蛙は嫌い

プロローグ

"ゴソゴソッ"



 男の子が何やら虫籠を触っている。


「ほらよっ」


 何やら冷たい感触。
 ヌルッとして気持ちが悪い、そして生き物のようだ。

 即座に何を投げられたか気付いた女の子は全身を震わせ其れを振り   落とそうと必死である。


 6月、梅雨の時期、湿った空気は人には退屈を与える。
 そんな退屈しのぎ程度のつもりのイジメが、当時彼女のトラウマを作り出した。



 蛙は嫌い。



 寧ろ梅雨は嫌いと言っても、何なら雨は嫌いだと言ってもいい。
 その時期には毎日泣いていた。
 湿った生き物をシャツの中に入れられたり、筆箱の中に入れられたり、下駄箱に詰められたり。
 当時、もはやイジメとしても取り上げられなかったそんなイジメは梅雨の時期がピークだった。


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 彼女の名前は【川井 千奈美】
 女子の中では【かわっち】だとか、【ちな】だとか呼ばれていた。
 性格的なことを言えば、引っ込み思案な、典型的な読書の好きなタイプの女の子である。
 当時小学校4年生。
 発育は良い方で、身長もすらっと高くて、それでも痩せ型ではあった。
 遺伝と読書のせいで、眼鏡をかけている。
 度はそこまで強くないらしい。


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 いじめっ子の男の子の名前は【西尾 隆志】
【にっしー】やら【たかし】などと男子からは呼ばれていたが、女子の中では【カエル男】と呼ばれていた。
 普段の行いがそうさせたのだろう。
 身長は当時男子の方が低い子が多く、西尾もそこまで高くはなかった。
 カエル男、と呼ばれてはいるが見た目は普通のワンパクな男の子。
 当時は短髪で、スポーツはサッカーをやっているなど、男の子らしい男の子である。


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 今日も蛙を投げられる。

 一度西尾も失敗した事があり、数匹の蛙を誤って授業中教室に放してしまい、先生に叱られたことがあった。
 しかし一度叱られたくらいで止まることのない悪ガキはさらなるエスカレートを遂げた。


「うんわっ！こいつの給食蛙じゃねーか！きもちわりいい！！」


 背筋に刺すように浴びせられた背後からの言葉は、一瞬で彼女を嫌悪のどん底へ引っ張った。


 その翌日から、川井 千奈美の姿はなかった。




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初投稿です(汗)
初心者なので色々と意見下さると幸いです…