上 下
16 / 156
木の中にいる

「15話」

しおりを挟む

「いま地上にいるモンスター達はこの襲撃の際の生き残りだと言われています。 指導するものが死ぬとモンスター達は散り散りに逃げ出してしまいますので」

「うわぁ、それじゃあ町の外ってやっぱ危険なんですね」

なんちゅーはた迷惑なやつだ。
逃げるならダンジョン内に逃げればいいのに。

俺が最初にいた森は別として……そういやあそこ何で動物おらんかったんだろ? ……まあいいか、外が危険となると隣町に行くのも命懸けとかそんなんなのだろうか。
異世界ちょっとハードすぎませんか……。

「街道は大丈夫だがな」

「あ、そうなんですか?」

「……魔石と世界樹の枝を組み合わせて杭を作るんです、それを街道にそって打ち付けておくとモンスター避けになります。 一定期間で効果が切れますので魔石は常に需要がありますね、ダンジョン内でのセーフポイントとしても使いますのでそこでも需要があります」

「なるほどなるほど。 ……枝とるの大変そうすね、あんだけ高いと」

街道は大丈夫らしい。
あの魔石何に使うのかと思ったらモンスター避けに使うのね。
てっきり何か魔道具的なのがあってそれの動力源になるのかなーとか思ってたよ。

しっかし、枝ねえ。
世界樹ってさ、本当にでかいんだよね。
遠目からみたら町の中心部に小山があるように見えたもん。
大体高さは200mぐらいあるんじゃないかな……枝の広がりは直径でいうと300mとかありそうな気がする。

「登って取る訳じゃないですよ。 自然に落ちてくるのを待つんです。 私たちを守ってくれている世界樹を傷つけるわけにはいけません」

登ってとるの大変そうと思ったら、違ったらしい。
表情に出とったかしら?

「あ、そっか……ん? 落ちてくるってあの高さから? 危なくないです?それ」

「ええ、なので世界樹の下に建物を建てるのは禁止されてますね。 入り口にあったのも簡易の受付だったでしょう?」

「ああ、確かに……」

なるほどね、世界樹は自分たちを守ってくれている存在か……確かにそれなら枝を切ったり折ったりはしないで自然と落ちるのを待つってなるのか。
ちなみに世界樹の枝なんだけどさ、太さも桁違いなんだよね。 枝が落ちてくるといってもイメージ的には普通の木が1本丸々落ちてくるようなもんだね。

当然危なくて範囲内に建物なん建てることはでき……あ、あれ?

「あの……それっていつあそこに枝が落ちてくるか分からないということじゃ」

「そうですよ、たまに当たって怪我する方がいますね。 新人さんだとたまに亡くなる方もいます」

「えぇぇぇ……」

列に並ぶのも命懸けってどーいうことなんでデス??
もー……とりあえず換金したお金を受け取ってと……。



「あ、ゴリさんこれ借りていたお金……まだ足りなんで一部ですけど」

まだまだ全額には足らないけど、お金返さないとね。
はい、ゴリさん受け取ってーとお金を入った包みを渡そうとしたんだけど……ゴリさんはそれを手で押し返すようにすると首を横に振る。

「別にあとでまとめてで良い。 剣を直すのにだって金が掛かるからな? それより裏庭にいくぞ」

「……ハイ」

そうでした、剣ぐんにゃり曲がってるんでした。
すんません、お言葉に甘えてあとでまとめて返します……あ、それより裏庭ですね。
ハイ、今行きますんで抱えようとしないでぇぇ……。



裏庭に行くと何人かが訓練をしていたが、俺たちが来ると少しずれて場所を開けてくれた。
ぺこりと頭を下げ、進んでいくとゴリさんが壁に立てかけてあった剣を指さし口を開く。

「ちょっとそこの剣もって素振りしてみろ」

「は、はい」

その剣はここの備品のようのものらしい。
大分ぼろいが誰でも自由に使えるそうな。

剣なんてまともに振ったことなんてない。
俺はまわりの様子を伺いながら見よう見まねで剣を振る……やばい、下手すぎてむっちゃ恥ずかしいぞ。
せめて勢いだけでもそれらしくしよう……ってわけで思いっきり振る。

お……おお? 風切り音が変わったぞ!
ぶんぶんからビュッって感じだ。

こ、これ結構いいんじゃない? 

「……ど、どうですか?」

「ん? ああ、腕力はやっぱかなりある見てえだな、他の連中よりも大分補正がでかそうだ」

何かゴリさん反応が薄いですよ……ぐすん。
これぐらい普通なんだろうか……んで補正とな?

「補正ですか?」

「そうだなあ、他の連中は確かレベルでいうと15分補正掛かるぐらいだったが……よし、次左で振ってみてくれ」

「は、はい……あの、レベルって……?」

まさかのレベル??
……はっ!? そ、そういえばステータスオープンって言ってないぞ!
もしかしてこの体の能力何かも分かっちゃう系なのか??

てか左で持つと剣くっそ重いんですけど!
さっきまで風切り音してたのが無音になってるし。 あかん。

「ん? モンスター狩ってると肉体が強化されていく。 レベルってのは強化の目安具合だな、ギルド証に数値化する機能があってなみりゃ分かるんだが、残念ながら銅のプレートにはその機能はついてない……ほれ、ここに書いてあるだろ」

「本当だ……65って書いてある……」

あ、違うぽい。
ただ単にレベルがいくつか分かるだけっぽいね。
ギルド証に書かれているのも数値一つだけである。

しかし65かぁ……たぶん高いんだよね、これ。
うん、ゴリさんも何かこう、どうだって感じの顔してるしたぶん高いんだろうなあ。

「これってやっぱ高いんですよね?」

「高いぞ。自分で言うのもなんだが、65以上は各町に10人もいないはずだぞ」

「うひぃ……」

思ってた以上にお高い。
これダンジョンシーカー全体の上位1%以内とかなんじゃなかろうか。

やっぱゴリさん半端なかった……あの、ゴリさん。 そろそろ左腕が限界なんですが。
さっきからちらちらと視線で限界を訴えているけど、ゴリさんこっちをじっと見たまま動かないんですよ。
腕がもげるぅぅ。

「そうだな……ウッドおそらくだがお前さんのその体は右半身限定で30前後の補正が掛かっているとみていいだろう。 右に比べて左が貧弱すぎる」

「ひ、貧弱……」

否定したいがこうもへばっているとこを見られると否定できない!

「あとは剣の振り方が思いっきり素人だな、素人よりひどいかも知れん。 このままじゃ剣が何本あっても足りなくなる……ってことで飯食ったら少し稽古つけてやるよ」

ふふふ、素人より酷い……ふふふ。
心にぐっさぐさ刺さりますわ。って稽古? 稽古って稽古?? マジデスカ!?

「い、いいんですか……? ゴリさん休んでいるところなんじゃ。 いえ、勿論めちゃくちゃ嬉しいんですけど」

そう、嬉しいけど確か仕事終えて休んでるんだよねゴリさん達。

「そうだな、正直言うともう暇になってきてんだよ、暇つぶしだ暇つぶし。 ほら飯食いにいくぞ、お前もせっかく稼いだんだ飯ぐらい食っとけ。 どうせ根っこで吸ってすませてんだろ?」

「だはは……いきますっ」

「おう」

ゴリさんこの人まじでええ人や。
返さないとダメな恩がどんどん増えてくなあ……、
果たして返しきれるのだろうか?

……とりあえずご飯にしますか。
しおりを挟む
感想 171

あなたにおすすめの小説

異世界転生!俺はここで生きていく

おとなのふりかけ紅鮭
ファンタジー
俺の名前は長瀬達也。特に特徴のない、その辺の高校生男子だ。 同じクラスの女の子に恋をしているが、告白も出来ずにいるチキン野郎である。 今日も部活の朝練に向かう為朝も早くに家を出た。 だけど、俺は朝練に向かう途中で事故にあってしまう。 意識を失った後、目覚めたらそこは俺の知らない世界だった! 魔法あり、剣あり、ドラゴンあり!のまさに小説で読んだファンタジーの世界。 俺はそんな世界で冒険者として生きて行く事になる、はずだったのだが、何やら色々と問題が起きそうな世界だったようだ。 それでも俺は楽しくこの新しい生を歩んで行くのだ! 小説家になろうでも投稿しています。 メインはあちらですが、こちらも同じように投稿していきます。 宜しくお願いします。

転生王子の異世界無双

海凪
ファンタジー
 幼い頃から病弱だった俺、柊 悠馬は、ある日神様のミスで死んでしまう。  特別に転生させてもらえることになったんだけど、神様に全部お任せしたら……  魔族とエルフのハーフっていう超ハイスペック王子、エミルとして生まれていた!  それに神様の祝福が凄すぎて俺、強すぎじゃない?どうやら世界に危機が訪れるらしいけど、チートを駆使して俺が救ってみせる!

今さら言われても・・・私は趣味に生きてますので

sherry
ファンタジー
ある日森に置き去りにされた少女はひょんな事から自分が前世の記憶を持ち、この世界に生まれ変わったことを思い出す。 早々に今世の家族に見切りをつけた少女は色んな出会いもあり、周りに呆れられながらも成長していく。 なのに・・・今更そんなこと言われても・・・出来ればそのまま放置しといてくれません?私は私で気楽にやってますので。 ※魔法と剣の世界です。 ※所々ご都合設定かもしれません。初ジャンルなので、暖かく見守っていただけたら幸いです。

異世界転生はどん底人生の始まり~一時停止とステータス強奪で快適な人生を掴み取る!

夢・風魔
ファンタジー
若くして死んだ男は、異世界に転生した。恵まれた環境とは程遠い、ダンジョンの上層部に作られた居住区画で孤児として暮らしていた。 ある日、ダンジョンモンスターが暴走するスタンピードが発生し、彼──リヴァは死の縁に立たされていた。 そこで前世の記憶を思い出し、同時に転生特典のスキルに目覚める。 視界に映る者全ての動きを停止させる『一時停止』。任意のステータスを一日に1だけ奪い取れる『ステータス強奪』。 二つのスキルを駆使し、リヴァは地上での暮らしを夢見て今日もダンジョンへと潜る。 *カクヨムでも先行更新しております。

異世界は流されるままに

椎井瑛弥
ファンタジー
 貴族の三男として生まれたレイは、成人を迎えた当日に意識を失い、目が覚めてみると剣と魔法のファンタジーの世界に生まれ変わっていたことに気づきます。ベタです。  日本で堅実な人生を送っていた彼は、無理をせずに一歩ずつ着実に歩みを進むつもりでしたが、なぜか思ってもみなかった方向に進むことばかり。ベタです。  しっかりと自分を持っているにも関わらず、なぜか思うようにならないレイの冒険譚、ここに開幕。  これを書いている人は縦書き派ですので、縦書きで読むことを推奨します。

システムバグで輪廻の輪から外れましたが、便利グッズ詰め合わせ付きで他の星に転生しました。

大国 鹿児
ファンタジー
輪廻転生のシステムのバグで輪廻の輪から外れちゃった! でも神様から便利なチートグッズ(笑)の詰め合わせをもらって、 他の星に転生しました!特に使命も無いなら自由気ままに生きてみよう! 主人公はチート無双するのか!? それともハーレムか!? はたまた、壮大なファンタジーが始まるのか!? いえ、実は単なる趣味全開の主人公です。 色々な秘密がだんだん明らかになりますので、ゆっくりとお楽しみください。 *** 作品について *** この作品は、真面目なチート物ではありません。 コメディーやギャグ要素やネタの多い作品となっております 重厚な世界観や派手な戦闘描写、ざまあ展開などをお求めの方は、 この作品をスルーして下さい。 *カクヨム様,小説家になろう様でも、別PNで先行して投稿しております。

アラヒフおばさんのゆるゆる異世界生活

ゼウママ
ファンタジー
50歳目前、突然異世界生活が始まる事に。原因は良く聞く神様のミス。私の身にこんな事が起こるなんて…。 「ごめんなさい!もう戻る事も出来ないから、この世界で楽しく過ごして下さい。」と、言われたのでゆっくり生活をする事にした。 現役看護婦の私のゆっくりとしたどたばた異世界生活が始まった。 ゆっくり更新です。はじめての投稿です。 誤字、脱字等有りましたらご指摘下さい。

異世界転生したのだけれど。〜チート隠して、目指せ! のんびり冒険者 (仮)

ひなた
ファンタジー
…どうやら私、神様のミスで死んだようです。 流行りの異世界転生?と内心(神様にモロバレしてたけど)わくわくしてたら案の定! 剣と魔法のファンタジー世界に転生することに。 せっかくだからと魔力多めにもらったら、多すぎた!? オマケに最後の最後にまたもや神様がミス! 世界で自分しかいない特殊個体の猫獣人に なっちゃって!? 規格外すぎて親に捨てられ早2年経ちました。 ……路上生活、そろそろやめたいと思います。 異世界転生わくわくしてたけど ちょっとだけ神様恨みそう。 脱路上生活!がしたかっただけなのに なんで無双してるんだ私???

処理中です...