上 下
63 / 304

「63話」

しおりを挟む
とは言ってもそこまでたくさん質問があるわけじゃ無いんだけどね。
ぱっと思いついたのだけ聞いて、また思いついたら別途確認すれば良いし。


「えっと、予備自衛官になった場合、やはり自衛隊に組み込まれた状態でダンジョンに潜る事になるんでしょうか?」

組織に組み込まれてどう働かされるのか気になるよね。
待遇良いならあれだけど、超絶ブラックだったらアマツのところに逃げ込む所存です。ふふふ。

おっちゃんは少し困った風に頬をかき、少し間を置いてから俺の待遇について話し始める。

「そのお話しは島津さんを外圧から守るため、ぽっと出て来たお話しでして。実はその辺りについては、まだ決まっていないのですよ。 ただ言えるのは決して無理強いする事は無い、と言うことです。 恐らくは隊員が条件を満たすまでアドバイスを頂いたり、実際に一緒に潜って頂いたり……と言った具合ですかな? その時間以外は好きに行動して頂いても構わない、と言う方向になるかと思いますよ」

ほほー。

聞いた感じだとかなり楽そうに思える。
お国のために24時間ダンジョンに潜り続け、隊員を鍛え上げろとかにはならなさそう。

問題はどれぐらいの頻度かと、一回に拘束される時間だよな。
畑の手伝いできるだけの時間は何とか確保したいところである。

「予備自衛官になったからと言って、島津さんが入手したポーションを全て回収する……なんてことはしません……と言うより出来ません。 あ、勿論売っていただけるのであれば大歓迎ですが」

出来ません、か。
やっぱアマツの話をしたのがでかいなあ。

あれが無かったら政府がポーションを全て回収してたんだろう。
そして返ってくるかは不明と。 ……うむ、アマツ様々だね。あとで何か御供えでもしてあげようか。


「先ほど隊員が回収したポーションについても返却致しますね」

俺が微妙な表情を浮かべていると、大塚さんがそう言い加えた。

「あー、いえ。あれは良いです、自衛隊さんで使ってください。 条件を満たすまでに、絶対必要になると思いますんで」

俺としては別に返して貰わなくても良い。
あれはこのままじゃ隊員さんやべーでしょ?ってことで出したポーションだし、隊員さん達に使って貰えればそれで良いのだ。


「おお、それはありがとうございます。 実は喉から手が出るほど欲しかったのですよ。 ははは」

と、言った感じでその後いくつかやり取りをして話は終わった。
ちなみにポーションについては代金を後ほど振り込むとの事だった。

俺としては貰わなくても良かったんだけどね、向こうが管理者の怒りに触れるのをかなーり気にしているそうで、結局受け取る事になってしまった。
お値段だけど、1本5万円とかなりの高額である……高額だよな? ポーションぽんぽん手に入るもんで感覚が麻痺している。

たぶん5万円って対価はポーションが大量に入手可能という前提の価格かな?
そうじゃなければいくら積んでも手に入れたいって代物のはずだし。

まあ、思ったよりも貰えるので問題なしだ。
このお金でアマツにお供え物でも買ってあげよう。


後は……一次調査が終わったら、自衛隊と一緒にダンジョンに潜る様に依頼が来るとかなんとか……そっちも1日あたり結構な金額が貰えるっぽいね。


「……疲れた」

色々ありすぎて疲れた。
こんな時はクロに癒やされたい……ソファーに仰向けに転がりそう考えていると、お腹にズシリと重みが来る。

目を開けてみれば、クロが俺のお腹で香箱座りしていた。

俺の気持ちを察して来てくれたのか……さすがクロである。

俺が色々話し込んでいる間、ちゃっかりどこかに避難していたのは気にしないでおこう。
猫だし、しょーがないよね。



「んー……よし、復活した」

しばらくクロを撫でていると、疲れた心が癒やされるのがよく分かる。
ほんの数分で全快だぜ、ふっふー。



さてと。

「アマツさんの所に行ってみよう……止められ無いと良いけど」

じいちゃんばあちゃんにカミングアウトする前に相談したい。それと今日のことについて報告もしないと……もちろんアマツの事だからこっちの様子は見ていると思うけどね。

一応直で会って報告とかしておきたいのだ。

クロも暇だったからか一緒に行ってくれるみたいだ。
俺はソファーを降りてクロを抱えて
玄関を出る。


外に出て納屋の方を見るが、まだかなりの人が納屋の周辺にいた。
納屋というか壁だけどね。

何時の間にか納屋の周りが壁で囲まれていたのだ。
そして入り口らしきところには自衛隊さんが立っている。あの人に見つからずにダンジョンに入るのは無理なので、ここは素直にダンジョンに入りたいと言ってみるか。

もしかすると調査中でも入れるかもだしね。

さて、隊員さんに声をかけてみようか。



「あの、すみませーん」

「はい、何でしょうか?」

「ダンジョンに入っても大丈夫ですか……?」

「ええ、島津さんですよね。 勿論大丈夫ですよ、ただ無理はなさらないで下さいね?」

「はいっ」

すんごいあっさり通れた。
俺は何時でも入ってはオッケーってなってるのかな? さっきのおっちゃんの話も本当ぽいなーと思えてきた。

クロもオッケーなのは戦闘の様子も見たって事なんだろうね。


さて、アマツに会いに行くにはゲートを通るのが一番だけど……。

「さってさて……休憩所に人おるやん。 ……しゃーない、走って行くか。 クロ、いくよー」

休憩所には結構な人数がいた。
機材とかも持ち込んでいるし、ここを拠点にする感じかな?

アマツの力でゲートを使ってもばれない可能性はあるが、さすがに試す勇気は無い。

俺たちは諦めて走って5階へと向かうのであった。




道中の敵をガン無視して走ったけれど、それでも30分ぐらい掛かってしまった。

さて、アマツは居るだろうか。

「アマツさんいますかー?」

「やあやあ!お疲れさま!」

相変わらずテンション高くて声でかいな。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

「残念でした~。レベル1だしチートスキルなんてありませ~ん笑」と女神に言われ異世界転生させられましたが、転移先がレベルアップの実の宝庫でした

御浦祥太
ファンタジー
どこにでもいる高校生、朝比奈結人《あさひなゆいと》は修学旅行で京都を訪れた際に、突然清水寺から落下してしまう。不思議な空間にワープした結人は女神を名乗る女性に会い、自分がこれから異世界転生することを告げられる。 異世界と聞いて結人は、何かチートのような特別なスキルがもらえるのか女神に尋ねるが、返ってきたのは「残念でした~~。レベル1だしチートスキルなんてありませ~~ん(笑)」という強烈な言葉だった。 女神の言葉に落胆しつつも異世界に転生させられる結人。 ――しかし、彼は知らなかった。 転移先がまさかの禁断のレベルアップの実の群生地であり、その実を食べることで自身のレベルが世界最高となることを――

ダンジョン配信 【人と関わるより1人でダンジョン探索してる方が好きなんです】ダンジョン生活10年目にして配信者になることになった男の話

天野 星屑
ファンタジー
突如地上に出現したダンジョン。中では現代兵器が使用できず、ダンジョンに踏み込んだ人々は、ダンジョンに初めて入ることで発現する魔法などのスキルと、剣や弓といった原始的な武器で、ダンジョンの環境とモンスターに立ち向かい、その奥底を目指すことになった。 その出現からはや10年。ダンジョン探索者という職業が出現し、ダンジョンは身近な異世界となり。ダンジョン内の様子を外に配信する配信者達によってダンジョンへの過度なおそれも減った現在。 ダンジョン内で生活し、10年間一度も地上に帰っていなかった男が、とある事件から配信者達と関わり、己もダンジョン内の様子を配信することを決意する。 10年間のダンジョン生活。世界の誰よりも豊富な知識と。世界の誰よりも長けた戦闘技術によってダンジョンの様子を明らかにする男は、配信を通して、やがて、世界に大きな動きを生み出していくのだった。 *本作は、ダンジョン籠もりによって強くなった男が、配信を通して地上の人たちや他の配信者達と関わっていくことと、ダンジョン内での世界の描写を主としています *配信とは言いますが、序盤はいわゆるキャンプ配信とかブッシュクラフト、旅動画みたいな感じが多いです。のちのち他の配信者と本格的に関わっていくときに、一般的なコラボ配信などをします *主人公と他の探索者(配信者含む)の差は、後者が1~4まで到達しているのに対して、前者は100を越えていることから推察ください。 *主人公はダンジョン引きこもりガチ勢なので、あまり地上に出たがっていません

スキルが【アイテムボックス】だけってどうなのよ?

山ノ内虎之助
ファンタジー
高校生宮原幸也は転生者である。 2度目の人生を目立たぬよう生きてきた幸也だが、ある日クラスメイト15人と一緒に異世界に転移されてしまう。 異世界で与えられたスキルは【アイテムボックス】のみ。 唯一のスキルを創意工夫しながら異世界を生き抜いていく。

異世界転生!俺はここで生きていく

おとなのふりかけ紅鮭
ファンタジー
俺の名前は長瀬達也。特に特徴のない、その辺の高校生男子だ。 同じクラスの女の子に恋をしているが、告白も出来ずにいるチキン野郎である。 今日も部活の朝練に向かう為朝も早くに家を出た。 だけど、俺は朝練に向かう途中で事故にあってしまう。 意識を失った後、目覚めたらそこは俺の知らない世界だった! 魔法あり、剣あり、ドラゴンあり!のまさに小説で読んだファンタジーの世界。 俺はそんな世界で冒険者として生きて行く事になる、はずだったのだが、何やら色々と問題が起きそうな世界だったようだ。 それでも俺は楽しくこの新しい生を歩んで行くのだ! 小説家になろうでも投稿しています。 メインはあちらですが、こちらも同じように投稿していきます。 宜しくお願いします。

エラーから始まる異世界生活

KeyBow
ファンタジー
45歳リーマンの志郎は本来異世界転移されないはずだったが、何が原因か高校生の異世界勇者召喚に巻き込まれる。 本来の人数より1名増の影響か転移処理でエラーが発生する。 高校生は正常?に転移されたようだが、志郎はエラー召喚されてしまった。 冤罪で多くの魔物うようよするような所に放逐がされ、死にそうになりながら一人の少女と出会う。 その後冒険者として生きて行かざるを得ず奴隷を買い成り上がっていく物語。 某刑事のように”あの女(王女)絶対いずれしょんべんぶっ掛けてやる”事を当面の目標の一つとして。 実は所有するギフトはかなりレアなぶっ飛びな内容で、召喚された中では最強だったはずである。 勇者として活躍するのかしないのか? 能力を鍛え、復讐と色々エラーがあり屈折してしまった心を、召還時のエラーで壊れた記憶を抱えてもがきながら奴隷の少女達に救われるて変わっていく第二の人生を歩む志郎の物語が始まる。 多分チーレムになったり残酷表現があります。苦手な方はお気をつけ下さい。 初めての作品にお付き合い下さい。

異世界帰りの元勇者、日本に突然ダンジョンが出現したので「俺、バイト辞めますっ!」

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
俺、結城ミサオは異世界帰りの元勇者。 異世界では強大な力を持った魔王を倒しもてはやされていたのに、こっちの世界に戻ったら平凡なコンビニバイト。 せっかく強くなったっていうのにこれじゃ宝の持ち腐れだ。 そう思っていたら突然目の前にダンジョンが現れた。 これは天啓か。 俺は一も二もなくダンジョンへと向かっていくのだった。

【完結】魔王を倒してスキルを失ったら「用済み」と国を追放された勇者、数年後に里帰りしてみると既に祖国が滅んでいた

きなこもちこ
ファンタジー
🌟某小説投稿サイトにて月間3位(異ファン)獲得しました! 「勇者カナタよ、お前はもう用済みだ。この国から追放する」 魔王討伐後一年振りに目を覚ますと、突然王にそう告げられた。 魔王を倒したことで、俺は「勇者」のスキルを失っていた。 信頼していたパーティメンバーには蔑まれ、二度と国の土を踏まないように察知魔法までかけられた。 悔しさをバネに隣国で再起すること十数年……俺は結婚して妻子を持ち、大臣にまで昇り詰めた。 かつてのパーティメンバー達に「スキルが無くても幸せになった姿」を見せるため、里帰りした俺は……祖国の惨状を目にすることになる。 ※ハピエン・善人しか書いたことのない作者が、「追放」をテーマにして実験的に書いてみた作品です。普段の作風とは異なります。 ※小説家になろう、カクヨムさんで同一名義にて掲載予定です

高校からの帰り道、錬金術が使えるようになりました。

マーチ・メイ
ファンタジー
女子校に通う高校2年生の橘優奈は学校からの帰り道、突然『【職業】錬金術師になりました』と声が聞こえた。 空耳かと思い家に入り試しにステータスオープンと唱えるとステータスが表示された。 しばらく高校生活を楽しみつつ家で錬金術を試してみることに 。 すると今度はダンジョンが出現して知らない外国の人の名前が称号欄に現れた。 緩やかに日常に溶け込んでいく黎明期メインのダンジョン物です。 小説家になろう、カクヨムでも掲載しております。

処理中です...