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Ⅳ
事件について
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「殿下……来て下さってありがとうございます!」
前回会ってから一週間ほどしか経っていないというのに、一人で閉じ込められていた時間があるせいか数か月振りにあったような気分になります。
「無事だったか、セシリア?」
「はい、部屋からは出れませんでしたが、それ以外は特に何もありませんでした」
「それは良かった。クロードが倒れたと聞いた時は僕に関係ないことだと思って無視していたが、まさか君が捕まることになるとは思っていなかった」
「私もです」
冤罪だという確信があったせいか、自分がクロードに毒を盛ったと疑われていることは忘れてしまっていました。
「その噂を聞いて慌てて彼女は犯人ではないと思うことを申し入れようとしたところ、僕の他にも前回の働きを見た数人の貴族も同調してくれて、意外とその申し入れはすんなり通ったんだ」
冤罪を着せられた時は世の中に絶望しましたが、その話を聞くとまだまだ人の縁というものはいいものだなと思えてしまいます。
「早速だが、僕が滞在している屋敷に来てくれ」
「はい」
こうして私は再び殿下とともに王宮の門をくぐったのです。
殿下が滞在しているのは王宮内にある他国の要人が来た際に滞在するための屋敷でした。
「全く、せっかく条約交渉に来たのに前回は紅熱病だし、今回はクロードが倒れるし、ついてないな」
「すみません、クロードの件は本来殿下には関係ないのに」
「まあこの事件を解決すればこの国に対して貸しが出来るから構わないけどね」
そう言って殿下は苦笑いします。
そんなことを話しながら私は殿下とともに屋敷に入りました。殿下の使用人が紅茶をいれてくれ、久しぶりに貴族の暮らしを思い出します。
「さて、話を聞かせて欲しいんだがまず、事件の直前にクロードと会ったというのはどういうことだ?」
「それが、少々込み入ったことになっていまして……」
私はクロードが私のお店にやってきた用件と、クロードが執心のエリエがカールという男と浮気しており、さらにカールが何か良くないことを企んでいたということも話します。
私が話せば話すほど殿下の表情が暗くなっていきます。
そして話し終えると殿下は深いため息をつきました。
「なるほど。登場人物が皆クズばかりだが、要するにエリエとカールが怪しいという訳か」
他国のこんな醜い争いを聞かされた殿下には同情してしまいます。
「それでは今度は殿下が知っている事件のことを教えてくれませんか?」
「ああ。クロードが自分の屋敷で倒れたという話は多分様々な人に伝わっているだろう。その後にカンタール伯爵家が呼んだ医者によるとクロードが倒れたのは毒のせいらしい。一命をとりとめたのは毒が致死量に達していなかったためだそうだ」
「屋敷で倒れたということは屋敷で盛られたということでしょうか?」
「いや、僕はその辺詳しくないがどうも盛られたのは遅効性の毒らしい」
「なるほど」
遅効性の毒を使ったのはどこで使ったのか分かりにくくするためでしょう。
とはいえ、致死量に足りなかったということは犯人はそこまで毒に詳しい訳ではないのではないかと思ってしまいます。私が本気でクロードを殺そうと思ったら確実に殺せます……そんなことはしませんが。
「ではクロードは倒れる前どこに行ったのです?」
「実は彼は直前にカールと会っているが、前日にはエリエに会っているらしい」
「……一体なぜそんなことを」
そう言えばカールとエリエの浮気の証拠を掴んだとか言っていたので、二人に対してそのことをアピールしに行ったとかでしょうか。
もしくは、犯人が分かりにくくするために二人に会った直後を狙った可能性もありますが。
「そういうことでしたらその薬を見せてもらえればどうにかしますが」
「よし、それならカンタール伯爵家に行こう」
こうして、私は思わぬ形でクロードと再び相対することになるのでした。
前回会ってから一週間ほどしか経っていないというのに、一人で閉じ込められていた時間があるせいか数か月振りにあったような気分になります。
「無事だったか、セシリア?」
「はい、部屋からは出れませんでしたが、それ以外は特に何もありませんでした」
「それは良かった。クロードが倒れたと聞いた時は僕に関係ないことだと思って無視していたが、まさか君が捕まることになるとは思っていなかった」
「私もです」
冤罪だという確信があったせいか、自分がクロードに毒を盛ったと疑われていることは忘れてしまっていました。
「その噂を聞いて慌てて彼女は犯人ではないと思うことを申し入れようとしたところ、僕の他にも前回の働きを見た数人の貴族も同調してくれて、意外とその申し入れはすんなり通ったんだ」
冤罪を着せられた時は世の中に絶望しましたが、その話を聞くとまだまだ人の縁というものはいいものだなと思えてしまいます。
「早速だが、僕が滞在している屋敷に来てくれ」
「はい」
こうして私は再び殿下とともに王宮の門をくぐったのです。
殿下が滞在しているのは王宮内にある他国の要人が来た際に滞在するための屋敷でした。
「全く、せっかく条約交渉に来たのに前回は紅熱病だし、今回はクロードが倒れるし、ついてないな」
「すみません、クロードの件は本来殿下には関係ないのに」
「まあこの事件を解決すればこの国に対して貸しが出来るから構わないけどね」
そう言って殿下は苦笑いします。
そんなことを話しながら私は殿下とともに屋敷に入りました。殿下の使用人が紅茶をいれてくれ、久しぶりに貴族の暮らしを思い出します。
「さて、話を聞かせて欲しいんだがまず、事件の直前にクロードと会ったというのはどういうことだ?」
「それが、少々込み入ったことになっていまして……」
私はクロードが私のお店にやってきた用件と、クロードが執心のエリエがカールという男と浮気しており、さらにカールが何か良くないことを企んでいたということも話します。
私が話せば話すほど殿下の表情が暗くなっていきます。
そして話し終えると殿下は深いため息をつきました。
「なるほど。登場人物が皆クズばかりだが、要するにエリエとカールが怪しいという訳か」
他国のこんな醜い争いを聞かされた殿下には同情してしまいます。
「それでは今度は殿下が知っている事件のことを教えてくれませんか?」
「ああ。クロードが自分の屋敷で倒れたという話は多分様々な人に伝わっているだろう。その後にカンタール伯爵家が呼んだ医者によるとクロードが倒れたのは毒のせいらしい。一命をとりとめたのは毒が致死量に達していなかったためだそうだ」
「屋敷で倒れたということは屋敷で盛られたということでしょうか?」
「いや、僕はその辺詳しくないがどうも盛られたのは遅効性の毒らしい」
「なるほど」
遅効性の毒を使ったのはどこで使ったのか分かりにくくするためでしょう。
とはいえ、致死量に足りなかったということは犯人はそこまで毒に詳しい訳ではないのではないかと思ってしまいます。私が本気でクロードを殺そうと思ったら確実に殺せます……そんなことはしませんが。
「ではクロードは倒れる前どこに行ったのです?」
「実は彼は直前にカールと会っているが、前日にはエリエに会っているらしい」
「……一体なぜそんなことを」
そう言えばカールとエリエの浮気の証拠を掴んだとか言っていたので、二人に対してそのことをアピールしに行ったとかでしょうか。
もしくは、犯人が分かりにくくするために二人に会った直後を狙った可能性もありますが。
「そういうことでしたらその薬を見せてもらえればどうにかしますが」
「よし、それならカンタール伯爵家に行こう」
こうして、私は思わぬ形でクロードと再び相対することになるのでした。
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