上 下
200 / 304

「200話」

しおりを挟む
装備のお試しも素材集めも終わり、その日はそこで解散となる。
お昼を一緒にと考えたが、午後から用事がありあまり時間がないって人が多かったので、大人しく家に戻ってご飯を食べることにする。


んで、お昼ご飯だけど……特に用意もしてないし、お留守番してもらったクロにちょっと豪勢なお昼でもとBBQ広場に向かったのだけどね。


「大根うまー」

「でしょー。いい感じにできたんだよねー」

北上さんが自分用にと煮物作ってて、ご相伴に預かることになりもうした。

煮物おいしいです。
マーシーに頼めば色々作ってくれるんだけど、こういった和風の煮物はさすがに無理なんだよね。
自分で作るのも大変だし、すごくありがたい。

「ごちそうさまでした」

「お粗末様でした」

ついつい食べ過ぎて5合炊きのご飯がなくなってしまったよ。

あ、ちなみにクロはマーシーが焼いたドラゴンステーキに、ドラゴンのちゅーるをかけるとかいうやべーの食べてたよ。
うにゃうにゃいってたので美味しかったんだろう。


さて、お昼も食べたしあっちをやらんとな。

食器類を片付け終えた俺とクロ……それに北上さんとでBBQ広場のあるところへと向かう。

「もうどれに乗るか決めたんだっけー?」

向かう先は飛行機のところだ。
免許とる勉強しつつ、実際に乗って練習しちゃおうと思ってね。

「ええ、あれにしようかなーと」

「おおー。そっかー、これにしたのかー」

選んだ機体をみてふんふんと頷く北上さん。
クロはあまり興味無さそうに後ろ足で頭をかいてる。ついでに欠伸も。

クロとしては飛んで目的につきゃどれでも良いって感じなんだろうねえ。

ただ俺としてはそれ以外にも拘りたいところである。

「荷物いっぱい詰めそうですし、離着水もできますしね」

そんな訳で選んだのはUS-2だ。
もし陸に着陸できない場合は着水出来ちゃうし良いと思うのですよ。
エンジンが4発あるし、多少止まっても飛べるしね。

あと荷物もいっぱい詰めるのが良い。
キャンプ道具一式とか、なんなら一人乗りボートとかバイクとかなんかもう色々詰め込める。

航続距離も長いから、多少迷っても余裕あるのが良いね。

実際に買うとなるとおそろしい値段がするけど、ポイントですんでしまうので問題なしだ。

「それじゃ行きますか。いざって時は飛び降りる方向で」

「このたっかい機体を乗り捨てってのも凄い話だよね……」

「まあ、ポイントはありますしせっかくなんで練習したいなーと。……免許取り立ての人間が操縦する飛行艇とか乗りたくないですよね?」

「そりゃねー」

ちなみに俺は自分の操縦テクニックについてはまったく信用していない。
なにせこれが初飛行だからね!

機体には悪いけど、離着陸失敗したら即離脱するつもりである。


とりあえず乗り込んで、操縦席に座る。北上さんは副操縦席でクロは膝の上である。
一応マーシーがマニュアル用意してくれたので、それを読みながらなんとか操作を続ける。

するととりあえずエンジンはついたので、あとは離陸するだけなのだが……どれだ。

「おお……エンジンついた……えっと、これかな」

離陸モードにするスイッチが天井にあったので、ぽちっと切り替える。

するとエンジンが唸りをあげ、背中がシートにぐっと押し付けられる。
そしてほんの10秒かそこらで感じるふわりとした浮遊感。

「え、あ、もう浮かんだ!?」

飛ぶの早すぎない??
まだそんなに速度出てないんだけど……やべえな、話には聞いてたけど、まさかここまでとは思わなかったぞ。

「ほあー……すっごい」

北上さんも下を呆けた様子で眺めている。
乗ったの初めてだったのかな?まあ、そりゃそうだよね。隊員さんだからって全員が乗ったことある訳じゃないか。

「島津くんすごいじゃん。ちゃんと飛んでるよー!」

「俺もびっくりっす……」

今のところちゃんと飛んでるんだなこれが。
絶対落ちると思ってたから本当に驚いた。

まあ、一度飛んだ以上は着陸しなきゃいけない訳で、やばいのはそこだろうな。
頭から突っ込むか、尻をするか……こわいこわい。



とりあえず10分ほど遊覧飛行をしたので、そろそろ着陸をしようかというお話に。
うーん、こわい。

「着陸しまーす」

「おー」

北上さんは割とリラックスしているようだけど、俺は笑顔を浮かべながら内心ドッキドキしてる。
せめて着水すればいいと思ったけど、湖にはやべー生き物居るし。海にも絶対いるでしょこれ。

もう着陸するしかねーのですわ。


そして地面が徐々に近づいて……覚悟を決めて着陸するか。なむさん!

覚悟を決めた俺は操縦桿を倒し……いや倒しちゃあかんやつだこれ。


「んきゃっ」

ゆっくり降りていた機体がかくんと高度を落とし、地面にタイヤ触れ機体が一度大きく跳ねる。

「……」

「……とまった?」

幸いなことにタイヤがどこかに飛んで行くとか、そんなこともなくどうにか機体は無事止まってくれたようだ。
ちょっとばかし操縦ミスった気がするけど、ちょっと可愛い悲鳴が聞こえたのですべてよし。

「とまった……こっわ!一回跳ねましたよね!?」

「こりゃーいっぱい練習したほうが良いねえ」

よしじゃないな。
実際まじで怖かったし、さっきからクロに頬をぺしぺしとはたかれてるし。
てめーなにしとんじゃぼけーみたいな目でみられてます。ごめんなさい。

まじめに練習しよう……本番は荷物も色々積むし、ミスったら壊れてしまうかも知れない。
中に乗ってる俺たちはともかく、荷物はそこまで丈夫ではないのだ。

とりあえずは毎日練習することにしようとオモイマス。



その後何機か機体をおしゃかにしながらも、俺と……北上さんは練習を続ける。
私も操縦したーいって話だったもんで……俺より着陸上手くて泣きたくなった。隠れてがっつり練習しようと思う。

それで、夕方になったところでいったん休憩しようとなったので、一度家に戻ることにする。
ご飯食べきっちゃったから炊かないといけないしね。


「ん、クロのカリカリがもうないぞ」

ついでにクロのご飯も器に入れておこうと思ったんだけど、いつの間にか空になっていたようだ。
これ絶対こっそり食ったやつでしょ。

「ちゅーるはおやつでしょ。買いにいかないとなー」

ちゅーるがあるから平気とクロはいうけど、あれってどっちかと言うとおやつ枠だよね。
ご飯はご飯で用意しないとダメだと思うのだ。

「んじゃ行ってくるね。お留守番よろしくー」

と言う訳でクロにお留守番を再びお願いし、俺は近くのスーパーへと向かうのであった。



大量のカリカリを袋に詰め込み、スーパーから家へと帰る俺であったが……。

「ん?なにあの人ずっとこっち見てる……こわっ」

なんかこっちをじーっと見てくる人に気付いてしまう。
まじ怖い。

あれかな、俺がお金持ちになった情報とか漏れてそれ関係だろうか?
家の近くにはこれないから待ち伏せしてたとか?こわいこわい。

しかしこの人なあ。

「……どこかで見たことあんなあ」

見覚えがある気がする。
それもつい最近。

近付くにつれて、顔がはっきりと見えてくる。数メートルの距離まできてやっと表情がはっきりと見えた……顔は、日本人ぽいけど……異常なまでに整ってる。異常すぎるぐらいに。


なんでこの距離にくるまで分からなかった?

俺はすぐに鉈を抜こうとして……手が空を切る。
……いくら俺でもスーパーに鉈は持って行かないのだ。
しおりを挟む
感想 61

あなたにおすすめの小説

パーティ追放が進化の条件?! チートジョブ『道化師』からの成り上がり。

荒井竜馬
ファンタジー
『第16回ファンタジー小説大賞』奨励賞受賞作品 あらすじ  勢いが凄いと話題のS級パーティ『黒龍の牙』。そのパーティに所属していた『道化師見習い』のアイクは突然パーティを追放されてしまう。  しかし、『道化師見習い』の進化条件がパーティから独立をすることだったアイクは、『道化師見習い』から『道化師』に進化する。  道化師としてのジョブを手に入れたアイクは、高いステータスと新たなスキルも手に入れた。  そして、見習いから独立したアイクの元には助手という女の子が現れたり、使い魔と契約をしたりして多くのクエストをこなしていくことに。  追放されて良かった。思わずそう思ってしまうような世界がアイクを待っていた。  成り上がりとざまぁ、後は異世界で少しゆっくりと。そんなファンタジー小説。  ヒロインは6話から登場します。

『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる

農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」 そんな言葉から始まった異世界召喚。 呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!? そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう! このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。 勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定 私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。 ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。 他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。 なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

出戻り国家錬金術師は村でスローライフを送りたい

新川キナ
ファンタジー
主人公の少年ジンが村を出て10年。 国家錬金術師となって帰ってきた。 村の見た目は、あまり変わっていないようでも、そこに住む人々は色々と変化してて…… そんな出戻り主人公が故郷で錬金工房を開いて生活していこうと思っていた矢先。王都で付き合っていた貧乏貴族令嬢の元カノが突撃してきた。 「私に貴方の子種をちょうだい!」 「嫌です」 恋に仕事に夢にと忙しい田舎ライフを送る青年ジンの物語。 ※話を改稿しました。内容が若干変わったり、登場人物が増えたりしています。

現代ダンジョンで成り上がり!

カメ
ファンタジー
現代ダンジョンで成り上がる! 現代の世界に大きな地震が全世界同時に起こると共に、全世界にダンジョンが現れた。 舞台はその後の世界。ダンジョンの出現とともに、ステータスが見れる様になり、多くの能力、スキルを持つ人たちが現れる。その人達は冒険者と呼ばれる様になり、ダンジョンから得られる貴重な資源のおかげで稼ぎが多い冒険者は、多くの人から憧れる職業となった。 四ノ宮翔には、いいスキルもステータスもない。ましてや呪いをその身に受ける、呪われた子の称号を持つ存在だ。そんな彼がこの世界でどう生き、成り上がるのか、その冒険が今始まる。

ローグ・ナイト ~復讐者の研究記録~

mimiaizu
ファンタジー
 迷宮に迷い込んでしまった少年がいた。憎しみが芽生え、復讐者へと豹変した少年は、迷宮を攻略したことで『前世』を手に入れる。それは少年をさらに変えるものだった。迷宮から脱出した少年は、【魔法】が差別と偏見を引き起こす世界で、復讐と大きな『謎』に挑むダークファンタジー。※小説家になろう様・カクヨム様でも投稿を始めました。

劣等生のハイランカー

双葉 鳴|◉〻◉)
ファンタジー
ダンジョンが当たり前に存在する世界で、貧乏学生である【海斗】は一攫千金を夢見て探索者の仮免許がもらえる周王学園への入学を目指す! 無事内定をもらえたのも束の間。案内されたクラスはどいつもこいつも金欲しさで集まった探索者不適合者たち。通称【Fクラス】。 カーストの最下位を指し示すと同時、そこは生徒からサンドバッグ扱いをされる掃き溜めのようなクラスだった。 唯一生き残れる道は【才能】の覚醒のみ。 学園側に【将来性】を示せねば、一方的に搾取される未来が待ち受けていた。 クラスメイトは全員ライバル! 卒業するまで、一瞬たりとも油断できない生活の幕開けである! そんな中【海斗】の覚醒した【才能】はダンジョンの中でしか発現せず、ダンジョンの外に出れば一般人になり変わる超絶ピーキーな代物だった。 それでも【海斗】は大金を得るためダンジョンに潜り続ける。 難病で眠り続ける、余命いくばくかの妹の命を救うために。 かくして、人知れず大量のTP(トレジャーポイント)を荒稼ぎする【海斗】の前に不審に思った人物が現れる。 「おかしいですね、一学期でこの成績。学年主席の私よりも高ポイント。この人は一体誰でしょうか?」 学年主席であり【氷姫】の二つ名を冠する御堂凛華から注目を浴びる。 「おいおいおい、このポイントを叩き出した【MNO】って一体誰だ? プロでもここまで出せるやつはいねーぞ?」 時を同じくゲームセンターでハイスコアを叩き出した生徒が現れた。 制服から察するに、近隣の周王学園生であることは割ている。 そんな噂は瞬く間に【学園にヤバい奴がいる】と掲示板に載せられ存在しない生徒【ゴースト】の噂が囁かれた。 (各20話編成) 1章:ダンジョン学園【完結】 2章:ダンジョンチルドレン【完結】 3章:大罪の権能【完結】 4章:暴食の力【完結】 5章:暗躍する嫉妬【完結】 6章:奇妙な共闘【完結】 7章:最弱種族の下剋上【完結】

異世界転生!俺はここで生きていく

おとなのふりかけ紅鮭
ファンタジー
俺の名前は長瀬達也。特に特徴のない、その辺の高校生男子だ。 同じクラスの女の子に恋をしているが、告白も出来ずにいるチキン野郎である。 今日も部活の朝練に向かう為朝も早くに家を出た。 だけど、俺は朝練に向かう途中で事故にあってしまう。 意識を失った後、目覚めたらそこは俺の知らない世界だった! 魔法あり、剣あり、ドラゴンあり!のまさに小説で読んだファンタジーの世界。 俺はそんな世界で冒険者として生きて行く事になる、はずだったのだが、何やら色々と問題が起きそうな世界だったようだ。 それでも俺は楽しくこの新しい生を歩んで行くのだ! 小説家になろうでも投稿しています。 メインはあちらですが、こちらも同じように投稿していきます。 宜しくお願いします。

処理中です...