上 下
195 / 304

「195話」

しおりを挟む

「うぉぉおおいっ」

思わず全力で突っ込み入れてしまった。
いや、あかんでしょ。てっきり映像止めてるもんだと思ってたよっ!

俺の剣幕……と言うか、全員の表情を見てアマツがわたわたと手を振り、言い訳をするが……。

「いや、不意打ちで封印されちゃったもんで対応が……あ、でも大丈夫!ステージ3に関しては一般人が戦闘シーンみても早すぎて分からないだろうから、スロー再生してるんだった!だから実際にはもう戦闘が終わっていても、今放送してるシーンは過去のものだよ!」

「まだ流してるのかよ!?」

「はよ!はよモザイク!」

「なんでまだやってないんだ!」

「はよ!」

ほぼ全員から突っ込みを入れられたアマツは、涙目になりながら慌てて映像を止めるのであった。

もっと早く止めようぜっ。



まあ、そんな事があって……一応映像が全部流れるのは阻止出来た訳だけど?

「どこまで流れた……?」

「えーと……島津くんの目が潰されたとこまで、かな?」

俺の目……?
確か頭部突き抜けて、色々酷い事になってた気がするけど。

てか、あれだね、
中途半端に頭潰しても死なないって実践出来ちゃったね。やったぜこんちくしょう。


まあ、それはさておき。
目が潰れたところまで流したとなると、判定としてはー……。

「あかん」

「その後の死体が動くところと、首を刎ねる場面が映ってないのであればまだ……うーん」

「だめそー。島津くん引き籠ろっか」

「引き籠りましょう」

やっぱダメそう。
さりげなく一緒に引き籠ろうと誘われたので、喜んで受ける所存でございます。
またお部屋に遊びに行ってしまったりするのだろうか。楽しみだね!


まあ、顔は放送されてないし大丈夫とは思うけどね。
……あれ、そういえばアバターから生身に変わったときに、フル装備になってたよな。
あれは一体どういう事なのか……まあ、相手がアマツの同類ってことだし、考えても分からんか。


ん?……てか、あれだ!
あいつの姿も放映されてたって事だよな。

「……あいつの顔もずっと放送されてたのかな?」

あいつの顔見てたら気持ち悪くなってきたんだよな。
戦闘状態で興奮しててそれってことは、冷静な人が見たらどうなるのやら。
精神やられたりせんよね?

「ずっとでは無いかな。俯瞰視点がメインだろうから、そこまで映っては無いはずだよ。いざって時は記憶操作するから安心して」

なるほどなるほど。

「なら大丈夫かな」

「うん……うん?」

「大丈夫か、それ……」

たぶん、大丈夫だと思う……若干不安は残るけどね。

とりあえず一旦ここを出たい。
もう来ないって話だけど、また出てきたら嫌だし……。


疲れたからクロをもふって癒されたい。

まだちゅーるのところで休んでるのかなー……?と皆と外に出てみたのだけど。


会場を中心に人垣が出来ている……てか、全員顔真っ青だな。てか結構倒れてない?
これやっぱ映像流れたのがあかんかったやつか……やっぱアマツに記憶操作してもらうしか……ん?

「わあ、大惨事……クロ?」

なぜか中心にクロが居た。
てかすっげえ威圧感。


あれは、なんだ……スタッフに向かってめっちゃ唸ってるな。
あ、こっち気が付いた。


「わっぷ」

こっちに気が付いたクロは唸るのをぱっと止め、こちらへと超速度で近づいてきて、顔に向かって飛びかかってきた。

これ、俺じゃなかった首折れてない?


顔に飛びついてきたクロは、そのまま頭をこすりつけたり、ザリザリと舐めたりしてくる。

「そっか映像見てたのか、心配掛けてごめんね」

察するに俺が変なのに襲われているのに気が付いて、中に入れろとスタッフに迫っていたのか。
それで威圧も使って……この大惨事に至ると。

それは申し訳ないことをした……俺はクロをぎゅっと抱きしめ、よしよしと頭をなでる。



撫でるが……だんだんクロの顔がむすっとしてきたんだけど?

「え、ちょ、いだだだっ」

腕を蹴りまくって降りてしまった……。
てか普通の人なら腕がもげる威力なんですが。

「えー……」

そのままふんっと鼻をならすとちゅーるの方へと向かって行ってしまった。

さすがお猫様、気まぐれである。



「ん?」

クロが歩いていくと、進行方向にいた人たちは慌てた様子で避けるが……あれ?って感じで首をひねってるぞ。

「アマツさん何かしました?」

「まあ、ちょっと……機嫌悪そうな猫が居た、ぐらいの認識になるよう軽く暗示をね?」

なるほど、そういう事か。
最初はクロにビビってた様子だったけど、今はなんともない感じだ。

てか、こんだけの人数に一瞬で処置するって、やべえなアマツの力。
今後ともお世話になります。

「ありがとうございます」

「いやなに、今回のは私の手落ちでもあるしねえ、これぐらいはさせて貰わないと……ははは」

ハハハッ。

「さっきの戦闘も、モザイク掛かってたと認識するようにしておくよ」

うん、よろしくお願いします。

あれは一般ぴーぽーに見せちゃいけない光景だよ、まじで。

ダンジョンに来る人減っちゃうし、この処置は止む無しだろう。
心が病んだ人量産しちゃうことになるしね。


「さて、みんな」

「ん?」

「何でしょう?改まって」

とりあえず落ち着いたところで、アマツが何か切り出してきたぞ。
何か詫び品でもくれるのだろうか。貰えるものは貰っちゃう所存です。

「色々とハプニングはあったけれど、ステージ3クリアおめでとう!」

ありがとうございます。
あの乱入野郎のせいでえらい苦労しましたよ。ハハハッ。

「クリア報酬として本来であれば、ランダムでアイテムを進呈するところだったけど……お詫びってことで、好きなのを選んで良いよ!!」

詫び品きたあ!
なんでも良いとか太っ腹めっ。

「おお」

「そりゃ良い。何があるんだろうな?」

「アマツシャツからお好きなのを一点とか……さあっすがにないっすよねー!」

まっさかー。
そんなのあったら俺、あっちの味方になってしまいそうだよ。

「勿論!シャツは全種用意してあるよ!」

「あるんかいっ!」

……えっと、どうやって連絡取ろうかな?

「んん?あれは相当良いものだよ?なんと一切汚れも匂いもつかないし、仮に破れても自動修復するおまけ付きさ!」

「……何その無駄な高性能」

一枚あれば部屋着としては凄い良さそう。

「せめて顔をプリントするのはやめよう……」

でも外行くときには着られないね。
あのどや顔なんとかせーやと言いたい。はがそうにも自動修復するおまけついてるって言うし、本来祝福となるべき機能が、呪いと化している。

「ええ??そこはアマツシャツなんだから必須じゃ無いか!」

「そっかー」

「そうだよ!」

「そっかー……」

なんでこの人はこんなにシャツに拘りを持っているのだろうか、謎である……。
理由は聞いたらなんか疲れそうなので聞かない。もうすでに疲れてるしっ。


「さーさー、好きなのを選ぶと良いよ!」

さて……内容確認するか。
これで本当に全部シャツだったら、アマツは人類の敵認識でイイヨネ?




……お?

「SSRのやつあるけど、いいの?」

ガチャの景品もあるじゃん。
あのやばそうな素材もある。

……もうこれ一択じゃね?

「良いよ。そこまぶっとんだ物じゃあないからね……そうだね、うっかり失言すると……あるダンジョンの25階で手に入るものだからね」

「ほー」

「おっと、うっかりうっかり。忘れてくれたまえ」

そう言うとアマツは手を上げ、大げさに首を振って見せる。
なんかむかつく仕草である。

しかし、あの素材……なんだっけ、なんとか神蛇の牙だっけ?
とりあえず25階で取れるってことだから、そうなると例のボードなんかも候補になっちゃうんだよな。今、俺たちがいるの22階だしねえ……いや、でも土蜘蛛並みのスキルが使えるようになると考えれば、今のうち入手したほうが良いか。
これ、25階ってことはまた一段階強くなるタイミングだろうし……んーむ。

「土蜘蛛もそうなのかな?」

「いや、土蜘蛛は……秘密です」

そう言うとアマツは人差し指を口の前に持っていき、片目をパチンと閉じる。


クロの蹴りがアマツの頬にめり込んだ。
しおりを挟む
感想 61

あなたにおすすめの小説

パーティ追放が進化の条件?! チートジョブ『道化師』からの成り上がり。

荒井竜馬
ファンタジー
『第16回ファンタジー小説大賞』奨励賞受賞作品 あらすじ  勢いが凄いと話題のS級パーティ『黒龍の牙』。そのパーティに所属していた『道化師見習い』のアイクは突然パーティを追放されてしまう。  しかし、『道化師見習い』の進化条件がパーティから独立をすることだったアイクは、『道化師見習い』から『道化師』に進化する。  道化師としてのジョブを手に入れたアイクは、高いステータスと新たなスキルも手に入れた。  そして、見習いから独立したアイクの元には助手という女の子が現れたり、使い魔と契約をしたりして多くのクエストをこなしていくことに。  追放されて良かった。思わずそう思ってしまうような世界がアイクを待っていた。  成り上がりとざまぁ、後は異世界で少しゆっくりと。そんなファンタジー小説。  ヒロインは6話から登場します。

『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる

農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」 そんな言葉から始まった異世界召喚。 呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!? そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう! このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。 勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定 私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。 ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。 他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。 なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

出戻り国家錬金術師は村でスローライフを送りたい

新川キナ
ファンタジー
主人公の少年ジンが村を出て10年。 国家錬金術師となって帰ってきた。 村の見た目は、あまり変わっていないようでも、そこに住む人々は色々と変化してて…… そんな出戻り主人公が故郷で錬金工房を開いて生活していこうと思っていた矢先。王都で付き合っていた貧乏貴族令嬢の元カノが突撃してきた。 「私に貴方の子種をちょうだい!」 「嫌です」 恋に仕事に夢にと忙しい田舎ライフを送る青年ジンの物語。 ※話を改稿しました。内容が若干変わったり、登場人物が増えたりしています。

現代ダンジョンで成り上がり!

カメ
ファンタジー
現代ダンジョンで成り上がる! 現代の世界に大きな地震が全世界同時に起こると共に、全世界にダンジョンが現れた。 舞台はその後の世界。ダンジョンの出現とともに、ステータスが見れる様になり、多くの能力、スキルを持つ人たちが現れる。その人達は冒険者と呼ばれる様になり、ダンジョンから得られる貴重な資源のおかげで稼ぎが多い冒険者は、多くの人から憧れる職業となった。 四ノ宮翔には、いいスキルもステータスもない。ましてや呪いをその身に受ける、呪われた子の称号を持つ存在だ。そんな彼がこの世界でどう生き、成り上がるのか、その冒険が今始まる。

ローグ・ナイト ~復讐者の研究記録~

mimiaizu
ファンタジー
 迷宮に迷い込んでしまった少年がいた。憎しみが芽生え、復讐者へと豹変した少年は、迷宮を攻略したことで『前世』を手に入れる。それは少年をさらに変えるものだった。迷宮から脱出した少年は、【魔法】が差別と偏見を引き起こす世界で、復讐と大きな『謎』に挑むダークファンタジー。※小説家になろう様・カクヨム様でも投稿を始めました。

劣等生のハイランカー

双葉 鳴|◉〻◉)
ファンタジー
ダンジョンが当たり前に存在する世界で、貧乏学生である【海斗】は一攫千金を夢見て探索者の仮免許がもらえる周王学園への入学を目指す! 無事内定をもらえたのも束の間。案内されたクラスはどいつもこいつも金欲しさで集まった探索者不適合者たち。通称【Fクラス】。 カーストの最下位を指し示すと同時、そこは生徒からサンドバッグ扱いをされる掃き溜めのようなクラスだった。 唯一生き残れる道は【才能】の覚醒のみ。 学園側に【将来性】を示せねば、一方的に搾取される未来が待ち受けていた。 クラスメイトは全員ライバル! 卒業するまで、一瞬たりとも油断できない生活の幕開けである! そんな中【海斗】の覚醒した【才能】はダンジョンの中でしか発現せず、ダンジョンの外に出れば一般人になり変わる超絶ピーキーな代物だった。 それでも【海斗】は大金を得るためダンジョンに潜り続ける。 難病で眠り続ける、余命いくばくかの妹の命を救うために。 かくして、人知れず大量のTP(トレジャーポイント)を荒稼ぎする【海斗】の前に不審に思った人物が現れる。 「おかしいですね、一学期でこの成績。学年主席の私よりも高ポイント。この人は一体誰でしょうか?」 学年主席であり【氷姫】の二つ名を冠する御堂凛華から注目を浴びる。 「おいおいおい、このポイントを叩き出した【MNO】って一体誰だ? プロでもここまで出せるやつはいねーぞ?」 時を同じくゲームセンターでハイスコアを叩き出した生徒が現れた。 制服から察するに、近隣の周王学園生であることは割ている。 そんな噂は瞬く間に【学園にヤバい奴がいる】と掲示板に載せられ存在しない生徒【ゴースト】の噂が囁かれた。 (各20話編成) 1章:ダンジョン学園【完結】 2章:ダンジョンチルドレン【完結】 3章:大罪の権能【完結】 4章:暴食の力【完結】 5章:暗躍する嫉妬【完結】 6章:奇妙な共闘【完結】 7章:最弱種族の下剋上【完結】

異世界転生!俺はここで生きていく

おとなのふりかけ紅鮭
ファンタジー
俺の名前は長瀬達也。特に特徴のない、その辺の高校生男子だ。 同じクラスの女の子に恋をしているが、告白も出来ずにいるチキン野郎である。 今日も部活の朝練に向かう為朝も早くに家を出た。 だけど、俺は朝練に向かう途中で事故にあってしまう。 意識を失った後、目覚めたらそこは俺の知らない世界だった! 魔法あり、剣あり、ドラゴンあり!のまさに小説で読んだファンタジーの世界。 俺はそんな世界で冒険者として生きて行く事になる、はずだったのだが、何やら色々と問題が起きそうな世界だったようだ。 それでも俺は楽しくこの新しい生を歩んで行くのだ! 小説家になろうでも投稿しています。 メインはあちらですが、こちらも同じように投稿していきます。 宜しくお願いします。

処理中です...