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「61話」
しおりを挟む「それでどういったお話でしょうか?」
とりあえず家に入れた……と言うか上がり込んできたけど、通報していいかな?こいつら。
いわゆる背広組ってやつだろうか、現場の人達とはだいーぶ雰囲気が違う。
「単刀直入に言いましょう。 ダンジョンで入手したものを全て提出して頂きたい」
「もう自衛隊さんに渡しましたが……」
何言ってんのこの人。
自衛隊さんには家にあったポーションと……あとダンジョン内でばれないようにこっそり出したポーション100個を渡してある。
ダンジョンに連れていく口実だったけど、一応ね。
てか、情報行ってないのだろうか?
「他にもあるでしょう? そうで無ければ銃も無しにダンジョンに潜れるはずがない」
「?」
と、このどこかムカつく連中にポーションを渡した事を伝えるも、返ってきたのはそんな言葉だった。
ダンジョンでポーション以外も拾ったと思ってる?拾ってるけど。 で、それを使って攻略をしていると? 攻略してるけど。
……それは置いといて、そもそも銃より肉体使ったほうが良いって伝えたよな?
話やっぱ伝わってないんじゃない?
なんかおかしいぞ。 そう思った俺が首を傾げると、目の前の男はそれを俺が胡麻化しているとでも取ったらしい。
「……渡すつもりは無いと?」
大きくため息を付き、両手を組んで前屈みなったかと思うと、俺を睨みつけ低い声でそう言った。
ほーん? 脅してるつもりなのだろうか?
「今度の審議でダンジョンに関する法案が成立する。 それにはダンジョンで入手した物を無断で所持した場合重罪に問う、と言う内容も含まれる。 分かるか? 早く出したほうが身のためだ」
え、本格的にどうしよう。
ぶん殴ってダンジョンに退避するか?
それともダンジョンに隠してあると言って、ダンジョンでぶん殴って逃げる?
どうしようかな、ぶん殴るって選択しか思い浮かばないぞ、困ったな。 ハハハッ。
そんな感じで俺がどこを殴ると一番ダメージ少なくて痛みを感じるだろうか? ってところまで考えだしたとき、ふいに茶の間の扉が開く音がした。
「うちの隊員に何の用ですか?」
次は誰だ?と思ったら都丸さんだった。
……ん? 隊員って俺のこと?
「何ですか貴方は……隊員? 何を言っている?」
「彼は予備自衛官です。 彼に何の用ですか? 任務の最中に勝手をされては困りますね。 ところであなたの所属は?」
俺が隊員と聞いて困惑した様子を見せる男に対し、都丸さんがそう冷たい口調で話す。
ただでさえ厳ついのに、この口調で話すと圧がぱないな。
しかし……玄関開けたことに気が付かないとはね。 どうやら俺はかなり気が動転していたらしい。
男は都丸さんに問われ、軽く舌打ちすると渋々といった様子で話し始める。
都丸さんの言葉を本当だろうと思ったのかな。
うっかり何のこと?みたいな顔しなくてよかった。
「……外〇省の会田だ。 これは政治の問題でね、一自衛官が口を出す話じゃない」
まてこら。
自衛隊関係ないじゃん!
背広組ですらないし! どうやって入ってきたし。
てかなんで外〇省?
外〇省ってあれよね、外交とかやるところだよね……? なんでこの場に来たんだ?
なんかくっそ面倒なことになる予感がするぞ。
これは、もうあれだな。
困ったときのアマツ頼りしかないか?
都丸さんは俺を助けに来てくれたのだろうけど、変にもめると都丸さんの立場も不味くなったりするよね?
よし、アマツ頼りだ。
「そんな大事な話をするのであれば、なおさら上を通して貰えますか? そもそも」
「えっと、会田さんでしたっけ? さっきのダンジョンで入手した物を全て渡せと言う話ですが」
「おい……」
都丸さんがさらに男を問い詰めようとしたところに割って入る。
俺の言葉を聞いた都丸さんの目がさらに冷たく鋭くなる……都丸さんが何か行動に出る前に、言ってしまおう。
「私や自衛隊さんではなく、ダンジョンの管理者に聞いたほうが良いですよ」
「……は?」
規制掛からないことを祈りながら、ダンジョンの管理者について目の前の男に話す。
その反応からは規制が掛かっているのかどうかは分からないが、掛かっていない事を期待しそのまま言葉を続けた。
「管理者はダンジョン内で得た物を、得た本人の了承無く奪う事を由としません。 あなたの行為によって結果として管理者が日本を見限り、日本からダンジョンが消えた場合、外務省はどう責任を取るんです? 他国ではダンジョンからポーションを入手出来るのに日本はそれが出来ない、その原因が一職員による越権行為だとしたら?」
そこまで一気に捲し立て、相手の様子を伺う。
俺の言葉を聞いて男の顔は、相当真っ赤になっていた。
ゆでダコみたい。
「……越権行為などでは無い」
「なら外務省の総意だと? 余計悪いですよ」
こちらを睨みつけ、そう言い返すが。
次の俺の一言で完全に黙り込む。
えー……もっと、こう言い返して来るかと思ったら、そうでもないのな。
ダンジョン無くなる云々が効いたのだろうか?
「……チッ」
最後に忌々しそうに俺を睨みつけ、舌打ちをすると男たちは家から出て行った。
……いや、本当に何しにきたし。
初手で警察呼ぶが正解だった気がしなくもない、それか他の隊員さんに声を掛けるか。
まあ、今更だけど……。
男たちが出て行ったのを見て、ふうと息を吐くと都丸さんが申し訳なさそうに声を掛けてくる。
「すまん、気付くのに遅れた上に大したフォローも出来なかった」
「いえ、都丸さんが来てくれた御かげで冷静になれました……しかし、なんだったんですかね? あれ」
いや、本当に助かった。
大勢に圧を掛けられながらあんな事言われたもんで、正直冷静ではなかった。
さっきは半ば冗談だったけど、あのまま行くと本気でぶん殴っていたかも知れない。
いくらなんでも殴るのは不味い……よね?
都丸さんはなんだったんですかね?と言う問いに対し、何とも言えない表情で頭を掻く。
「俺にもよく分からん……まあ、ただのアホだろ」
えぇ……なんでそんなのが外〇省に……?
まさか皆あんなのじゃないよね?
そんな俺の考えが表情に出ていたのだろう。都丸さんは苦笑しながらも言葉を続ける。
「優秀な人はとことん優秀だからな? 全身舌で出来てるんじゃないかって思うぐらいだ」
「何その化け物」
二枚舌とか言うレベルじゃないね。
化け物ですやん。
「しかし管理者か……まあ、ダンジョンなんだし居ても不思議ではない、か? ところでさっき話していたのは本当の事なのか?」
さっきの……攻略する物が云々かな。
自衛隊で実際に潜っている人ならそりゃ気になるよな。
「ああ、本当ですよ。 管理者は攻略する物が不利益を被ることを望んではいません……この辺りも規制に入るかと思ったんですけどねー……まあ、こっちの様子みて規制緩めてくれたのかな?」
「なるほど。 本当なのか……だとすれば凄くありがたい事だ」
彼らがダンジョンで手に入れた物は全て政府が一括管理していて、彼らのもとに来ることはない。
それが自分たちの手元に残るか、場合によっては政府で買い取りをしてくれたりする可能性だってある。
都丸さんが笑顔を見せるのも分かると言うものである。
ところで都丸さん、口調がちょっと変わってるけどこっちが素だったりするんかね?
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