91 / 332
89話 「収穫祭 3」
しおりを挟む
屋台で出すメニューが決まり皆準備をしつつ日々の仕事をこなしていく。
祭り当日の昼過ぎ、彼らは街の中心にある広場、そこから少しずれた大通りに屋台を構えていた。
年の一度の祭りと言うだけあって道はかなりの人で混みあっていた。
中央広場ではいくつか出し物を開催しているようで、設置されたテーブルに集まり昼間から酒を飲んでいる観客から歓声や笑い声が上がり、なかなかに賑わっている。
加賀達の露店でもそれは同じ事だ、
屋台の横でひたすら飲み食いするうーちゃんを見て親にあれが食べたいとねだる子供。
加賀がや咲耶を見て鼻の下を伸ばして寄ってくる男連中……時々バクス目当てのもいるが、料理の物珍しさに加え加賀や咲耶、うーちゃんの集客効果もあり客は次々にやってくる。
それにトラブルらしいトラブルも今のところ起きてはいない、時折しつこく言い寄る酔っ払いもいるがそこはバクスやオージアス、時にはアイネさんが出てきて排除している。
「はい、カリーブルスト一つとホットドック一つお待たせしましたー」
「お、できたか……いけるじゃん、酒買わないと……」
真っ赤にそまったウィンナーをひょいとつまみ、お酒を求めてふらつきはじめる客。
特に躊躇いもなく料理を口にしたところや、足元がおぼつかない辺り既に出来上がっていそうである。
「少しお客さん減ってきたかなー?」
「そうだな、昼飯を食うにも夕飯を食うにも中途半端な時間だ。夕方になればまた人が増えるだろうが……今のうち屋台でも見てきたらどうだ? 咲耶さんとうーちゃんとアイネさんも連れて一回りしてくるといい。こっちは3人もいれば十分回せるからな」
そう言われてハンズとオージアスの顔をちらりと伺う加賀。
それに気づいた二人は笑顔で行って来いと軽く手を振る。
実際先ほどまでひっきりなしに来ていたお客さんも、今はまばらになってきている。加賀はこれなら離れても大丈夫かなと判断し、3人を誘って屋台巡りに向かうのであった。
うっ(あれたべたい!)
「ほいほい。おねーさんそれ4つくださいなー」
代金を支払い料理を受け取る加賀。
皆に手渡すと自分も料理をほおばる。
「うん、シンプルだけどいけるね。塩加減がちょうどいい……」
「そうですね、たまにはこういうのも……うん、悪くない、悪くないね」
受け取った串焼きにかぶりつくアイネさん。
明るいうちから……いや暗くてもだが、骸骨が大通りをうろついていればちょっとした騒ぎになりそうなものだが、そうはなっていない。
道行く人は時折ちらりと加賀達のほうへ視線を向けるが、それは加賀と咲耶にうーちゃんと目立つのがそろっているためであり、決してアイネさんに向けられた視線ではない。
羽織ったローブから時折除くアイネさんの顔であるが、ぼんやりしていてどうもはっきり見えない、どうやら認識を阻害し幻を見せる魔法が掛かっているようだ。
発動にかなり時間を要するとの事だがこの日のために事前に用意してたらしい。
「次は甘いものがほしいかな……」
「甘いものですかー、あそこの屋台果物使った飲み物だしてるみたいですね、あれにしてみましょか」
加賀の指さした方向には果物をずらりと並べ、それをジュースにして販売している屋台があった。
割と人気のようで、短いながらも行列が出来ている。4人は列の後ろに並ぶと自分たちの番が来るのを待ち始める。
「ボクは、これとこれでお願いしますー」
「はいはい、ちょっとまってねえ」
加賀の注文を受け、果物をほいほいと容器の中に入れていくおばちゃん。
蓋をしてハンドルを回すと果物が絞られジュースとなっていく、手動式ではあるがミキサー……というよりはジューサーを使用しているようだ。
「ん、冷たくておいしい。すこししゃりしゃりしてるのは凍ってたからかな」
もらったジュースにストローを刺し皆に配り、自分のジュースを口にする加賀。
果物はよく冷やされ半分凍った状態だったようでしゃりしゃりした食感も楽しめ、中々良い感じだったようである。
「それが、ケヴィン? 見た感じ茹でたというか焼いたようにみえるんだけど……」
「んー、じゃあ試しに一切れだけ……あ」
一通り屋台も見て終わり、バクス達の元へ帰ろうとした4人であるが、例のケヴィンを扱っている屋台を見つけてしまう。
手間がかかると言うだけあった、まわりの屋台よりも多少高めの値段設定となっていたが結構な人数が買っている様を見てバクス達へのお土産も兼ねてケヴィンを購入する。
試しに一口食べた加賀の感想としては、予想してたのと違うであった。塩ゆでに酢漬けの野菜と聞いてもっとあっさりしたものを想像していたが、食べたものはたしかにホロホロと肉が崩れる感じからして長時間茹でたであろうことがわかる、ただ味が思ったより濃厚だったのである。
「なんか濃厚だね……塩ゆでしただけなのになんでだろ。脂身とかカリッとしてるのは茹でたあと焼いてるのかな、香ばしくておいしい……ただ、これお腹すいているときじゃないと厳しい」
「じゃあ、私も一切れ……あー」
加賀の感想を聞いてそれならば自分も……と結局皆して一切れ食べてしまう。
結論としてはお腹いっぱいだし、バクス達のお土産としようと言う事全員一致したのであった。
「なにかしら、屋台の前に人だかりあるね……」
アイネの言葉に視線を前方に向ける3人。
自分たちの屋台の前には普通のお客さんとは違いそうな、どうも高級そうな服を身にまとった人物にその護衛といった体の人らが集まっていた。
「ん……言い争いって訳じゃなさそうだけど……料理気に入ったから考えた奴を紹介しろって話みたいね」
「うわあ、てかアイネさんよく聞こえますね……」
屋台までは50m以上離れている、話している様子をみるにそこまで大きな声で話している訳でもなさそうであるが、アイネの耳は会話をきっちり捉えていたようだ。
「今、休憩中で居ないって断ってるみたいだけど……あ、こっち見たね」
「……うそん」
護衛の一人が加賀達に気が付いたようで高級そうな服をまとった人物に何事か耳打ちしている。
そして一斉に振り返るその人物とその取り巻き。回れ右して逃げようとしていた加賀であったが、加賀達をしっかりロックオンした様子を見て諦めたようにため息をついた。
祭り当日の昼過ぎ、彼らは街の中心にある広場、そこから少しずれた大通りに屋台を構えていた。
年の一度の祭りと言うだけあって道はかなりの人で混みあっていた。
中央広場ではいくつか出し物を開催しているようで、設置されたテーブルに集まり昼間から酒を飲んでいる観客から歓声や笑い声が上がり、なかなかに賑わっている。
加賀達の露店でもそれは同じ事だ、
屋台の横でひたすら飲み食いするうーちゃんを見て親にあれが食べたいとねだる子供。
加賀がや咲耶を見て鼻の下を伸ばして寄ってくる男連中……時々バクス目当てのもいるが、料理の物珍しさに加え加賀や咲耶、うーちゃんの集客効果もあり客は次々にやってくる。
それにトラブルらしいトラブルも今のところ起きてはいない、時折しつこく言い寄る酔っ払いもいるがそこはバクスやオージアス、時にはアイネさんが出てきて排除している。
「はい、カリーブルスト一つとホットドック一つお待たせしましたー」
「お、できたか……いけるじゃん、酒買わないと……」
真っ赤にそまったウィンナーをひょいとつまみ、お酒を求めてふらつきはじめる客。
特に躊躇いもなく料理を口にしたところや、足元がおぼつかない辺り既に出来上がっていそうである。
「少しお客さん減ってきたかなー?」
「そうだな、昼飯を食うにも夕飯を食うにも中途半端な時間だ。夕方になればまた人が増えるだろうが……今のうち屋台でも見てきたらどうだ? 咲耶さんとうーちゃんとアイネさんも連れて一回りしてくるといい。こっちは3人もいれば十分回せるからな」
そう言われてハンズとオージアスの顔をちらりと伺う加賀。
それに気づいた二人は笑顔で行って来いと軽く手を振る。
実際先ほどまでひっきりなしに来ていたお客さんも、今はまばらになってきている。加賀はこれなら離れても大丈夫かなと判断し、3人を誘って屋台巡りに向かうのであった。
うっ(あれたべたい!)
「ほいほい。おねーさんそれ4つくださいなー」
代金を支払い料理を受け取る加賀。
皆に手渡すと自分も料理をほおばる。
「うん、シンプルだけどいけるね。塩加減がちょうどいい……」
「そうですね、たまにはこういうのも……うん、悪くない、悪くないね」
受け取った串焼きにかぶりつくアイネさん。
明るいうちから……いや暗くてもだが、骸骨が大通りをうろついていればちょっとした騒ぎになりそうなものだが、そうはなっていない。
道行く人は時折ちらりと加賀達のほうへ視線を向けるが、それは加賀と咲耶にうーちゃんと目立つのがそろっているためであり、決してアイネさんに向けられた視線ではない。
羽織ったローブから時折除くアイネさんの顔であるが、ぼんやりしていてどうもはっきり見えない、どうやら認識を阻害し幻を見せる魔法が掛かっているようだ。
発動にかなり時間を要するとの事だがこの日のために事前に用意してたらしい。
「次は甘いものがほしいかな……」
「甘いものですかー、あそこの屋台果物使った飲み物だしてるみたいですね、あれにしてみましょか」
加賀の指さした方向には果物をずらりと並べ、それをジュースにして販売している屋台があった。
割と人気のようで、短いながらも行列が出来ている。4人は列の後ろに並ぶと自分たちの番が来るのを待ち始める。
「ボクは、これとこれでお願いしますー」
「はいはい、ちょっとまってねえ」
加賀の注文を受け、果物をほいほいと容器の中に入れていくおばちゃん。
蓋をしてハンドルを回すと果物が絞られジュースとなっていく、手動式ではあるがミキサー……というよりはジューサーを使用しているようだ。
「ん、冷たくておいしい。すこししゃりしゃりしてるのは凍ってたからかな」
もらったジュースにストローを刺し皆に配り、自分のジュースを口にする加賀。
果物はよく冷やされ半分凍った状態だったようでしゃりしゃりした食感も楽しめ、中々良い感じだったようである。
「それが、ケヴィン? 見た感じ茹でたというか焼いたようにみえるんだけど……」
「んー、じゃあ試しに一切れだけ……あ」
一通り屋台も見て終わり、バクス達の元へ帰ろうとした4人であるが、例のケヴィンを扱っている屋台を見つけてしまう。
手間がかかると言うだけあった、まわりの屋台よりも多少高めの値段設定となっていたが結構な人数が買っている様を見てバクス達へのお土産も兼ねてケヴィンを購入する。
試しに一口食べた加賀の感想としては、予想してたのと違うであった。塩ゆでに酢漬けの野菜と聞いてもっとあっさりしたものを想像していたが、食べたものはたしかにホロホロと肉が崩れる感じからして長時間茹でたであろうことがわかる、ただ味が思ったより濃厚だったのである。
「なんか濃厚だね……塩ゆでしただけなのになんでだろ。脂身とかカリッとしてるのは茹でたあと焼いてるのかな、香ばしくておいしい……ただ、これお腹すいているときじゃないと厳しい」
「じゃあ、私も一切れ……あー」
加賀の感想を聞いてそれならば自分も……と結局皆して一切れ食べてしまう。
結論としてはお腹いっぱいだし、バクス達のお土産としようと言う事全員一致したのであった。
「なにかしら、屋台の前に人だかりあるね……」
アイネの言葉に視線を前方に向ける3人。
自分たちの屋台の前には普通のお客さんとは違いそうな、どうも高級そうな服を身にまとった人物にその護衛といった体の人らが集まっていた。
「ん……言い争いって訳じゃなさそうだけど……料理気に入ったから考えた奴を紹介しろって話みたいね」
「うわあ、てかアイネさんよく聞こえますね……」
屋台までは50m以上離れている、話している様子をみるにそこまで大きな声で話している訳でもなさそうであるが、アイネの耳は会話をきっちり捉えていたようだ。
「今、休憩中で居ないって断ってるみたいだけど……あ、こっち見たね」
「……うそん」
護衛の一人が加賀達に気が付いたようで高級そうな服をまとった人物に何事か耳打ちしている。
そして一斉に振り返るその人物とその取り巻き。回れ右して逃げようとしていた加賀であったが、加賀達をしっかりロックオンした様子を見て諦めたようにため息をついた。
10
お気に入りに追加
823
あなたにおすすめの小説
こちらの世界でも図太く生きていきます
柚子ライム
ファンタジー
銀座を歩いていたら異世界に!?
若返って異世界デビュー。
がんばって生きていこうと思います。
のんびり更新になる予定。
気長にお付き合いいただけると幸いです。
★加筆修正中★
なろう様にも掲載しています。
加護とスキルでチートな異世界生活
どど
ファンタジー
高校1年生の新崎 玲緒(にいざき れお)が学校からの帰宅中にトラックに跳ねられる!?
目を覚ますと真っ白い世界にいた!
そこにやってきた神様に転生か消滅するかの2択に迫られ転生する!
そんな玲緒のチートな異世界生活が始まる
初めての作品なので誤字脱字、ストーリーぐだぐだが多々あると思いますが気に入って頂けると幸いです
ノベルバ様にも公開しております。
※キャラの名前や街の名前は基本的に私が思いついたやつなので特に意味はありません
生活魔法しか使えない少年、浄化(クリーン)を極めて無双します(仮)(習作3)
田中寿郎
ファンタジー
壁しか見えない街(城郭都市)の中は嫌いだ。孤児院でイジメに遭い、無実の罪を着せられた幼い少年は、街を抜け出し、一人森の中で生きる事を選んだ。武器は生活魔法の浄化(クリーン)と乾燥(ドライ)。浄化と乾燥だけでも極めれば結構役に立ちますよ?
コメントはたまに気まぐれに返す事がありますが、全レスは致しません。悪しからずご了承願います。
(あと、敬語が使えない呪いに掛かっているので言葉遣いに粗いところがあってもご容赦をw)
台本風(セリフの前に名前が入る)です、これに関しては助言は無用です、そういうスタイルだと思ってあきらめてください。
読みにくい、面白くないという方は、フォローを外してそっ閉じをお願いします。
(カクヨムにも投稿しております)
ユニークスキルで異世界マイホーム ~俺と共に育つ家~
楠富 つかさ
ファンタジー
地震で倒壊した我が家にて絶命した俺、家入竜也は自分の死因だとしても家が好きで……。
そんな俺に転生を司る女神が提案してくれたのは、俺の成長に応じて育つ異空間を創造する力。この力で俺は生まれ育った家を再び取り戻す。
できれば引きこもりたい俺と異世界の冒険者たちが織りなすソード&ソーサリー、開幕!!
第17回ファンタジー小説大賞にエントリーしました!
望んでいないのに転生してしまいました。
ナギサ コウガ
ファンタジー
長年病院に入院していた僕が気づいたら転生していました。
折角寝たきりから健康な体を貰ったんだから新しい人生を楽しみたい。
・・と、思っていたんだけど。
そう上手くはいかないもんだね。
転生したらついてましたァァァァァ!!!
夢追子
ファンタジー
「女子力なんてくそ喰らえ・・・・・。」
あざと女に恋人を奪われた沢崎直は、交通事故に遭い異世界へと転生を果たす。
だけど、ちょっと待って⁉何か、変なんですけど・・・・・。何かついてるんですけど⁉
消息不明となっていた辺境伯の三男坊として転生した会社員(♀)二十五歳。モブ女。
イケメンになって人生イージーモードかと思いきや苦難の連続にあっぷあっぷの日々。
そんな中、訪れる運命の出会い。
あれ?女性に食指が動かないって、これって最終的にBL!?
予測不能な異世界転生逆転ファンタジーラブコメディ。
「とりあえずがんばってはみます」
気がついたら異世界に転生していた。
みみっく
ファンタジー
社畜として会社に愛されこき使われ日々のストレスとムリが原因で深夜の休憩中に死んでしまい。
気がついたら異世界に転生していた。
普通に愛情を受けて育てられ、普通に育ち屋敷を抜け出して子供達が集まる広場へ遊びに行くと自分の異常な身体能力に気が付き始めた・・・
冒険がメインでは無く、冒険とほのぼのとした感じの日常と恋愛を書いていけたらと思って書いています。
戦闘もありますが少しだけです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる