拝啓神様。転生場所間違えたでしょ。転生したら木にめり込んで…てか半身が木になってるんですけど!?あでも意外とスペック高くて何とかなりそうです

熊ごろう

文字の大きさ
上 下
118 / 156
生を受けた理由

「117話」

しおりを挟む
ダンジョンにいって例の岩を連打、桃を量産した俺たちはブーストしたレベルの恩恵をいかして息の続く限り走り続けた。

「ぜーはー……ぜーはー……し、死ぬ」

「ニャ」

頑張った甲斐もあり昼過ぎには街へとたどり着いたのだが、疲れすぎて吐きそう。

くそう……タマさんは当然としてゴリさん達も涼しい顔しておる。
たぶんレベル差と言うよりかは単純に俺の鍛え方が足らないんだろうね……ゴリさん達の筋肉は伊達では無いと言うことだ。


やっぱもっと鍛えないといけないよねー……っと、そのへんは落ち着いたら考えよう。
まずはドッペルゲンガーがどこに居るのか情報を集めないと。


そんな訳で門をくぐって街へと足を踏み入れたんだけどー……。

「ねえ、あれって平原の奴じゃ……」

「……うそ、まじ? なんで街中にいるのよ!」

ハハハハッ!
すっかり有名人ですよっ!

「すっごい見られてる。 ていうか逃げられたんですけど」

すれ違った人みんな振り返る。
ヒソヒソ話したり指さすぐらいならまだ良いけど、中には黄色い悲鳴をあげて逃げ出すご婦人までいるのですよ。

これがモテ期だったらどんなに良かったことか!


てかドッペルゲンガーよ、一体どれだけの人に手を出したんだって話ですわ。
街の大半の人が俺の顔知ってそうな気がするんですけど。 おかしいな、視界がぼやけてきたぞ。


「あー……平原ってさ、俺らが戦った後だろう? ギルドが招集かけて魔石を結構な数回収したが、それでもまだかなりの数が残っていてな。 で、街から結構な人数が平原に行っては残っていた魔石を回収していたらしくて……まあそこにあれが現れたと」

「つまり結構な人数に目撃されてるってことデスネ!」

俺の予想を裏付けしてくれてありがとう! 泣いて良い?


「ぐぅ……と、とりあえず情報集めないと。 ここってギルドってありますか?」

「規模は小さいが一応ある。 こっちだ」

まあ泣きわめいたって解決する訳じゃなし、ここはこらえて情報収集に専念するんだ俺っ!

街中のことはさっぱり分からないのでゴリさん達の後をついて歩くことしばし、随分小さめの……俺が泊まってた宿ぐらいの大きさかなこれ、ギルドにたどり着いた。

「本当だ小さい……いや、小さくたっていい。 情報さえもらえれば!」
道中受けた視線とか色々でもうグロッキー気味なのではよ入りたい。
建物の中ならこの針のむしろからも解放されるに違いない。

「たのもー!」

半ばやけくそ気味にギルドへと突入する俺。
入った瞬間皆の視線が一気に集まる。

ふむん、このあたりはどこのギルドも変わらないのかねー?
ま、とりあえず受け受けにごーごー。


「おい、あいつって平原の……」

「あいつ! 俺の下着をよくも……」

「いやでも平原の奴とは様子が違うぞ? ほかに仲間もいるようだし……」

あーあー聞こえなーい。

……てかパンツ取られた奴が居たぞっ!?
いやいや、ダンジョンシーカーなのに取られたんかいっ。
一般人ならまだしもそれはどうなのと思わなくもない……。


と、まあギルド内でも針のむしろだった訳ですけど、とりあえずガン無視して受付へと一直線に向かう。

「平原に現れた奴の情報をもらいたい」

幸いなことに並んでいる人いなかったので受付にべしっと手を置いて勢いのまま要件を伝えた。

受付のお姉さんはえ?え?って感じで俺の顔を見て戸惑った様子で答えを返す。

「え……そこに、居ますけど」

ちげーし!俺じゃねーし!
てか人を指さすんじゃありませんっ。

「違います。 平原に現れたのは俺の姿に化けたモンスターです、おそらく前回の指導者との闘い、その生き残りでしょう。 俺たちは指導者との戦いに参加したメンバーです、生き残りが居ると聞いて応援に来ました」

と、一気に言ってギルド証を見せる。

ここで動揺してはいけない。
隙を見せてギルド内の連中に絡まれでもしたらとても面倒くさいことこの上ない。
最悪犯人扱いで捕まりかねないし。

きっちり相手の目を見て真摯な表情で訴えるのだ。


「そ、そうなんですか……? あいつは街から西25kmほど行った地点……ここです。 他の印をつけた地点でも目撃されていますが、ここで一番目撃されています」

よおっし、情報ゲットだぜ。 まあ前回俺たちが戦闘したあたりなんですけどね。
あとは呼び止める隙を与えずにギルドを去るのみ!
ささっ、行きますぞ行きますぞ。

「ありがとうございます。 ゴリさん行きましょう」

「お、おう……お前のそんな真面目な顔初めて見たぞ」

ゴリさん余計なこと言わないっ。
大体俺は何時だって真面目でしょーに。
まったくもうっ。



さくっと移動しました。
25kmってさ普通に歩くとむっちゃかかるんだけど、全力で走ると本当にすぐ着いちゃう。
やばいね。今度時速何km出てるのか計ってみようかな?

「確かこの辺りだが」

「ただの荒れ地ですね……」

あたり一面荒れ地ですね。
草もろくに生えちゃいない。

かなーり激しい戦闘したからね、タマさん魔法ぶっぱしてたし、鉄竜がブレス吐きまくってたし。
地面にかなーり血が流れただろうし、そりゃー荒れ地になりますわな。

そんなことよりドッペルゲンガーはどこなのってお話ですね。

「ぱっと見は居ないな……他の場所にいるのか?」

草もろくにないから視界は良いんだよね。
地平線見えてるし、でも肝心な奴は居なさそう。

「ほかに目撃情報が多いのはー……森っすかね?」

「そうだな。 視界が悪いのにこれだけ目撃されているのなら案外そこが住処なのかも知れん」

「ウッドくん木だしねー」

うん……うん?
いや、別に俺森が好きって訳じゃないけど……ただ、この荒れ地よりは森になかに居るんじゃないかなーって気はする。
たぶん俺ならそうするし、ドッペルゲンガー……っていうか分体?もそうなんじゃないかな。

なので森に行くのは正解な気がするのです。

「確かに! じゃあ行ってみましょうか――」


森は荒れ地のすぐ目の前である。
俺たちは森に足を踏み入れ……そしてほんの数分で目当ての奴を見つけていた。

右半身が木で出来ていて、蔦を体から生やしシュルシュルと動かしている。 確かに、俺だ。
俺たちが見つけたのと同時に向こうもこちらに気が付いたらしく、いくつもの視線がこちらへと向けられる。


「――嘘でしょ」


俺が俺を。
いや…………俺たちが、俺を見つめていた。




全員まっ裸だった。
死にたい。
しおりを挟む
感想 171

あなたにおすすめの小説

【完結】初級魔法しか使えない低ランク冒険者の少年は、今日も依頼を達成して家に帰る。

アノマロカリス
ファンタジー
少年テッドには、両親がいない。 両親は低ランク冒険者で、依頼の途中で魔物に殺されたのだ。 両親の少ない保険でやり繰りしていたが、もう金が尽きかけようとしていた。 テッドには、妹が3人いる。 両親から「妹達を頼む!」…と出掛ける前からいつも約束していた。 このままでは家族が離れ離れになると思ったテッドは、冒険者になって金を稼ぐ道を選んだ。 そんな少年テッドだが、パーティーには加入せずにソロ活動していた。 その理由は、パーティーに参加するとその日に家に帰れなくなるからだ。 両親は、小さいながらも持ち家を持っていてそこに住んでいる。 両親が生きている頃は、父親の部屋と母親の部屋、子供部屋には兄妹4人で暮らしていたが…   両親が死んでからは、父親の部屋はテッドが… 母親の部屋は、長女のリットが、子供部屋には、次女のルットと三女のロットになっている。 今日も依頼をこなして、家に帰るんだ! この少年テッドは…いや、この先は本編で語ろう。 お楽しみくださいね! HOTランキング20位になりました。 皆さん、有り難う御座います。

婚約破棄された国から追放された聖女は隣国で幸せを掴みます。

なつめ猫
ファンタジー
王太子殿下の卒業パーティで婚約破棄を告げられた公爵令嬢アマーリエは、王太子より国から出ていけと脅されてしまう。 王妃としての教育を受けてきたアマーリエは、女神により転生させられた日本人であり世界で唯一の精霊魔法と聖女の力を持つ稀有な存在であったが、国に愛想を尽かし他国へと出ていってしまうのだった。

白い結婚三年目。つまり離縁できるまで、あと七日ですわ旦那様。

あさぎかな@電子書籍二作目発売中
恋愛
異世界に転生したフランカは公爵夫人として暮らしてきたが、前世から叶えたい夢があった。パティシエールになる。その夢を叶えようと夫である王国財務総括大臣ドミニクに相談するも答えはノー。夫婦らしい交流も、信頼もない中、三年の月日が近づき──フランカは賭に出る。白い結婚三年目で離縁できる条件を満たしていると迫り、夢を叶えられないのなら離縁すると宣言。そこから公爵家一同でフランカに考え直すように動き、ドミニクと話し合いの機会を得るのだがこの夫、山のように隠し事はあった。  無言で睨む夫だが、心の中は──。 【詰んだああああああああああ! もうチェックメイトじゃないか!? 情状酌量の余地はないと!? ああ、どうにかして侍女の準備を阻まなければ! いやそれでは根本的な解決にならない! だいたいなぜ後妻? そんな者はいないのに……。ど、どどどどどうしよう。いなくなるって聞いただけで悲しい。死にたい……うう】 4万文字ぐらいの中編になります。 ※小説なろう、エブリスタに記載してます

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る

マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息 三歳で婚約破棄され そのショックで前世の記憶が蘇る 前世でも貧乏だったのなんの問題なし なによりも魔法の世界 ワクワクが止まらない三歳児の 波瀾万丈

【本編完結】転生したら第6皇子冷遇されながらも力をつける

そう
ファンタジー
転生したら帝国の第6皇子だったけど周りの人たちに冷遇されながらも生きて行く話です

スキルが【アイテムボックス】だけってどうなのよ?

山ノ内虎之助
ファンタジー
高校生宮原幸也は転生者である。 2度目の人生を目立たぬよう生きてきた幸也だが、ある日クラスメイト15人と一緒に異世界に転移されてしまう。 異世界で与えられたスキルは【アイテムボックス】のみ。 唯一のスキルを創意工夫しながら異世界を生き抜いていく。

プラス的 異世界の過ごし方

seo
ファンタジー
 日本で普通に働いていたわたしは、気がつくと異世界のもうすぐ5歳の幼女だった。田舎の山小屋みたいなところに引っ越してきた。そこがおさめる領地らしい。伯爵令嬢らしいのだが、わたしの多少の知識で知る貴族とはかなり違う。あれ、ひょっとして、うちって貧乏なの? まあ、家族が仲良しみたいだし、楽しければいっか。  呑気で細かいことは気にしない、めんどくさがりズボラ女子が、神様から授けられるギフト「+」に助けられながら、楽しんで生活していきます。  乙女ゲーの脇役家族ということには気づかずに……。 #不定期更新 #物語の進み具合のんびり #カクヨムさんでも掲載しています

生活魔法は万能です

浜柔
ファンタジー
 生活魔法は万能だ。何でもできる。だけど何にもできない。  それは何も特別なものではないから。人が歩いたり走ったりしても誰も不思議に思わないだろう。そんな魔法。  ――そしてそんな魔法が人より少し上手く使えるだけのぼくは今日、旅に出る。

処理中です...