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木の中にいる

「35話」

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落ち着いたところでぼりぼりと頭をかいてすまなそうに俺へと話しかけるキンドリーさん。

「すまんなそんなふうになるとは思わなかった」

「いえ、キンドリーさんのせいではありません。 体について聞いたのは俺ですし、キンドリーさんはそれに応えてくれただけですし」

「そうか……すまんな」

改めて謝るキンドリーさんにこちらのほうが申し訳なくなってくる。
お願いしたのは俺なんだし、キンドリーさんはただ答えてくれただけだからね。

あの違和感も早めにわかっておいてよかったと思う。
もしぶっつけ本番であの力を使って、しかも長期戦とかになったら……こわっ。

「そうだなあ……とりあえず今分かってることを良ければ見せてくれないか? もしかすると何か気付くことがあるかも知れん」

ん……とりあえずゴリさんのアドバイスに従って、吸いまくったあとに時間経過とかで弱くなるのは言わないで……ほかは言っても大丈夫かな。 たぶん、大体の力は予想ついているだろうしね。

「そうですね……とりあえずこんな感じで根っこで地面から養分やら何やら吸い取れます。 飯食わなくてもしばらくは大丈夫みたいですね」

「めちゃくちゃ便利だな、おい」

とりあえず根っこでちゅーちゅー吸ってみる。
うむ、実際便利ですぞ。

「あとは、ちょっと吸い過ぎると枯れちゃうんですが……こんな感じで大量に吸うとその分補正が上がります」

んで一気に吸ってみる。
枯れるとドン引きされそうなので、枯れない程度に抑えるのを忘れない。

「ほー……確かにしんなりしてるなあ」

「それと果物がなります……分かっているのはこれだけなんですよね」

「あとは一応無理すれば木を動かすことも出来ると……あれはいざって時以外は使わない方がいいだろう」

じーっと俺の手足を眺めながら考え込むキンドリーさん。
何かほかに出来るものがないか考えているのだろう。

その視線が俺の腕から足へといったところでぴたりと止まる。
何か思いついたのかな?

「その根っこって自分で好きに動かせるのか? 例えば離れた所に居る相手を地面から強襲したりとか……」

「! やってみます!」

考えたことなかった。
ちゅーちゅー吸うことにしか使ってなかったから……根っこだし。

たぶん好きににょっきにょっき生やせるから自由に動かせるとは思うけども。とりあえずやってみますかね!

とりあえず根っこをさして……とりあえずタマさんのほうでいいか。
根っこよタマさんのほうに行くのだっ。


「……一応出来ますが」

とりあえず成功はした。
でも……。

「ニャ。地面がもこもこしてるニャー」

「すぐばれそうだな……細い根っこは出せないのか?」

超おっそい。
しかも地面がもこもこ膨らむから何か近づいてるのモロばれだし。
このままじゃ使えないだろうね。 細い根っこが出せるかは分からないけどこのままじゃダメだし……試してみよう。

「やってみますね……おおっ?」

細い根っこ出た!
なんか白くてひょろいのがわっさわさ出てきた。

「ニャ?」

「さっきより早く動いてる!」

しかも細いからかさっきと全然動きが違うね。
地面のなかをしゅるしゅるしゅるって感じで動いてる。むっちゃ早いけど自分でだしといてあれだけど……ちょっと気持ち悪いカモ。


「よし、じゃあ合図したらそこから俺の足を根っこで絡め取ってみてくれ…………よし、やってくれ」

実験台ですね。
でも野郎を触手でからめとる趣味は……くそう。

「はいっ」

やるしかない。

「うおっ!? ……結構早いぞこれ、初見だと避けるの難しいだろうな」

ぶわっさぁ!て感じで地面が噴出しそこから一拍おくれて触手の群れ……じゃなくて細い根っこが飛び出してくる。
んで、急に飛び出たもんでキンドリーさんも驚いたようだ。
ただ避けれない程ではなさそうな感じがするね、思ったより早くて驚いた程度だと思う。

キンドリーさんのレベルがいくつかは知らないけど、補正高いし……同格なら通じそうな気がするけどよく分からないね。
なんて考えていた時であった。

「強度は……あ」

「いったああぁっ!?」

強度を確かめようとしたキンドリーさんが足に力をいれた途端、ブチブチブチッと根っこが盛大に切れた。
あれだ、リンゴもいだ時並みに痛い。つまり根っこの数だけ鼻毛むしられた感じ。ひどい。

俺が悶絶しているとタマさんとキンドリーさんは何やら考察を始めていた。
ちょっとぐらい心配してくれたって罰はあたらないよっ!?

「細いぶん弱いニャ」

「しかも自分の体だから引き千切られると痛えと……ん?てことはそれ根っこ戻すまで自分も動けないんじゃないか? 動いたら千切れるだろそれ」

ああ、そうか根っこ張ってる間は自分も動けないのか。
細ければ動けるけど、痛いし相手を抑えることも難しそう。
で太ければ動けないと……。

「あかん」

「他に何か出せないのかニャー」

失意のあまり地面に横たわる俺。

そんな俺をつんつんと枝でつつくタマさん。
つついてもリンゴは出ませんよ?

「枝……枝を出してどうするって話しだな。蔦とかは出ないのか?」

枝でつつくタマさんを見て、枝を出すことを思いついたキンドリーさんであったが、枝だしてもたぶん邪魔なだけだよね。
んで、次に思いついたのは蔦と……たしかにあれなら腕からも出せそうだし動けなくなることはないだろうね。

とりあえず試してみよう。そうしよう。


「あ……でますね」

さっきの根っこよりは大分太い、ちょっとした太目のロープぐらいある蔦が俺の腕からしゅるしゅると伸びていく。
これもある程度……というか結構好き勝手に動かせるね。
全部ばらっばらに動かすのは大変だけど、何本かずつに分けて動かすぐらいなら余裕で出来ちゃうぽい。
うねうねしててちょっと蛇っぽい。

速さは駆け足ぐらいかな、距離があると余裕で避けられるだろうね。
あ、でも追尾することも出来るか……わりと使えるかも?

「伸びるし自由に動かせると……ちょっとそこの木を締め上げて見てくれないか?」

「はいっす」

腕から蔦を何本も伸ばし、木の幹へと巻き付けていく。
そして徐々に力を入れていくと幹へと蔦が食い込んでいく。

「ミシミシいってるニャ」

「もっと巻き付く数を増やして……かなり力ありそうだなそれ」

さらに巻き付く数を増やすと、ついに耐え切れなくなったのか幹がぐちゃりと潰れていく。
……これ結構えぐいぞ。相手がモンスターだと考えると相当スプラッターなことになるはず。

「速度出ないから離れた敵には避けられるだろう。追いかける手もあるが切り払われたりするだろうな……だが目の前の敵には有効だと思う。お互い手が塞がっていたりする時に使えそうだ」

「ニャ。……ニャ?」

キンドリーさんの言葉にふんふんと頷いていたタマさんであったが、何か気になることがあったのか今度は蔦を枝でつつきはじめる。
うれしい。……じゃなくてどうかしたのかな?
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