家の猫がポーションとってきた。

熊ごろう

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「159話」

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ご飯も食べたし、さて帰ってダンジョン潜って狩りをするか、それともBBQ広場に行ってキャンプでもするか……と考えながら歩いていると、ふと前方に見慣れぬ集団が居ることに気が付いた。


「あれ?」

「どしたのー?」

「忘れ物でもしたか?」

急に立ち止まった俺に、後ろに続いていた皆がどうしたのだろうか?と声をかけてくる。

俺が前方に要る集団を指さすと、皆の視線がそちらへと移っていった。

「なんか取材してるっぽい」

大量に並ぶカメラとマイクを持った人……どう見ても報道陣ですわ。

なんで今頃になって?と思うが、おそらくトライアルが始まった直後は取材の規制が敷かれていたのだと思う。
それがトライアルが始まり、1週間が経ってそろそろ落ち着いただろう……と解除されたのだろう。

施設の敷地内に入ってくることは無いが……出口で待ち構えているんだよなあ。
裏にも出口有ったからそっちから出た方が良いだろうか?

俺としては取材はスルーしたいけど、他の皆の話を聞いて決めるかな。

そう思い、皆に声をかけようとするが……俺より先に話し始めたのがいた。

「まじだ!やべえ逃げんぞ」

「え、なんでよ」

中村は取材陣を見るなり回れ右をして、元来た道へと戻ろうと皆を急かし始める。
急にどうしたし。

「おばかっ!俺の格好を見ろや、尻尾生やしているところを全国の茶の間に流されてたまるかっての!」

「あー」

なるほど?
言われてみると確かに……ちょっと猫耳と尻尾を着ける事になれすぎて感覚が麻痺していたようだ。

隊員さん達も、確かに……みたいな反応をしているので感覚麻痺してるなこれ。

よかったね中村、君だけはまだ毒されきっていないようだ。
時間の問題だけどな。

と、まあとりあえず皆さすがにこの姿を撮られるのは……と言うことで、別口から出ようと移動し始める。

「まあ、待て」

が、そんな俺たちを都丸さんが呼び止める。

え、都丸さんもしかしてあなたテレビにその格好で映りたい派ですか?
まさか都丸さんにそんな一面があったとは……。

「まず勝手に映される事はないだろう」

「そうなんです?」

「本人の許可無く撮影したり、放送したりはしないだろうよ。みてみろ、ああやって撮影して良いか聞いてから撮ってるだろ」

「……ほんとだ。なんでだろ」

あるぇ。
言われて様子を見ていると、通った人に声をかけて取材OKが出たら端に移動して、そこで初めてカメラを回している様に見える。
……確かに都丸さんの言うとおりだ。

なんかこう、もっと別なイメージあったんだけど、なんか違うっぽいね……と、そんな事を都丸さんに聞いてみると、都丸さんは苦笑いしながらも答えてくれた。

「そりゃ……勝手に撮って流して俺たちが何か不利益を被ったらどうするよ?そりゃ何時もなら何もお咎めなんぞ無いだろうが……ダンジョン側はどう判断するだろうな?」

「なっるほどねー」

実際に何かあるかはおいといて、もしダンジョン側からペナルティを出されたら……取材した者だけではなく、その上にもきたら?そう考えると下手なことは出来ない、でも取材はしたい、その結果があれなのだろう。

「じゃあ、普通に通りますか」

「ああ」

そう言うことであればわざわざ避けなくても良いだろう。堂々と通って帰れば良いのだ。

実際に取材をしても良いか?と声は掛けられたが、断るとあっさりと引き下がった。
もっとも歩いている最中ずっと背中に視線は感じていたけどね。

これだけで済んでいるのはアマツが頑張ったからだろう。今度甘い物でも差し入れしてあげようかな。



そんなこんなで筆記試験当日がきてしまった。
試験自体は1時間も掛からずに終了した。
マークシート形式だったので、クロも問題なく受けれていた様である……てか、猫に筆記試験受けさせるなし、と思わなくもない。
でも猫が試験を受けるとか珍しい光景も見れたので、まあ良いかなーとも思う。

んで、結果だけど……受かった物は受付番号が電光掲示板に表示され、落ちたものは表示されず再び受けなければいけない、そんな訳でドキドキしながら電光掲示板を眺めていた俺たちであったが……。

「あっさり受かった」

「なんか簡単だったなあ」

全員受かってたね。
てか問題がすっごい簡単だった……下手すると講義受けてなくても合格するんじゃない?ってぐらいだよ。

「難しいのは戦闘の方だからな。やはりかなりの人数が生き物を殺すのに抵抗があるみたいだ」

「そりゃそうだろうねえ」

最低限のルールを理解し、あとは戦闘をこなせれば良いと言う判断なのだろう。
試験を受ける条件が、戦闘に関してははソロで1階の敵を2対1で無傷で倒すか、パーティーで倍の数を無傷で倒すとなっているらしいので、かなり戦闘を重視していると言える。

ただ生き物を殺すのに抵抗がある人は、そこで躓いてしまうと……向いてないと言えばそれまでだけど、ポーション確保の為にも人数は欲しいし、アマツ的にも人はたくさん来て欲しいところだろう。

「非生物系のダンジョン早いとこ実装しないと不味そうだねえ」

トライアル期間中で諦めちゃう人が出る前に実装してほしいところだ。

「非生物系?」

「この前アマツに話しておいたんですよー。殺すのに抵抗がある人多いだろうから、ゴーレムとかしか出ないダンジョンを用意したらーって」

「それは良いな」

隊員さん達の反応もよさそうだね。
まあ生き物殺すよりはずっと精神的に楽だろうしなー。

「トライアルが落ち着いたらとは言ってたけど、トライアル中に実装した方が良いかもですね」

「上の方には伝えておく」

「お願いしまっす」

おっし、お偉いさんには都丸さんが話してくれる事になったぜ。
あとはアマツとお偉いさん方が勝手に話して、非生物系のダンジョンを実装してくれる事だろう。



その後、試験に合格したと言うことで許可証を受け取った俺たちは、周りに人の居ないところで休もうか、とダンジョンのカフェルームへ来ていた。

お茶とお菓子も結構美味しいし、他に人も居ないしゆっくり出来るから良い場所だよね、ここ。

今後人が増えたらどうなるか分からないけどね。
ダンジョンと同じく、同じ部屋?いくつも出来てそんなに混みはしないと思うけど……こう、パスワードかけて、専用の部屋みたいの作れたら良いのにね。
多少ポイント消費しても良いから、そう言う機能欲しい。

……うん、あとでアマツに話しておこう。
たぶん首相たちも喜ぶだろうし、良いアイディアじゃなかろうか。

「しっかしなあ」

ん?

アマツへの手土産を考えていたら……中村が許可証をいじりながら何やらぼやいている。


「もっとこう、ファンタジーな見た目に出来なかったんかな?」

あー。

「確かに、免許証と大した変わらないもんね」

「デザイン地味だよねー」

それはちょっと俺も思った。

ダンジョンの許可証ってぐらいなんだから、こう見た目をもっとこう……派手って訳じゃ無いけど、もう少しどうにかして欲しかった。

レベルとか、到達階層によって色も分けたりしてさ。

まあ、もう今更ではあるけど……いや、トライアル期間なんだし、不満を上げれば変わる可能性だってあるか。

イロイロ手探りでやってる感満載だから、本番には色々かわってるかもだね。

税とかもそうだよね。
すんごいざっくり決めてそうな気がする。

どうやって回収するかも分からないし。いや、ほんとどうやって回収するん?
他の人は知ってるのかな。

「そう言えば、ポイントの1割を税として持って行くって話だけど、どうやって持って行くんだろうね?」

「さー……」

「聞いてないな」

知らんのかいー。

ありそうなのはー……ポイントだし、端末……もといDパッドかな。
でも特に何か変わったところは無かったんだよなー……あり?

「んえ?なんか表示増えて……これ、今まで稼いだポイントと税で持って行った分かな?」

開いてみたら表示増えとるし。
画面の端っこに、総ポイントと上納ポイントってのが表示されていたよ。

「自動で落としてくれるのね。なら楽で良いや」

自分で納めた記憶は無いので、ポイント手に入れた時点で自動で上納されるみたいだね。
うっかり上納忘れてたぜ、てへぺろ。とかなったら困るので、これは楽で良いね。

てか桁が半端ないなこれ……これだけでポーション万単位で買えちゃうぞ。
まあ、俺一人が稼いだ分じゃまったく足りてないのだけどね。
やっぱ他の人にも頑張って稼いで貰わねばだ。

確か隊員さんって結構な数がダンジョンに潜っているんだよね?そろそろ10階に到達するメンバーが出て来てもおかしくないし、トータルでかなりのポイント稼いでそうだよなー。

ポーション何個分なんだろうね?



俺がそんな事を考えたからではないだろうけど、その日の夜のニュースでどれぐらいのポーションを確保しているのか、それがなんとなく分かる映像が流れていた。

「何この大量のトラック」

映像は各都道府県にある、ダンジョンの施設からトラックが次々荷物を運び出すものであった。

「日本各地にあるダンジョンへと繋がる扉がある施設、そこからトラックで運び出されている荷物、なんとあれらは全てポーションです」

多いな……割れないよう個別で包装して、あと瓶の間に詰め物もしているかな?それでも1台あたり数千は運んでそうな気がする。

「その総数なんと100万本を優に越えるとのことで、お年寄りや病気の方など優先して、準備出来次第配られるとの事です」

ひぇ……本数やばない?
隊員さんが……何人だろ?5000人ぐらい居るのかな?仮に5000人として、一人あたり200本……ん、意外と大したことなかったな!

やっぱ数は力だねえ。

「トライアルが始まってまだ1週間程しか経っていませんが、そんな短期間でそれだけの数を入手したと言うことでしょうか?」

「いえ、自衛隊などで確保していた分が大多数を占めるようで、トライアル参加者の分はまだ入って居ないとの事です」

トライアル参加者の分は仕方ないね。
まだポーション1個分のポイントも稼げて無いんじゃないかなーと思う。

「ではこれからもっと増えると言うことですね」

「さらには来月にはオークションを各地で開催するとの情報も入っていますが……」

なんですと。

「政府から配布されるのは一番効果の低いポーションですからね。より効果の高いポーションを望む方が参加する形になるでしょう。私もぜひ参加したいところです」

まじか、オークションか……無駄に貯まったポイントを消費するチャンスかも知れないぞ。
コンバインダースで買えるかも。そんなにいらんって言われそうだけど。

「俺たちも出品出来るのかなー……クロ?」

出来ないとか言われたら泣く。

てか、何気なくクロに声掛けて見たのだけど、珍しく真剣にニュースを見ているぞ。

「クロも出す?……チュール代にするって……程々にね」

一体いくつ買うつもりなんですかねえ……俺よりポイント持ってるでしょクロってば。


しかしオークションか……もしかしたらカードを買うチャンスかも知れないねこれ。
まず手放す人はいないと思うけど、中にはダブってしまった人も居るかもだし……ポーションを売ってお金に変えて、それでカードを狙うのが良いかもだ。うん、そうしよう。

いやー、楽しみだなー。




「出す出す!絶対出す!」

もう一人楽しみにしている奴が居ましたよ。
電話してみたらいきなりこれですよ。てか食い付き良すぎない?きみ。


「装備代でもう生活カツカツなんだよっ」

割と切実だった。
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