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木の中にいる

「20話」

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飛び掛かるゴブリンにカウンター気味に武器を叩きつける。
真っ二つに分かれ臓物を巻き散らしながらゴブリンは飛んでいった。

さあ、次はどこからだ。そう思い武器を構えるも新手はやってこない。

あれ? と思って周りをキョロキョロち見渡すが、辺り一面緑と赤に染まっていて動く物は俺とゴリさん以外は存在していなかった。 てか、冷静になって見るとグロ過ぎるじゃろこれぇ……。

耳を澄ませても物音はしない、てかいつの間にかサイレン?も止まっていたね。戦闘に夢中で気が付かなかったよ。

んでその状態で新手の来る気配がないと言うことはつまり……。

「お、終わった……?」

「おう、後は魔石とって休憩だな。 あとちょっとだから頑張れ」

ゴブリンとの戦いは俺の勝利に終わったのである。
だがしかし。


……あのゴリさん。 魔石ってこれ全部……あ、はいやりますやります。

これ全部やるってまじできついぞ……やらないとお金手に入らないし勿論やるんだけど……うぅグロいよぉ。

自分でやったこととは言え、このスプラッターな光景はなかなかくるものがある。




「えーっと……全部で102個ですね」

およそ30分ぐらい経っただろうか、俺は最後の1個を袋にしまい込むとゴリさんへ報告をする。

最初は手間取っていたゴブリンの解体も慣れれば楽なもんである。あれを解体と言っていいのかは分からないけど……。

ゴブリン解体ってようは魔石が取れれば良いんだよね。体には一切利用価値がないらしい。

んでやり方はと言うと、まず鉈みたいなごっついナイフを胸に叩きつけて肉と骨を切断する。んで次にてこの原理でぐりっと胸をほじくり返すとポロリと魔石が転がり落ちるという寸法だ。

簡単でしょ? むっちゃグロいけどなっ!

「結構いったな。 体力は大丈夫か?って大分萎んでるな。 さっきも言ったが休憩取るから今のうち根っこで吸っとけ」

「はい」

ゴブリンと戦っていた時間はせいぜい1時間といったところだろう。
それでも全力で戦っていたぶん消費は激しかったようだ。俺の右半身はおおよそ2倍ぐらいのサイズまで戻っている。

戦闘中に吸えないのは割とネックになるかも知れないね。戦ってる間にどんどん弱体化していくわけだし……あ、でも今みたいな戦いで無ければそれがネックになることも無い……かな?
戦闘中に吸えればそんな心配はいらないのだけど……うーむ。

まあ、ともかく地面から吸おう。
念の為、血溜まりからは距離を取ってと……いや、さすがにあそこで吸う気にはならないよ?

根っこを地面にぶっさしグイングインと養分だが生命力だかを吸う。すると途端に全身にあった疲労が消え、体には溢れんばかりの力が湧いてくる。

疲労が消える感覚は、疲れた状態でお風呂に入ったあの感覚に近い物があり、思わずおっさん臭い声が漏れてしまう。

「おほぉぉ」

「え、何その反応」

やべえ、思いっきり聞かれてた。
しかも今日に限って変な声が出たし、根っこをぶっさして奇声上げるとかこれじゃただの危ない人じゃないか。

とりあえず言い訳しとこう……。

「あ、いや何かこう満たされると言うか疲れがぶっ飛ぶというか……そんな感じなんです」

「へぇぇー? 面白いねー。 あ、リーダーそのお菓子私にもー」

あまり深く考えない人で助かった。
カールさんは俺に言葉を聞くと特に気にした様子もなく……というかもう視線はリーダーが広げた包みへと注がれていた。

「ほらよ。んで、どうよ武器の調子は」

お菓子をいくつか取って残りをカールさんに渡すゴリさん。
包みの中にあったのはぱっと見……なんだろう、豆とかいっぱい入ったおかき? 香ばしい匂いと香辛料の匂いがして美味しそうである……美味しそうである。だが根っこでちゅーちゅー吸ってしまった俺はもうお腹いっぱいなのであった……ぐすん。

って、それより武器の調子だったね。

「んん……かなり良いです。 全然曲がってないですし、威力も十分ですし」

結果、100匹以上ぶっ叩いても棒が曲がるといったことは起きていなかった。
よくよく見れば曲がっているのかも知れないがぱっと見じゃ分からない、繋ぎの武器のくせに実に優秀である。正体ただの棒付き歯車だけど。

「そりゃよかった。 体の方はどうだ? 疲れているとかどこか痛いとかないか?」

「ない……ですね。 疲れは吸ったら取れましたし、攻撃くらってないんで怪我もないです」

根っこで吸ったおかげで俺は元気です。
元気なりすぎてやばいぐらいですぞ。

あと怪我もないね。
一発ぐらいは食らうかと思ったんだけどなんかゴブリンね、むき出しの部分を狙うってしないらしくてさ、正面切って戦ってると毎度毎度わざわざ盾の部分を殴ってくるんだよね……腕力は結構あるのに、なんか最弱と言われる所以が分かった気がしたよ……。

「よしよし、それじゃ――」

「リーダーお茶ちょーだい」

「――ほらよ。 休んだらもう1ラウンドいくか、最初考えてたより順調だ」

「はひ」

順調なのは良いことです。
でもやっぱゴリさんスパルタ気味デスヨネ。

カールさんも何か言ってやってくださいよ。
あ、だめだ菓子と御茶しか見てねえ。
カールさんにアイコンタクト取ろうとするも思いっきりスルーされた。


その後、ゴリさんに半ば引き摺られるように広場へと向かった俺は再び岩の出っ張りを押すのであった。
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