家の猫がポーションとってきた。

熊ごろう

文字の大きさ
上 下
71 / 304

「71話」

しおりを挟む
8対3と数的には隊員さんが圧倒的に有利である。
ターゲットにされた人が防御に専念して、相手の攻撃の隙を突いて残りの人が武器を振るう。
これを繰り返すことで、ほんの1分そこらでゴブリンは全て地面に倒れ伏した。

「……見た目は小柄なのにやたらと力が強い。 が、この程度であれば問題ない」

「こっちも問題なし!」

おそらくゴブリンの膂力は隊員と同程度か、やや劣るといったぐらいだろう。

これが一般人なら力負けしていた事だろうが、隊員さんは皆体を鍛えている。
もっと深い階層ならともかく、浅い階層であれば、レベル差は十分埋めることが出来るようだ。

もっともゴブリンが出て来る階層の割に弱い、と言うのが大きな理由ではあるが。
まじで犬より弱いからね、下手すりゃ2対1でも負けるかも知れない。

このまま狩りを続けて、慣れてきたらナイフは奪わずにそのままとする。
で、その状況にも慣れたら次は二手に別れて狩りをしよう。
1チームは俺が、もう1チームはクロが率いる事になるだろうね。



倒したゴブリンのナイフを回収し、バックパックにぽいぽいと放り込んでいると、何人かがこちらを興味深そうに見ている事に気が付いた。

何でしょ。


「ねーねー。 島津くんさー、さっきのあれどうやったのー?」

あれ……?

「あれはさすがに気になるっすね」

あれってなんだろ。

「俺たちも出来るようになるんですか?」

……あー、天井を駆けたやつかな?

「よっと……はい、たぶん出来るようになりますよ」

そう言って、皆の前でもう一度天井に着地して見せる俺。
普通であればすぐに落下するところだが、俺の靴には特殊な効果がついているので落ちることはない。


これが出来るようになるのは、運良く強化素材を入手出来るかどうかに掛かっている。

俺も半年ぐらいダンジョンに潜っている訳だけど、出たのってドロップが1回、宝箱で出たのが1回だけだからね。
カードも大概でないけど、こっちはその比じゃない。

誰かが出した物を買い取ると言う手段もあるけど、手放さないと思うんだよねえ。

なのでたぶんと言ったのだ。


「すげぇ……やばい、無茶苦茶やる気が湧いてきた」

「こら。最初からやる気出しとけ」

「すんませんっ」

うむ。
頑張ってとしか言えないなっ。

心折れない事を祈っておこう……てかあれは集めようとするもんじゃないね、偶然出たらラッキーぐらいに思っておかないとダメな奴だ。



さて、隊員さんも消耗してないし、早速狩りますかね。
と言ってもそろそろお腹空いてきたし、あまり長い時間狩るつもりはないけど。

約束は半日だったしね。

あ、言って無かったけど、自衛隊さんを手伝うのは基本的に水曜を除く平日だけで、水曜と土日はお休み。手伝う時間は半日程度となったよ。

これは俺の負担も勿論だけど、隊員さんの負荷もデカいって事でなるべく休みを取るように……って事でこの内容に決まったそうな。

午前か午後は俺が選んで良いそうなので、例えば午前中畑の手伝いをして、午後からダンジョンなんて事も出来てしまう。

休日は畑のお手伝いかこっちのダンジョン攻略を進める事も出来るね。

本当に自由に出来る時間があって良かったよ。
これで一日の日当が5万とかなので、かなり美味しいんじゃないかなーと思う。



「じゃあ、あと1時間ぐらい狩って、戻りますか?」

「ああ、そうしよう」

と言うわけであと1時間ぐらい狩ろう。
1部屋5分掛かるとして、移動を含めて10部屋は行けるんじゃないかな?

ナイフの回収が面倒だけど、これ後でポイントに交換出来ちゃうからね。
隊員さんがチュートリアル突破した際に、ポイントが足らないっ!て状況を少しはマシに出来るだろう。

「順調ですね」

1時間もあればゴブリンとの戦闘にも慣れてきた様に見える。

最初は固かった動きが徐々に変わってきて……何て言うか、攻撃をいなすのが上手いのかな?
良い感じに相手の攻撃を避けたり、相手の腕を掴んで体勢を崩したりとか手慣れているように見える。

転がした相手にナイフを突き立てたりとか……そう言う近接訓練とかやってるのかな? そうじゃないとあんな流れるように止めさせないよね。


全体的にゴブリンの動きが単純なのもあって、かなり上手く倒せていると思う。人型なのも良い方向に働いてるのかなー?

ナイフを奪うのを止めたらどうなるかな? と思ったけど、特に変わりはなかった。
1対1なら安定して倒せるんじゃないかなー……2体はちょっときついと思う。

この感じなら、早々に二手に別れて狩った方がいいかな?
最初は4~6体の部屋で狩りまくって、明後日には8体前後の部屋で狩りまくる。

相手の数が多いときは、俺かクロが減らせばいいし、サクサク部屋を回れるだろう。

たぶんこれで条件は満たせるはずだ。
あとでクロと相談しようっと。



そろそろお腹が減りすぎてやばいなー、でもそろそろ終わりだし頑張るかー、等と考えていると、都丸さんが話しかけてきた。

「ああ、そうだ島津さん」

「ほい?」

昼食は焼き肉ですよ。
お肉だけなら食い放題。


「ちょっと頼み事があってな……今までの戦闘では二人とも本気では動いてないだろう?」

「ええ、まあ。ゴブリン相手ですし」

全然違ったわ。

もちろん本気では戦っていない。
軽く攻撃すればそれ終わるので、本気を出す意味が無いのだ。

んで、それがどうかしたのだろうか?


俺がどうしたのだろうか?と首を傾げると、都丸さんは話を続けた。

「20階まで行くどれぐらい動けるようになるのか見たい、と要望があってな。すまないが帰る前に一度全力で戦ってみて貰えないだろうか?」

「あ、良いですよー。 その先確か10匹部屋なんで、そこでやりましょうか」

なるほど、本気で。
本気でね?

誰が見たいと言ったのだろうか……まあいいや、どうせなら本当に本気でやってビックリさせちゃおうじゃないのさ。
しおりを挟む
感想 61

あなたにおすすめの小説

カラスに襲われているトカゲを助けたらドラゴンだった。

克全
ファンタジー
爬虫類は嫌いだったが、カラスに襲われているのを見かけたら助けずにはいられなかった。

アレク・プランタン

かえるまる
ファンタジー
長く辛い闘病が終わった と‥‥転生となった 剣と魔法が織りなす世界へ チートも特典も何もないまま ただ前世の記憶だけを頼りに 俺は精一杯やってみる 毎日更新中!

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

駆け落ち男女の気ままな異世界スローライフ

壬黎ハルキ
ファンタジー
それは、少年が高校を卒業した直後のことだった。 幼なじみでお嬢様な少女から、夕暮れの公園のど真ん中で叫ばれた。 「知らない御曹司と結婚するなんて絶対イヤ! このまま世界の果てまで逃げたいわ!」 泣きじゃくる彼女に、彼は言った。 「俺、これから異世界に移住するんだけど、良かったら一緒に来る?」 「行くわ! ついでに私の全部をアンタにあげる! 一生大事にしなさいよね!」 そんな感じで駆け落ちした二人が、異世界でのんびりと暮らしていく物語。 ※2019年10月、完結しました。 ※小説家になろう、カクヨムにも公開しています。

夢の世界で強くなったら現実に影響が

切島すえ彦
ファンタジー
俺は日々営業に追われている。サラリーマンある日、残業終わりで疲れていて、家に帰るとそのまま寝てしまう、すると森の中で一人立っていた。目の前に何か職業が表示され俺は武術家を選ぶと力が少しついた気がした。俺は木に拳を当てると激痛が、なんだこの世界は・・・

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

異世界転生!俺はここで生きていく

おとなのふりかけ紅鮭
ファンタジー
俺の名前は長瀬達也。特に特徴のない、その辺の高校生男子だ。 同じクラスの女の子に恋をしているが、告白も出来ずにいるチキン野郎である。 今日も部活の朝練に向かう為朝も早くに家を出た。 だけど、俺は朝練に向かう途中で事故にあってしまう。 意識を失った後、目覚めたらそこは俺の知らない世界だった! 魔法あり、剣あり、ドラゴンあり!のまさに小説で読んだファンタジーの世界。 俺はそんな世界で冒険者として生きて行く事になる、はずだったのだが、何やら色々と問題が起きそうな世界だったようだ。 それでも俺は楽しくこの新しい生を歩んで行くのだ! 小説家になろうでも投稿しています。 メインはあちらですが、こちらも同じように投稿していきます。 宜しくお願いします。

ダンマス(異端者)

AN@RCHY
ファンタジー
 幼女女神に召喚で呼び出されたシュウ。  元の世界に戻れないことを知って自由気ままに過ごすことを決めた。  人の作ったレールなんかのってやらねえぞ!  地球での痕跡をすべて消されて、幼女女神に召喚された風間修。そこで突然、ダンジョンマスターになって他のダンジョンマスターたちと競えと言われた。  戻りたくても戻る事の出来ない現実を受け入れ、異世界へ旅立つ。  始めこそ異世界だとワクワクしていたが、すぐに碇石からズレおかしなことを始めた。  小説になろうで『AN@CHY』名義で投稿している、同タイトルをアルファポリスにも投稿させていただきます。  向こうの小説を多少修正して投稿しています。  修正をかけながらなので更新ペースは不明です。

処理中です...