拝啓神様。転生場所間違えたでしょ。転生したら木にめり込んで…てか半身が木になってるんですけど!?あでも意外とスペック高くて何とかなりそうです

熊ごろう

文字の大きさ
上 下
26 / 156
木の中にいる

「25話」

しおりを挟む
ご飯うめえ!

「うまうま」

「飯食ったら元気になりやがって……」

やっぱご飯はしっかり食べないとね、体が資本ですし。
あ、この玉子焼きっぽいのお代わりお願いしますね、うへへ。

お代わりした玉子焼きっぽいのを口に押し込んでいるとゴリさんがこっちをじーっと見てくる。
……た、たべる?

「食ったらダンジョン行くわけだが……まず1匹か2匹狩って、そのあと3~4匹と同時に戦って見て問題ないと判断したら大量に狩る場所に行く」

あ、ちがった。
単に話があっただけだった。

「あれだけ動けてたんだ、問題は無いだろうが……ま、念の為だな」

「あ、ありがとうございます」

んむんむ。
まずは数匹狩って慣れてからってことだね。
まあ、そうだよね。 最初のゴブリンを思い出せば分かるけど初戦は本当必死だったもん。たぶんコボルトでも似たようなもんだろうね。

そんな状態であの敵が大量に寄ってくるところで戦えば……すぐ倒せればいいけど、もしそうじゃなかったら……うん、たぶん死ぬ。


「そういえばコボルトってどの辺りに出るんですか? この辺だとゴブリンしか見かけないですよね」

もっしゃもっしゃご飯を食べつつ気になっていたことをたずねてみる。
少なくとも1階層ではコボルトの姿は見ていない、あそこであったのはゴブリンのみである。
となるとたぶん居るのは下の階層なのだろうけど。

「2階層下に行けば出てくるぞ」

「2階層……それって結構遠いのでは」

おんや、1つ下かと思ったら二つ下だった……1フロアが結構広いんだよねこのダンジョン。
下に降りる階段?がどこにあるか分からないけど、中央にあるにしても端っこにあるにしてもかなりの距離を歩かないといけないはずだ。

「おう、歩きだと着いたら夕方だな」

「うへえ……」

何ともないように応えたゴリさんであったが、その内容は何ともなくは無かった。
歩くと夕方と聞いてげんなりする俺であったが、ゴリさんは気にせず言葉を続ける。

「つーわけで、走るぞ」

「うへぇ!?」

いやいやいや、歩いて数時間掛かる距離を走るって……あ、いやそれぐらいなら走れるね、てかゴリさんと出会う前に走ってたじゃん、俺。
もー……びっくりして思わず変な声出しちゃったじゃないか。

ともかくそれぐらいの距離なら何てことはない、今の俺なら楽に走れる距離だろう。
そう思い、食事を再開するのであった。


「着いたぞ。 こっからが3階層だ」

「少し萎んでいるな。 コボルトとやる前に吸っておけよ」

「はぁ……ひぃ……は、はい」

誰だよ楽に走れる距離だなんていったのは!? ええ、俺ですとも!

あれだ、ゴリさんにとっての歩いて数時間と俺にとっての歩いて数時間は違うってわけだ。遠いわ!
しかもさ、二人とは走る速度もスタミナも違うわけでさ、1時間も走ってないのにもう汗だくで地面に四つん這いになるぐらい疲れた。二人は涼しい顔してるけどなっ!

……とにかく体を休めないと……そのへんに根っこさして吸ってきますかね。

そう思い、俺は重い体を引き摺るように木陰へと向かうのであった。




補給完了しました。俺は元気です。
何時も思うけど疲労の飛び具合やばいよねこれ。

そんなわけでコボルト探そうとゴリさんらとブラブラ草原を歩き始めた俺なんだけど、徐々にゴリさんらが俺から遅れるようになってきた。
どうしたのかなー?と思い振り返るとゴリさんが何やら話し始める。

「歩いていれば向こうからやってくるが……そうだな、相手が複数でなければ近寄ってきても警告はしない。 敵の接近を探る練習だと思ってがんばれ」

「ま、まじですか……がんばりまつ」

俺だけで斥候みたいなことをしろと? ははは、無茶言いおる。

まあ、でもいずれ必要になる技能だろうし練習だと思ってやろうかね……いざとなったら助けてくれる、よね?

これだけ離れているとちょっと不安なんですが……え? 離れていれば一人だけのお前を狙うだろうって? もーゴリさんてば冗談きついんだからー。


ゴリさんの目はマジだった。

「接近を探るといってもなあ……どう探ったらいいのやら……あれ?」

こりゃ真面目に索敵しないといけない、でも俺そんなんやったことないしなーどうしようかなー。とか考えていたそのとき、ふと俺の耳が何かの音をとらえていた。

「何かとっとっとって音が?」

何かが歩いているような音がするなあ……ゴリさんじゃないよね。こんな可愛らしい音を出せるはずがない。

……まあ、とりあえず武器と盾は構えてと。

「がさっとな」

十中八九コボルトが近寄ってきているんだろう。
近くの茂みがガサリと音を立てた。俺はそちらへと振り返り、武器と盾を向け、そして茂みの奥から何かが飛び出して――

「うぉぉおあああっ!?」

――俺の顔面目がけて牙が迫っていた。
驚きの声を上げて咄嗟に盾で打ち落とすようにはじく。
小さく悲鳴を上げ、俺と距離を取ったのは全身毛むくじゃらの二足歩行する獣であった。


コボルトと聞いてどんな姿を想像するだろうか? 俺はそのまんま二足歩行するわんこを想像していた。実際ギルドの図鑑に描かれていた姿も正にそれだしね。

そんな姿のコボルトを敵とはいえ殺せるだろうか……なんて考えていたのだけど、実物を見てそんな考えはあっさり吹き飛んでいた。

黄色く濁り血走った瞳。牙をむく耳まで裂けた口にダラダラと垂れる涎、手に持つ槍のさび付いた穂先……そこからはただひたすらに俺へと向けられた殺意しか感じ取ることは出来なかった。

「怖いわっ! 思ってた以上に怖いわこいつっ!?」

「牙剥き出しで襲ってくるからな。 ま、落ち着いて対処すればどうとでもなる相手だろう?」

ゴリさんの言うとおり、落ち着けば今の俺であれば問題なく勝てる相手であった。見た目怖すぎるけど。

何度かコボルト攻撃を盾でいなしたり、躱したりしているとその手数の多さや速度に慣れていく。
そして噛みつき来たタイミングを見計らってカウンター気味に盾で顔面をぶん殴る。
勿論貧弱な俺の左半身ではそれだけでコボルトを殺す事は出来ない、だが体制を崩すには十分なのである。

俺の叩きつけるようにふるった金棒は、咄嗟にガードしようとしたコボルトの槍とその腕を粉砕し、その勢いのまま上半身をミンチに変えていた。


……この金棒威力強すぎない? あ、金棒ってのはこれあれね。装備屋さんで用意してもらった特注の鈍器のことね。
全長は1mぐらいの金属で出来た六角棒で、持ち手は別にして太さは人間の腕ぐらいある。それだけでも凶悪だけどさらにトゲトゲ……というか突起?が所々ついている。まさに金棒と言った見た目の武器である。

「次はなるべく複数相手にするように」

そんな感じで俺とコボルトの初戦は俺の勝利で終わったのであった。
次は1対1ではなく1対複数でやらないとだ。
しおりを挟む
感想 171

あなたにおすすめの小説

悪役令息に転生したけど、静かな老後を送りたい!

えながゆうき
ファンタジー
 妹がやっていた乙女ゲームの世界に転生し、自分がゲームの中の悪役令息であり、魔王フラグ持ちであることに気がついたシリウス。しかし、乙女ゲームに興味がなかった事が仇となり、断片的にしかゲームの内容が分からない!わずかな記憶を頼りに魔王フラグをへし折って、静かな老後を送りたい!  剣と魔法のファンタジー世界で、精一杯、悪足搔きさせていただきます!

はぁ?とりあえず寝てていい?

夕凪
ファンタジー
嫌いな両親と同級生から逃げて、アメリカ留学をした帰り道。帰国中の飛行機が事故を起こし、日本の女子高生だった私は墜落死した。特に未練もなかったが、強いて言えば、大好きなもふもふと一緒に暮らしたかった。しかし何故か、剣と魔法の異世界で、貴族の子として転生していた。しかも男の子で。今世の両親はとてもやさしくいい人たちで、さらには前世にはいなかった兄弟がいた。せっかくだから思いっきり、もふもふと戯れたい!惰眠を貪りたい!のんびり自由に生きたい!そう思っていたが、5歳の時に行われる判定の儀という、魔法属性を調べた日を境に、幸せな日常が崩れ去っていった・・・。その後、名を変え別の人物として、相棒のもふもふと共に旅に出る。相棒のもふもふであるズィーリオスの為の旅が、次第に自分自身の未来に深く関わっていき、仲間と共に逃れられない運命の荒波に飲み込まれていく。 ※第二章は全体的に説明回が多いです。 <<<小説家になろうにて先行投稿しています>>>

悪役貴族の四男に転生した俺は、怠惰で自由な生活がしたいので、自由気ままな冒険者生活(スローライフ)を始めたかった。

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
俺は何もしてないのに兄達のせいで悪役貴族扱いされているんだが…… アーノルドは名門貴族クローリー家の四男に転生した。家の掲げる独立独行の家訓のため、剣技に魔術果ては鍛冶師の技術を身に着けた。 そして15歳となった現在。アーノルドは、魔剣士を育成する教育機関に入学するのだが、親戚や上の兄達のせいで悪役扱いをされ、付いた渾名は【悪役公子】。  実家ではやりたくもない【付与魔術】をやらされ、学園に通っていても心の無い言葉を投げかけられる日々に嫌気がさした俺は、自由を求めて冒険者になる事にした。  剣術ではなく刀を打ち刀を使う彼は、憧れの自由と、美味いメシとスローライフを求めて、時に戦い。時にメシを食らい、時に剣を打つ。  アーノルドの第二の人生が幕を開ける。しかし、同級生で仲の悪いメイザース家の娘ミナに学園での態度が演技だと知られてしまい。アーノルドの理想の生活は、ハチャメチャなものになって行く。

異世界転生したのだけれど。〜チート隠して、目指せ! のんびり冒険者 (仮)

ひなた
ファンタジー
…どうやら私、神様のミスで死んだようです。 流行りの異世界転生?と内心(神様にモロバレしてたけど)わくわくしてたら案の定! 剣と魔法のファンタジー世界に転生することに。 せっかくだからと魔力多めにもらったら、多すぎた!? オマケに最後の最後にまたもや神様がミス! 世界で自分しかいない特殊個体の猫獣人に なっちゃって!? 規格外すぎて親に捨てられ早2年経ちました。 ……路上生活、そろそろやめたいと思います。 異世界転生わくわくしてたけど ちょっとだけ神様恨みそう。 脱路上生活!がしたかっただけなのに なんで無双してるんだ私???

暗殺者から始まる異世界満喫生活

暇人太一
ファンタジー
異世界に転生したが、欲に目がくらんだ伯爵により嬰児取り違え計画に巻き込まれることに。 流されるままに極貧幽閉生活を過ごし、気づけば暗殺者として優秀な功績を上げていた。 しかし、暗殺者生活は急な終りを迎える。 同僚たちの裏切りによって自分が殺されるはめに。 ところが捨てる神あれば拾う神ありと言うかのように、森で助けてくれた男性の家に迎えられた。 新たな生活は異世界を満喫したい。

異世界転生!俺はここで生きていく

おとなのふりかけ紅鮭
ファンタジー
俺の名前は長瀬達也。特に特徴のない、その辺の高校生男子だ。 同じクラスの女の子に恋をしているが、告白も出来ずにいるチキン野郎である。 今日も部活の朝練に向かう為朝も早くに家を出た。 だけど、俺は朝練に向かう途中で事故にあってしまう。 意識を失った後、目覚めたらそこは俺の知らない世界だった! 魔法あり、剣あり、ドラゴンあり!のまさに小説で読んだファンタジーの世界。 俺はそんな世界で冒険者として生きて行く事になる、はずだったのだが、何やら色々と問題が起きそうな世界だったようだ。 それでも俺は楽しくこの新しい生を歩んで行くのだ! 小説家になろうでも投稿しています。 メインはあちらですが、こちらも同じように投稿していきます。 宜しくお願いします。

転生幼女のチートな悠々自適生活〜伝統魔法を使い続けていたら気づけば賢者になっていた〜

犬社護
ファンタジー
ユミル(4歳)は気がついたら、崖下にある森の中にいた。 馬車が崖下に落下した影響で、前世の記憶を思い出す。周囲には散乱した荷物だけでなく、さっきまで会話していた家族が横たわっており、自分だけ助かっていることにショックを受ける。 大雨の中を泣き叫んでいる時、1体の小さな精霊カーバンクルが現れる。前世もふもふ好きだったユミルは、もふもふ精霊と会話することで悲しみも和らぎ、互いに打ち解けることに成功する。 精霊カーバンクルと仲良くなったことで、彼女は日本古来の伝統に関わる魔法を習得するのだが、チート魔法のせいで色々やらかしていく。まわりの精霊や街に住む平民や貴族達もそれに振り回されるものの、愛くるしく天真爛漫な彼女を見ることで、皆がほっこり心を癒されていく。 人々や精霊に愛されていくユミルは、伝統魔法で仲間たちと悠々自適な生活を目指します。

今さら言われても・・・私は趣味に生きてますので

sherry
ファンタジー
ある日森に置き去りにされた少女はひょんな事から自分が前世の記憶を持ち、この世界に生まれ変わったことを思い出す。 早々に今世の家族に見切りをつけた少女は色んな出会いもあり、周りに呆れられながらも成長していく。 なのに・・・今更そんなこと言われても・・・出来ればそのまま放置しといてくれません?私は私で気楽にやってますので。 ※魔法と剣の世界です。 ※所々ご都合設定かもしれません。初ジャンルなので、暖かく見守っていただけたら幸いです。

処理中です...