家の猫がポーションとってきた。

熊ごろう

文字の大きさ
上 下
289 / 304

「289話」

しおりを挟む
「すまん、頼むわ」

「あいよ。後方警戒よろしく」

「おう」

下がる中村から、すれ違いざまに打刀を受け取り前にでる。

中村を切りつけた鎧はすくっと立ち上がると、こちらに向けて刀を構えていた。

先ほどの中村への攻撃を見るに、ノーダメージで倒すのは難しそうだ。
急所部分へ攻撃を食らわないように気を付けてどうにか倒すしかないだろう。

大きく踏み出し、鎧……武者でいっか。武者との距離を一気に詰める。
武者はすぐに反応し、俺に向かい袈裟斬りに刀を振り下ろしてきた。

「ん?」

左に一歩ずれ、攻撃を避けようとするが……あまり早くない。
そのことに少し燻かんだが、俺は動きを止めることなく相手の手を狙い思いっきり刀を打ち下ろした。

ギャリッと嫌な音がして、武者の刀を叩き落すことには成功した。
腕を切り落とせなかったのは、おそらくだが篭手に金属が入っているのだと思う。
良い装備してんな。

「しねぇい!」

足で落ちた相手の刀を踏みつけ、無防備になった喉元へと横なぎに刀を振るう。
鎧が重いのか、相手の動きはそこまで早くはない。武者はわずかに身じろぎしたが、避けること叶わず喉元に刃が吸い込まれる……が。

「かてえ」

斬ったというよりは、滑るような感触が手に残る。
喉元にある防具によって防がれたようだ……HPも先ほどの2発で4割ほどしか減っていない。

刀があたったことで大きく仰け反る武者だが、すぐさまこちらへと手を伸ばしてきた。
どうやら刀を拾うのではなく、素手で俺とやり合うつもりらしい。

タフだし、切り替えも早いし結構やっかいな敵だ。
動きが遅いのが幸いだけど、一対一なら手こずるだろう。


「おいしょー」

悪いけど一対五なんだ。

若干気の抜ける掛け声と共に、武者の脇の下に槍の穂先がズブリと潜り込む。腕を伸ばしたことで防具で覆われていない箇所が剥き出しになったのだ。
そこを見逃す北上さんではない。戦闘経験豊富だし、さすが頼りになるわ。

クロと太郎が武者の脚をズタボロにしていくが、あれはおまけみたいなもんだろう。
北上さんの一撃でHPバーは削り切れていたのが見えた。


……しかし最初の一撃が早かったのはなんでだろうな? 何かしらスキル的なものを使ったんだろうかね。
座った状態の一撃のみ、何かしら補正が掛かるみたいな……だとしたらやっぱ中村はついてないなっ。

まあ次回以降は座ってるところに遠距離から攻撃するとしよう。
反応して立ち上がって対処してくるかもだけど、立ち上がってしまえば最初の一撃は飛んでこないだろう。たぶんね。
幸い火柱の術に北上さんの持つ槍と、遠距離の攻撃手段はあるしなんとかなると思う。

あとは念のため亡霊になって復活しないかだけ確認して先に進むとしよう。


それから3つほど階層を進んだ。
あれから新たに出た敵としては、巨大なヒキガエル、鬼火、管狐、空飛ぶ日本人形――みた瞬間、思わず叫んで叩き落してしまった――傘のお化け、やたらでかいウリボウ、一本だたら? と一部よく分からないやつもいるけど、大体が日本の妖怪なりをベースにした敵が多いね。武者みたいなやつはあれから継続して出てきてるけど、他のタイプは出てきてない。そのうち槍とか持ったのが出てきたりするかもね。

「素手でもわりといけるなあ」

ちなみにまだ武器は手に入ってない。
防具はかなり充実してきてるんだけどね、鎧一式まであと半分って感じ。
術は影縛りと華厳ってのが新たに手に入った。

影縛りは印を結んだあと、相手の陰に向かって武器を突き立てると数秒間動きを止めることが出来る術だった。クナイ投げたりするやつじゃなかったね。

でも数秒とはいれ動きを止められるのはかなり強いと思う。
それだけあればボッコボコにできるし。

華厳は大量の水で相手を押し流す感じの術だった。
ダメージはそれなりだけど、相手の動きを封じて距離とれるのが便利かなー。

そんなわけで素手でも結構いけたりするんです。

「そうかあ?」

「ヒキガエルはちょっと辛いくなーい?」

うん、ごめん。
嘘ついた。

正直ちょっと辛い……鬼火は殴るとダメージくらうし、ヒキガエルなんか触れると毒になるしでむっちゃキツイ。
特に毒はやばいよ。なにせ毒消し草の在庫があまりないからねえ。時間経過でHPゴリゴリ削られる。

まあ、それに気づいてからは中村と北上さんが相手することで対処してるけど、相手が複数の場合はそうもいかんのがねえ。

「ほんと武器落ちてねえからなあ」

「さすがにずっと素手はねー」

「術があるからギリギリなんとかなってはいるんすけどねー」

身体能力もかなり上がって印を結ぶのもかなり早くなったから、術で対応するのもありだけどMPがネックになってくるし……ん?

「そういや……レベル上がる速度はやいっすね?」

「あ、やっぱし?」

「どんどん上がってるねー」

俺の気のせいじゃなかったか。
短時間でどんどん身体能力あがってるんだよなあ。
1階層で1ぐらい? 数時間でこれだけ身体能力あがると、レベル上がってるなあって体感できて良いな。
アマツダンジョンだとなっかなかレベルあがらんからなー。そのへんが辛くてダンジョン攻略やめちゃった人も居るかも知れんし。やっぱ需要あるよな、生首ダンジョン。

まあ、それはそれとして。
ドロップの片寄りはもうちょっとどうにかして欲しいと思うんだっ。

モンハウにでもあたればさすがにアイテム確保できるだろうけど、装備が整ってない状態でモンハウとか、下手すりゃ全滅するしなあ。あれって一種のトラップみたいなもんだもん。

ま、モンハウなんて早々あたるもんじゃないんだけどね。


なんて思いっきりフラグを立てたわけだけど。
……まさかさ、ほんとにその直後にフラグ回収するなんて思わないじゃん?

次の階層に向かおうと階段を下りた先の部屋。
それがモンハウだったのだ。

ふぁっきゅー生首。
お前絶対俺の思考読んでるだろっ!
しおりを挟む
感想 61

あなたにおすすめの小説

追放されたら無能スキルで無双する

ゆる弥
ファンタジー
無能スキルを持っていた僕は、荷物持ちとしてあるパーティーについて行っていたんだ。 見つけた宝箱にみんなで駆け寄ったら、そこはモンスタールームで。 僕はモンスターの中に蹴り飛ばされて置き去りにされた。 咄嗟に使ったスキルでスキルレベルが上がって覚醒したんだ。 僕は憧れのトップ探索者《シーカー》になる!

スキル:浮遊都市 がチートすぎて使えない。

赤木 咲夜
ファンタジー
世界に30個のダンジョンができ、世界中の人が一人一つスキルを手に入れた。 そのスキルで使える能力は一つとは限らないし、そもそもそのスキルが固有であるとも限らない。 変身スキル(ドラゴン)、召喚スキル、鍛冶スキルのような異世界のようなスキルもあれば、翻訳スキル、記憶スキルのように努力すれば同じことができそうなスキルまで無数にある。 魔法スキルのように魔力とレベルに影響されるスキルもあれば、絶対切断スキルのようにレベルも魔力も関係ないスキルもある。 すべては気まぐれに決めた神の気分 新たな世界競争に翻弄される国、次々と変わる制度や法律、スキルおかげで転職でき、スキルのせいで地位を追われる。 そんななか16歳の青年は世界に一つだけしかない、超チートスキルを手に入れる。 不定期です。章が終わるまで、設定変更で細かい変更をすることがあります。

生まれる世界を間違えた俺は女神様に異世界召喚されました【リメイク版】

雪乃カナ
ファンタジー
世界が退屈でしかなかった1人の少年〝稗月倖真〟──彼は生まれつきチート級の身体能力と力を持っていた。だが同時に生まれた現代世界ではその力を持て余す退屈な日々を送っていた。  そんなある日いつものように孤児院の自室で起床し「退屈だな」と、呟いたその瞬間、突如現れた〝光の渦〟に吸い込まれてしまう!  気づくと辺りは白く光る見た事の無い部屋に!?  するとそこに女神アルテナが現れて「取り敢えず異世界で魔王を倒してきてもらえませんか♪」と頼まれる。  だが、異世界に着くと前途多難なことばかり、思わず「おい、アルテナ、聞いてないぞ!」と、叫びたくなるような事態も発覚したり──  でも、何はともあれ、女神様に異世界召喚されることになり、生まれた世界では持て余したチート級の力を使い、異世界へと魔王を倒しに行く主人公の、異世界ファンタジー物語!!

レベルを上げて通販で殴る~囮にされて落とし穴に落とされたが大幅レベルアップしてざまぁする。危険な封印ダンジョンも俺にかかればちょろいもんさ~

喰寝丸太
ファンタジー
異世界に転移した山田(やまだ) 無二(むに)はポーターの仕事をして早6年。 おっさんになってからも、冒険者になれずくすぶっていた。 ある日、モンスター無限増殖装置を誤って作動させたパーティは無二を囮にして逃げ出す。 落とし穴にも落とされ絶体絶命の無二。 機転を利かせ助かるも、そこはダンジョンボスの扉の前。 覚悟を決めてボスに挑む無二。 通販能力でからくも勝利する。 そして、ダンジョンコアの魔力を吸出し大幅レベルアップ。 アンデッドには聖水代わりに殺菌剤、光魔法代わりに紫外線ライト。 霧のモンスターには掃除機が大活躍。 異世界モンスターを現代製品の通販で殴る快進撃が始まった。 カクヨム、小説家になろう、アルファポリスに掲載しております。

チートを貰えなかった落第勇者の帰還〜俺だけ能力引き継いで現代最強〜

あおぞら
ファンタジー
 主人公小野隼人は、高校一年の夏に同じクラスの人と異世界に勇者として召喚される。  勇者は召喚の際にチートな能力を貰えるはずが、隼人は、【身体強化】と【感知】と言うありふれた能力しか貰えなかったが、しぶとく生き残り、10年目にして遂に帰還。  しかし帰還すると1ヶ月しか経っていなかった。  更に他のクラスメイトは異世界の出来事など覚えていない。  自分しか能力を持っていないことに気付いた隼人は、この力は隠して生きていくことを誓うが、いつの間にかこの世界の裏側に巻き込まれていく。 これは異世界で落ちこぼれ勇者だった隼人が、元の世界の引き継いだ能力を使って降り掛かる厄介ごとを払い除ける物語。

『希望の実』拾い食いから始まる逆転ダンジョン生活!(改訂版)

IXA
ファンタジー
凡そ三十年前、この世界は一変した。 世界各地に次々と現れた天を突く蒼の塔、それとほぼ同時期に発見されたのが、『ダンジョン』と呼ばれる奇妙な空間だ。 不気味で異質、しかしながらダンジョン内で手に入る資源は欲望を刺激し、ダンジョン内で戦い続ける『探索者』と呼ばれる職業すら生まれた。そしていつしか人類は拒否感を拭いきれずも、ダンジョンに依存する生活へ移行していく。 そんなある日、ちっぽけな少女が探索者協会の扉を叩いた。 諸事情により金欠な彼女が探索者となった時、世界の流れは大きく変わっていくこととなる…… 人との出会い、無数に折り重なる悪意、そして隠された真実と絶望。 夢見る少女の戦いの果て、ちっぽけな彼女は一体何を選ぶ? 絶望に、立ち向かえ。

目覚めた世界は異世界化? ~目が覚めたら十年後でした~

白い彗星
ファンタジー
十年という年月が、彼の中から奪われた。 目覚めた少年、達志が目にしたのは、自分が今までに見たことのない世界。見知らぬ景色、人ならざる者……まるで、ファンタジーの中の異世界のような世界が、あった。 今流行りの『異世界召喚』!? そう予想するが、衝撃の真実が明かされる! なんと達志は十年もの間眠り続け、その間に世界は魔法ありきのファンタジー世界になっていた!? 非日常が日常となった世界で、現実を生きていくことに。 大人になった幼なじみ、新しい仲間、そして…… 十年もの時間が流れた世界で、世界に取り残された達志。しかし彼は、それでも動き出した時間を手に、己の足を進めていく。 エブリスタで投稿していたものを、中身を手直しして投稿しなおしていきます! エブリスタ、小説家になろう、ノベルピア、カクヨムでも、投稿してます!

ポンコツ錬金術師、魔剣のレプリカを拾って魔改造したら最強に

椎名 富比路
ファンタジー
 錬金術師を目指す主人公キャルは、卒業試験の魔剣探しに成功した。  キャルは、戦闘力皆無。おまけに錬金術師は非戦闘職なため、素材採取は人頼み。  ポンコツな上に極度のコミュ障で人と話せないキャルは、途方に暮れていた。  意思疎通できる魔剣【レーヴァテイン】も、「実験用・訓練用」のサンプル品だった。  しかしレーヴァテインには、どれだけの実験や創意工夫にも対応できる頑丈さがあった。    キャルは魔剣から身体強化をしてもらい、戦闘技術も学ぶ。  魔剣の方も自身のタフさを活かして、最強の魔剣へと進化していく。  キャルは剣にレベッカ(レーヴァテイン・レプリカ)と名付け、大切に育成することにした。  クラスの代表生徒で姫君であるクレアも、主人公に一目置く。  彼女は伝説の聖剣を 「人の作ったもので喜んでいては、一人前になれない」  と、へし折った。  自分だけの聖剣を自力で作ることこそ、クレアの目的だったのである。  その過程で、着実に自身の持つ夢に無自覚で一歩ずつ近づいているキャルに興味を持つ。

処理中です...