上 下
108 / 156
生を受けた理由

「107話」

しおりを挟む
期待してねと言ったからには……いや、心の中でだけどね。まあそれは置いといて、良い名前を考えてあげねばいかんでしょう。

「むー……」

道をテクテクと歩きながら何か良い名前はないかと頭をフル回転させる俺。

「むむー……」

だがしかし急にぽっと良い名前が出るわけもなく、仕方がないのでありきたりな名前だったり、有名な象の名前を思い出してはいるのだけど。

「……カンドゥラ?」

「だめかー」

俺の言葉に首を横に振る……くそ、名前無いから困るな。
とりあえず仮で象と呼んでおこう。

……見た目はそこまで象って訳じゃ無いんだけどね。鼻が長いだけで、それ以外は象とは大分違う。

じゃあどんな生き物?と言われると……そうだね、バクだったっけ?夢を食べちゃう妖怪みたいの。
あれを可愛くしたのに近いかも知れない。

「まだ決まってないのかニャー」

「いやー……中々気に入ったのが無いみたいでねえ」

適当な名前でいいならポンポン出るんですけどね?
ポチとか、ハナとか、レオとか。

しかしそんな簡単な名前では俺のセンスが疑われてしまうじゃない。
なので出来るだけ格好良い名前をですね……思い浮かばない時点でセンス無いんじゃ?とか言わない。泣いちゃうよ。

「まあその内いいの見つかるニャ。 それよりそろそろ走るニャ」

「おー……徐々に速度あげていこうね?」

「ニャ」

気が付けばお腹も落ち着いてきてた。
なのでそろそろ走ろうかとタマさんは言うが……ちらりと象を見てみる。
さっきはデカかったから速かったけど、小さくなった状態ではどうなんだろうか?
少しずつ速度を上げて……着いて来られなさそうなら背負うかねえ。

まあ、とりあえず走ってみるべ。



走り出して数分。
行きの半分ぐらいの速度で走っているけど象はきっちりついてきていた。
それに疲れている様子も無い。

「あれ、思っていたより速い……」

「速度あげてくニャー」

そういって速度を上げるタマさん。
ぐんぐん加速していき、終には俺が何とかついて行ける速度まで上げる……象は果たして着いてきているのだろうか? そう思い振り返ると……。

ばっちり着いてきてました。
しかも余裕まだありそう。


「…………俺が一番遅い?」

「ニャ」

「まじか……」

俺が遅い?
四足と二足の違いはあれどまさか負けると思わなかった。

え、まじで? この象を一方的に狩ってたあのにゃんこ達って……いや、深く考えるのはよそう。

世の中には凄いのがいっぱい居るのだ……ぐすん。



ひたすら走って、野宿して、またひたすら走ることしばし。
昼過ぎには無事、街へと到着してたのであった。行きよりペース速かったかもね。

あ、そうそう行きに昼飯食いに寄った街だけど、帰りはスルーすることにしました。時間も微妙だったし象を連れて入れるか分からんかったからねー。


んで、今は街に入ろうと門へと向かっているのだけど……門番がこっち指さして何か言ってるのが見えるなあ。

一番最初は怪しい奴!って止められたんだよね。懐かしい。
今回はちゃんと身分証あるし大丈夫だと思うけど、象がどうなるか……。



「どうぞ、お通りください!」

「あ、どもです」

杞憂だったようです!

「門ほぼ素通りだったねえ……」

ギルド証見せてタマさんの故郷の家畜なんですぅって言ったらあっさり通れましたわ。
俺の時はあんな止めたのに……まあ、そんだけ俺が怪しかったってことなんですケドネ!


んま、止められて長々と説明するよりはずっと良い。
とりあえず宿にいっておば……姉さんに象のこと説明しないとだ、それと家を買うことも……こっちは後でいっか。


「あ、お姉さん。馬小屋借りていいですか?」

「馬小屋? 別に構わないよ!」

すっごいあっさり許可が出た!

「馬小屋使っても良いって。 ごめんね、すぐ家探すから少しの間ここで我慢しててね」

象を馬小屋にいれてーの、果物をいっぱい置いてっと。
あとは家を探すからそれまで我慢してねと言うと、象はウンウンと頷いてその場に寝転がった。
そして長い鼻を果物に伸ばし、口へと運ぶとモシャモシャ食べ始める。
このまま食っちゃ寝するつもりらしい。

……うちのパーティー食っちゃ寝率高くないですかね?

まあ美味しいもの食べてたっぷり寝るってすごい魅力的だもん、しょうがないね。


さて、俺も部屋に戻って休むとしますか。



「着いたー! あー……なんだかんだで結構疲れるよねえ」

部屋に入るなりベッドにダイブする俺。
今はふかふかベッドなので顎を打つことなんてないんだぜ!

「明日は家探すニャー」

横になった俺の上に腰掛けるタマさん。
余ったドライフルーツをサクサクと食べながら明日の予定について話す……こぼさないでね?


しかし家かー。
不動産屋さんとかあるんかね? この街にきてから結構経つけど、その手の見たことないんだよね。

まあ、街中をあまり探検してないから見落としてるだけかもだけど。

なあ、タマさんに聞けば分かるか。

「あ、そういえばさ。家ってどうやって買うのかな?」

教えてタマさん!

「ギルドでお願いすれば買えるニャ」

「おう……なんでもやってるねえ、ギルド」

何でも屋さんかな?
あ、でもダンジョンシーカー限定でやってるとか? あまり一般の人をギルド内で見ることなんて無いし、なんとなくそんな気がする。


まあ、どっちでも良いのだけど。
お土産もあるしとりあえずギルドには行こうと思ってたから丁度良いね。
明日起きたら早速行こうと思います!



そして朝ですよ、朝!
やっぱ疲れていた見たいで、あの後そっこーで寝ましたわ。

「よっし、ギルドいっくぞー!」

「ニャ」

早朝だし、まだ人通りも少ない。
散歩がてらに象も連れて行ってあげよう。

んま、あっという間に着いちゃうから大した散歩にもならないかもだけどね。

実際ちょっと駄弁りながら歩いていたらすぐギルドに着いてしまう。

「おし、ここで待っててねーっと……ギルドも久しぶりだなー。 お土産喜んでくれるかな?」

んでさすがに中に象を入れるわけにはいかないだろうなーと言うことで、外で待ってるように言って俺とタマさんはギルドの扉を潜ったんだけどさ。

「……酒臭っ!?」

扉を開けた瞬間酒の臭いがムワッと鼻を直撃した。
ちょう酒臭い。
しおりを挟む
感想 171

あなたにおすすめの小説

転生5回目!? こ、今世は楽しく長生きします! 

実川えむ
ファンタジー
猫獣人のロジータ、10歳。 冒険者登録して初めての仕事で、ダンジョンのポーターを務めることになったのに、 なぜか同行したパーティーメンバーによって、ダンジョンの中の真っ暗闇の竪穴に落とされてしまった。 「なーんーでーっ!」 落下しながら、ロジータは前世の記憶というのを思い出した。 ただそれが……前世だけではなく、前々々々世……4回前? の記憶までも思い出してしまった。 ここから、ロジータのスローなライフを目指す、波乱万丈な冒険が始まります。 ご都合主義なので、スルーと流して読んで頂ければありがたいです。 セルフレイティングは念のため。

テンプレな異世界を楽しんでね♪~元おっさんの異世界生活~【加筆修正版】

永倉伊織
ファンタジー
神の力によって異世界に転生した長倉真八(39歳)、転生した世界は彼のよく知る「異世界小説」のような世界だった。 転生した彼の身体は20歳の若者になったが、精神は何故か39歳のおっさんのままだった。 こうして元おっさんとして第2の人生を歩む事になった彼は異世界小説でよくある展開、いわゆるテンプレな出来事に巻き込まれながらも、出逢いや別れ、時には仲間とゆる~い冒険の旅に出たり 授かった能力を使いつつも普通に生きていこうとする、おっさんの物語である。 ◇ ◇ ◇ 本作は主人公が異世界で「生活」していく事がメインのお話しなので、派手な出来事は起こりません。 序盤は1話あたりの文字数が少なめですが 全体的には1話2000文字前後でサクッと読める内容を目指してます。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

地獄の手違いで殺されてしまったが、閻魔大王が愛猫と一緒にネット環境付きで異世界転生させてくれました。

克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作、面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります! 高橋翔は地獄の官吏のミスで寿命でもないのに殺されてしまった。だが流石に地獄の十王達だった。配下の失敗にいち早く気付き、本来なら地獄の泰広王(不動明王)だけが初七日に審理する場に、十王全員が勢揃いして善後策を協議する事になった。だが、流石の十王達でも、配下の失敗に気がつくのに六日掛かっていた、高橋翔の身体は既に焼かれて灰となっていた。高橋翔は閻魔大王たちを相手に交渉した。現世で残されていた寿命を異世界で全うさせてくれる事。どのような異世界であろうと、異世界間ネットスーパーを利用して元の生活水準を保証してくれる事。死ぬまでに得ていた貯金と家屋敷、死亡保険金を保証して異世界で使えるようにする事。更には異世界に行く前に地獄で鍛錬させてもらう事まで要求し、権利を勝ち取った。そのお陰で異世界では楽々に生きる事ができた。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

システムバグで輪廻の輪から外れましたが、便利グッズ詰め合わせ付きで他の星に転生しました。

大国 鹿児
ファンタジー
輪廻転生のシステムのバグで輪廻の輪から外れちゃった! でも神様から便利なチートグッズ(笑)の詰め合わせをもらって、 他の星に転生しました!特に使命も無いなら自由気ままに生きてみよう! 主人公はチート無双するのか!? それともハーレムか!? はたまた、壮大なファンタジーが始まるのか!? いえ、実は単なる趣味全開の主人公です。 色々な秘密がだんだん明らかになりますので、ゆっくりとお楽しみください。 *** 作品について *** この作品は、真面目なチート物ではありません。 コメディーやギャグ要素やネタの多い作品となっております 重厚な世界観や派手な戦闘描写、ざまあ展開などをお求めの方は、 この作品をスルーして下さい。 *カクヨム様,小説家になろう様でも、別PNで先行して投稿しております。

異世界転生!俺はここで生きていく

おとなのふりかけ紅鮭
ファンタジー
俺の名前は長瀬達也。特に特徴のない、その辺の高校生男子だ。 同じクラスの女の子に恋をしているが、告白も出来ずにいるチキン野郎である。 今日も部活の朝練に向かう為朝も早くに家を出た。 だけど、俺は朝練に向かう途中で事故にあってしまう。 意識を失った後、目覚めたらそこは俺の知らない世界だった! 魔法あり、剣あり、ドラゴンあり!のまさに小説で読んだファンタジーの世界。 俺はそんな世界で冒険者として生きて行く事になる、はずだったのだが、何やら色々と問題が起きそうな世界だったようだ。 それでも俺は楽しくこの新しい生を歩んで行くのだ! 小説家になろうでも投稿しています。 メインはあちらですが、こちらも同じように投稿していきます。 宜しくお願いします。

変人奇人喜んで!!貴族転生〜面倒な貴族にはなりたくない!〜

赤井水
ファンタジー
 クロス伯爵家に生まれたケビン・クロス。  神に会った記憶も無く、前世で何故死んだのかもよく分からないが転生した事はわかっていた。  洗礼式で初めて神と話よく分からないが転生させて貰ったのは理解することに。  彼は喜んだ。  この世界で魔法を扱える事に。  同い歳の腹違いの兄を持ち、必死に嫡男から逃れ貴族にならない為なら努力を惜しまない。  理由は簡単だ、魔法が研究出来ないから。  その為には彼は変人と言われようが奇人と言われようが構わない。  ケビンは優秀というレッテルや女性という地雷を踏まぬ様に必死に生活して行くのであった。  ダンス?腹芸?んなもん勉強する位なら魔法を勉強するわ!!と。 「絶対に貴族にはならない!うぉぉぉぉ」  今日も魔法を使います。 ※作者嬉し泣きの情報 3/21 11:00 ファンタジー・SFでランキング5位(24hptランキング) 有名作品のすぐ下に自分の作品の名前があるのは不思議な感覚です。 3/21 HOT男性向けランキングで2位に入れました。 TOP10入り!! 4/7 お気に入り登録者様の人数が3000人行きました。 応援ありがとうございます。 皆様のおかげです。 これからも上がる様に頑張ります。 ※お気に入り登録者数減り続けてる……がむばるOrz 〜第15回ファンタジー大賞〜 67位でした!! 皆様のおかげですこう言った結果になりました。 5万Ptも貰えたことに感謝します! 改稿中……( ⁎ᵕᴗᵕ⁎ )☁︎︎⋆。

処理中です...