274 / 304
「274話」
しおりを挟む
ま、それはそうとまずは撮影を終わらせなければいけないね。
そう考え向かった休憩所には、すでに北上さん、あと中村と太郎の姿があった。
俺は北上さんに……ああ、そうそう。北上さんの名前だけど、撮影時は今まで通り北上さんと呼ぶことにしたよ。
下の名前までだしちゃうとさすがに身バレとかそっちの心配があるからね……ちょっと今更感もあるけど。あえてバレるように仕向ける必要はないだろうって、話し合って決めたのだ。
んで、休憩所に入ると北上さんもこっちに気付いたようで、こっちをみてぶんぶんと手を振っていた。
それに答えるように俺も笑顔で手を振り、みんなのほうへと近づいていく。
「……?」
近付くにつれ……というか、北上さん以外にもしっかり視線を向けたことで気付いたのだけど、中村の様子がおかしい。
どうおかしいかというと、太郎の横で膝を抱えて座り込んでいる。
若干、太郎にもたれ掛かる様な感じだ。
その光景をみて、俺は中村に声を掛けるのを止め、そっと北上さんに耳打ちするように話しかけた。
「どうしたんすかあれ」
「なんかねー、島津くんに彼女ができたのがショックだったらしいよー」
おう。
分かったの結構前なのに、なんで今頃になって心にダメージ受けてるんですかね……?
そしてこれはあれか、心の傷をいやすために太郎に癒しを求めている……いやそれともまさか?
「だからって……太郎って、人じゃないし、そもそも雄なんだけど」
中村、ついにそっちにいってしまったか。
「禁断の恋だね」
「俺には祈る事しかできない」
二人の邪魔をするなんて、俺には、俺たちにはできない。
俺と北上さんはそっと中村と太郎から距離をとり、遠くで見守るのであった……。
クロは床で丸まってる。
「おいこら、聞こえてっからな??」
そっと距離をとる俺たちに、中村が抗議の声を上げる。
見た目より落ち込んではなさそうだ。
「元気そうでなにより。式はいつ?」
「私ね、せめて人の方がいいと思うんだ」
「たんに太郎に愚痴ってただけだっつーの!」
「それはそれでどうかと」
犬に愚痴るってどうかと思うんですがそれは。
まあ、俺もクロに相談はするし、人の事は言えんけどさ。
太郎のあれはたんに中村から貰えるご飯が目当てだと思うんだけど……まあ言わないでおこう。
「……ああ、そうそう頼まれてたのもってきたよ」
「おおっ……なんだっけ?」
うおい。
「生首」
こいつ忘れてやがんな……と、中村の目の前にでんっと飛竜の生首をおく。
「ああ、そっちの生首ね」
そのでかさにちょっと引く中村であるが、ぽんと手を打ち納得したように頷く。
てか別の生首があるのか。あるな。
あるけどあれを映しちゃいかんでしょ……本人? は映りたかったらしいけど、さすがにいくら俺でもあれはあかんってのは分かる。
てか、飛竜の生首でも結構ヤバいんじゃないかなーって気がするけどなあ。
「いまのところ一番深い階層の敵だもん、みたいやつはいっぱい居るっしょ」
ちょっと炎上しないか不安ではあったけど、中村がそういうのでとりあえず生首を回収して、そのまま撮影することにしたよ。
動画はちょっと炎上したとだけ言っておこう。
撮影を終え、動画の投稿、そして炎上を見届けた俺は3人に別れを告げて家へと戻っていた。
そろそろ夕飯の時間だったからね。
「やっと帰ってきたかい」
「んだよ。まだ入ってたんか」
茶の間の明かりをつけると、そこには洗濯ネットに入った生首の姿があった。
……あまりにもしつこいから、ついつい洗濯ネットにぶっこんじゃったんだよね。これに入れておけば生首でも少しの間は大人しくなるからさ……でも自力で抜け出せないわけじゃないんだけどな。
とりあえず生首を洗濯ネットからだして夕飯の支度をしよう。
もう撮影は終わったし、出しても騒いだりはせんだろう。たぶん。
ほどなくして簡単だけど夕飯はできた。
以前の件もあって、いちおう生首も一緒にご飯を食べているのだが……まだむすっとしてるんだよな。
「なに、まだぶう垂れてんの? たしかに洗濯ネットに入れたのは悪かったかもだけどさー」
洗濯機につっこまなかっただけ有情だと思うのだけど。
「おしいけど違うねっ、女神はそんなの気にしません!」
「いや、そこは気にしようぜ……ほら、漬物やっから機嫌なおせって」
こいつのキャラがたまによく分からなくなるな……。
きゅうりの漬物いっぱいあるから、半分ぐらい分けてあげよう。
「……ふんっ、こんなので誤魔化されるほど私は安くないよ!」
そう言いながらもしっかり食ってるけどな!
きゅうりの漬物おいしいから仕方ないね。
「つーか、洗濯ネットじゃなきゃ何を……」
てっきり洗濯ネットにぶっこんで放置したのを怒っているのかと思ったが、そうでもないらしい。
となると思い当たるのは一つ。
「そんな動画に出たかったのか? てか動画に出てなにするつもりだったんだ? まあ、インパクトはあるだろうけど、炎上するだけだと思うぞ」
「別に、たんにダンジョン完成したから宣伝しようかと思っただけだよ」
「へー」
やっぱ動画に出たかっただけかー……ん? 今なんか重要なことをさらっと言わなかった?
ダンジョン完成したとかなんとか。
「えっ、できたの?」
「できたよ」
びっくりして思わず聞き直した俺に、どや顔でそう返す生首。
てか、そういうのはもっと早く言わんかいっ。
そう考え向かった休憩所には、すでに北上さん、あと中村と太郎の姿があった。
俺は北上さんに……ああ、そうそう。北上さんの名前だけど、撮影時は今まで通り北上さんと呼ぶことにしたよ。
下の名前までだしちゃうとさすがに身バレとかそっちの心配があるからね……ちょっと今更感もあるけど。あえてバレるように仕向ける必要はないだろうって、話し合って決めたのだ。
んで、休憩所に入ると北上さんもこっちに気付いたようで、こっちをみてぶんぶんと手を振っていた。
それに答えるように俺も笑顔で手を振り、みんなのほうへと近づいていく。
「……?」
近付くにつれ……というか、北上さん以外にもしっかり視線を向けたことで気付いたのだけど、中村の様子がおかしい。
どうおかしいかというと、太郎の横で膝を抱えて座り込んでいる。
若干、太郎にもたれ掛かる様な感じだ。
その光景をみて、俺は中村に声を掛けるのを止め、そっと北上さんに耳打ちするように話しかけた。
「どうしたんすかあれ」
「なんかねー、島津くんに彼女ができたのがショックだったらしいよー」
おう。
分かったの結構前なのに、なんで今頃になって心にダメージ受けてるんですかね……?
そしてこれはあれか、心の傷をいやすために太郎に癒しを求めている……いやそれともまさか?
「だからって……太郎って、人じゃないし、そもそも雄なんだけど」
中村、ついにそっちにいってしまったか。
「禁断の恋だね」
「俺には祈る事しかできない」
二人の邪魔をするなんて、俺には、俺たちにはできない。
俺と北上さんはそっと中村と太郎から距離をとり、遠くで見守るのであった……。
クロは床で丸まってる。
「おいこら、聞こえてっからな??」
そっと距離をとる俺たちに、中村が抗議の声を上げる。
見た目より落ち込んではなさそうだ。
「元気そうでなにより。式はいつ?」
「私ね、せめて人の方がいいと思うんだ」
「たんに太郎に愚痴ってただけだっつーの!」
「それはそれでどうかと」
犬に愚痴るってどうかと思うんですがそれは。
まあ、俺もクロに相談はするし、人の事は言えんけどさ。
太郎のあれはたんに中村から貰えるご飯が目当てだと思うんだけど……まあ言わないでおこう。
「……ああ、そうそう頼まれてたのもってきたよ」
「おおっ……なんだっけ?」
うおい。
「生首」
こいつ忘れてやがんな……と、中村の目の前にでんっと飛竜の生首をおく。
「ああ、そっちの生首ね」
そのでかさにちょっと引く中村であるが、ぽんと手を打ち納得したように頷く。
てか別の生首があるのか。あるな。
あるけどあれを映しちゃいかんでしょ……本人? は映りたかったらしいけど、さすがにいくら俺でもあれはあかんってのは分かる。
てか、飛竜の生首でも結構ヤバいんじゃないかなーって気がするけどなあ。
「いまのところ一番深い階層の敵だもん、みたいやつはいっぱい居るっしょ」
ちょっと炎上しないか不安ではあったけど、中村がそういうのでとりあえず生首を回収して、そのまま撮影することにしたよ。
動画はちょっと炎上したとだけ言っておこう。
撮影を終え、動画の投稿、そして炎上を見届けた俺は3人に別れを告げて家へと戻っていた。
そろそろ夕飯の時間だったからね。
「やっと帰ってきたかい」
「んだよ。まだ入ってたんか」
茶の間の明かりをつけると、そこには洗濯ネットに入った生首の姿があった。
……あまりにもしつこいから、ついつい洗濯ネットにぶっこんじゃったんだよね。これに入れておけば生首でも少しの間は大人しくなるからさ……でも自力で抜け出せないわけじゃないんだけどな。
とりあえず生首を洗濯ネットからだして夕飯の支度をしよう。
もう撮影は終わったし、出しても騒いだりはせんだろう。たぶん。
ほどなくして簡単だけど夕飯はできた。
以前の件もあって、いちおう生首も一緒にご飯を食べているのだが……まだむすっとしてるんだよな。
「なに、まだぶう垂れてんの? たしかに洗濯ネットに入れたのは悪かったかもだけどさー」
洗濯機につっこまなかっただけ有情だと思うのだけど。
「おしいけど違うねっ、女神はそんなの気にしません!」
「いや、そこは気にしようぜ……ほら、漬物やっから機嫌なおせって」
こいつのキャラがたまによく分からなくなるな……。
きゅうりの漬物いっぱいあるから、半分ぐらい分けてあげよう。
「……ふんっ、こんなので誤魔化されるほど私は安くないよ!」
そう言いながらもしっかり食ってるけどな!
きゅうりの漬物おいしいから仕方ないね。
「つーか、洗濯ネットじゃなきゃ何を……」
てっきり洗濯ネットにぶっこんで放置したのを怒っているのかと思ったが、そうでもないらしい。
となると思い当たるのは一つ。
「そんな動画に出たかったのか? てか動画に出てなにするつもりだったんだ? まあ、インパクトはあるだろうけど、炎上するだけだと思うぞ」
「別に、たんにダンジョン完成したから宣伝しようかと思っただけだよ」
「へー」
やっぱ動画に出たかっただけかー……ん? 今なんか重要なことをさらっと言わなかった?
ダンジョン完成したとかなんとか。
「えっ、できたの?」
「できたよ」
びっくりして思わず聞き直した俺に、どや顔でそう返す生首。
てか、そういうのはもっと早く言わんかいっ。
0
お気に入りに追加
930
あなたにおすすめの小説
お花畑な母親が正当な跡取りである兄を差し置いて俺を跡取りにしようとしている。誰か助けて……
karon
ファンタジー
我が家にはおまけがいる。それは俺の兄、しかし兄はすべてに置いて俺に勝っており、俺は凡人以下。兄を差し置いて俺が跡取りになったら俺は詰む。何とかこの状況から逃げ出したい。
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
王宮で汚職を告発したら逆に指名手配されて殺されかけたけど、たまたま出会ったメイドロボに転生者の技術力を借りて反撃します
有賀冬馬
ファンタジー
王国貴族ヘンリー・レンは大臣と宰相の汚職を告発したが、逆に濡れ衣を着せられてしまい、追われる身になってしまう。
妻は宰相側に寝返り、ヘンリーは女性不信になってしまう。
さらに差し向けられた追手によって左腕切断、毒、呪い状態という満身創痍で、命からがら雪山に逃げ込む。
そこで力尽き、倒れたヘンリーを助けたのは、奇妙なメイド型アンドロイドだった。
そのアンドロイドは、かつて大賢者と呼ばれた転生者の技術で作られたメイドロボだったのだ。
現代知識チートと魔法の融合技術で作られた義手を与えられたヘンリーが、独立勢力となって王国の悪を蹴散らしていく!
【書籍化】パーティー追放から始まる収納無双!~姪っ子パーティといく最強ハーレム成り上がり~
くーねるでぶる(戒め)
ファンタジー
【24年11月5日発売】
その攻撃、収納する――――ッ!
【収納】のギフトを賜り、冒険者として活躍していたアベルは、ある日、一方的にパーティから追放されてしまう。
理由は、マジックバッグを手に入れたから。
マジックバッグの性能は、全てにおいてアベルの【収納】のギフトを上回っていたのだ。
これは、3度にも及ぶパーティ追放で、すっかり自信を見失った男の再生譚である。
俺が死んでから始まる物語
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。
だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。
余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。
そこからこの話は始まる。
セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕
凡人がおまけ召喚されてしまった件
根鳥 泰造
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。
仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。
それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。
異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。
最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。
だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。
祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。
俺が異世界帰りだと会社の後輩にバレた後の話
猫野 ジム
ファンタジー
会社員(25歳・男)は異世界帰り。現代に帰って来ても魔法が使えるままだった。
バレないようにこっそり使っていたけど、後輩の女性社員にバレてしまった。なぜなら彼女も異世界から帰って来ていて、魔法が使われたことを察知できるから。
『異世界帰り』という共通点があることが分かった二人は後輩からの誘いで仕事終わりに食事をすることに。職場以外で会うのは初めてだった。果たしてどうなるのか?
※ダンジョンやバトルは無く、現代ラブコメに少しだけファンタジー要素が入った作品です
※カクヨム・小説家になろうでも公開しています
女神から貰えるはずのチート能力をクラスメートに奪われ、原生林みたいなところに飛ばされたけどゲームキャラの能力が使えるので問題ありません
青山 有
ファンタジー
強引に言い寄る男から片思いの幼馴染を守ろうとした瞬間、教室に魔法陣が突如現れクラスごと異世界へ。
だが主人公と幼馴染、友人の三人は、女神から貰えるはずの希少スキルを他の生徒に奪われてしまう。さらに、一緒に召喚されたはずの生徒とは別の場所に弾かれてしまった。
女神から貰えるはずのチート能力は奪われ、弾かれた先は未開の原生林。
途方に暮れる主人公たち。
だが、たった一つの救いがあった。
三人は開発中のファンタジーRPGのキャラクターの能力を引き継いでいたのだ。
右も左も分からない異世界で途方に暮れる主人公たちが出会ったのは悩める大司教。
圧倒的な能力を持ちながら寄る辺なき主人公と、教会内部の勢力争いに勝利するためにも優秀な部下を必要としている大司教。
双方の利害が一致した。
※他サイトで投稿した作品を加筆修正して投稿しております
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる