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「179話」

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「と、言うわけで話を聞きに来たんだけど」

さくっと会いに来られるのは良いよね。
居るかどうかは分からないけど……いや、大抵居るような気が?

まあ、とりあえず隊員さんから聞いた話をアマツにしてみるけど……。

「ハハハ!なるほど、そうだったのかい!」

笑い事じゃねーですよ。
ぐーで鼻の下なぐっちゃうぞ。

「おっと!拳はしまおうか、ステイステイ」

がうがう。

ステイステイじゃないよ。噛んじゃうよ?割と本気で。


「さて……」

どこを噛んでやろうか?と割と真面目に考えていたら……急に真面目な顔をしだすアマツ。ちゃんと話す気になったようだ。
てか最初からそうしなさいよっ。


「まず安心してくれていいよ。そんな変なイベントは行う積りはないからね。島津くんが読んだ通り、期間限定ダンジョンとグッズ……というかアイテム販売、それにポイントを使ったガチャを用意するつもりだよ」

ふむ……割と普通だね?
もっとぶっ飛んだ事をするんじゃないかと、不安と期待が半々って感じだったんだけどなー。

まあ、まだダンジョン出来たばかりだし、余り変な事をやっても――

「あとはトップランカーの強さを知ろう!ってコーナー作って」

「ちょっとまていっ」

――まてこら。
なにその名前からして嫌な予感しかしないコーナー。

「島津くんと戦えるイベントを……あ、もちろん本人じゃないよ?強さと行動パターンを模したモンスターを置くだけだし、見た目もちょっと変えるよ」

「そういう事ならいい……のか?」

突っ込みスルーしやがりましたよこの人。

しかしイベントとしてはあり……なのか?
見た目も俺と変えるのであれば……むう。

「初回だからねえ、あまり変なもの用意してもね……本当はさ、モンスターから街を守るイベントとか、チームに分かれて攻城戦とか、トーナメント式の勝ち抜き戦とか、ダンジョンを期間限定で一般公開して遊べるようにとか色々考えてたんだけどね」

「いや、しょっぱなのそれスタンピードじゃん……人類の敵認識されるよ?」

しょっぱなからダメじゃないか。
やっぱやべーの考えてたよっ!

「もちろん本当の街を使ったりなんかしないさ!本物そっくりに作った街を防衛して、その映像を一般人でも見られるようにして……あ、良いシーンだけね?あとはアバター使って一般人も参加可にしても良いし……それで、無事防衛出来たらアイテムをプレゼント!ってね」

ほうほう。
それはちょっと興味を惹かれ……んー。

「んんん。個人的には面白そうだとは思う……でも、もし本当にそれが起きたら?って考えちゃう人はそれなりに居ると思うような」

楽しそうとは思うし、見ている人も楽しめるとは思う。
……でもなあ、ダンジョンからモンスターが溢れるって方に考えが向くような事はやめておいた方が良いと思う。
ポーションの価値が高すぎで表に意見は出てこないかもだけど、イベントでそれやっちゃ不味い気がするんだ。

「そうなんだよねえ……もっとダンジョンのこと皆に知って貰って、それからかな?」

「まあ、それならなんとか?どっちにしろ何かイベントするなら、国々のお偉方に相談した方がいいよー」

「もちろん!案がまとまったら行くつもりだよ!」

……まあ、アマツも一応認識はしていた様なので、やらかすことは無さそうだ。認識してるよね?

……お偉方に任せておこう。そして何かあったら止めに入る方向で。ここは一つ?



さて、隊員さんにも報告して情報共有しておかないとね
かくかくしかじか。

「だ、そうです」

俺からの報告を聞いた隊員さん達は、肩すかしを食らったような、ほっとしたような何とも言えない表情をしている。

「普通にゲームのイベントみたいだな」

ほんとそれな。

「スタンピードを起こさないなら……まあ、良いんじゃないか?」

「島津と戦うイベントって時点でヤバイ気がするが……トラウマ量産する事になるんじゃないか?」

「絶対戦いたくないっす!」

失敬な。
せいぜい開幕ブレスでこんがり焼けるくらいだよ。ブレス防いでも鉈で斬り殺されるけどさ。どうかんがえてもダメでしたわ。

なんとか阻止せねば……。



アマツをどう物理的にとっちめようかと考えること、数日……いや、そんなずっと考えている訳じゃ無いけどね。
他にこれといってイベントもなかったもんで……アメちゃんの情報もまだ確定してないからって教えて貰えなかったし、隊員さんの元に犬が来るのもうちょい先出しね。

まあ、そんな感じでアマツをとっちめる以外は普通に過ごしてた訳です。

んで、そんなある日のこと。
茶の間に行くとクロが段ボール箱をベリベリと開けてたんだよね。どうやって受け取ったとか突っ込み処はあるけれど、とりあえず開けてたんだ。

「あれ?もう次の届いたんだ?」

中身は当然ちゅーるである。
正月休みで全ての試作品を食い終えたクロは、結果をレポートにまとめてメーカーさんに提出済みだ。

で、その結果を受けて次の試作品がもう出来てきた……って事だね。

「だんだん美味しくなってきてると……よかったねえ。これ、その内市販もするのかな?」

一通り食べたらクロも満足げだ。
どうやらかなり好みの味になってきているらしい。

クロが美味しいと判断しているのだから、きっと他の猫にも美味しく感じられるはずだ。
まあ、好みの差はあるだろうけどね。

市販されたらどうなるんだろ。
タダでさえ海外では麻薬扱いなのに……うん?


「お……薄味だけど普通にいける」

感心してみてたらお裾分けされた……普通のちゅーるよりいけるね。かなーり薄味だけど、人間が食っても普通に美味しいわこれ。
素材の味が濃いって言うのかな……てか、それよりもですね。

「これ、ちょっとバフ効果あるね」

ドラゴンを食べたときの身体能力向上効果が、ちゅーるを食べても発揮されてる。

「猫だけじゃ無くて人も買うなこれ」

味もいけるし、そんな効果があると分かれば人だって自分が食べるために買うだろう……猫と人間でちゅーるの取り合いが発生しかねないゾ。

猫の分を確保するためにもドラゴンは定期的に狩らないとダメかも……ん?今度はなになに?

「ん?メールみろって?」

ちゅーるを食べ終えると、クロがDパッド……メールを見ろ催促してきた。

まあ、メーカーさんからだろうけど……どんなお話かなー。
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