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日常

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 それから数日の間、私はサーシャや他の女友達と学園で過ごしていた。最初はクラインがいない生活に寂しさや物足りなさを感じていたが、何日か経つうちに女友達と遊ぶのも悪くはないなと思うようになってきていた。

 が、一方のクラインは目に見えて憔悴していた。
 例えば授業中、

「それではこの問題の答えは何だ? クライン」
「……すみません、分かりません」
 いつもならどんな問題でも答えられるはずのクラインがうなだれ、彼を指したはずの教師すら驚いた。中には体調を崩しているのではないかと心配する者もいた。

 また、体育の時間は男子と女子で分かれて行うのだが、遠目に見えるクラインはいつもより動きにキレがなく、バスケットの試合では相手にボールを奪われてばかりいた。
 その様子に何人かの男子生徒が心配そうに声をかけているが、リーアムだけは少し離れたところからじっと彼を見守っている。

 最初私はこの後彼がどういう変化を起こすのか不安だったが、やがて彼の反応に少しほっとする自分がいるのに気づいた。クラインがここまで落ち込んでいるということはやはり私を好きだという気持ちに嘘はなかったのだ。

「カレン、何だかんだでいつもクラインのこと見てるよ」

 授業が終わると、サーシャが苦笑しながらそう言ってくる。
 それを言われて、初めて私はクラインばかり見ていたことを自覚した。彼のことはいったん忘れ去ったつもりだったけど、そうでもなかったらしい。

「やっぱりそうなんだ。もう気にしないことにするつもりだったんだけど」
「まあそれはお互い様みたいだと思うけど」

 そう言ってサーシャはちらっとクラインの方を見る。
 確かに、クラインの方も私が視線を向けていない時を狙ってこちらをちらちら見つめてきているような気がする。

 そしてその日の放課後、彼はリーアムと一緒に球技場の方へ向かっていくのが見えた。私のことを彼に相談するつもりだろうか。

「サーシャ、私たちも遊びに行こう」
「うん、分かった。カレン、クラインばかりであんまり一緒に遊びに行ってくれないから行きたいところ結構溜まっているんだ」
「それは……ごめん」
「嘘、全然気にしてないよ」

 そう言って彼女はあはは、と笑う。私もサーシャぐらい割りきりの良い性格になれればもう少し生きやすいと思うんだけど。

 こうしてその日はサーシャと一緒に女の子同士でしか入れなさそうなカフェや服屋さんに行って存分にショッピングを楽しんだのだった。クラインとは行かないところばかりなので、新鮮で楽しかった。
 そしてその日以降、私は放課後もサーシャや時には他の女友達も入れて過ごすようになった。



 その数日後の昼休みのことである。
 いつも通りサーシャとカフェテリアに行こうとすると、クラインが深刻な表情で私の元に歩いて来る。最近少しだけ元気を取り戻して来た彼だが、ついに私と話す決心がついたのだろうか。

「なあカレン、今日は放課後話があるんだ。学園の裏庭に来てくれないか?」
「分かった」

 クラインの表情に、ついにきたか、と思った私は頷く。
 すると彼は一安心して私の元を離れていった。ちゃんと話が終わるまでは日々の雑談も出来ないということだろうか。

 私は隣で微笑ましげに私たちを眺めているサーシャにいう。

「ごめんねサーシャ、ちょっと今日の放課後は無理になっちゃった」
「思いのほか早く仲直り出来そうで良かったね。応援してるけど、仲直り出来そうだからって妥協したらだめだよ。また決裂したら私が遊んであげるから、言いたいことは全部言った方がいい」
「ありがとう。でもそれ、サーシャが私と遊びたいからだよね?」
「バレた?」

 そう言って彼女はいたずらっぽく笑う。いかにもサーシャらしい励まし方だ。
 そして私は放課後、クラインの元に向かったのだった。
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