拝啓神様。転生場所間違えたでしょ。転生したら木にめり込んで…てか半身が木になってるんですけど!?あでも意外とスペック高くて何とかなりそうです

熊ごろう

文字の大きさ
上 下
78 / 156
森の賢人

「77話」

しおりを挟む
今まで散々オーガの体からちゅーちゅー吸っといて何を今更って感じだけど、血塊をもろにどーんと出されるとちょっとねえ……?

そんな訳で断固拒否するのです。


俺が真顔でお断りするとタマさんは血塊を湖のほうへと打ち出した。
そんな大量の血塊を入れたら湖が赤く染まるんじゃないのと思ったけど……思った以上に遠くに飛んでいったので結果は分からない。

こんだけ広けりゃ大丈夫かな……。


「ニャ」

すっ飛んでった血塊をみて満足そうなタマさん。
今度は包丁で鱗を剥ぎだした。
タマさんが包丁を振るう度に面白いぐらい鱗がぽろぽろと落ちていく。

やっぱでかいだけあって鱗の方も大きいね。
それにやたらとガッチガチだし、これってスケイルアーマーとか作れたりするのかな?

タマさんもその辺に放置せずに一箇所に集めてるぽいし、たぶん回収するつもりなんじゃないかなー?


鱗を引っ剥がし終えたタマさんは次はお腹を割き始める。
やはりあの巨体だけあって出てくる内蔵もこれまた大きい……そして一際大きな内臓がゴロンと腹から出てくる。

「肝でかっ」

「これも食べるニャ」

出て来たのは肝である。
アンコウやカジカに似たこの巨大魚である。きっと肝も美味しいに違いない。

鍋かなあ……やっぱ。
タマさん何作るつもりなんだろう?

捌いている姿を見るにちゃんとしたものが出て来そうな気はするけど……むむん。

「何か手伝えることある?」

「ニャ。 ウッドは料理できるのかニャ?」

「……目玉焼きぐらいなら」

そうだった俺、料理ダメだった。
魚の扱いなんかさっぱりだし、俺が手を出したらただの炭になりかねない……大人しくしてよう。

「荷物に炭が入っているから火を起こしてほしいニャー」

「ほいさ」

あ、それぐらいなら出来るよ!
炭はこれで火種はー……火種は?



むちゃくちゃ棒を擦ったった。



俺がなんとか火をおこす頃にはタマさんの解体も終わっていた。
部位によって大小様々な形に切られたお魚さん。すごく美味しそうです。


タマさんはでっかい鍋を火に掛けるとそこに水やら具材をぽいぽいと放り込んでいく。
ちなみに野菜は俺産です。
タマさん的には魚だけでよかったらしいけど、俺が食べたかったので入れて貰ったのだ。

鍋だけじゃ無くて焼き魚にもするつもりらしく、やたらとでっかい切り身に串をぶっすぶす刺していく。

あとは地面に串を刺して遠火でじっくり焼く模様である。
時々脂がじゅわーって言っててむっちゃ美味しそうです。
味付けは塩のみ。シンプルだけど間違いなく美味しいに決まっている。

ちなみに鍋の味付けはまだっぽい。 なんだろうねー?



焼き始めてから20分ぐらい経ったんだけど。
……そろそろ焼けたかな?

「まだかなー……あいたっ」

「まだニャ。 こいつはじっくり焼かないと美味しくないニャ」

手をそろーっと伸ばしたらはたかれたぞっ!
タマさん意外と厳しい。

「お鍋は?」

「そっちはもういけるニャ」

鍋の方は大丈夫らしく、タマさんはおたまで味噌をすくうと鍋に入れ溶かしはじめる。

「おお……鍋からいっちゃう?」

「でも少し煮込んだ方が美味しいニャ。 がまんニャ」

そういってバターをぽいっと鍋にいれるタマさん。
バターもいれちゃうのか! たぶん合うだろうけど食べたことないなあ……いやあ楽しみだ。
味噌とバターの香りがあたりに漂っててお腹がぐーぐー言い出したぞう。

…………え、まって。

「味噌ぉ!!?」

「ニャッ!?」

俺が急にでかい声を上げたもんでタマさんがびくっと身を竦ませる。
ごめん、タマさん!

「タ、タタタタマさん! そ、それって……」

それってどう見ても味噌だよね!?
な、なんでタマさんが……。

「ニャ。 たまの故郷で作ってる調味料ニャ。 見た目悪いけど美味しいニャー」

「おぉぉぉ……まじかぁ、まさか味噌があるなんて……泣けてきた」

まじかぁ……タマさんの故郷で作ってるなんて……。
この世界の料理美味しいし、そこまで求めていた訳じゃ無いけど……あると分かった途端むっちゃ嬉しくなってきた。
涙腺まで緩んできたし……ずびぃ。

「ニャー? ……焼いたのはそろそろできたニャ」

お味噌をゴソゴソとしまって不思議そうに俺を見るタマさん。
そうだよね、いきなり泣き出したら変な奴と思うよね。

でもそこには特に突っ込まず、すっと焼き魚を俺に手渡してくれる……天使かな?

「! いただきまあぐっ」

頂きますと言い終わる前にかぶりつく。
噛んだ瞬間、脂と……魚だけど肉汁があふれ出す。
皮はぱりっぱりに焼き上がっていて香ばしい。

つまりは超美味しい。

「んっっっま! 焼き加減まじで完璧だこれ!」

身がすっごいふっくらでジューシーなのよ。
焼きすぎず、かといって決して生焼けなんかじゃない……タマさんぱねえ。

「皮うまーい」

皮がおいしい。
巨体の割にはあまり厚くないんだよね、鮭の皮に通じる美味しさがある。

「鍋も食べるニャ」

! そうだ鍋があった。
久しぶりの味噌だ、しっかり堪能しないと。

「あ、お野菜ちゃんと取ってる。 えらいえらい」

タマさん自分の器によそうときにちゃんとお野菜も入れてるね。
えらいえらい。 撫でようとすると相変わらず噛んでくるけど、えらいぞう。

「ちょっとでいいニャ」

……まあ、やっぱ野菜自体はそんな好きではないみたい。


あ、俺のはお野菜たっぷりでお願いしますね。
今回入れたのは大根と人参と白菜少々、それに大根の菜っ葉も入れてみてる。
味噌仕立てだし、間違いなく美味しいでしょ。

「あ゛あ゛ぁ゛ぁ~…………出汁やべえ。味噌味うめぇ……バターも良い感じで濃くが出てうめぇ」

出汁がやばすぎる。
魚とお野菜の旨味にお味噌とバター……鍋丸ごと飲み干せそう。

「骨は気を付けるニャ」

たまに骨がいるけど、やったらとぶっとい。
これ刺さったら大惨事だね。 まあ、こんだけ目立つからすぐ取り除けるんだけどね。

「おー。 ……皮ぷるっぷるだ。 さっきはパリパリだったのに煮るとこうなるんだ」

焼いたときはぱりっぱりだったのに煮るとぷるぷるな皮。とても美味しいれす。
コラーゲンたっぷりでお肌によさそう。リタさん喜びそうねこれ。

絶対一匹丸々は食い切れないし、お土産にするのもありかも? タマさん次第だけどね。

「あー……うま」

鍋も焼き魚もおいしい。
一串目とか結構な大きさだったのにもう食べちゃったし。

もう一本いっておこうかなー……あ、そうだ。

「あ、そうだ……カボス……いや、色々出せばいいか?」

焼き魚にかけようと思ってたんだ。
色々種類あるし、知っているのは全部出しちゃおう……どうせなら美味しいの出したいし、まわりに根を張ってと……どうせ何度も作るんだろうし、遠くまで伸ばしておこうかね。
しおりを挟む
感想 171

あなたにおすすめの小説

悪役令息に転生したけど、静かな老後を送りたい!

えながゆうき
ファンタジー
 妹がやっていた乙女ゲームの世界に転生し、自分がゲームの中の悪役令息であり、魔王フラグ持ちであることに気がついたシリウス。しかし、乙女ゲームに興味がなかった事が仇となり、断片的にしかゲームの内容が分からない!わずかな記憶を頼りに魔王フラグをへし折って、静かな老後を送りたい!  剣と魔法のファンタジー世界で、精一杯、悪足搔きさせていただきます!

はぁ?とりあえず寝てていい?

夕凪
ファンタジー
嫌いな両親と同級生から逃げて、アメリカ留学をした帰り道。帰国中の飛行機が事故を起こし、日本の女子高生だった私は墜落死した。特に未練もなかったが、強いて言えば、大好きなもふもふと一緒に暮らしたかった。しかし何故か、剣と魔法の異世界で、貴族の子として転生していた。しかも男の子で。今世の両親はとてもやさしくいい人たちで、さらには前世にはいなかった兄弟がいた。せっかくだから思いっきり、もふもふと戯れたい!惰眠を貪りたい!のんびり自由に生きたい!そう思っていたが、5歳の時に行われる判定の儀という、魔法属性を調べた日を境に、幸せな日常が崩れ去っていった・・・。その後、名を変え別の人物として、相棒のもふもふと共に旅に出る。相棒のもふもふであるズィーリオスの為の旅が、次第に自分自身の未来に深く関わっていき、仲間と共に逃れられない運命の荒波に飲み込まれていく。 ※第二章は全体的に説明回が多いです。 <<<小説家になろうにて先行投稿しています>>>

悪役貴族の四男に転生した俺は、怠惰で自由な生活がしたいので、自由気ままな冒険者生活(スローライフ)を始めたかった。

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
俺は何もしてないのに兄達のせいで悪役貴族扱いされているんだが…… アーノルドは名門貴族クローリー家の四男に転生した。家の掲げる独立独行の家訓のため、剣技に魔術果ては鍛冶師の技術を身に着けた。 そして15歳となった現在。アーノルドは、魔剣士を育成する教育機関に入学するのだが、親戚や上の兄達のせいで悪役扱いをされ、付いた渾名は【悪役公子】。  実家ではやりたくもない【付与魔術】をやらされ、学園に通っていても心の無い言葉を投げかけられる日々に嫌気がさした俺は、自由を求めて冒険者になる事にした。  剣術ではなく刀を打ち刀を使う彼は、憧れの自由と、美味いメシとスローライフを求めて、時に戦い。時にメシを食らい、時に剣を打つ。  アーノルドの第二の人生が幕を開ける。しかし、同級生で仲の悪いメイザース家の娘ミナに学園での態度が演技だと知られてしまい。アーノルドの理想の生活は、ハチャメチャなものになって行く。

異世界転生したのだけれど。〜チート隠して、目指せ! のんびり冒険者 (仮)

ひなた
ファンタジー
…どうやら私、神様のミスで死んだようです。 流行りの異世界転生?と内心(神様にモロバレしてたけど)わくわくしてたら案の定! 剣と魔法のファンタジー世界に転生することに。 せっかくだからと魔力多めにもらったら、多すぎた!? オマケに最後の最後にまたもや神様がミス! 世界で自分しかいない特殊個体の猫獣人に なっちゃって!? 規格外すぎて親に捨てられ早2年経ちました。 ……路上生活、そろそろやめたいと思います。 異世界転生わくわくしてたけど ちょっとだけ神様恨みそう。 脱路上生活!がしたかっただけなのに なんで無双してるんだ私???

暗殺者から始まる異世界満喫生活

暇人太一
ファンタジー
異世界に転生したが、欲に目がくらんだ伯爵により嬰児取り違え計画に巻き込まれることに。 流されるままに極貧幽閉生活を過ごし、気づけば暗殺者として優秀な功績を上げていた。 しかし、暗殺者生活は急な終りを迎える。 同僚たちの裏切りによって自分が殺されるはめに。 ところが捨てる神あれば拾う神ありと言うかのように、森で助けてくれた男性の家に迎えられた。 新たな生活は異世界を満喫したい。

異世界転生!俺はここで生きていく

おとなのふりかけ紅鮭
ファンタジー
俺の名前は長瀬達也。特に特徴のない、その辺の高校生男子だ。 同じクラスの女の子に恋をしているが、告白も出来ずにいるチキン野郎である。 今日も部活の朝練に向かう為朝も早くに家を出た。 だけど、俺は朝練に向かう途中で事故にあってしまう。 意識を失った後、目覚めたらそこは俺の知らない世界だった! 魔法あり、剣あり、ドラゴンあり!のまさに小説で読んだファンタジーの世界。 俺はそんな世界で冒険者として生きて行く事になる、はずだったのだが、何やら色々と問題が起きそうな世界だったようだ。 それでも俺は楽しくこの新しい生を歩んで行くのだ! 小説家になろうでも投稿しています。 メインはあちらですが、こちらも同じように投稿していきます。 宜しくお願いします。

転生幼女のチートな悠々自適生活〜伝統魔法を使い続けていたら気づけば賢者になっていた〜

犬社護
ファンタジー
ユミル(4歳)は気がついたら、崖下にある森の中にいた。 馬車が崖下に落下した影響で、前世の記憶を思い出す。周囲には散乱した荷物だけでなく、さっきまで会話していた家族が横たわっており、自分だけ助かっていることにショックを受ける。 大雨の中を泣き叫んでいる時、1体の小さな精霊カーバンクルが現れる。前世もふもふ好きだったユミルは、もふもふ精霊と会話することで悲しみも和らぎ、互いに打ち解けることに成功する。 精霊カーバンクルと仲良くなったことで、彼女は日本古来の伝統に関わる魔法を習得するのだが、チート魔法のせいで色々やらかしていく。まわりの精霊や街に住む平民や貴族達もそれに振り回されるものの、愛くるしく天真爛漫な彼女を見ることで、皆がほっこり心を癒されていく。 人々や精霊に愛されていくユミルは、伝統魔法で仲間たちと悠々自適な生活を目指します。

今さら言われても・・・私は趣味に生きてますので

sherry
ファンタジー
ある日森に置き去りにされた少女はひょんな事から自分が前世の記憶を持ち、この世界に生まれ変わったことを思い出す。 早々に今世の家族に見切りをつけた少女は色んな出会いもあり、周りに呆れられながらも成長していく。 なのに・・・今更そんなこと言われても・・・出来ればそのまま放置しといてくれません?私は私で気楽にやってますので。 ※魔法と剣の世界です。 ※所々ご都合設定かもしれません。初ジャンルなので、暖かく見守っていただけたら幸いです。

処理中です...