家の猫がポーションとってきた。

熊ごろう

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「214話」

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とりあえず目についた必要そうなものは全てバッグに詰め込んだ。
おかげで蓋を閉めるにもえらい苦労した。

クロのカリカリは現地で買う予定だ。
どうやらたまには違うものを食べてみたいらしい。

あ、ちゅーるは別だよ。あれはきっちりバッグに詰め込んである。

とりあえずこれで荷物は良しと。

じいちゃんばあちゃんにも1週間ぐらいアメリカに行ってくるーとは話しておいてある。
おみやげよろしくって言ってたので……何がいいかな? カラフルなお菓子とかが良いのだろうか。

そのへんは時間ある時に隊員さん連れて買い物でも行けば良いか。
……行けるのかな? ある程度自由時間あるとは聞いてるけど、出歩いちゃダメとかなきゃいいが。


ま、準備としちゃこんなもんだろう。
あとはー……。

「さて……」

面倒なのがちょっと残ってる。
俺がそっちに視線を向けると、そいつはまだふてくされているようで、じとっとした視線を返してくる。

「なんだい?」

「留守番頼むぞ? ふりじゃないからな? 変なことしたら植木鉢上から被せるぞ?」

こいつを家に残していくとか不安しかねえ。
かといって持っていくという選択肢もありえない。もっとやべえことになる予感しかしない。

「留守番?」

そうだよ。
キョトンとした顔したって、生首には愛嬌なんて感じないぞ。

「俺とクロは、明日から1週間アメリカに行くんだよ」

「聞いてないよ!?」

「今言ったから」

言うだけ友情だよ。

……正直言うと何も言わずにアメリカに行くって選択肢も勿論考えたよ。
でもさ、それやると残されたこいつが何をしでかすか分かったもんじゃねえ。

ご近所を泣きながら転がりまわるとかさ、そういうはた迷惑なことをしでかすんじゃないかと不安でしょうがない。

「断固拒否する!」

ちょ、近寄るんじゃねえっ。
バッグに入ろうとすんなし!

「お前連れてったらトラブルの元にしかならんだろーが! だめに決まってんだろ!」

バッグからイースをひっぺがし、ボーリングの球よろしく床をゴロゴロと転がす。ゴロゴロと。
……思ったより転がったな。

「鬼! 悪魔! 人でなし!」

「お前に言われたくねーよっ」



……とまあ、そんな感じで色々と……ほんと色々とごたごたもあったけれど、どうにか出発の準備は整った。
イースに関してはゲームのソフトをいくつか与えることで、しぶしぶ引き下がった……イースの要求したソフトがダンジョンものだったのがちょっと気になるが……まあ、気にしないでおこうか。

それよりも、そろそろ出発の時間が近付いている。
念のため荷物の確認をしておくかな……。


「……ついてきて無いよな」

ないと思うけど、不安だ。
頭の大きさを考えると、こっそり荷物に紛れるなんて無理そうではあるけど……小さくなって張り付いてないよな?

「どしたのー?」

「ああ、いえ。忘れ物ないかなーと」

おっと。
荷物をゴソゴソあさってたから、北上さんが心配して声を掛けてきた。
とりあえず「いえ、生首入ってないか確認してたんす」とか馬鹿正直に言う訳にはいかないので、ごまかしておく。

……これで、本当にイースの生首入ってたら大惨事だったな。タイミング的に北上さんにばっちり見られそうだし。
あぶねえあぶねえ。

「スマホとお財布、あとパスポートあればたぶん大丈夫だよー」

そういって、自分のスマホとお財布、それにパスポートを手に取り見せてくれる北上さん。
いや、さすがに着替えとか洗面用具とか……ああ、そうか。

北上さんはダンジョン内で生活しているし、アメリカのダンジョンから自室にいけば一通りそろってるのか。
そらその三点あれば大丈夫だな。

「あー、それもそうっすね」

んで、それは一応俺にもあてはまる。
イースのせいで1週間ばかりダンジョンから出ないで生活してたかんね。
部屋も普通に過ごせるようになっているし、荷物もある程度持ち込んである。


てか、こっちが別に用意しなくても、アメリカ側で用意してくれてそうな気もするけどね。
泊まるところだって用意してくれているって話だし……基地内かもしれんが。まあ、それはそれで色々見学したり面白そうではある。


とりあえず荷物の心配はなし、と。

そうなるとあとは出発するまで待つだけなのが……なんとなく手持ち無沙汰になったので、空港内を見渡してみる。
……あ、今俺が居るのって実はもう空港内だったりするよ。自宅で荷物あさってたわけじゃないのだ。

さて、何か面白そうなものは……お?

「……このガタイの良い集団は、みんな隊員さんかな? めっちゃ目立ってるけど」

ガチムチ集団がおるぞ。
みんな私服だけど、あれ絶対隊員さんだろう。
ジャンバー脱がなきゃ良いのに……って思ったけど、空港内暑いんだよね。
冬で厚着してるから余計だ。

レベルアップの恩恵で、熱いのは結構耐性あるけど、暑いのは不快なままなんだよね。

「そだよー。まあ、島津くん……てかクロも目立ってるけどねー」

「まあ、そうっすよね」

普通は空港内に猫なんて居ないからな。
お子様が寄ってくるので、今は自販機の上で香箱座りしながら見下ろしている。
視線の先にあるのは俺である。

こいつ、さっきからなんで荷物あさっとんのだとか思われていたのかも知れない。
北上さんに心配される前につっこんで欲しかったなあっ。
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