相性最高な最悪の男 ~ラブホで会った大嫌いな同僚に執着されて逃げられない~

柊 千鶴

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22 皮肉屋の恋

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 月島の運転で辿り着いた先は、会社の職員駐車場だった。

 既に人だかりが出来ており、神原を含めた数名の幹事が忙しそうに出欠を取ってバスに案内している。
 見ればその中に保坂の姿もある。アイツも幹事をやらされていたとは今知った。
 トランクからスーツケースを下ろしていると、向こうもこちらに気付いたらしい。少し目を剥いて、それからにやにやとした表情で話しかけてきた。

「おはよう、お2人さん。朝から御一緒とは熱いな、ついに隠すのはやめたのか?」
「何の話だ。俺とコイツは、家が近い……らしい、からな。ついでに送ってもらっただけだよ」
「……そうだったか?」
「そういうことになってるんだよ。ほら幹事、サボってないで働け」

 疑問の色を浮かべている保坂を適当にあしらって、バスに向かって歩き出す。
 保坂は渋々といった体で追及を諦めると、手元の名簿をパラパラとめくりながら言った。

「はいはい。お前と月島は……二号車だな。神原の方に行ってくれ」
「分かった」
「今晩こそ、じっくり話を聞かせろよ」
「気が向いたらな」

 未練がましそうな保坂を振り切って、指定されたバスへと向かう。
 車の前では、神原がせっせと受付表にペンを走らせていた。後ろから名簿を覗き込めば見知った名前が多い。恐らくバスは、部署ごとに分かれているのだろう。

「よう、神原。忙しそうだな」
「あ、篠崎先輩。おはようございます……って、なんですかそのスーツケースは。お揃いですか」

 掛け声に振り向いた神原が、俺と月島の姿を交互に見やって露骨にげんなりとした顔をする。
 二人で連れ立って現れた事にはもう何も言わないが、流石にお揃いのスーツケースは目に余ったようだ。
 その件については弁明の余地がないので軽く肩をすくめるだけに留める。

「……これに関しては俺も思うところはあるんだがな。いい加減諦めてきた」
「独り身の人間の前でいちゃつくのも大概にしてくださいよ」
「善処しよう」
「月島さん、もう少しだけでいいんで感情込めて言ってくれます?」

 ぞんざいな返事に神原が眉の溝を深める。
 一方の月島は意にも介さず、じっとりした目線を黙殺してバスに乗り込んでいった。

 月島の話によれば、これから高速に乗って海岸沿いまで行くとのことだ。ここからだと二時間弱はかかるだろうか。
 ふぅんと生返事を返して、俺は早々に寝る体勢をとった。

「それじゃ、俺はもう一眠りさせてもらうわ」
「ああ、おやすみ」

 腕を組んで目を瞑ったところで、強烈な睡魔に襲われる。やはり昨日は寝るのが遅すぎたのだ。
 深く沈み込んでいくような感覚に身を任せていると、ふわりと温もりに包まれる。薄目を開けて確認すれば、月島が自分のジャケットをかけてくれたようだ。
 鼻腔を掠めた月島の匂いと、まだ残る体温をこそばゆく思いながら、俺はゆっくりと眠りに落ちていった。

 ◆

「う、んん……」

 軋むような首の痛みで目が覚める。
 一瞬自分が何処にいるのか分からなくなったが、月島と目が合ったところでバスの中に居ることを思い出し、緩みかけた口元を慌てて引き締めた。

「そろそろ目的地に着くぞ」

 月島の言葉に釣られて窓の外を見やると、もうバスは高速を降りて街中を走っていた。
 家々の向こう側には時折海が見える。
 寝ぼけた頭で窓の外を眺めていると、やがてバスは街中を抜け、きらきらと光る海が一面に広がった。
 都会では見られない雄大な風景に心が躍る。

「おお。久々に見たわ、海」
「この辺はよくドライブに来ているんじゃないのか?」
「俺が走りに行くのはもっぱら山なんだよ。たまに海沿いを通っても夜のことが多くてな」
「ほう、そうなのか」

 当然のように趣味を把握されていることについては、一々ツッコんでいられない。まったく誰から聞きこんできたのやら。
 しれっとした顔をしているが、恐らく今の発言も月島の脳内に刻み込まれたことだろう。月島ばかりが俺のことを一方的に知っているというのも不公平ではないだろうか。
 俺は何だか悔しい気持ちになって、月島へと詰め寄った。

「お前は休みの日に何をしてるんだ? 趣味とか無いのかよ」

 俺の問いに月島は少し驚いた素振りを見せる。思えば、俺の方から月島のプライベートに立ち入るのは珍しいかもしれない。
 興味を持たれたことが嬉しいのか、月島は綻ぶ口元を手で隠しながら語り始めた。

「実は鉱物を集めるのが趣味でね。暇を見つけては店に寄ったり、博物館に見に行ったりしているよ」

 そう言って月島は、財布の中からいくつかのカードを取り出した。聞けば、鉱物専門店の会員証らしい。結構熱烈なマニアのようだ。


「何と言うか……似合うな」

 この男に収集癖があると知って深く納得してしまう。  
 やけに感慨深く頷く俺を、月島が不審そうに眺める。そんな月島の視線から逃げるように目を反らして話を続けた。

「鉱物って、例えばどんな物を集めているんだ?」
「君も知っていそうなものだと、水晶やアメジスト、ルビーやオパールなどがあるな」
「ああ、そのくらいなら聞いたことがあるぞ」

 鉱物と聞いてもイメージが掴めなかったが、聞き馴染みのある宝石の名が出てきて納得する。顎に手を当てて想像を膨らませる俺を見て、月島が小さく笑った。

「きっと、君のイメージしている姿とは違うよ。基本的には原石を集めているんだ」
「原石か。確かに想像付かないな」
「近いうちに見せてあげよう。素のままの鉱物たちはどれも個性があって魅力的でね」

 鉱物の魅力を熱く語る月島は無邪気に目を輝かせている。その姿はまるでお気に入りのおもちゃを自慢する子どもの様で、微笑ましいとすら思う。

 ふと、そんな俺の考えを察知したのだろうか。月島が僅かに赤らみながら口を閉ざした。
 真一文字に唇を結んで黙ってしまったのを宥めて、質問を重ねる。

「ちなみに、一番好きなヤツってのはどんな名前なんだ?」
「……そうだな。プルースタイトという石があるんだ。指の先ほどの小さな原石だが、深い紅色をしていてね。惹き込まれるような美しさがあるんだよ。ゆっくり眺めていられないのが玉に瑕だがね」
「見ていたら駄目なのか?」
「ああ、光に当たっていると黒ずんでしまうんだ。だから普段は箱にしまって大切に保管しているんだよ」

 そこで月島が言葉を切って、俺をじいっと見つめる。

「私は元来、大切なものは大事に囲って仕舞っておきたいタイプだから気にしないのだけれどもね。そんな繊細で我儘な気質も好んでいるよ」

「……。石の話だよな?」
「ああ。もちろん、そうだとも」

 鷹揚に頷いているが、ちっともそうとは思えなかった。俺の勘違いと切り捨てるには目が本気過ぎる。
 しかし、あまり反応し過ぎるのも自意識過剰なような気がして、俺は結局口を閉ざした。せいぜい監禁……いや、大事に囲って仕舞いこまれてしまわないよう気を付けるとしよう。


 幹事の先導で少し街中を歩き、目的の食堂へと向かう。道中は観光地らしくお土産屋でひしめき合っていた。様々な魚の干物や粕漬けなどが売られており、ついつい目を奪われてしまう。 

「おい、あまりふらふらしていると危ないぞ」
「……む」

 不意に自転車が飛び出してきて、危うくぶつかりそうになる。
 月島に腰を抱き寄せられたことで難は逃れたが、代わりに背後で黄色い悲鳴が上がった。……今自分がどんな目で見られているのかは、恐ろしくて確認出来ない。

 堪らず離れようと腕を突っ張るが、月島は一向に手を放そうとしなかった。

「ばか、放せよ」
「いやなに、君に見惚れている女性がいたので少々見せ付けておこうと思ってな」
「お前を見てたのかもしれないだろ!」

 文句を言っても聞きやしないので、ぐるりと回って無理矢理手を引き剥がす。いくら何でも、こんな大衆の前でべたべたするのは御免だった。
 非難を込めて睨み付けるが、向こうはまるで悪びれない。それどころか楽しんでいる節すらある。

「そんな顔で睨んでも可愛らしいだけだぞ?」
「お前…………ッぐ」

 必死になって噛みついても滑稽さが増すだけで何も響かない気がして、泣く泣く言葉を飲み込む。開き直ったバカは無敵だ。この旅行、先が思いやられて仕方がない。
 せめてもの反抗に、月島から少し距離を取って後に続く。
 薄ら笑いを浮かべて振り返ってくる月島を軽く小突きながら歩いていると、程なくして一軒の食堂へと辿り着いた。

 和風な趣をした店の入り口には、美味そうな魚介類の写真を掲げた看板が立てかけられている。広々とした店内の壁には、メニューに交じって魚拓や有名人のサインなどが飾られていた。どちらもあまり興味がないので、魚の種類もサインの書き手もよく分からなかったが。
 一方、月島は席に座った後も興味深そうに魚拓を眺めていた。

 そういえば、前に猫宮と月島が話しているところに遭遇した際、魚の話をしていたような気がする。結構、詳しかったりするのだろうか。
 他愛のないことを考えていると、その猫宮が店へと入ってきた。
 すかさず月島が呼び止め、席へと加える。

「カズ、こちらだ」
「お、亮介。楽しんでるなぁ」

 猫宮は月島の姿を目にすると同時に苦笑を浮かべた。今日の月島は、幼馴染の目から見ても浮かれているように見えるらしい。
 その後も続々と入店してくる人の群れの中から神原と保坂を迎え入れ、労いの言葉をかけた。

「よう幹事、お疲れさん」
「いやぁ本当に疲れました。と言っても、僕より保坂さんの方が大変そうですけど」
「俺は……広報課の宿命だからな、仕方ないさ」

 そう言いながら保坂は一眼レフを掲げる。
 社報に載せるために今回の旅行写真をいくつか撮っているらしい。重い荷物を抱えて御苦労様なことである。
 仕事熱心な様に感心していると、保坂がカメラを構えて俺の方へと向けた。

「お前たちの写真も撮ってやるよ、ほら」
「え、俺は――」
「よろしく頼む」

 反対する暇もなく月島に肩を抱かれ、シャッターを切られる。
 すると、写真の仕上がりを確認した保坂が、驚きと呆れの入り混じった表情で呟いた。

「お前達……こんな顔もするんだな」
「……うっ」

 見せてもらった液晶画面の中には、実に幸せそうな表情の月島と、口の緩みが抑えきれていない俺の姿が写っていた。

 それを見て激しく衝撃を受ける。自分ではもっと真顔を貫いているつもりだったというのに。これでは、神原に白い目で見られてしまうのも無理はない。
 俺の動揺を悟ったのか、神原がやっと気付いたのかと言わんばかりの顔で言う。

「月島さんの豹変ぶりに隠れてますけど、篠崎先輩も大概ですからね」
「……以後気を付ける」
「気を付けてしまうのか? もったいない」

 ふてぶてしく呟いた月島には、容赦なく肘を捻じ込んでおく。

「遅い青春が来たものだな」
「そうだろう?」
「どこがだ」

 猫宮はしみじみ頷いているが、セフレから始まる青春などあってたまるか。そう胸中だけで呟いて、動揺を誤魔化すようにメニュー表を手に取った。
 そんな青臭い年ごろでもないハズだ、俺は。

 周囲の冷やかしを無言で受け流していると、ふと保坂が何かに気付いた様子で立ち上がった。

「おっと、挨拶が始まったから写真を撮ってくる」
「おお、行ってら」

 どうやらいつの間にか上役の挨拶が始まっていたようだ。
 俺たちも無駄話はやめ、とりあえず表面上は聞く姿勢を取った。とはいえ、みんな視線はメニュー表の上に固定されているのだが。
 その後、乾杯を済ませ、届いた品に各々舌鼓を打つ。俺は海鮮丼を頼んだのだが、具材はどれも新鮮で美味しく、上機嫌で箸を進めた。

「……む」

 食事を進めるうちに醤油を切らしてしまい、卓上を見回す。月島の向こう側にあるのを見て、いつもの調子で声をかけた。

「なあ」
「ん」

 要件を言う前に醤油を渡され、俺も当然のように受け取る。

「篠崎君、こちらの煮つけも一口食べてみないか。なかなか美味いぞ」
「マジか」

 そういって差し出された金目鯛の煮つけを、遠慮なくいただく。
 柔らかい身に旨味がよく染み込んでいて、こちらも食が進みそうだった。今度晩御飯の献立に取り入れてみようか。

「良い味してるな。今度俺も作ってみるよ」
「楽しみにしている。君の料理はいつも美味しいからな」
「褒めても何も出ないぞ」

 口ではそう言いつつも満更でもなく、月島と目が合った瞬間に思わず微笑みが漏れる。 煮つけの余韻に浸りながらレシピを考えていると、神原が遠慮がちに声をかけて来た。

「あの……お二人さん。独り身の人間と公衆の面前なんで、新婚オーラを垂れ流すのは程々にしてもらえます?」
「何の話だ?」
「無自覚ですかぁ……」

 呆れたように天井を仰ぐ神原を、同じく独り身の保坂が背中を叩いて慰める。
 俺と月島は同時に顔を見合わせて首を傾げた。そんなにおかしなことをしていただろうか。心当たりが全く無い。
 考え込む俺たちを、神原は諦観した目で見つめていた。

「それが自然体なんでしたら、もう何も言いません……どうぞ続けてください」

 勝手に匙を投げられ、釈然としない気分になりながらも食事を続ける。「僕も彼女が欲しいなぁ」とぼやく神原に、保坂が同調して頷いていた。
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