婚約者の心の声を知りたいと流れ星に願ったら叶ってしまった

仲室日月奈

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 紺碧の夜空に無数の星々が流れ落ちていく。
 突然現れた神秘的な流星群に、あちこちから歓声が上がる。珍しい光景にバルコニーから身を乗り出す貴族もいる中、レティシアは自分の婚約者をちらりと見上げた。
 高い鼻梁と薄い唇、涼しげな目元はまるで彫刻のよう。整った美貌はさすが三大公爵家の次男だ。今夜は王家主催の舞踏会ということで、ダークブラウンの前髪は後ろに流している。そしてサファイアと同じ色彩の瞳は、王家に近い血脈の証しでもある。
 だが今、その美しい瞳は何の感情も映していないように見えた。
 それもそのはず——レティシアの婚約者はあの「寡黙の貴公子」なのだから。

(エリオル様の性格はわかっていたつもりでしたが、この美しい景色を見ても表情がまったく変わらないなんて……感情をどこかに置き忘れてしまったのでしょうか?)

 仮にも婚約者に対して失礼なことを考えつつ、レティシアは控えめな笑みの下で物思いにふけった。
 エリオル・グラージュといえば、文武両道、眉目秀麗な青年として有名だ。
 社交的な兄とは正反対で、どんな美女が話しかけても興味がなさそうに無表情を貫き、必要最低限の会話しかしない。
 けれど、その見目麗しい外見は令嬢たちの心をつかみ、クールなところがいいと人気だ。顔がいいと欠点まで美点に変わるらしい。とはいえ、人を近寄せないオーラは健在のため、貴族令嬢からは鑑賞用として遠巻きに見られている。
 一年前まではレティシアもそのうちの一人だった。
 国境を守る辺境伯の跡取りとして、三大公爵家から婿養子を取ることになったとき、エリオルが選ばれた。レティシアと年齢が近く、婚約者もいなかったことから、グラージュ公爵も二つ返事で了承したと聞いている。

(婚約者としてエスコートもしてくださいますが、いつも会話が続かなくて無言が続くのですよね。このままでは結婚生活にも支障がありそうですし、せめて心の声でもわかればいいのですけれど……あ。そういえば、昔読んだ絵本に流れ星は願い事を叶えてくれるって書いてあったような……?)

 レティシアは無言を貫く婚約者を一瞥し、流星群に視線を戻す。
 そっと両手を組み、目を伏せた。

(少しの間でいいのです。わたくしにエリオル様の心の声を聞かせてください……って、これで願いが叶えば苦労しませんよね……)

 翠玉の瞳を開くと、聞き覚えのある声が頭の中で響いた。

《私の婚約者は相変わらず美しい。祈る姿は聖女のようだ……ここに画家を呼びたいな》

 低めの落ち着いた声音は、エリオルの声と酷似していた。
 勢いよく横を振り向いたが、婚約者の口は引き結ばれたままだった。聞き間違いかと首を傾げると、再び声が聞こえてきた。

《急に振り返ってどうしたのだろう。見たところ、異常は何もないようだが……。それにしても本当にここまで星が降る夜も珍しい。これほど素敵な夜をレティシアとともに過ごせるなんて感無量だ。今夜の思い出を私は生涯忘れることはないだろう》

 神様、大変です。本当に願い事が叶ってしまったようです。

   ◆◇◆

 婚約者の心の声が聞こえる、という不思議体験は一日だけではなかった。
 彼と会うたびに、レティシアは婚約者の意外な胸中を知っては驚く日々を過ごしていた。何度か検証したところ、どうやら一定の範囲内にいれば声が届くらしい。
 教師からの頼まれ事を終わらせたレティシアは、ふと足を止めた。歩いている先に婚約者の後ろ姿が見えたからだ。挨拶をすべきかすまいか悩んでいると、エリオルのつぶやきが聞こえてきた。

《今日はレティシアをまだ見かけていないな。だが偶然を装って会うのも限度があるか……。運よく会ったところで緊張して会話も満足にできないだろうし、我慢するしかない。いや待て、もう数日も会えていない。なんとか一目だけでも……》

 婚約者の心の葛藤が脳内で直接再生され、戸惑わない人はいないだろう。
 エリオルと会う回数が多いのは彼が生徒会長だからだと思っていたし、心の声と表情がまったく一致していないので、すぐに信じられるはずもなかった。
 そもそも他人の声が聞こえるなんて荒唐無稽な話だ。誰かに相談したとしても、空想癖があると思われるのがオチだ。
 それに、どう反応を返すのが正解かもわからない。

(……ここは一時撤退と参りましょう)

 幸い、まだ向こうには気づかれていない。今のうちだと、そろりそろりと後退する。
 だがレティシアを追い越した男子生徒たちが騒ぎながら廊下を駆けていったせいで、エリオルがこちらを振り向いた。
 青く透明なサファイアの中に、レティシアの姿が映し出される。
 迷ったのは一瞬。動揺を悟られないよう、淑女の仮面を被って無理やり口角を上げる。いつも通りを意識して口を開いた。

「ご、ごきげんよう。エリオル様」
「……ああ」
「…………」
「…………」
「…………ええと、では失礼しますね」

 長い沈黙に耐えかねて廊下の端まで走り、柱の陰に隠れた。
 ここには淑女らしくない行動を諫めるメイドもいない。学び舎の下で生徒は皆、平等の立場だ。何よりエリオルは身分を振りかざすような真似はしない。
 そう頭ではわかっているが、会うたびに婚約者の思わぬ本音を聞かされる身としては、正直たまったものではない。

《レティシアの笑顔は癒やされる。もっと見ていたい。大好きだ》
《……今日もレティシアが最高に可愛い。彼女と出会わせてくれた神に感謝を捧げよう》
《世界で一番、レティシアを愛しているのは私だ》

 一週間で浴びた言葉を思い返すだけで、悶絶しそうになる。
 そこへ追い打ちをかけるように、エリオルの声が脳内に響く。

《ふ、不意打ちは心臓によくないな……息が止まるかと思った。レティシアは日に日に美しさに磨きがかかっている。見るだけで心が浄化されるようだ。ああ、これで数日は頑張れる》

 楽しげな余韻を残して、声の主は去っていく。
 一方、恋愛経験の乏しいレティシアは教科書とノートで顔を覆っていた。
 手鏡を見なくてもわかる。きっと今、自分の頬は桃のように色づいているに違いない。

   ◆◇◆

 レティシアとエリオルの婚約は、政略結婚によるものだ。
 家同士の契約のため、本人の意思は関係ない。相手が好きであろうとなかろうと、結婚から逃れることはできない。
 婚約当初は公爵家のお招きに心躍らせたものだが、そこにいたのは寡黙の貴公子だった。
 弾まない会話。動かない表情。これでは親睦が深められるはずもない。
 贈り物はこまめに届いていたが、婚約者の義務を果たしているだけだと思っていた。けれど、それは違っていたのだと最近になって知った。
 エリオルは従者に任せるのではなく、花言葉やレティシアが好む色を調べ、自ら贈り物を手配してくれていたのだ。婚約者が、自分のために一時間以上かけて真剣に悩んでくれたと知って、喜ばない人はいない。
 形だけの婚約者ならば、ここまでの気配りをする必要はない。
 大事にされていると実感するには十分すぎるほどだった。しかし、これまで気づかずにいた彼の優しさを知れば知るほど、罪悪感も膨れ上がっていく。
 誰だって、まさか婚約者に本音が筒抜けとは思うまい。
 エリオルに非はない。だからこそ、心の声には絶対に返事をしてはならないのだ。
 もし逆の立場だったら。考えるだけでも恐ろしい。もはや悪夢に近い。

(不可抗力とはいえ、わたくしがしているのは、胸の内に隠している本音を暴いているのも同じこと。ならば、聞かなかったふりをするのが優しさ……でしょうね。聞こえないふり、聞こえないふりです……)

 必死に自分に言い聞かせ、夜空に浮かぶ満月を見上げる。
 今夜は星々の光が霞むぐらいに、ひときわ白く輝きを放っていた。
 月明かりが照らす庭をエリオルと二人で歩く。公爵令息のパートナーとして夜会で最低限こなさなければならない挨拶は終わった。招待客の大半はまだ舞踏会の会場だろう。
 意図せず婚約者の本音を聞いてしまう状況に白旗を揚げ、夜風にあたりに行くと伝えたら、エリオルが同行を申し出た。これでは意味がない。だが断るのも角が立つ。そして現在、仕方なしに貸し切り状態の庭を二人きりで散策している。
 喧噪から離れ、外は静かだ。

(ん? 静か……? そういえば、さっきからエリオル様の心の声が聞こえませんね?)

 一瞥すると、エリオルは相変わらずの無表情だった。
 この状態で婚約者の気持ちを推し量ることは困難を極める。レティシアは早々に諦めた。静かであるなら、こちらは問題ない。
 木の葉がそよ風で擦れた音、夜に活動する鳥の羽ばたき、湿気を含んだ風。昼間の庭と景色は変わらないはずなのに、ほとんどの色彩が薄闇に染まっているせいで、まるで別世界にいるような錯覚を覚える。
 いつまでも続くかと思われた静寂の時間は、ふと途切れた。
 ガシャン!と窓硝子が割れる音がした後、悲鳴と叫び声がした。エリオルと足早に声のほうへ向かうと、ヒュッと影が動いた。何かがすごい速さで近づいてくる。
 黒服の男だ。武装しているらしく、右手から銀の刃が閃いた。夜会主催者である伯爵家は資産家として有名だ。鉱山で得た富で豪勢な暮らしをしており、本邸の中には大小さまざまな宝石や貴金属を飾った部屋があると聞く。
 そして怪しい人物が、後ろを何度か振り向く様子から導き出される答えは、ひとつ。

(泥棒さんですわね……!? 勝手に敷地内に侵入した挙げ句、盗みを働くとは!)

 一歩前に出たエリオルが腕を広げ、レティシアの身を隠す。
 それが自分を守ろうとする行動だと頭では理解できても、体に染みついた習慣とは恐ろしいもので、無意識に体が動く。エリオルの腕の下をくぐり抜け、サッと賊との距離を詰める。
 レティシアの今宵の装いは、有事の際に動きやすいようにボリュームを最大限抑えた特注品だ。ドレスの下は補正下着ではなく、大きなフリルが重なったもので代用し、ワンピースのように身軽に動ける作りにしてある。
 眼前に迫るナイフの刃を寸前で避け、犯人の後ろに回り込んだ。
 悪者に情けは無用。足払いをかけて相手が体勢を崩した瞬間を狙い、手首をひねり上げ、壁際までぶんっと投げ飛ばした。
 その物音で「なにか音がしたぞ!」「あっちだ!」という声が遠くから聞こえた。
 警備兵と野次馬が集まってくる気配を感じ、反射的に振り返る。すると、そこには目を見開いた状態のエリオルがいた。
 そこでようやくレティシアは我に返った。

(ああ、お父様。約束を守れなくてごめんなさい……!)

 今まで淑やかな令嬢らしく心がけていたのに、なんたる失態。
 どう取り繕っても、普通の令嬢としてあるまじき行動だ。さあっと血の気が引く。

(ど、どうしましょう……。結婚するまでは、おとなしくしているようにと厳重注意されていましたのに。こんな女、引かれるに決まっています)

 国境を守る辺境伯の娘として、レティシアは小さい頃から護身術をたたき込まれている。
 地域の特性上、不法入国者や国外逃亡を図る犯罪者を取り締まることも多く、ライセットの領民は自分の身は自分で守れるように教育を受ける。
 特に外国との玄関口である港町で商売する者は、世間話をしながら笑顔で犯人を懲らしめていくことで有名だ。なんとも誇らしい領民である。
 だが、普通の令嬢は自分で馬を駆けることはしない。本来守られる立場なのに護衛を差し置いて、悪漢を一人で懲らしめることもしない。まして、可憐な容姿で相手が油断することを見越した上で、怖がるふりをして敵を罠にはめようとは考えない。そして、細腕とは思えない握力で敵を圧倒し、時には回し蹴りで成敗するなんて――。

(言い訳は……見苦しいですね。でも一体、どうしたら……?)

 無言で見つめ合う状態は、恋のドキドキというよりも、獰猛な野生動物と遭遇してしまったドキドキに近い。やがて長い沈黙を破ったのはエリオルだった。

「……怪我は」
「ございません」

 即答すると、エリオルは無言で頷いた。そして、おもむろに手を差し出してきた。
 内心首を傾げつつ、その手に自分の手を載せる。

「片付けは警備の者に任せよう」

 その意見には大賛成である。事情聴取などされようものなら、あっという間に噂好きの貴族の話のネタにされるに決まっている。レティシアたちは、その場をそそくさと後にした。
 帰りの馬車で揺られる中、ふと、その声は聞こえてきた。

《ここまで歩くのも支障なさそうだったし、怪我がなさそうで本当によかった。念のため、彼女のメイドに数日は気をつけてもらうように伝えておくか。……とはいえ、さすがはライセット辺境伯のご令嬢だ。護身術も見事だった。ならず者を捕らえる俊敏さは見習いたい。私も負けてはいられないな。結婚すれば二人で領地を守ることになる。実に頼もしいことだ》

 意外な反応にレティシアは目を丸くさせた。
 普通であれば、女は守られる立場だ。留守中の家を切り盛りし、戦地からは遠ざけられる。それなのに、彼は共に戦うのが当然だと考えている。

(わたくしの行動を非難しない方は、エリオル様ぐらいでしょう。もしこの方から愛想を尽かされてしまったら生きていけないかもしれません……)

 今までの頑張りを認めてもらえた気がして、レティシアは泣きそうになった。
 税を領民に還元せずに私腹を肥やしている中央貴族とは違い、国境に領地を構えるライセット家では考え方がまったく違う。
 内外にも示しがつく武力を正しく使ってこそ、平和が保たれる。
 戦いが起こったとき、まず犠牲になるのはライセットの領民だ。傷つくのは訓練された正規の兵士だけではない。徴兵された農民や留守を預かる妻子も含まれる。
 資源不足な隣国は、穀物が豊かな領地を狙っている。これまでに何度も国境付近で小競り合いが起きているのがその証拠だ。
 一見のどかな日常の裏では、いつも隣国の脅威にさらされている。
 もし戦場になれば、常に死と隣り合わせの生活になる。それを阻止するため、ライセットでは定期的に大規模な軍事演習を行っている。強さや練度を示すことで、抑止力につなげるためだ。

《いつか、本気の彼女とも手合わせしてみたいものだ……》

 冗談ではなく本心からの言葉だ。彼は性別に関わらず、対等に扱ってくれる。
 ここ最近の賛辞で、一番ときめいた気がした。

   ◆◇◆

《夕焼けに照らされると、レティシアの金髪は赤みが増して神々しいな。ふわふわと揺れる様子は見ていて飽きない。きっと絹糸のように滑らかに違いない。もし彼女の髪に触れたら嫌がられるだろうか……》
《君のほうが絶対に可愛い》
《こんなにも強くて美しい令嬢が私の婚約者だなんて夢のようだ。明日起きたら夢から覚めてしまうのでは?》

 毎回これだけ好意を向けられれば、そろそろ耐性がつくのではと思っていたが、考えが甘かった。無自覚のアプローチはどんどん美化された内容になり、うっかり否定しそうになる場面が何度もあった。
 微笑みをキープしながら聞こえないふりをするのも限界があり、レティシアは学園北棟の図書室に逃げ込むことが増えていた。
 エリオルの本音は威力がありすぎて、正直なところ、心臓がいくつあっても足りない。
 直接顔を合わせなくても近くにいるだけで心の声が聞こえてくるため、物理的に距離を取るしかなかったのだ。

(とはいえ、顔を見るたびに逃げ出すなんて、婚約者としても人としても失礼ですよね……。心の広いエリオル様はわたくしの非礼な態度を咎めることはありませんが、いつまでも逃げ回っているわけにもいきませんし……どうしましょう)

 エリオルのことを考えるだけで、心がそわそわして落ち着かない。
 露骨に避けている婚約者をどう思っているだろうか。不信感が積み重なっている頃合いかもしれない。だが普通にしようと思えば思うほど、ぎくしゃくとしてしまう。

(うう……婚約者の適切な距離感がわからなくなってしまいました。辺境伯の娘として何事にも動じないように心を鍛えたつもりでしたけど、不甲斐ない限りです……)

 試験前は利用者が増えるが、それ以外の図書室は閑散としている。
 時折ページが繰られる音が聞こえてくるぐらいで、足音も毛足の長い絨毯に吸い込まれていく。この神聖な空間に、読書を邪魔する者などいない。
 レティシアはため息を飲み込んで、他の利用者の迷惑にならないよう、物音を立てないよう慎重に本棚から目当ての本を抜き出す。読み途中だった革張りの装丁が美しい本を両手で抱え、奥のキャレルに向かった。
 お気に入りの場所は今日も空席だった。
 飴色のテーブルに本をそっと置き、窓の外を見やる。
 縦長の窓から差し込む光は大木の葉が遮ってくれているため、室内に入り込む光量はぐっと少ない。青空に届きそうなほど枝葉を伸ばした欅の向こうには、綿菓子のような雲。先日は枝にちょこんと小鳥が数羽並び、時折小首を傾げて羽を休む姿に癒やされた。
 何気なくそのまま視線を下に向けると、視界の端にダークブラウンの髪が見えた。
 遠目でもわかる。レティシアが婚約者の姿を見間違うわけがない。
 とそこに、上背のある男子生徒を追いかけるように、女子生徒が小走りで近づいていく。

(あの桃色の髪は……もしかして男爵家養女のバルバラ様? なぜエリオル様が彼女と……?)

 人目を忍んで会っている理由がわからず、二人の様子を見守る。
 一定の距離を保ちながら話しているようだが、ここからでは彼らの表情がわからない。
 三階にいるレティシアと地上にいるエリオルでは距離が離れすぎているらしく、彼の声を拾うこともできない。
 話している内容を知りたい思いと、知りたくない思いがぶつかり合う。
 もどかしい思いで彼らの動向を見守っていると、不意にバルバラがエリオルに抱きついた。二人の影が重なり合う。
 それ以上は見ていられなくて、レティシアはバッと背を向けた。
 心がざわつく。見てはいけないものを見てしまったような気分で、落ち着かない。
 不安はさざ波のように広がっていくばかりだ。

(どうして……? エリオル様の婚約者はわたくしなのに……)

 そのとき、唐突に感情の正体がわかった。これは嫉妬だ。
 エリオルの本音を知る前は、自分は恋愛には淡泊な性格だと思っていた。恋愛小説を読んでも心が揺れ動くことは少なく、婚約者のことで心乱される日が来るなんて露ほども想像していなかった。けれどもう、認めるしかない。
 レティシアにとって、エリオルはとっくに特別な存在になっている。
 それこそ、バルバラに取られたくないと強く思うぐらいには。

(明日、エリオル様に会って確かめましょう。心の声が聞こえるのですもの。もし誤魔化そうとすればすぐにわかります)

 自分に言い聞かせ、先ほどの光景を頭から振り払うように首を横に振る。
 その日は流星群が降った夜から数えて、ちょうど三ヶ月後。
 魔法の効果が切れたように、いくら念じても婚約者の心の声は聞こえなくなった。

   ◆◇◆

 それは秘密の逢瀬を目撃してから十日後のことだった。
 内密に話がしたい、と従僕を通してエリオルから面会の申し出があった。放課後、レティシアは学園内の最上級生が使える談話室の一室に向かった。
 エリオルはいつもの無表情で出迎え、扉をノックしたレティシアの手を恭しく取った。
 貸し切りにしているのか、指定された談話室には婚約者以外の姿はない。そのまま紳士的にエスコートされて奥のソファまで案内される。エリオルは真向かいの席に静かに座った。
 猫足の白テーブルには、温められたティーポットと茶器、スコーンとクロッテッドクリーム、ブルーベリージャムなどが用意されている。

「…………」
「………………」

 この沈黙も懐かしい。
 エリオルは口を閉じたまま、お茶の準備を始めた。
 王立学園に通う生徒は身分に関係なく、自分のことは自分でするルールだ。しかし、何事にも例外というものはある。
 たとえば学園に多額の寄付をしている上級貴族は、円滑な学園運営に貢献しているという功績から給仕用の従僕がついている。昼食時や放課後の談話室でお茶会をする際には、使用人の手を借りるのが普通だ。
 公爵家令息ともなれば給仕用の従僕にすべて任せるものだが、学園内の人目につかない場所に限り、エリオルは時々こうしてレティシアにお茶を振る舞ってくれる。
 心の声で知ったことだが、エリオルは二歳年下のレティシアが入学する際に、公爵家で茶葉の扱い方について猛練習したらしい。産地ごと茶葉の種類を飲み比べ、ミルクが合う茶葉などの基礎知識を学んだ彼は、さらに独自の配分を研究したようだ。
 執事直伝の紅茶の淹れ方は洗練され、今ではすっかり手慣れたものだ。

(最初は公爵家の方になんて恐れ多いのでしょうと思っていましたが、慣れとは怖いものですね……。残念ながら、わたくしにお茶を淹れる才能はなかったので、お礼を言うことしかできないのがもどかしいですけれど……)

 人には得手不得手がある。前に手伝いを申し出たところ、相当手つきが危うかったようで、火傷をしてはいけないからと即座に取り上げられた。
 砂時計で蒸らし時間を正確に計る作業は、どう考えても研究熱心なエリオルのほうが向いている。その日以来、レティシアはおとなしく座って待つのが仕事だ。
 ちょうどいい時間になったのだろう。
 ティーカップに砂糖漬けにされたオレンジを入れ、ティーストレーナーで茶殻を丁寧に漉しながら、茶葉が入ったポットから紅茶が注がれていく。
 ふわりと柑橘系の香りがしたかと思えば、輪切りにされたオレンジが取り出される。渋みが出る前に救出したのだろう。納得していると、今度は琥珀色の蜂蜜が垂らされていく。

(ああ、なんてこと。蜂蜜の瓶にあるのは王室御用達のラベルではありませんか……こんな贅沢をしてよいのでしょうか……)

 紅茶とオレンジだけでも心惹かれる組み合わせだというのに、高級蜂蜜まで加わったら。
 窓から差し込む陽光で、とろみがある蜂蜜がきらきらと輝く。
 エリオルはスプーンで軽く混ぜ合わせた後、レティシアの前にティーカップをそっと置いた。白磁のティーカップの中には大輪の花が描かれている。澄み切った紅い色に染まった花を見下ろし、レティシアは最大級の感謝の言葉を述べた。

「いつもありがとうございます。手際も素晴らしく……本日の紅茶は飲むのがもったいないぐらいです」
「……レティシアのために作ったから……」
「もちろん、いただきます。残すなんてもったいない真似はできません。わたくしのために作ってくださって本当にありがとうございます。……まあ、素晴らしい香りですね」

 波形のティーカップをソーサーごと持ち上げ、爽やかなオレンジの香りを堪能してから一口飲む。レティシアが好んでいる南部産のブレンド茶葉だ。蜂蜜のほどよい甘みを足したことで、喉にも優しい味になっている。
 飲むたびに、じんわり心が満たされていく。
 ほっと息をつくと、エリオルが安心したように自分の紅茶を口にした。その様子をしばらく眺め、レティシアはソーサーをテーブルに戻した。
 もとより会話が苦手な彼のことだ。余計な前置きはいらない。早速、本題に入ることにした。

「ところで、本日のご用件をお伺いしても?」
「…………」
「学園内でしか話せない、大切なお話があるのですよね。お聞かせくださいませ」
「……………………」
「さあ、どうぞ。遠慮なさらず」

 たたみかけるように言うと、エリオルはやっと口を開いた。

「レティシアさえよければ……その、婚約を解消しようと思っている」
「……っ……!?」

 衝撃のあまり、そのまま凍り付く。
 この部屋に入ってきたときから嫌な予感はしていた。しかしながら、これは想定外だ。いくらなんでも展開が速すぎる。あのエリオルがこうも簡単にレティシアとの縁を切るなんて、にわかには信じられなかった。
 
(……婚約……解消……?)

 二つの単語が頭の中をぐるぐると回る。
 先ほどから心臓の音が激しくなっているのがわかる。喉の奥が干上がる感覚がして、息が苦しい。予想外の提案に、脳が理解を拒んでいる。
 今のレティシアに貴族らしく取り繕う余裕はなく、声が震えてしまう。

「何か……至らぬことがあったでしょうか……?」
「いや、それはこちらのほうだ。何の面白みもない私では、君の夫にふさわしくない。ただそれだけだ」
「……え……?」
「バルバラ嬢に幸せにできないなら婚約破棄するべきだと諭されたんだ。……正直、身に覚えがありすぎた。口数も少ない、無表情の男なんて誰も好きにならない。このままでは君を不幸な花嫁にしてしまう。だから……」

 エリオルが言葉を選びながら説明していたが、レティシアの耳には入ってこなかった。
 男爵令嬢バルバラ。彼女は複数の貴族令息に取り入っていると、もっぱらの噂だ。移り気の多いバルバラは婚約者がいる男にも甘えた声ですり寄り、あちこちで女子生徒の反感を買っている。
 あのとき、人目を忍んでエリオルに囁いたのも善意からの言葉ではないだろう。

(わたくしは……愚かですね……。エリオル様から好意を向けられていると知って嬉しかったのに、何一つ気持ちを伝えてこなかったのですから。誤解されるのも当然です)

 バルバラとの密会を目撃しても、頭のどこかでエリオルは自分を裏切らないと信じていた。彼は決して他の女性になびかないだろう、という確信があった。そのぐらい自惚れていた。
 だが現実は違った。
 エリオルはバルバラの思惑の通り、レティシアと離れる道を選んだ。
 婚約者の心の声を知らない過去の自分なら、この話を受け入れただろう。けれど、今のレティシアには到底受け入れがたい言葉だった。

「つまり婚約解消の話は、わたくしのことが嫌いになったから、ではないのですね……?」
「あ、ああ。もちろんだ。君には何の落ち度もない。婚約を白紙に戻しても、レティシアに瑕疵がないように取り計らうつもりだ」
「…………」
「今まで君にはつらい思いをさせた。一年もの間、君の大事な時間を奪ってしまって申し訳ない。本当なら君の横には私ではなく、もっとふさわしい男が」

 言葉の続きが容易に想像できてしまって、レティシアはわざと言葉を被せた。

「エリオル様! あなたは何も悪くありません。だからもう、それ以上謝るのはおやめください。わたくしは謝罪など求めていません。それに婚約破棄に応じるつもりもありませんから」
「…………よく考えてくれ。私は君にふさわしくない」
「無言の時間がつらい時期も確かにありました。けれども今は違います。言葉に表さなくても、エリオル様はわたくしを大事にしてくださっているでしょう? わたくしはどれだけ自分が愛されているか、もう知っています。エリオル様の横が安らぎの場所なのです。どうかわたくしから大事な居場所を奪わないでくださいませ」
「…………」

 心の声はもう聞こえなくなってしまったが、心を読まなくても何を考えているかはわかる。
 だって、レティシアの婚約者は他人を思いやれる優しい人だから。
 相手の幸せを願うからこそ、身を引く決意をしたのだろう。エリオルはそういう人だ。

「自分で言うのもなんだが……私は口下手だ。気の利いた言葉も言えず、無言で他者を威圧するようなダメな男だ。そんな私の横で君が安らげるとは思えない」
「そうでしょうか? 受け取り方は十人十色。話し好きの方が誠実とも限りません。少なくとも、わたくしはこっそり小鳥にパンくずを与え、捨て猫の世話をまめまめしくできる人は、愛情深い方だと思っています」
「…………誰かから聞いたのか?」

 恐る恐るといった風に確認され、首を左右に振る。

「いいえ」
「では、どうやって……」

 彼が訝しむのも当然だ。
 だって、これは心の声が聞こえていたときに偶然知った話だ。
 いつも無言なのでわからなかったが、もともと小動物が好きなのだろう。そうでなければ、メイドに話しかけるのをためらい、こそこそと自分の朝食のパンを小鳥にあげたりしない。見なかったふりをすればいいのに、捨て猫に寝床と餌を与えるだけでなく、飼い主候補の身辺調査までする人もいない。
 加えて、ひなたぼっこに訪れた猫に恋愛相談をしていたなんて、きっと誰も想像しない。
 レティシアも最初知ったときは耳を疑ったのだから。

「ふふ。それは心を読んだからです」
「そうか、心を…………。こ、ここここ……こっ……!?」
「冗談ですよ。そう簡単に人の心が読めたら苦労はしません。相手の心が読めないから、人は対話を重ねますでしょう? 目を見て、表情から相手の本音を探る。それを繰り返して信頼を築き上げる。それに結婚すれば、長い時間を共に過ごすのです。仲を深める時間はたっぷりございますわ」
「…………本当にいいのか? 私を選んで」

 疑い深い眼差しに、レティシアは微笑んで頷く。

「エリオル様。わたくしはそのままのあなたがいいのです。無理に変わる必要はありませんわ。……あなたをお慕いしております。ずっと共に生きていく殿方はエリオル様以外に考えられません」

 想いが伝わったのだろうか。
 エリオルが驚いたように一度目を大きく開き、やがて口元を緩めた。そこには寡黙な貴公子ではなく、愛の告白にうろたえる年頃の青年がいた。
 心なしか耳が赤い気がする。宝石のように澄んだ青い瞳はさまざまな感情で揺れ動き、レティシアをまぶしそうに見つめた。

「ありがとう。君のような女性は初めてだ。……私をありのまま受け入れてくれて、とても嬉しく思う。これからは言葉で伝える努力をする。いや、伝えたいんだ。私の思いを知ってほしい。——レティシア」
「は、はい」
「今まで言えなかったが、心から君を愛しく思っている。レティシアが好きなんだ……っ。大好きだ」

 それは心の声ではなく、間違いなくエリオルの口から発せられた言葉だった。
 普通の令嬢ならば、長ったらしい花や女神に喩えた貴族特有の婉曲な表現にときめくのだろう。だが、レティシアは飾らないエリオルの言葉のほうが好ましく思えた。
 彼の真心が伝わってくるようで、心がほわほわとする。
 同じ気持ちを返したい。決意したレティシアは立ち上がり、彼が座るソファーの横に立つ。

「エリオル様。……お隣に座ってもよろしいでしょうか?」
「あ……ああ。どうぞ」

 真ん中に座っていたエリオルが端に寄ってくれる。
 失礼します、と一言かけて彼の横にちょこんと座った。今まで対面で座ることが多かったからか、横に並んで座るとそわそわしてしまう。
 一方のエリオルは目に見えて狼狽し、視線をさまよわせている。
 意識しているのは自分だけではないと思うと、不思議と肩から力が抜けた。
 レティシアは緊張で強ばっている婚約者の両手をそっと包み込み、初めて自分から距離を縮めた。舞踏会で踊るときの距離だ。

「わたくしも同じ気持ちです。ですから、もう二度とわたくしを手放そうとなさらないでくださいね」
「……約束する。もはや君を離すつもりはない。ずっと前から、私の心は君に夢中だ。この想いは生涯変わることはないだろう」
「ええ……よく存じています。わたくしの心もエリオル様のことでいっぱいですもの」
「君と想いが通じ合って本当に嬉しい。夢みたいだ。……どうか、ずっとそばにいてくれ。レティシアじゃなければダメなんだ」

 懇願するように言われ、胸がトクンと高鳴った。
 視線が交差する。熱を帯びた眼差しに、視線が縫い止められる。自分を求めてくれているのがわかる。彼が安心できるよう、レティシアはふわりと微笑んだ。

「はい。おそばにおります。これからも、ずっと」
「あ、ありがとう。その……抱きしめてもいいだろうか?」

 返事をする代わりに、レティシアはエリオルに抱きついた。
 最初こそ氷のようにカチコチに固まっていたが、しばらくすると戸惑いがちに背中に腕が回され、優しく抱き返される。
 心の声が聞こえていたときは、あんなにも騒ぎ立てていた心音は今は不思議と落ち着いている。エリオルから漂う、爽やかなシトラスとココナッツが合わさった香りのおかげだろうか。
 無言が続いても、心の声が聞こえなくなっても、もう不安に思うことはない。
 これからは彼が直接、言葉で教えてくれるから。

   ◆◇◆

 翌日、深紅と純白のアネモネが屋敷に届けられた。
 赤いアネモネの花言葉は「君を愛する」、白いアネモネは「真実」「期待」「希望」である。鮮やかな色彩の花は可愛らしく、とても毒があるとは思えない。扱い方に注意は必要だが、遠くから目で楽しむぶんには問題ない。

「お嬢様。お花とともに、こちらも届いております」

 執事から銀のトレーに載った封筒を受け取る。封蝋はグラージュ公爵家の紋章だ。
 机の引き出しから真鍮製のペーパーナイフを取り出し、中を検める。やけに軽いと思っていたら、出てきたのはメッセージカードが一枚のみ。
 エリオルの流麗な字を目で追い、レティシアはアネモネを振り返る。先ほど読んだ一文が、婚約者の声で脳内で再生された。書かれていたのは一文だけだった。

 我がレティシアに真実の愛を捧げます――と。
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