家の猫がポーションとってきた。

熊ごろう

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「4話」

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「ここ、結構広いな……ちょっと不味いかも知れない」


大体1時間ぐらい経っただろうか。
結構な範囲を歩き回ったけど、まだまだ終わりが見えない感じだ。
構造自体は割と単純だったので道に迷ってはいないが、これ以上進むと不味いと思う。

まてよ……ここってダンジョンなんだよな。
もしかして――


「……マ、マップ」


――ゲームじゃないんだから、自動でマップが生成されるなんてある訳が無いんだ。
もしかしたら出てこないかなとか、淡い期待をもって口に出してみたけど何も起こらない。

マッピング用の道具を持ってこなかったのは失敗だったなあ。

クロの視線がどこか冷たいのは気のせいだと思いたい……。



「てかレベルアップとかないんだよなあ」

1時間ぶらぶらと歩きまわって、ちょいちょいネズミが襲いかかってきたので全部返り討ちにしたんだけどー……こうファンファーレがなったりとか、明らかに力が強くなったりとかそう言うのは今のところ無かったりする。
ダンジョンやポーションが有るんだからと期待してたんだけどな。

もっと倒せば違うのかも知れないけど、数を稼ぐのはちょっと難しそうだ。
と言うのも……。



「うげ、ここもか」

曲がり角からひょいと顔を出し、嫌そうな声を出しつつ顔をしかめる俺。
覗いた先にあったのはちょっとした教室ぐらいありそうな部屋であった。

それで何で俺が嫌そうにしているかと言うと、中にネズミが大量にたまっていたからだ。

たぶん10匹はいると思うよ。
さすがにあの数を相手にするとなると無傷って訳には行かない。
幸いなことにこいつら部屋に足を踏み入れない限り襲い掛かってくることは無いんだけどね……踏み入れた瞬間一斉に飛び掛かってくるんだ。それで一度酷い目にあった。

部屋に3匹ネズミがいてさ、あれ?なんでこいつら動かないんだろ~?なんて思いながら部屋に入ったら……一斉にこっち向いて飛び掛かって来たんだよ。

クロの助けが無ければたぶんどこか噛まれていたと思う。



「ポーションないなあ。 ここ見たら帰ろうかなー……? ……あ、あれこれって」

たまにネズミが襲ってくること以外特にこれと言った出来事も無く、そろそろ帰ろうかなと口にした直後だった。
何気なく通路から小部屋を覗いてみたら部屋の中央に箱がちょこんと鎮座していたのである。

あれ、絶対宝箱だ!

「た、宝箱!? あ、あけっ……いや、まって罠とかあったら……」


宝箱を前にしてすっごいテンション上がりまくってたけど、ふと冷静になる俺。
宝箱に罠って付き物だよね?

中身はすごく気になるけど罠が怖い。
罠に掛からずに開けるにはどうしたら良いのだろうか? 紐を結んで引っ張る? いや、それとも――

「あ」

――とか何とか考えていたらですね、小部屋の中にスッと入ったクロがね、前足でヒョイッと箱を開けちゃったんですよ。

罠は作動しなかった。て言うか罠なんて無かったんだろう。


「……ポーションだ」

ちょっと複雑な思いを抱きながらも俺はクロが開けた宝箱を覗き込む。
中にはどこかで見たことのある瓶……ポーションが入っていた。

クロはこうやってポーションを手に入れたって事なのか。


「よっし、一度戻ろうか? マップ書く道具も用意しないとだし、お腹も空いてきたしね」

とりあえずこれで目的は達成した。
これ以上進んでも迷う未来しか見えないし、お腹空いたし一度帰ろうと思う。

俺の言葉ににゃあと鳴いて来た道を戻り始めるクロ……。

「やっぱ言葉分かってそうな気が……ま、いいか」

たぶん気のせいだろう。
それにもし分かっていたとしても嬉しいだけだし。

そうして俺とクロは来た道を戻り始めるのであった。




「ネズミ出ないなー……通路に居たのは全部倒したし、1日経たないと出ないとか? ……あれ?」

ダンジョンだし、倒した敵が再ポップするとかありそうだよね? ってことで帰り道もネズミが出てくるかなと少し警戒しながら歩いていたのだけど出くわす事は無かった。

通路に居たのは全部倒したし、暫くは出ないのかなー……と考えたところであることに気が付いた。


「死体がないぞ……?」

あるはずのネズミの死体が無い。

さっきも言ったけど死体を持って帰ってもねえ? ……いや、もしかすると解体したら何か手に入る……事は無くても食えたりはするかも知れないけど? でもネズミを食べるのは怖いし。

って訳で死体は全て放置してきたので帰り道には結構な数のネズミの死体があるはずなんだけど、これが全て無くなっているのだ。

「掃除屋みたいのが居るのかな? それともダンジョンに吸収されちゃうパターン?」

死体が無くなっていた事から想像できるのは、一つはスライムみたいな死体の処理をしてくれる奴が居るパターン、もう一つがダンジョンに吸収されちゃうパターン。

血の跡とか無かったし、共食いは無いと思う。

「……まあどっちでもいっか」

まあ俺としてはそのどちらでも問題は無い。
死体の処理に困る事が無くなってくて助かったー……ぐらいにしか考えて無かったりする。

「おし、出口だー」

なんて考えていたら出口のすぐそこまで辿り着いていた。
戻って休憩にしよっと。
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