる。
確かにそんな大事件を本当に忘れていたら心配されるのも無理はない、というぐらい国は大騒ぎになったものだがそれは変わらないらしい。
そこでふと私は自分の中に意識を向けてみる。すると確かに私には聖女の力が残っている実感がある。残っているという表現が適切なのかは分からないけど。
一周目の記憶だと私はこの日貴族令嬢の友人たちとの茶会に出向いて聖女の話をして、自分の中に芽生えた不思議な感覚をもしやと思って父に打ち明けた。そして王都に出向き、例の百合を咲かせたのである。
しかし一周目と同じように名乗り出て王宮に向かってしまえば同じ未来を辿るだけだ。
「ごめんごめん、私は大丈夫だから。さ、急いで出かける支度をしよう」
「そうですか……もし悩み事があるようでしたら教えてくださいね」
アリシアはまだ少しだけ怪訝そうであったが、それ以上は言わないでくれた。
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