家の猫がポーションとってきた。

熊ごろう

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「272話」

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別に何かイベントが起こることもなく、無事に家へとたどり着きました。
ちゃんとクロへのお土産は買ってあるんで安心してほしい。

「それじゃ今日はおっつかれー」

「おつかれさまっす。実家に招待してくれてありがとうございました」

ひらひらと手を振る遥さんに、ぺこりと頭をさげる。
いきなりの話しだったけど、結果としては誘ってくれて本当に良かったと思う。
北上さん一家の俺に対する評価も良さそうだったし……良さそうだったよね? 家について落ち着いたらなんか不安になってきたぞ。

「ふふーん。あとでみんなに島津くんの感想聞いておくねー……にひっ」

「おう……楽しみにして、ます」

そんな不安を煽るような……くそう、これは俺の反応みて楽しんでるなっ。
遥さんちょいちょいからかってくるんよね。まあ嬉しいからいいけど!


「たっだいまー」

遥さんと別れ、手に持った袋をゴソゴソさせながら靴を脱ぐ。
するとすぐに『にゃーん』というなきごえと共に、今の扉が開きクロが出てくる。
毎度、出迎えにきてくれるのは嬉しいね。

「クロ、おまたー」

そういってクロにお土産の入った袋を見せるが……。

「……え?」

おかしいな。
いつも見ているクロの姿と違う気が……。

「毛艶すっごい……」

どこが違うって、毛艶がちがう。
光り輝いて見えるぐらいだ……どういうことなの。



「メーカーの人がペットサロンを準備してくれていたと……」

クロに事情を聞いたところ、CMやら次の新商品などについて打ち合わせを行ったあとに、メーカーの人が「クロさんのために準備しておきました」と、会議室の一室を改造してつくったペットサロンへと案内したんだそうな。

満更でもなかったクロは、そこでお風呂から毛のカット、ブラッシングに肉球まわりの毛の手入れなんかもされたと……机上においてあったブラシを咥えて俺に差し出してきたのは、今後これつかってブラッシングせいってことなんだろう……もちろんやりますとも。

しかし、なんていうかあれだ。
人より猫のほうが待遇いいよな、絶対。
俺がいってもお茶が出るぐらいだと思うよ、たぶん。

クロの日常とか銘打って動画とっちゃう?
その動画を編集する中村が泣いちゃうか。
やめとこ。

その日はクロに言われるがままにブラッシングをしつつ、寝る時間まで今日おきた出来事を報告するのであった。


翌朝。
この日、俺とクロは一体のモンスターと対峙していた。
相手はいつもの飛竜である、が今回は少し目的があり、いつもの様に雑にズタズタにして倒したりはしないよう気を付けていた。

「ほいっ」

噛みつきにきたところを躱しざまに首に剣鉈を叩きこむ。
飛竜の首は太いため、一撃で切り落とすことはできない。

なので普段であれば追加で頭部に衝撃波を叩きこんだり、土蜘蛛をぶっ放したりするのだが……それだとダメージがでかすぎる。

「よっと」

俺は飛竜の首へと飛びかかり、足でがしっと首に体を固定……そして飛竜の頭部へと腕を伸ばして、角をつかむと。

「ふんっ!」

思いっきり捻り上げた。

するとどうなるかというとだ。
半ばまで切れていた飛竜の首が、ブチィッとねじ切れるじゃありませんか。

「……中村へのお土産これでいいかなあ?」

千切れた首をみて、そう呟く俺に対してクロが小さく『にゃ』と鳴く。
どれでもいいと言いたいらしい。

なんでも次の更新用にインパクトの大きい絵を撮りたいらしくてね、そんなら飛竜の首でも映すかーとなったのである。
めちゃくちゃでかいし、インパクトは十分あるだろう。

中村のお願いはこれでよしっと。

「このペースで狩れば、今月中にはカードでそうだけど……どうなるかねえ」

首をバックパックに詰めながらそう一人、ごちる。

今までの例からして、カードを揃えずに次に進むってのはない。
だからこうしてほぼ毎日狩り続けているのだけど……まあ、疲れはする。

クロと一緒だから楽しいには楽しいんだけどね。
ほら、ネトゲとかでも会話しながらなら長いこと狩り続けられるけど、疲れはするでしょ。あんな感じよ。

「お昼にするかー」

とりあえず目的は一つ達成したってことで、一度戻って休むとしよう。
午後も狩るか、それとも別のことをするかはご飯食べてから決めようっと。
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