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二十八話 君を食べてもいい?
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聖樹祭の貢物の果物は、マルタン城の敷地内にある広大な果樹園で毎年収穫されているもので、セルジュたちは王都へ出発する一週間前からスワンの作業を手伝うことになった。
「この辺りを持って、枝にハサミを入れるんです。そうそう、お上手ですよ。虫も一緒にちょん切らないように気をつけて下さいね」
スワンに教えられた通りに、セルジュは爽やかな香りのするオレンジ色の果物を一つ、木の枝から恐る恐る収穫してみた。
(あ、結構楽しい)
張りのある皮が南国の太陽を反射して眩しく、セルジュは思わず目を細めた。
「綺麗な果物ですね」
「南領自慢の特産物ですよ」
スワンも自分が収穫した果物を色々な角度から眺めて微笑んだ。
「今年はちょっと果物の出来を心配していたのですが、杞憂だったみたいですね」
「?」
「例年に比べて今年はあまり発育が良くなかったんですよ」
スワンは背中に担いでいる籠にポイっと果物を放り込んだ。
「この城の敷地内の果物の木は特殊でして、大昔の南領の先祖が西領から運んで来たものだと言われています」
「中央の聖樹と同じですね」
「聖樹と違う所は、魔法の恩恵を授けるのではなく、むしろ魔法の恩恵を受けて実を結ぶという所ですね」
セルジュも話を聞きながら、次の果物の収穫に取り掛かった。
「去年聖樹が花を咲かせたので、今年はそっちに魔法を取られて南への恩恵が疎かになっているのだと思っていたのですが、もしかしたら別の要因があるのかも知れません」
「それって……」
「知らず知らずのうちに、キポエ村のフェアリーたちから恩恵を受けていたのではないかと考えています」
セルジュが思わず振り返ると、スワンはいつになく暗い表情で遠くの方を眺めていた。
「強欲な人間によって、我々は知らないうちに彼らが与えてくれていた恩恵を失ってしまったのですね。キポエ村のフェアリーたちは迫害されてきたにも関わらず、我々南領の人間と共存しようとしてくれたというのに」
「マルタン伯爵が悪いわけではないじゃありませんか」
慰めるようなセルジュの言葉に、スワンはいつもの明るい表情を作ってにこやかに笑った。
「そうですね。美人に慰められると元気が出ました。実際この一週間で青かった実も何とか熟したようですし。セルジュのおかげです」
「いや、そんなわけ無いじゃないですか」
「おい」
不意に不機嫌そうな声がして振り返ると、無表情なのに何故か不機嫌だとわかる様子のクロードが、エミールを抱えてセルジュの登っている木のすぐ下に立っていた。
「人のオメガを口説くんじゃない」
「クロード、社交辞令だってのが分からないのか?」
「私はいつも本気だが、この程度の会話もダメなのかい? あんまり束縛が強すぎると嫌われるぞ」
「こっちには子供がいるんだ。束縛して何が悪い」
開き直ったクロードの発言に、セルジュは呆れてスワンは笑いを堪えていた。
「俺が作業するからお前はエミールを見てやれ」
「ダメだ。怪我人は木に登るな。お前は下の方の枝でエミールに収穫体験をさせてやれ」
「もう痛くはない」
「いいからこっちは任せろって。それに子供のお世話だって結構大変だぞ?」
クロードはまだ何か言いたげだったが、セルジュの言う通りに低い枝に付いている果物の前にエミールを近づけてやった。
「ハサミは渡すなよ」
「大丈夫だ」
クロードはエミールに果物を持たせると、ハサミでパチンと枝を切ってやった。エミールは手の中に落ちてきた果物をじいっと興味津々に眺めている。
「あっちに井戸があるから、洗って食べさせてやったらどうだ?」
スワンに勧められて、クロードはセルジュを仰ぎ見た。
「セルジュ、いいか?」
「ジュースで飲ませたことあるから大丈夫だ。アレルギーの心配は無い」
クロードは頷くと、スワンを牽制するようにじろっと睨んでから、エミールを連れて果物を洗いに井戸に向かって歩いて行った。
「しかしクロードもすっかり父親らしくなりましたね」
「本当、意外ですよね。とても子供好きには見えないのに……」
「まあ我々辺境伯は基本的に人間嫌いですからね」
(え、これは冗談なのかな? この人はとてもそんな風には見えないけど……)
言葉に詰まったセルジュにお構いなく、スワンはパチンパチンと果物を収穫しながら雑談を続けた。
「特にクロードは酷いはずです。魔獣を使役する北の辺境伯は人々から偏見の目で見られがちですからね。彼の使う力を黒魔術と混合している人間もいるとか」
「それは無知が引き起こした勘違いってものですよ。黒魔術はそもそも禁忌の術じゃないですか」
「そうですね。ただ、黒魔術の定義は時代によって変わります。今まで普通に行われていたことが、時代の変化で禁止事項に含まれるというのはよくあることです。今は例え禁止された力でなくとも、人々が恐れるのを止めることは難しいのです」
セルジュは子供の頃、北方でクロードと一緒に町に遊びに行った時のことを思い出した。セルジュの母親が買い物をしている間、二人で店の外で待っている時に子供たちの集団に出くわしたのだ。
『出た! 黒の悪魔だ!』
その子供たちはクロードの通っていた学校のクラスメイトらしく、クロードを見つけると慌てて逃げようとしたが、中の一人が一緒にいるセルジュの存在に気がついて指をさしてきた。
『やばいぞ! とうとう人間を従え始めた!』
『あの子は何を言ってるの?』
セルジュは学校に行ったことがなかったため、訳が分からず戸惑った表情でクロードに聞いた。クロードは暗い瞳で黙って子供たちを見ていたが、ギュッと握りしめた拳が小刻みに震えていることにセルジュは気がついた。
『なあ、あいつ助けてやった方が良くね?』
『無理だって。もう手遅れだ』
『ていうかあいつオメガじゃね?』
『劣等種か。クロードの餌でも仕方ないか……』
クロードが急に殺気立って前に出ようとしたため、セルジュは慌ててクロードの腕を掴んで引っ張った。
『クロード!』
『ぶっ飛ばしてやる』
『そ、そういうこと言ったらダメだって! 早く行こう』
子供たちの好奇の視線を避けるように、セルジュはクロードを引っ張って近くにあった小屋の影に駆け込んだ。
『……なあクロード、さっきの子たちって知り合い?』
『……学校の奴ら』
『お前、学校でいじめられてたりするの?』
『そんなんじゃない』
クロードは無表情だったが、傷ついているのがセルジュには分かった。
『お前の父親に言えば何とかしてくれるんじゃないか?』
『別にあんな奴らどうだっていい』
『でも……』
『セルジュのこと、劣等種で俺の餌だって』
それを聞いてセルジュは思わず吹き出した。
『餌って、あながち間違ってないけど』
『どうして?』
『オメガは大きくなって結婚したら、ここをアルファにガブっと噛まれるんだ』
セルジュは自分の首の後ろをトントンと叩いてみせた。
『それから、なんか色んな意味で食われるんだって』
『アルファに食べられるの?』
『う~ん、母さんはあんまり詳しく教えてくれなかったけど、なんかそうらしい。それはオメガにとってとても幸せなことなんだって』
クロードは緑色の瞳でじっとセルジュを見た。
『じゃあ、大きくなったら俺がセルジュを食べていい?』
『それは、大きくなってみないと……』
『今どう思ってるか教えてよ』
セルジュは目をぱちくりさせてクロードを見た。
『今?』
『先のことは分からないけど、今俺たちが大人だったら、セルジュは俺に食われていいと思う?』
『うん、いいよ』
それを聞いて、暗かったクロードの表情がパッと明るくなったのをセルジュは確かに見たのだった。
「この辺りを持って、枝にハサミを入れるんです。そうそう、お上手ですよ。虫も一緒にちょん切らないように気をつけて下さいね」
スワンに教えられた通りに、セルジュは爽やかな香りのするオレンジ色の果物を一つ、木の枝から恐る恐る収穫してみた。
(あ、結構楽しい)
張りのある皮が南国の太陽を反射して眩しく、セルジュは思わず目を細めた。
「綺麗な果物ですね」
「南領自慢の特産物ですよ」
スワンも自分が収穫した果物を色々な角度から眺めて微笑んだ。
「今年はちょっと果物の出来を心配していたのですが、杞憂だったみたいですね」
「?」
「例年に比べて今年はあまり発育が良くなかったんですよ」
スワンは背中に担いでいる籠にポイっと果物を放り込んだ。
「この城の敷地内の果物の木は特殊でして、大昔の南領の先祖が西領から運んで来たものだと言われています」
「中央の聖樹と同じですね」
「聖樹と違う所は、魔法の恩恵を授けるのではなく、むしろ魔法の恩恵を受けて実を結ぶという所ですね」
セルジュも話を聞きながら、次の果物の収穫に取り掛かった。
「去年聖樹が花を咲かせたので、今年はそっちに魔法を取られて南への恩恵が疎かになっているのだと思っていたのですが、もしかしたら別の要因があるのかも知れません」
「それって……」
「知らず知らずのうちに、キポエ村のフェアリーたちから恩恵を受けていたのではないかと考えています」
セルジュが思わず振り返ると、スワンはいつになく暗い表情で遠くの方を眺めていた。
「強欲な人間によって、我々は知らないうちに彼らが与えてくれていた恩恵を失ってしまったのですね。キポエ村のフェアリーたちは迫害されてきたにも関わらず、我々南領の人間と共存しようとしてくれたというのに」
「マルタン伯爵が悪いわけではないじゃありませんか」
慰めるようなセルジュの言葉に、スワンはいつもの明るい表情を作ってにこやかに笑った。
「そうですね。美人に慰められると元気が出ました。実際この一週間で青かった実も何とか熟したようですし。セルジュのおかげです」
「いや、そんなわけ無いじゃないですか」
「おい」
不意に不機嫌そうな声がして振り返ると、無表情なのに何故か不機嫌だとわかる様子のクロードが、エミールを抱えてセルジュの登っている木のすぐ下に立っていた。
「人のオメガを口説くんじゃない」
「クロード、社交辞令だってのが分からないのか?」
「私はいつも本気だが、この程度の会話もダメなのかい? あんまり束縛が強すぎると嫌われるぞ」
「こっちには子供がいるんだ。束縛して何が悪い」
開き直ったクロードの発言に、セルジュは呆れてスワンは笑いを堪えていた。
「俺が作業するからお前はエミールを見てやれ」
「ダメだ。怪我人は木に登るな。お前は下の方の枝でエミールに収穫体験をさせてやれ」
「もう痛くはない」
「いいからこっちは任せろって。それに子供のお世話だって結構大変だぞ?」
クロードはまだ何か言いたげだったが、セルジュの言う通りに低い枝に付いている果物の前にエミールを近づけてやった。
「ハサミは渡すなよ」
「大丈夫だ」
クロードはエミールに果物を持たせると、ハサミでパチンと枝を切ってやった。エミールは手の中に落ちてきた果物をじいっと興味津々に眺めている。
「あっちに井戸があるから、洗って食べさせてやったらどうだ?」
スワンに勧められて、クロードはセルジュを仰ぎ見た。
「セルジュ、いいか?」
「ジュースで飲ませたことあるから大丈夫だ。アレルギーの心配は無い」
クロードは頷くと、スワンを牽制するようにじろっと睨んでから、エミールを連れて果物を洗いに井戸に向かって歩いて行った。
「しかしクロードもすっかり父親らしくなりましたね」
「本当、意外ですよね。とても子供好きには見えないのに……」
「まあ我々辺境伯は基本的に人間嫌いですからね」
(え、これは冗談なのかな? この人はとてもそんな風には見えないけど……)
言葉に詰まったセルジュにお構いなく、スワンはパチンパチンと果物を収穫しながら雑談を続けた。
「特にクロードは酷いはずです。魔獣を使役する北の辺境伯は人々から偏見の目で見られがちですからね。彼の使う力を黒魔術と混合している人間もいるとか」
「それは無知が引き起こした勘違いってものですよ。黒魔術はそもそも禁忌の術じゃないですか」
「そうですね。ただ、黒魔術の定義は時代によって変わります。今まで普通に行われていたことが、時代の変化で禁止事項に含まれるというのはよくあることです。今は例え禁止された力でなくとも、人々が恐れるのを止めることは難しいのです」
セルジュは子供の頃、北方でクロードと一緒に町に遊びに行った時のことを思い出した。セルジュの母親が買い物をしている間、二人で店の外で待っている時に子供たちの集団に出くわしたのだ。
『出た! 黒の悪魔だ!』
その子供たちはクロードの通っていた学校のクラスメイトらしく、クロードを見つけると慌てて逃げようとしたが、中の一人が一緒にいるセルジュの存在に気がついて指をさしてきた。
『やばいぞ! とうとう人間を従え始めた!』
『あの子は何を言ってるの?』
セルジュは学校に行ったことがなかったため、訳が分からず戸惑った表情でクロードに聞いた。クロードは暗い瞳で黙って子供たちを見ていたが、ギュッと握りしめた拳が小刻みに震えていることにセルジュは気がついた。
『なあ、あいつ助けてやった方が良くね?』
『無理だって。もう手遅れだ』
『ていうかあいつオメガじゃね?』
『劣等種か。クロードの餌でも仕方ないか……』
クロードが急に殺気立って前に出ようとしたため、セルジュは慌ててクロードの腕を掴んで引っ張った。
『クロード!』
『ぶっ飛ばしてやる』
『そ、そういうこと言ったらダメだって! 早く行こう』
子供たちの好奇の視線を避けるように、セルジュはクロードを引っ張って近くにあった小屋の影に駆け込んだ。
『……なあクロード、さっきの子たちって知り合い?』
『……学校の奴ら』
『お前、学校でいじめられてたりするの?』
『そんなんじゃない』
クロードは無表情だったが、傷ついているのがセルジュには分かった。
『お前の父親に言えば何とかしてくれるんじゃないか?』
『別にあんな奴らどうだっていい』
『でも……』
『セルジュのこと、劣等種で俺の餌だって』
それを聞いてセルジュは思わず吹き出した。
『餌って、あながち間違ってないけど』
『どうして?』
『オメガは大きくなって結婚したら、ここをアルファにガブっと噛まれるんだ』
セルジュは自分の首の後ろをトントンと叩いてみせた。
『それから、なんか色んな意味で食われるんだって』
『アルファに食べられるの?』
『う~ん、母さんはあんまり詳しく教えてくれなかったけど、なんかそうらしい。それはオメガにとってとても幸せなことなんだって』
クロードは緑色の瞳でじっとセルジュを見た。
『じゃあ、大きくなったら俺がセルジュを食べていい?』
『それは、大きくなってみないと……』
『今どう思ってるか教えてよ』
セルジュは目をぱちくりさせてクロードを見た。
『今?』
『先のことは分からないけど、今俺たちが大人だったら、セルジュは俺に食われていいと思う?』
『うん、いいよ』
それを聞いて、暗かったクロードの表情がパッと明るくなったのをセルジュは確かに見たのだった。
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