家の猫がポーションとってきた。

熊ごろう

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「194話」

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「一体何のつもりだ?イース」

上から降ってきたのはやはりアマツだった……が、俺の知っているアマツと雰囲気が違いすぎる。

俺に向けられている訳じゃないのに、圧が凄まじい。
表情も違う、無表情に近いが……あれはガチ切れしてるんだと思う。

正直この場に居るだけでも辛い。

だと言うのに、イースと呼ばれたそいつは飄々とした様子でまったく堪えた様子がない。

「いやね、面白そうな事をやってるって聞いて参加してみただけだよ?」

「来るなと言ったはずだが?」

また圧が一段強くなる。

……アマツは同僚と言ったけど、この感じはどう考えても同僚に対する対応ではない。
つまりこいつは敵か?アマツの。

「来るなと言われると来たくなるのが人の性ってやつだよ?君が素直に歓迎してくれていたら、あんなことしなくても良かったのにねえ」

「……」

アマツの半身が、異形に変わっていく。
あれがアマツの本当の姿……直視しちゃダメな奴な気がする。
なるべく見ないでおこう。


さすがにこれは無視出来なかったのだろう、そいつはアマツの方へ向きなおす……つまり俺からは背中が見えている状態だ。
殺そう。



一切声も出さず、呼吸も止めて一気に距離を詰めて鉈を振るう。
狙うのは首だ。

再生するまで時間掛かるのは分かっている。
切断すれば後はアマツがどうにかするだろう……そう思い、振るった鉈であるが。

「っと、危ないなあ」

そいつは俺の鉈を手の平で平然と受け止めて見せた。
こちらを見てすらいない……さっきまでの戦闘は手加減していたってことかよ。

ならば土蜘蛛を……と思った直後、腹に凄まじい衝撃と激痛が走り、俺は吹き飛ばされピンボールのように跳ねて、転がりまくる。

地面に転々と転がっているのは、俺の臓物か。
くっそ痛てえ。



「今は大人しくしててね、あとでいっぱい……?」

手をひらひらとし、そう言ったそいつであるが、ふと動きを止める。

よく見れば手の平から黒い液体が零れ落ちている。
俺の攻撃はまったく通じていなかった訳ではなかったらしい。

少しの間呆けた様子で自分の手の平を見つめていたそいつであったが、急にアマツの方を向いたかと思うと手の平を見えるように両手を上げ、話始める。

「さて、それじゃ私はここらでお暇するとするよ。安心してほしい、もう君のダンジョンに入ることはないし、ダンジョンで彼らにちょっかい掛ける事もない。約束する」

「……」

その言葉を聞いたアマツであるが、無言であった。
ただ半身はまだじわじわと異形へと変わりつつある……そして完全に変わり切る前にそいつはふっとその場から消えて居なくなる。


「居なくなったか……?」

誰かがいったその一言切っ掛けに、アマツがふーっと大きく息を吐く。

「ああ、もう居ないね……約束は必ず守るやつだから、もう来ることはないよ。そこは安心して欲しい……っそれより島津くん、無理はいけないよ……さすがに肝が冷えた」

「背中見せた、殺らなきゃと思って……すんません」

どうやら本当に居なくなったようだ。
アマツの体もいつの間にか普段の姿へと戻っている。

そして約束は必ず守るやつと言うことなので、今後ダンジョンであいつと出会うことはないだろう。

あと、俺の行動は余計だったのかも知れない……あいつが帰る切っ掛けにはなったかもだけど、正直短絡的過ぎた。

「思考が物騒すぎんぞおい」

まじすんません。
自分でもそう思います……はい。


「ねえ、さっきのさ……ダンジョンでちょっかい掛ける事もないって言ってたよね?」

ん?

「ああ」

「言ってましたね」

言ってた、言ってた。
嘘だったら絶対許さぬ。



「じゃあ、ダンジョンの外は?」

「……」

……そんな事、気付きとうなかった。

いや、気付かなかったらそれはそれでダメなんだけどさー!
さあ終わったぞ!って感じだったのに……くそう、どうすりゃ良いんだ。
街中であいつにこられたらどうする事も出来んぞ?




結局アマツがあいつに街中で変なことをするなと言い含めることで落ち着いた。
てか、もうそれしか手段がない。

幸いと言うか、街中で戦闘するのは本当にNGな行為だそうで、あいつもそれをやる事は無いらしい。
向こうが何かしたとしてもせいぜい話しかけてくる程度だろう……との話だ。
不安しかねえ。

常に鉈を持ち歩いて……職質で捕まるな、俺が。

もう、エンカウントしないことを祈るしかないな。
目を付けられた気がしなくもないけど!



……まあ、とりあえず戦闘は終わりだ。
ステージ3もとりあえずはクリアしたと見なしていいだろう。
景品貰ってあとはクロを回収して帰るだけ……まてよ、一つ気に忘れてた事があった。

「ところでさっきの戦闘って、流してないですよね?」

「ああ、あれ流してたらさすがに不味いよな」

「でも、さすがにアマツさんが何か手を打って……ますよね?」

あの戦闘の映像を流すのはまずい。
今後一般人がダンジョンに入らなくなってしまうかも知れない。

見てなくても噂は広まるだろうし……あと、俺の素顔がちょっと流れてそうなのも気になる。
目の周辺だけだから大丈夫とは思うけどね。


まあ、その辺りの映像が流れると不味いってのはアマツも認識しているだろうし、きっとなにか対策はしただろう。


そんな思いを抱いた俺たちの視線を、アマツはそっと顔を背けることで逃れるのであった。
まてやコラ。
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