家の猫がポーションとってきた。

熊ごろう

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「293話」

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数分走り回ったところで太郎は満足したらしい。
生首を床に落としてこちらへと戻ってきた。

「んじゃ、アイテム回収すっかね」

待っている間に俺たちの休憩も終わらせた。
このあとはお楽しみタイムが待っているっ。
結構広い部屋だったし、きっと大量のアイテムがあることだろう。


「たぶん敵は残ってるから気を付けていこうねー」

「全部の敵がこっち来た訳じゃないか」

「この槍もまだ消えてないしな。少なくとも俺の腹に穴開けてくれた奴は残ってる」

しょっぱな奪った槍だけど、結局こっちにきた敵を全て倒しても消えなかったんだよな。
おそらく蹴り上げたあと倒れるか何かして、出遅れてそのまま……なのかなーって思ってる。
部屋のすみっこに居た奴とかものこってるんでないかな、たぶん。

なので油断せずいこう。



「下半身ぐっしゃやん」

「後続に踏まれたかあ?」

部屋を覗きこむと、予想通り何匹かは敵が残っていた。
そして俺が蹴ったであろう足軽だけど、足がボッキボキに折れまくっていた。
中村いう通り後続に踏まれたのだろうけど……これ、うっかりそれで死んでたら、敵が強化されるんじゃなかろうか? だとしたら怖すぎる。

「いやー、しっかし大量だな!」

「罠も大量だろうから気を付けてなー」

「もう引っ掛かんねーからっ」

下手すりゃ死亡判定くらったかもなー……なんて俺が考えている内に、中村はさっさとアイテム回収に向かっていた。
これで罠に引っ掛かったら面白いんだけど、まあさすがにそれはないかなあ。
映像的にもおいしいんだけどなー?



無事回収できましたとさ。

「さすがモンハウ。全員の装備一式揃ったか」

そう感心したように話す中村であるが、その言葉通り全身に鎧一式をまとっている。
当世具足ってやつだろうか。
兜から何から全部揃っていてなかなか格好いい。
お面以外。

なぜか面当て? でないんだよなあ。
ひょっとこが当世具足つけてるのってなんかもう笑うしかないわ。

「なあ島津。クロの目がすわってんだけど……」

「兜がお気に召さないらしい……」

全員分ってことはもちろんクロの分もある。
胴丸なんかは我慢したクロだけど、兜だけは嫌だったらしい。
無言でじっとこちらを見つめている……ちょっとスマホで写真撮っておきたいなとか思ってごめん。
そんなことしたら半日ぐらい口も聞いてくれなくなってしまう。

太郎は気に入ったみたいで、走り回ってるのになあ……。

「あれ?」

まあ、今後のことを考えると装備一式を外すわけにはいかないわけで……クロの無言の抗議にそっと目を反らしながら、自分の装備を確認していたんだけど、ふとあることに気が付いた。

「どしたよ」

「この刀、銘がある」

今までのはたんに打刀とかだったんだけど、なぜかこいつには銘がある……あたり引いたか?

「え、まじ?」

「なんて銘なのー?」

銘があると聞いて、二人がくいついてきた。
太郎とクロはわれ関せずだ。

しかしなんて銘か……よ、読めるかな?

「えーっと……備州長船盛重。備前じゃないんだ」

なんか聞いたことあるような……でもなんか違うような。そんな感じの銘だ。
詳しい人ならピンとくるんだろうけど、あいにく俺は日本刀には詳しくない……しかし銘があるとないとで、なんかこう見方が変わってくるよな。

「やばい、なんか高そうに見えてきた」

……中村と同じことを思うなんて。
ちくしょう。

「……さすがにこれは売れないな」

「他の余った装備売ればいいし。それは使おうぜ」

「んだね」

売ったら高いかもだけど、銘があるってことは普通の打刀より強そうだし、使ったほうがいいだろうな。
またモンハウにぶち当たる可能性もあるし、出来るだけ良い装備にしておきたい。
……ん?


「……」

「北上さん? 大丈夫ですか?」

銘があるって聞いて反応してた北上さんが、なぜかずっと無言になっている。
なにか考えこんでるようだけど、どうしたのかな?

「ん。だいじょぶ。ちょっと考え事してただけ」

俺が心配して声を掛けると、北上さんがふっと笑みを浮かべ、そう答えるとなんでもないと言うように軽く手を振った。

「先に進もっか。早くしないと夕飯食べられなくなるよー」

……ふむ。
そんな深刻そうな雰囲気はないし、隠している感じもしない。
ほんとにちょっと考えていただけかな?

まあ、またなにか考え込む様子をみせたらちょっと聞いてみるか。
とりま北上さんの言う通り、先に進むとしよう。
装備も整ったし、さっきのモンハウでレベルもがっつり上がってそうだから、進む速度はあがるだろう。
たぶん夕飯には間に合うはず。

またモンハウに突っ込んだり、落とし穴に落ちた先がモンハウだったとかなければ――

「おっ、そうだな! さっさと進もガフゥッ!?」

「中村ぁあああ!?」

――なんて考えたそばから中村が罠ふんだ。
これあれだな。ダンジョンはいってそく掛かったやつ。


「ゴホッ……オゴォッ、ちょ、……ちょっと、ま!?」

壁にあたって、落ちた先にまた同じ罠。それを何度か繰り返し、終には落とし穴に落ちる中村。


「ピタゴラスイッチかな?」

笑うわこんなん。

「飛び降りるよー」

踏んだ中村にとっては笑いごとで済まないけど。
とりあえず中村のあとを追って、みんなで落とし穴に飛び込むのであった。



結果からいうと、モンハウじゃなくて普通の部屋だった。
あとモンハウでレベルががっつり上がってたみたいで、以降はかなり楽に進む事ができた。
そして……。

「街……というかでかい建物が一つあるだけだな」

夕方になる前に、俺たちはダンジョンの街へとたどり着いていた。
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