家の猫がポーションとってきた。

熊ごろう

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「39話」

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「申し遅れました。 私、ダンジョンマスターよりBBQ広場の管理を任されています。 ピットマスターのマーシーと申します」

「お、おぉ……よ、よろしくでーす」

どこかで聞いたような名前……いや、気のせいだろう。

それよりも解体施設にいなかったおっちゃんが、こんなところに居るとは……いや、おっちゃんじゃないけどさ。

しかし、アマツと言いこのマーシー?と言い、人を驚かせるのが好きなのだろうか?
こう、もっと目立つ所に居てくれても良いと思うのですよ。


「よろしくお願い致します。 島津様」

「えーっと……それじゃ早速なんだけど。 さっき手に入れたお肉を食べたいんだけど、ここにある道具って好きに使っちゃってもいいのかな? お肉を切りたいんだけど」


管理を任されてるって事だし、とりあえずマーシーに聞いておけば問題なかろう。
解体施設で解体されたお肉は塊のままだからね、食べたいのはステーキであって肉の丸焼きではないのです。

「勿論です。ご自由にお使い下さい……もし宜しければ私の方で切り分ける事も出来ますが、如何致しましょう?」

「あ、そうなの? じゃあお願いしちゃおうかな」

まじか。
そんな事もできちゃうのか。

わざわざ言い出すぐらいなんだから、きっと俺より切るのは上手いだろうし、任せてしまおうか。
俺がきったらお肉が歪になりそうだし。


「とりあえずシンプルにステーキで食べたいから、ちょっと厚めでお願いしようかな」

「かしこまりました」

そう言うや否やマーシーはどこからか長い包丁を取り出すとお肉にぴたりと当て、こちらをちらりと見る。

どれぐらいの厚さが良いか確認したいようだ。

「うん、それぐらいでー。 ちなみに他にも色々出来ちゃったりするのかな?」

俺が同意するとマーシーはすっと一気にお肉を切ってしまう。
あの包丁切れ味やばいわ。

てか、切る以外にも出来ちゃうのかなもしかすると。


「はい、勿論です。 単純なものから凝ったものまで、何でも作れます……ですが、そちらのサービスはポイントが必要となっていまして、こちらがサービスの一覧で御座います」

なるほど出来ると。

……真っ赤な赤身のもも肉ステーキ。
正直なところ俺がやっても上手く焼ける自信はない。 生焼けか固くなるかのどちらかだと思うんだよね。

「おー。 ……じゃあとりあえずステーキ焼いて貰っちゃうかな。 味付けは塩コショウとレモンバターで。 あ、クロの分は味付けはなしで」

「かしこまりました」

俺の問いに答え、マーシーはこれまたどこからか端末を取り出し、俺へと手渡す。

中身はマーシーが提供出来るサービスの一覧であった。
単純に切ったり、焼いたりするほかにも色々な凝った料理も作れるらしい。
どれも日本のBBQではまず見ないような物が並んでいる。

ただ今日は単純にステーキをがっつり食べたい気分だったので、シンプルに焼いてもらうことにした。
味付けも塩コショウとレモンバターでシンプルに行こう。味付けも色々あったけれどね、それはまたの機会にしよう。

クロは猫だし、味付けなしだね。


「あ、普通の焼肉にもできるのね」

「勿論です」

肉を焼いて貰っている間に端末をざーっと眺めてみると、凝った料理以外にも普段自分たちがやるBBQ……と言うか焼き肉用のお肉なんかも用意出来るらしい。

漬けダレのセットもあったりするので、みんなで焼肉やろうぜ! って時に便利そうだ。

手間かかるやつをマーシーに任せて、自分たちは適当に焼いて食うと。素晴らしい。



「あとでじいちゃんばあちゃんにもお裾分けしたいから、食べ終わったらお願いしてもいいかな? 持ち帰り出来るよね?」

「畏まりました」

明日でも持って行ってあげよう。
あ、いやその前に一応味見してからかな。もし美味しくなかったらあれだし。


そんな感じで端末を眺めている間に、ステーキが焼きあがったようである。

「お待たせしました。 鉄板熱くなっていますのご注意ください」

「ありがと! うひょー、めっちゃでっかい」

超分厚いね。
3cmはありそう。

赤身でしかもこれだけ厚いとなると、噛み切るの大変そうだけど……。

「んんっ……うっまい!」

固いとかそんなことはなかった。

「赤身だから固いかと思ったけど、すんごい柔いね、焼き加減完璧すぎる。 超ジューシー」

噛むと程よい弾力と、肉汁がじゅわって出てきて超旨い。

お肉の味も良いね、変な臭みとかもないし。

あれ? お肉って少し熟成させないと美味しくないんだっけ?
でもこれ普通に美味しいよな……まあ、良いか。 美味しければなんでも良し! なのだ。

「クロも食ってる? 食ってるね、よしよし」

クロもかなり気に入ったらしい。
うにゃうにゃ鳴きながらがっついてるし、いつものご飯よりずっと食いつきが良い。
チュ○ル並みだね。



500gはあっただろうステーキだけど、あっと言う間に食べきってしまった。
……正直ちょっと物足りない。

「……牛タンも焼いてもらおうかな」

「畏まりました」

ほら、お裾分けする前に味見しないとですし?
この後に焼肉も食べないとだから、ちょっと少な目にしておくから大丈夫よ大丈夫。


「うまっ……んご? むーむー?」

牛タン美味しい。

もっしゃもしゃ食べていたら、ふいにスマホがぶいーんと震える。
なんぞ?


「中村だ。 すごい動画あったから見てみろだあ?」

高校の同級生からだった。
何やらすごい動画があったから見てみろと言うことで、ご丁寧に動画のリンクが貼り付けられている。

……どれ。見てみるか。


とりあえずリンクをぽちっとすると、某動画サイトのアプリが立ち上がる。
さて、どんな動画かなーと思い、画面を見るがそこに表示されたタイトルを見て口に含んでいた牛タンを危うく吹き出しそうになる。


「自宅の裏山でダンジョン見つけたので銃持って無双してきた……小説のタイトルかな?」

タイトルだけを見ると小説か何かと思うよね。
小説のタイトルかな、と口にするけどたぶん違うなーと見る前から分かった。


たぶんアマツが言ってた見つかったダンジョンのことなんだろうと思う。
ただ気になるのはタイトルが日本語って事は、日本のダンジョンなのかなーと……でも銃って書いてあるし、どういうこっちゃい。


ま、見てみればわかるよね。
それじゃ再生っとな。


「英語じゃん。 これ日本じゃないな……アメリカのダンジョン」

動画にまず出てきたのは銃を持ち、カメラに向かいテンション高く喋り捲るおっさんの姿だった。
ただ喋っている言語は英語っぽいし、おっさんもどうみても日本人ではない。

あと周りの風景とかも違うし、これどう見てもアメリカだね。


動画はまずおっさんが喋りながら裏山へと向かい、ぽつんと存在する扉を指さしさらに何かをまくし立てている。

……正直英語分からんのよね。
放送禁止用語を連呼してるのは分かるけど……まあたぶん中にモンスターがいるぞとか言ってると思う。モンスターって単語は聞こえたから。

てか、アメリカのダンジョンはいきなり扉があるのか。
こっちと違って洞窟?がある訳じゃないのね。

まあ極小ダンジョンだからってのもあるかも知れんけど。


んで、動画のほうはおっさんが扉を開け中へと入った場面へと移る。
中は……これまたうちとは違うね。 いかにも洞窟って感じだ、何故か明るいのは一緒だけど広さも大分違う。 うちが数人並んで戦うのが精一杯な感じの通路だけど、動画のほうは10人以上は行けそうな感じである。

おっさんはその通路を銃を構えながら歩いて行く、すると少し進んだ当たりで、遠くから何かが駆け寄って……え、まじで? ゴブリンだぞあれ。

数は5……しょっぱなの通路でゴブリンが5ってやばくないか?

このままじゃおっさんフルボッコになってしまう……そう思ったが、そこはやはり銃は強かった。

ズガガガッと言う派手な音がしたかと思うと、ゴブリンがパタパタと倒れていく。
なんとか近寄ったゴブリンもいたが、ショットガンで吹き飛ばされる。

動画はその後もしばらく道を進み、ゴブリンが出るたびに銃で蹴散らすを繰り返す。
そして弾が切れたのだろう、おっさんがカメラに向かい何か喋り、元来た道を進み始めたところで動画は終わっていた。


んー、やっぱ銃強いな。
てかあのゴブリン弱すぎな気がする……そういや刃物もってないな? 弱個体とかなんだろうか。


っと、返信しないと。

「なに、小説が実写化でもするの? てか、やたらとCGの出来いいね……っと」

まあ、こんなもんかね。
うん、これダンジョンだよねー知ってる知ってる。俺んちにもあるからさー! とか言える訳ないし。

するとすぐに返事がきた。
どうもネットだと本物じゃないか?って話が優勢なんだぞーとのこと。

まあ、あれをCGって言うのも無理があるか……?
いやでも最近のCGはすごいからなあ。

個人で作るには無理があるって感じなのかな。

「本物なら凄いけど、さすがに無いんじゃないー? っと」

返信はこんなもんかな。




「ついに広まったかー」

しかし、本当にいっきに来たねえ。
そのうち場所が特定されたり、ポーション見つかって騒ぎになったりするのかな。

そうなれば……どうなるかな、最初は国が動くかも知れないよな。
でも、アマツとしては色んな人にダンジョン攻略して貰いたいはず、国が独占って方向にはならない様にするだろう……大丈夫かな?


ま、これでダンジョンが広まるのも時間の問題となったって事だよね。
ここのダンジョンが世間に知られるのはまだまだ先になると思うけど、それまでに出来るだけ攻略進めてアイテムゲットしておきたい。



「攻略頑張らないとね。 どうせなら1番になりたいし」

そういってクロの頭をなでる俺。
いつの間にかクロが俺の横で画面を覗き込んでいたのだ。

ダンジョンのゴールがどこにあるのかは分からないけれど、どうせなら一番に攻略したいもんだ。
後から来た人に抜かれるとやっぱ悔しいし。しょうがないよね、だって俺男の子だしっ。

それにゴールにはもしかすると……いや、なんでもない。

がっつり食べて、寝て、明日からも気合入れて狩るとしよう。
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