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木の中にいる

「7話」

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やっぱその辺り考えると俺はこの先ダンジョンシーカーとしてやっていくのが良いのだろうか。
この体じゃ接客業とか向いてないだろうし、ていうか俺何できるか分からんし、普通の人より身体能力は優れてそうだから体使う仕事をするにしても……農業やらはなんか違う感じがする。
異世界きて農業というのも……いや、農業ばかにしている訳じゃないのよ? でもせっかくだから前世では決して出来なかったであろう仕事というのをやってみたいじゃない。

戦えるのか? と言われれば答えはちょっと分からない、となるけど……さっき草刈りがどうとか言ってたし、もしかするとあまり戦わずに済む可能性だってある。

……ちょっと聞いてみますかね。

「いえいえ……そういえばさっき言っていた草刈りって何のことなんですか? 俺、自分が何やっていたかも分からないし……これからの生活考えると何か仕事しないといけないですし、この体がダンジョンシーカーに向いているのなら、俺……」

「草刈りってのはそのまんまの意味だ、ただ刈る場所がダンジョンの中になるがな。 ダンジョンの中には様々なポーションの材料になる薬草が生えている。 これを刈るだけでもそれなりの収入にはなる」

「それなら俺にも出来そうすね」

俺の質問に答えてくれたのはゴリさんだった。
歩いている最中はほとんど喋ってなかったけど、休憩時間中は別らしい。

内容に関しては予想通りではある。
草を刈るだけなら俺でも余裕そうだけど……?

なんて考えたのが表情に出ていたのだろう、ゴリさんはじろっとこちらへ視線を向け言葉を続けた。

「そんな簡単な話でもないがな。 ダンジョンの中だぞ、当然モンスターも出る……最低限の装備と力がなきゃ浅い階層だろうとあっさりと死ぬからな? そうでなければただ草刈るだけでそれなりの収入になる訳がないだろう」

「……ですよねー」

そんなに現実は甘くないということだね。
モンスターか……一体どれほどの強さなんだろう、俺でも勝ち目はあるのだろうか。

「お前のその体、他の連中と同じならおそらく普通の体と比べて身体能力は高いはずだ……浅い階層なら油断しなければ潜れるだろうさ」

ゴリさん解説ありがとうございました。
無口な人なのかと思ってたけどそうじゃないのね。

そしてまた気になる情報が出た。
俺と似たような人がいるって事、その人達と同じならこの変質してしまった体は普通の体と比べ身体能力が高いってことが……つまりその辺りの情報はもう知れ渡ってるってことだよね。

……あ、でもこの養分? 生命力? を一気に吸って身体能力がっつりあがるのはどうなんだろう?
分からないけど言いふらすようなものじゃ無いだろうし黙っておいたほうが良いか。

さっきもいったけど少なくとも情報が集まるまでは……そうだ、他の同じ境遇の人に尋ねて見るか? ある程度は情報くれるかも知れないし……こっちの情報も話さなければいけないかも知れないけど、その時はその時だ。

っと、その前にもうちょいゴリさんに聞いてみようかな?
まだ情報くれるかも知れないしね。


「確かに……俺以外にも居るんですね?」

「ああ、全部で何人かまでは知らんがな。 少なくともうちの支部に一人いたはずだ、機会があれば色々聞いてみるといいさ。 同じ境遇なんだ、ある程度は教えてくれるだろう。 力の使い方とかな」

「なるほど! ありがとうございます、会えたら聞いてみます!」

いや、ゴリさん本当ありがとうございます。
ばっちり知りたい情報貰えたよ! やっぱ見た目的にベテランぽいし色々情報持ってるんだねぇ……しかし力の使い方かぁ、たぶん俺が一気にマッチョになるみたいに他の人も何かしらそういった能力を持ってるんだろうなあ。
一つだけとは限らないし、俺も他に能力を発揮できるかも知れない……うん、町について落ち着いたらその支部に一人いるって人を訪ねてみよう。 そうしよう。



「……もう十分休んだろう、そろそろ行くぞ」

「へいへーい」

っと、そろそろ出発みたい。 ゴリさんがコップやら何やら片付け始めた。
俺も地中から根っこを引っこ抜いてっと……あ、さっきの返事は俺じゃないからね? あの女性か男性かよく分からない人ね?
いや、この人本当どっちか分からんのですわ、声も女性なのか少年なのかいまいち区別付かないし……地雷だった時が怖いから聞けないしさ。
まあ、もっと仲良くなれたらその時聞いてみようかね……。




時間的にちょうどおやつ時だろうか。
ゴリさん一行の後をついて街道を歩いていった俺であったが、無事街中に入ることに成功していた。

入る前に川でごりごり洗われたけどね! 何せ10日間水浴びもせず森の中を歩き続けていたんだ当然俺の体は……察しておくれ。
まあ、この世界は石鹸があってちゃんと綺麗なったのでよしとしよう。 通りで皆あまり汚れてないと思ったよ。

んで予想通りだけど彼らが居なければ町に入るのは厳しかっただろうね、入れたとしてもかなり時間が掛かっていたと思う。
まず町の入り口での怪しい奴止まれから始まり、身分証を見せろだの、何しにこの町に来ただの、入場料払えだの……結局ゴリさんが諸々の事情を話した上に入場料まで出してくれてあっさり通ることが出来たんだけどさ。
てかゴリさんが口出した途端ころっと門番の態度変わったからね、ゴリさん思っていたより有名な人なのかも知れない。まじぱねえですわ。

「本当何から何まで……ありがとうございました」

そんなもんで俺のゴリさんへの信頼度とかそんなのが絶賛爆上げ中である。
今も町へ入って改めてお礼をしている訳だけど、もう90度のお辞儀とかそんなレベルじゃないからね、膝にオデコがくっつきそうな勢いだよ。

「あげたんじゃないぞ?」

「はい! 勿論です!」

ちなみにこれで払っとけと渡された入場料だけど、実は大分余りがあったりする。
んで余った分は当面の資金にしろと渡されてしまったのだ。 一瞬申し訳なさ過ぎて断ろうかという思いが頭を過った。 でもお金ないのは事実だし、当面の生活もまともに出来やしない、食事はともかく清潔面とかやばい、不審者まっしぐらです。
そんなわけでせっかくの好意を無駄にするわけにもいかないよねと自分に良い訳しつつありがたく頂くことにしたのだ。

……ちゃ、ちゃんと返すヨ?
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