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「38話」

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「まず、10階層到達おめでとう! ここからは再び四足タイプの敵が出るようになるよ。 味も悪くないからそっちも楽しむと良い」

味も悪くないと。
今日のお昼はステーキかな?

「あと10階層から先は特殊な力を持った敵ばかりだからね、楽しみにしておいて欲しい」

ほほー……あれ、なんか思い当たる節があるぞ。 さっきの牛だ。

「さっきのはそれですか。 ……死にかけになると能力が上がるとか? 火事場の馬鹿力てきな」

「ふふふ……それは秘密だよ!」

秘密って、ほとんど言っちゃってるようなもんじゃんー。
急に動きが良くなったのはそういうことだったのか。 これから出てくる敵も気を付けないとだなあ。


「あとは新しいアイテムが購入できる様になっているよ」

「おお! ……お、若返りのポーションが5年になってる」

新しいアイテム!

早速端末を開いて見てみると、若返りのポーションが5年のやつが追加されていた。
その他の怪我や病気用のやつも高い奴が追加されている。たぶんより効果が高いってことなんだろう……そういやこのポーションどこまでの怪我や病気を治してくれるんだろう。

今までのポーションでも今のところ全ての傷を癒すことが出来ている。
病気は分からない。なにせポーション入手してから罹ったことがないからだ。

もしかすると千切れた腕をくっつけたりとか、欠損を治したりとかそれぐらいすごい効果があるのかも知れない。

今後も深い階層に辿り着くたびにアイテムが更新されていくんだろうなあ。
次は15階で7年物のポーションが出るのかな? そうしたら合計で15年も若返ることになる。

クロとかもうぴっちぴちに若返ってしまうぞ。
てかじいちゃんばあちゃんも15年も若返ればだいぶ違うよね。

そのうち全世界の人が老いとは無関係になっていくんだろうなー。
病気も怖くなくなるし……ん? あれ?


「他にも色々追加されているよ……どうかしたかい?」

「あ、いえ。 その内ですけど、世界中にこのポーションが広まると思うんです」

世界中にダンジョン出来るらしーから、つまりはそうなるよね。

「うんうん、そうだね」

「そしたら人口いっぱい増えるじゃないですか。 食料とか大変だなあと、ふと思ったんです」

全世界の人類が、老いも病気も克服したらどうなるか。
俺の頭じゃそんないっぱい分かる訳じゃないけれど、少なくても人口が一気に増えるってぐらいは分かる。
そうなると食料やばいよねってのも分かる。 日本とか食料自給率低いし、もっとやばいだろう。


まあ、俺なんかが思いつくぐらいだから、そんな事をアマツが考えていない訳も無く。

「勿論その辺りは考えているよ、安心してして欲しい。 ここで出る敵が食べられるのもその一環さ。 あとは購入できるアイテムにも色々追加してあるよ……まあ、やり過ぎると被害を被る人も出るからね、調整しながらやっていくつもりではあるけど」

そう笑顔で答えるアマツ。

きっと何度もこういうことは経験しているはずだ、普段の姿はあれだけど任せておけばきっと大丈夫だと思う。



そう言った難しいことはアマツに任せて、俺はまず端末に何が追加されているかを確認する事にした。
装備やアイテムもそうだが、特に施設関連が前より充実しているように見える。

……猫部屋以外ろくに見てなかったから気のせいって可能性もあるが。


まあ、とりあえず見ていこう。
クロと猫部屋以外も購入すると約束したしね。


「おう……解体施設とかあるんですけど??」

もしかしてこれがさっきアマツが言ってたやつだろうか?
場所を用意するから自分で解体しろと? ははは、アマツの前で解体してくれようか。


まあ、たぶん違うと思うけどね。
解体用のおっちゃんが居て、頼むとぱぱっと解体してくれるとかそんな部屋だろう。
おっちゃん付きの施設ってすごいな。


それはそうと本当に色々あるね。

「改めてみると色々あるなーってか本当に増えてるな」

改めて見ると猫部屋以外にもほしい!と思う部屋がたくさんある。
ポイントはいっぱいあるし……。


「……分かってるって。 ちゃんと必要なのだけにするよ」

こっちをじとっと見つめるクロの頭をなで、そう告げる。

クロに嫌われたくないし、ちゃんと必要なのだけ選びますとも。



さて、まずは今必要としているものからだよね。

「解体施設は欲しいでしょ、あとランドリーも絶対欲しい」

牛を解体しないとだし、血で汚れたバックパックも洗いたい。
返り血ってなかなか落ちないんだよねえ。 靴とか最初の頃と色変わっちゃってるしさ。

他に必要そうなのはーっと。

「トレーニングルームある……まだ相談してないのに……すごい欲しい。 あとは……カフェルームってなんだ? 喫茶店?」

トレーニングルームはめちゃくちゃ欲しい。
カフェルームはなんだろうね、お茶とかお菓子出てくるのなら欲しいかな。

ダンジョン出るときって休憩所で休んでから出るんだけど、その時にこの手のがあると嬉しい。


あとは……なんか変なのあるぞ。

「BBQ広場ってなんだよ。 いや、想像つくけどさあ」

なんでこんなのあるんだーと思ったけど、ちょっと欲しい。

じいちゃんばあちゃんの家は本当に田舎だから、隣の家まで数百mとかそんなレベルだし、外で焼き肉やっても問題ないんだよね。
でも俺の家だとさすがにそうはいかない。

今後お肉がいっぱい手に入るっぽいし、焼き肉やりたい。
室内で焼いてもいいけどやっぱり外で焼き肉がしたいのだ。


「炊事場も地味に欲しいかな……えっと合計でいくらだ?」

下ごしらえとかするのによさそう。

ご飯も炊いたり出来たり? 焼き肉するならご飯は必須だよね。

さて、これらと猫部屋をすべて購入したとして果たして何ポイントになるのか……。



「猫部屋いれて35万ポイント……余裕で足りるじゃん」

余裕ですわ。
今の所持ポイント60万超えてるからね。

オーク狩りで一日3~4万は稼げちゃうんだよなあ。
最初の頃ポイントでひーひー言ってたのが懐かしい。



さて、購入するか。

「よっし購入っと……クロは他に何がいると思う?」

ぽちっと決定ボタンに触れると、休憩所の壁にぽぽぽんっと扉が現れた。
扉の先には購入した施設があるのだろう。

これで大体欲しいのはそろった、ただ購入したのはほぼ自分が欲しい施設ばかりだったので、クロにも欲しい施設がないか聞いてみる。

が、クロは尻尾を軽く振っただけで、あまり施設に興味を示すことはなかった。


「特に無いと……それじゃ早速猫部屋に――」

そう言うことならと猫部屋に向かおうとするが、途端にクロがにゃーっと強めに鳴く。

「――じゃなくて解体施設だね。 お肉傷んじゃうし」

うん、お肉が先。そうですとも。

さー、解体施設に行こうかっ。


俺はバックパックを持ち、解体と書かれた扉へと入っていく。

「おぉ……え、これまじで自分で解体しろってこと??」

扉の中はいかにも解体屋です!とアピールしてそうな造りとなっている。
部屋のあちこちに刃物やらお肉の塊やらが吊るされており、年季の入ってそうなテーブルには血の染みが……いや、まって。

おっちゃんがどこにも居ないんですけど? これまさかここにある道具を使って自分で解体しろとか言わないよね? アマツの前で解体しちゃうよ??


と、どうやってアマツの前で解体してやろうかと考えていたのだけど、クロの鳴き声ではっと我にかえった。

「んん? ……何々」

クロの前には箱とトレーがあった。
箱には端末がついており、どうもそこで何かを操作出来るらしい。

これがおっちゃんの代わりってことかっ。

ごめん、アマツ。

心の中でこっそり謝りつつ、俺は端末の操作を始めるのであった。



使い方はすごく簡単だった。
取説なくてもいけちゃうぐらいだね。

「なるほど、このトレーに解体したいものを置いて、あとはこの端末で操作すると。 回りのこれは飾りなのね」

この箱の中で解体作業の全てを行ってくれるそうな。
まわりのあれは雰囲気作りの為のオブジェクトってことだろう。

とりあえず俺は後ろ脚と頭をバックパックから出すと、トレーへと置いた。

「えーと……結構細かくなるのな。 脳みそとか要らんぞ……あ、破棄か売却も選べるのね」

端末を操作していくと、思っていたより細かく解体できる事が分かった。
肉だけではなく、筋、骨、皮、脳みそ等々……正直脳みそは要らないかなと思う。

幸いなことにこの場で破棄する、もしくは売却が選べたのでお肉以外はすべて売却してしまおう。

角は1本800ポイントだったよ。 つまり1匹につき1600ポイントだね、骨とか皮は量が少なかったからかポイントにはならなかった。1匹丸まるなら結構貰えるんじゃないかなー?

牛はお肉も貰えてポイントも結構もらえるので美味しいね。


「んじゃ、決定っと。 ……解体費用として500ポイント……まあ、これぐらいなら問題なし」

解体費用はタダじゃなかった。
でもまあ500ポイントであれば大した出費ではないので、問題ないかな。
自分でやったら大変だし。

「おぉ、ちゃんとお肉だっ」

決定を押すと、トレーが動き箱の中へと入っていく。
そしてすぐに入った側と逆から出てきたかと思えば、その時にはもうお肉に変わっていた。

「食べる?」

綺麗な赤身肉で美味しそうだ。
クロに聞いてみるとにゃーと返事がある。

俺の足をばりばりと引っ掻いているので、早く食わせいと言うことだろう。

「せっかくだしBBQ広場いってみようか」


BBQ広場っていうぐらいだから、きっと焼く道具とかもあると思うんだ。
なかったら諦めて家で焼くけどね。

お肉の乗ったトレーを持って、俺たちはBBQ広場の扉をくぐった。


「おぉ、結構広い……って、外ぉっ!?」

そこは思っていた以上に広かった。
むき出しの地面に、様々な道具が並び、普段見慣れたコンロから見たこともないような道具もある。
そのすべてがBBQ用の道具なのだろう。
周囲は森に囲まれおり、どこまで広がっているのかは分からない。

そしてなにより太陽と青空が広がっているのが驚いた。
ここ一応地下のはずなんだけどね、なんかもう別空間になってるって事なんだろうか?

まあ、その疑問に答えてくれるものはここには居ないのだが。
居たとしてもアマツぐらいなもんだ。



「はい、本物ではありませんが、空間を操作し外を再現することで、本格的なBBQを楽しんで頂ける様に作られています」

「ほー…………誰ェ!?」



背後から聞こえた謎の解説。

またアマツかと思ったんだけど、振り向いてみるとそこに居たのはアマツでは無かった。
と言うか人ですらない。

ゴーレムとも機械とも取れるそいつは、俺に向かい滑らかな動作で頭を下げるのであった。
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