上 下
141 / 156
生を受けた理由

「140話」

しおりを挟む
地面が、敵がいっぱいすぎて黒く染まってる。
それは遠目で見るとまるで小さな虫か何かが大量に這いよる様に見え、背筋に悪寒が走る。

「うわぁぁぁぁぁ」

あの数はやばい!
前回の指導者のときはここまでは……あ、いや前回は上から眺めて訳じゃないから……いや、そんなの関係ないわ、多い!


「や、やばい。あれやばい……こ、攻撃しなきゃ! タマさんっ?」

目視できる範囲だけでも万とかそういう単位で敵が見える。
ここまでくるともう銀に任せてとか言っている場合じゃないっ。

隣にいたタマさんをゆさゆさとゆすり参戦を促すが、こっそりお腹をさすったのがばれて手を噛まれる。
タマさんっ、今はそんなことしている場合ではないのですよっ。 悪いの俺だけどな!!


「いっぱいきたニャー」

「呑気だね!?」

何その、のほほーんとした反応。
タマさん呑気すぎませんかっ!?

「少しでも減らさないと……ん? あ、毒か。 むっちゃ効いてるじゃん!」

俺一人じゃたかが知れているけど、どうにか数を減らさないと……そう思って、敵のほうを見ると土煙とはまた違った煙が……俺の毒が舞っている。
じわじわと森から染み出すように出てきていた敵がその煙のところで止まっていた。

……思ってたより強力な毒だった!



強力なのは良いことだ。
でも、それでもモンスターの群れは徐々に徐々に街を守る壁へと近づいてくる。

敵の中には毒が効きにくい、それかまったく効かない連中もいるようだ。
じわじわと確実に仲間の死骸を乗り越え進んでいく。


数時間後、最初は色が混ざり黒く見えていた群れが、色が判別できるようになるまで近くに近づいていた。

「そろそろ魔法の射程に入るニャ」

タマさんの言葉を聞いて、周りを見渡せばバリスタを担当していないもの……魔法がつかえるものが壁際に寄るとそれぞれの獲物を構えていた。


「街から1km地点に来ました。 銀の魔法を使える方は魔法の使用をお願いします」

そしてリタさんの合図と共に、一斉に魔法が放たれる。

事前にどの属性を使うかは決めてあったのだろう。
魔法はやがて一つにまとまり巨大な火球となり、モンスターの群れへと飛び込んでいった。

「おぉっ!?」

着弾と同時に地面にさらに巨大な火球が生まれる。
火球は群れの一角を飲み込み、跡形もなく消し飛ばしていた。

「すっげえ威力! 見事にぶっ飛んでる」

これならいける!

……なんて思ったら、後ろから敵がどんどん前進し空いた穴をすぐ埋めてしまう。

しかも、何やらモンスターの群れのあちこちで、ピカピカと何かが光だした。


「へ?」

なんだあれ?
まるでさっき撃った魔法みたいー……なんて考えたのがいけなかった!?

まさか敵も魔法使うんかい!?
さっきこちらが放った魔法と遜色ない……いや、数が違う!もっと大量に魔法が放たれてる!?


「おおぉぉぉぉぉっやっばあああいっ!?」

バチバチと雷を纏い、黒煙をまき散らしながら巨大な火球が壁に向かって一直線に向かってくる!

いや、さすがにあれくらったらやばくね!?
あれ絶対燃えちゃう!燃えちゃううぅう!?


くそっ、死ぬ前にタマさんをもふって……と思ったら、火球がこちらに近づくにつれ、チリチリと散り、規模が小さくなっていく。
そして壁にあたる寸前に何か光の障壁のようなものに阻まれ、霧散した。

お、おぉお……?
何かで防御してる? なん減衰してたっぽいけどそれでもかなり巨大な魔法だった。
あれを防ぐとか相当だぞ。

世界樹のー……ではない気がする。
あのチリチリ散ってたのが世界樹の力なんじゃないかな、となるとあの障壁はダンジョンシーカーが用意したか、それとも街にあらかじめ掛かっていたとか? 

うむ、よー分からん。
でも守れたから良し!

なるほどなるほど、こんな障壁あるならわりとなんとかなりそうだね。
いやー、もうこんなのあるならあるって言ってよね! まじでびっくりしたじゃん!



「まだこっちの防壁の方が強いニャ。 でもその内突破してくるニャ」

「え゛!? と、突破されたらどうするの……?」

突破されるんかいっ!
あれ、突破されたらどうなるの……?

「避けるか自力で防ぐニャ」

「えぇ……」

まじかい。
いや、あのでっかいの避けられる訳ないんじゃ……? で、でっかい盾用意しといたほうがいいんじゃ? あとで盾借りておこう。 ……盾で防げる気はしないけど。

「後半戦になればこっちの被害も増えるニャ。 だから最初は銀だけで戦って後半は金が戦うニャ。 銀は途中から補助に回るニャー」

oh……今のところ被害ないけど、それはたぶん相手がまだ表層~中層ぐらいの敵でしかないからであって、これから中層~下層の敵が相手となってくると被害も増えるってもんか。

ということはさっきの魔法、見た目が派手なだけで実はそんなに威力なかったのかも知れないね。


「被害減らしたいならがんばって桃量産するニャ」

「……だねっ」

桃を量産するイコール敵を倒すってことだし、桃は味方のブーストにも回復薬にもなる。
とりあえず狩って狩りまくるのだっ。




そんな狩って狩りまくった翌日。
前日の夜中まで狩り続けていた俺は、徹夜組を残し一旦休憩……というか寝ていたのだけど……。


「壁に張り付かれてるぅぅぅ!?」

妙に騒がしいと思ったら、壁際までモンスターが迫っていた。
しおりを挟む
感想 171

あなたにおすすめの小説

地獄の手違いで殺されてしまったが、閻魔大王が愛猫と一緒にネット環境付きで異世界転生させてくれました。

克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作、面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります! 高橋翔は地獄の官吏のミスで寿命でもないのに殺されてしまった。だが流石に地獄の十王達だった。配下の失敗にいち早く気付き、本来なら地獄の泰広王(不動明王)だけが初七日に審理する場に、十王全員が勢揃いして善後策を協議する事になった。だが、流石の十王達でも、配下の失敗に気がつくのに六日掛かっていた、高橋翔の身体は既に焼かれて灰となっていた。高橋翔は閻魔大王たちを相手に交渉した。現世で残されていた寿命を異世界で全うさせてくれる事。どのような異世界であろうと、異世界間ネットスーパーを利用して元の生活水準を保証してくれる事。死ぬまでに得ていた貯金と家屋敷、死亡保険金を保証して異世界で使えるようにする事。更には異世界に行く前に地獄で鍛錬させてもらう事まで要求し、権利を勝ち取った。そのお陰で異世界では楽々に生きる事ができた。

転生5回目!? こ、今世は楽しく長生きします! 

実川えむ
ファンタジー
猫獣人のロジータ、10歳。 冒険者登録して初めての仕事で、ダンジョンのポーターを務めることになったのに、 なぜか同行したパーティーメンバーによって、ダンジョンの中の真っ暗闇の竪穴に落とされてしまった。 「なーんーでーっ!」 落下しながら、ロジータは前世の記憶というのを思い出した。 ただそれが……前世だけではなく、前々々々世……4回前? の記憶までも思い出してしまった。 ここから、ロジータのスローなライフを目指す、波乱万丈な冒険が始まります。 ご都合主義なので、スルーと流して読んで頂ければありがたいです。 セルフレイティングは念のため。

攫われた転生王子は下町でスローライフを満喫中!?

伽羅
ファンタジー
 転生したのに、どうやら捨てられたらしい。しかも気がついたら籠に入れられ川に流されている。  このままじゃ死んじゃう!っと思ったら運良く拾われて下町でスローライフを満喫中。  自分が王子と知らないまま、色々ともの作りをしながら新しい人生を楽しく生きている…。 そんな主人公や王宮を取り巻く不穏な空気とは…。 このまま下町でスローライフを送れるのか?

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

テンプレな異世界を楽しんでね♪~元おっさんの異世界生活~【加筆修正版】

永倉伊織
ファンタジー
神の力によって異世界に転生した長倉真八(39歳)、転生した世界は彼のよく知る「異世界小説」のような世界だった。 転生した彼の身体は20歳の若者になったが、精神は何故か39歳のおっさんのままだった。 こうして元おっさんとして第2の人生を歩む事になった彼は異世界小説でよくある展開、いわゆるテンプレな出来事に巻き込まれながらも、出逢いや別れ、時には仲間とゆる~い冒険の旅に出たり 授かった能力を使いつつも普通に生きていこうとする、おっさんの物語である。 ◇ ◇ ◇ 本作は主人公が異世界で「生活」していく事がメインのお話しなので、派手な出来事は起こりません。 序盤は1話あたりの文字数が少なめですが 全体的には1話2000文字前後でサクッと読める内容を目指してます。

好色一代勇者 〜ナンパ師勇者は、ハッタリと機転で窮地を切り抜ける!〜(アルファポリス版)

朽縄咲良
ファンタジー
【HJ小説大賞2020後期1次選考通過作品(ノベルアッププラスにて)】 バルサ王国首都チュプリの夜の街を闊歩する、自称「天下無敵の色事師」ジャスミンが、自分の下半身の不始末から招いたピンチ。その危地を救ってくれたラバッテリア教の大教主に誘われ、神殿の下働きとして身を隠す。 それと同じ頃、バルサ王国東端のダリア山では、最近メキメキと発展し、王国の平和を脅かすダリア傭兵団と、王国最強のワイマーレ騎士団が激突する。 ワイマーレ騎士団の圧勝かと思われたその時、ダリア傭兵団団長シュダと、謎の老女が戦場に現れ――。 ジャスミンは、口先とハッタリと機転で、一筋縄ではいかない状況を飄々と渡り歩いていく――! 天下無敵の色事師ジャスミン。 新米神官パーム。 傭兵ヒース。 ダリア傭兵団団長シュダ。 銀の死神ゼラ。 復讐者アザレア。 ………… 様々な人物が、徐々に絡まり、収束する…… 壮大(?)なハイファンタジー! *表紙イラストは、澄石アラン様から頂きました! ありがとうございます! ・小説家になろう、ノベルアッププラスにも掲載しております(一部加筆・補筆あり)。

ステータスブレイク〜レベル1でも勇者と真実の旅へ〜

緑川 つきあかり
ファンタジー
この世界には周期的に魔王が誕生する。 初代勇者が存在した古から遍く人々に畏怖の象徴として君臨し続ける怪物。 それは無数の魔物が巣食う、世界の中心地に忽然と出現し、クライスター星全土に史上、最も甚大な魔力災害を齎したとされている。 そんな異世界に不可解に召喚されてから激動の数年間を終え、辺境の村に身を潜めていた青年、国枝京介ことレグルス・アイオライトは突然、謎の来訪者を迎えることとなった。 失踪した先代と当代の過去と現在が交差し、次第に虚偽と真実が明らかになるにつれて、暗雲が立ち込めていった京介たち。 遂に刃に火花を散らした末、満身創痍の双方の間に望まぬ襲来者の影が忍び寄っていた。 そして、今まで京介に纏わりついていた最高値に達していたステータスが消失し、新たなる初期化ステータスのシーフが付与される。 剣と魔法の世界に存在し得ない銃器類。それらを用いて戦意喪失した当代勇者らを圧倒。最後の一撃で塵も残さず抹消される筈が、取り乱す京介の一言によって武器の解体と共に襲来者は泡沫に霧散し、姿を消してしまう。 互いの利害が一致した水と油はステータスと襲来者の謎を求めて、夜明けと新たな仲間と出逢い、魔王城へと旅をすることとなった。

処理中です...