家の猫がポーションとってきた。

熊ごろう

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「177話」

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まあ、最初は別の人が突くのを見るのだけどね。

「お米蒸しあがりましたよー」

「お、きたか」

やっぱ丁度良いタイミングで来れたようだ。
すぐにばあちゃんが蒸しあがったもち米を運んできて、臼にべしっと入れる。
あ、臼は事前に温めてあるから安心してね。

「……あれ、突くんじゃないんだ?」

「最初はああやって潰すんす」

「へぇー」

餅を突くといってもいきなり臼と杵でぺったんぺったんする訳じゃない。
最初はごりごりと潰して、ある程度つぶれてからぺったんぺったんするのだ。
この地域だけのやり方かも知れないけどねー。


「ほら、突き立ての餅だよ。たんとおあがり」

「やった、ありがとうございますー」

じいちゃんばあちゃん、それに近所の人らも餅つきは手慣れたものだ。
北上さんが感心して見ている間にあっという間に餅が突きあがる。

次の米が蒸しあがるまで少し時間が掛かるので、その間に突き立ての餅を食べよう。

「んっ、おいしいー。ふわふわだー」

突き立ては食感が違う。
最初はきな粉餅にして食べたようだけど、すごく幸せそうな顔をしてる。

「あんこもおいしい」

北上さん、どっちかと言うと甘いほうが好きなのかな。
磯辺も食べたけど、残りは甘いもので食べている。

俺は甘いのもしょっぱいのも好きなので、半々ぐらいな感じ。

「次が蒸しあがったし、せっかくだからやってみるかい?」

「あ、やってみたいです!」

「せっかくだからやりましょか」

北上さんやる気っぽいし、せっかくだから一緒にやろう。

……ん?俺が突くの?てっきり杵をやりたいかと思ったけど……まあ、次交代すればいいか。

「そんじゃいきまーす」

「はーい」

とりあえず軽く潰し終わったので突いていこう。
北上さんは濡らした手で餅をひっくり返したり、位置調整する役だ。

ちょっと手を叩かないか怖いけど、そこは全力で集中してどうにかしよう。
例えダンジョンの外だとしても、当たる寸前に止める事は出来るはずだ。


「もっと早くていいよー」

えっ。

「もっともっと」

まじか。
相当なハイペースで突いてるんだけど……まわりで見てる人めっちゃ驚いた表情してますが……まあ、いいか。北上さん楽しそうだし、別に目に止まらぬ速さって訳じゃないし。

まるで機械で突いたような音を立て、杵が高速で餅を突く。
さっきよりだいぶ早く餅つきは完了した。

「出来たかなー」

「良さそうっすね」

もちもちしてて美味しそう。餅だけにっ。

……口には出してないのでセーフだろう。
なんか思考がおっさん化してきてる気がしなくもない……っと、次の米がきたかな?


「それじゃ交代ね交代」

「ほいさ」

今度は杵を使いたくなったのだろう、ぴょんぴょんと跳ねる北上さんに杵を渡し、今度は俺がひっくり返したり、位置調整する役だ。

高速で杵をぺったんぺったんする北上さんは、すごく楽しそうでした。



その後何度かぺったんぺったんと餅つきを繰り返し、一通り突き終わったので……各家庭に必要な分を確保し、余った餅をひたすら食べていると……。


「磯辺まきもおいしい……ん?」

後ろから来たじいちゃんが肩に腕をがしっと回してきた。
え?なになに?

俺がなんだなんだとじいちゃんを見ると……じいちゃんはにぃっと笑みを浮かべると、ぴんと小指を立てる。

「なあ、康平……あの嬢ちゃんだが、お前のこれか?」

「ブボォッ!??」

じいちゃんっ!!??


「げっほ!げほっ!……ち、ちがっ。ちがっ違うよ!」

「なんだ、そうなのか」

なんだじゃないよっ!?
いきなり何を言い出しやがりますかっ!?

てかじいちゃんこんなキャラだった???

「あらあらダメですよ、おじいさん。孫をからかっちゃあ」

「お、おう……いたのか」

て、ばあちゃんもおったし。
不意打ち勘弁しておくれ……もうむっちゃ自分でも顔赤くなってるの分かるし、北上さんに聞かれてたらもう……あ、じいちゃんばあちゃんに連れてかれた。

あー……もう。餅食おう、餅っ。




ちなみであるが、この時の俺は気付いていなかったが……北上さんもウサギカードをセットしていたりする。
ウサギカードの効果は足の筋力に補正「基本値に+5」と気配察知「聴覚」に補正である。
つまり……。



「まあ、そう見えるよねぇー……」

先ほどの会話はばっちり聞こえていたりする。
……俺と同じく北上の顔も赤くなっていた様であるが、その時の俺は気付けずにいたのであった。




★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆


「まったくこの爺様ときたら……」

孫をからかうじいさんを連れ出し、軽く小言いったばあさんはため息をつくと、額を手で押さえる。

じいさんは申し訳なさそうにしながらも、言い訳するように口を開いた。

「いや、すまんの。ひ孫の顔が見れるかと思ったらつい、な……が、ただの同僚って話――」

「そんな訳ないでしょう、おじいさん」

「――そうなのか?」

が、その言葉は途中で遮られる。

じいさんは島津の言った言葉を一応信じていたが、ばあさんは別意見であるようだ。

「ただの同僚が、異性と一緒に年末のこの時期にその親類の家にくる……絶対意識してるに決まってるでしょう」

きっぱりと言い切るばあさんに思わずたじろぐじいさん。

「そ、そうか……それなら来年の正月はもっと賑やかになるかも知れんな」

「そうですね」

なんにせよ、孫に相手が出来るかも知れないのだ。
もしかすると来年の今頃にはひ孫の姿を拝めるかも知れない……その可能性があると分かったからには、こう何かしたくなるのが人の性だろう。

島津は正月の間じいさんばあさんの家に泊まる予定だ。
二人からの質問責めに合うのは避けられないだろう。



なんてやりとりが合ったとか無かったとか。
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