家の猫がポーションとってきた。

熊ごろう

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「126話」

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満足するだろうけど、満足させたくないのが一人いる。

具体的に言うと最初にクロを鼻で笑ったやつ。

最初だけかと思ったら、ダンジョンについて話している間も態度悪いんだよ。
へらへら笑っていたり、よそ見してたり、舌打ちしたり……周りの人に何度か注意され態度を改めても、すぐに元通りだ。


こう、物語だと主人公に難癖付けた挙句徹底的にボコられて、主人公上げの為に存在するようなかませキャラって居るけど……こいつもそうだと考えれば多少ムカつくのも抑えられる。


訳もなく。

自分がやられると腹が立つことこの上ない。
てかクロを鼻で笑った時点でおめーはだめだ。

さて、どうするか。




「……ところでそこの人、さっきから何か?」

どうするかと考え、とりあえずさっきからお前何なの?と聞いてみることにした。
すると通訳さんが訳す前に、俺の意識が自分に向いたと分かったそいつは、急にべらべらとしゃべり始めた。
そして隊長さんにぶん殴られ、部屋の隅まで吹っ飛んでいく。

あれ、本気で殴ってそうだね。
足にきてるし。

さらに隊長さんがそいつに対しかなり激しく怒鳴っているが……たぶん出ていけとか言ってるんだろうなぁ……逃がさないよ。


「それで彼は何と?」

そいつがどこかに連れて行かれる前に、通訳さんに声をかける。
すると通訳さんは隊長さんをちらりと一瞥し、少し間を置いてから話し始めた。


「……我々は貴方が戦っている所を映像でしか見たことがない。あの映像が本物かどうか判断出来ないので、ぜひ貴方が戦っている所を直接見たい。そうすれば貴方の話の信頼性がより増すことでしょう。お願いできませんか?」

「良いですよ」

これ。相当オブラートに包んでるよね。
途中放送禁止用語が混ざってるのは分かったし、かなりこちらをバカにして挑発している内容だろう。

映像が本物かどうか分からないとか知らんがな。
自分たちのレベルの上がり具合と、身体能力の上がり具合。それに俺が16階以降に居るって情報から本当かどうか判断付きそうな気もするけど、バカなのかな?

てか、わざわざ向こうから会いたいと言ってきてこの人選はないわー。


……まあ別に戦闘している所を見せるのは別に構わない。
俺が多少なめられるのも……若いし、しょうがないかなと思う。いや待て、見た目はフェイスガードで分からないよな……まあいいか。



「それで。クロについて何か言ってましたよね?」

通訳さんは訳さなかったけど、こいつクロに対しても何か言ってたよね?視線を向けていたし。
ああ、ちなみにクロだけど……俺たちのやり取りとか関心ないのか、床で丸まって寝ているよ。何か言われているのは分かってると思うけど、大人だねクロは。

でも俺まだ未成年なので。


「あー……いや、その」

俺の言葉に対し、口ごもるとそのまま無言になる通訳さん。
なるほど、訳せないぐらいの事を言ったと。



……さて、どうしてくれようか。



直接やるのはさすがに不味いだろう。
それぐらいの事を判断できるぐらいには冷静だ。

だから……。


「昼食はBBQですが、お肉が足りないかも知れません。なのでこれからとりに行こうかと思います」

「11階に出る牛を狩ります。強さ的にはあなた達のダンジョンに出る敵と同じぐらいでしょう。一緒に行きましょう」

そこまで言い切り、向こうの反応がある前にゲートを潜ろうとして、ふと気が付いた。
こいつらこのダンジョンではまだ1階すら突破してない。
と言うことはゲートを使えないんじゃないか?と。

そもそも6階で活動しているといい話だし、11階には行けないかもだけどさ。



「アマツ聞こえる?」

だからアマツにお願いする。


「呼んだかい?」

「お願いがあって……彼らを10階に連れていきたいのだけど、今回だけ一時的にゲート使えるように出来ないかな?」

「そうだね……いいよ。でも特別だからね?」

「うん。ありがとう」

特別か。

おそらくアマツはこちらのやり取りを把握しているだろう。
だからこそ特別ということだ。


さて、10階へのゲートは使えるようになった。
そこから次の階層へ進めばすぐに牛さんと戦えるだろう。

例のむかつく野郎だけど、てっきり怖気ずいて逃げるかと思ったら……にやにやと笑みを浮かべて着いてきた。

このあと俺がお前に何をさせるつもりか分かっていないのか。
それとも普段戦っている敵と同じぐらいの強さだからと安心している?分かっているのかな……ここは極小だから普段使っている装備は無いってことを。

……何人か顔色悪いのがいるから、その人らは気付いてそうだね。
まあ君たちをどうこうするつもりは無いから安心していいよ?邪魔したら知らないけど。



「じゃ、戦ってみせるので……見てなかったとかは止めてくださいね?」

そう言って、俺とクロは小部屋へと入っていく。
彼らは部屋の入り口から中を覗いているね。

戦闘に時間を掛けるつもりはないので、牛さんには悪いがさくっとやってしまおう。


こちらに向かい駆け寄ってきた牛さん2匹に対し、まずクロが前にすっと出る。
牛さんはクロを踏みつぶそうとするが……まあ当たるはずがない。

踏みつぶしを避けて、すっとすれ違いざまにクロの前足が高速で動き、牛さんの頭部がサイコロステーキの様にばらけた。


……それ、彼らには動き見えてないんじゃないかな?
この場合はそれでも効果あるだろうけど。


ま、俺は彼らにも見えるようにゆっくり倒すとしますかね。

とりあえずこちらに向かい角を突き立てようとしているので、突っ込んできたところをガシッと頭を鷲掴みにして動きを止める。
角より俺の腕のほうが長いからね。刺さる前に止められる。

で、そのまま頭を握りつぶして終了である。
手はあとで洗おうか。


さて、彼らの反応はどんなもんだろうか。

「とまあこんな感じです……」

見事に全員固まっている。
例のやつは口をぱくぱくして、呼吸がなんかおかしい。過呼吸かな?

許さないけど。


「ところで」

そいつに向かい、ゆっくりと近付き、声をかける。


「この牛と同じ程度の敵が出てくると言うお話でしたが、本当ですか?お話だけでは判断できないので、ぜひ貴方が戦っている所を直接見たい。お願いできませんか?」

ビクリと身を竦ませたそいつに、俺は笑顔でそう言ったのであった。
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