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66話 「残りのメンバーが来たようで」
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ガイ達が著てからおよそ一月が立ったったある日の朝、宿の食堂に二人の人物がいた。
一人は八木、もう一人はチェスターである。
八木はもう朝食を食べ終えたのだろう、空になった食器を前にぼーっとチェスターのほうを眺めていた。
それに気がついたチェスターは手を止めると八木へと声を掛ける。
「どうしました? ぼーっとして」
「あ、失礼。いやあチェスターさんのその格好も見慣れてきたなと思って……」
「着るようになってから一月たちますしね、最近は外でもじろじろ見られることが減ってきました。代わりにどこで売っているのかと聞かれることが増えましたけど」
そう話しながら食事を再開するチェスター。
咲耶が作った服を着るようになってからもう一月である、宿の中でも外でも見慣れた光景となっていた。
「へえ、まわりの評判どんな感じです?」
「悪くないですよ、じろじろ見られるといってもどちらかというと興味引かれてといった感じですし。先ほども言った通りどこで売っているのかと聞かれますから、購入したいと考えてる人も結構いるようですよ。他のメンバーも話し聞く限り似たり寄ったりといった感じですね」
チェスターの言葉の通り、咲耶は一月の間にチェスターだけではなく他のメンバーの服も作成していた。
どれも咲耶の趣味全開で作られたものであり、作った本人は作りたいものを思う存分つくれて満足。チェスターたちも安く上等な服が手に入りこちらも満足と実にウィンウィンな関係となっている。
「ここだけの話し最初はちょっと恥ずかしかったんですけどね、慣れると前の服には戻れません」
「大分気に入ったんですね、それきいたら咲耶さんもっと張り切りそうすね」
「たしかに……張り切りすぎて無理しないといいんですが」
チェスターの言葉に天井を見る八木。
再び視線を戻すと口を開く。
「今の所暇なときに作ってるだけみたいなんで大丈夫とは思いますよ?」
「そうですか……他のメンバーきた時にどうなるかですね、おそらく皆ほしがるでしょうから……」
「そこは咲耶さんに自重して貰うしか……そういやそろそろ他のメンバーさん来るんでしたね」
ガイたちが来てからそろそろ一月がたつ、もう他のメンバーいつ来てもおかしくはない。
布巾で口を軽くぬぐいコップを手に取るチェスター。
コップの中身は絞りたての牛乳だ、コップを傾け一気にあおると満足げに息を吐く。
「そろそろ来るはずですね、来たらギルドで待つよう言付けてあるので、もう街に来ているのなら夕方には宿に来るでしょうね。もし昨晩来てたのなら今朝ギルドに向かった彼らと合流しているはずなので……あ、ごちそうさまです」
「お粗末様でした。下げちゃいますね、飲み物のお代わりはいりますかー?」
「ありがとうございます。もう少しで出るのでお構いなく」
お代わりが必要かなと厨房から顔を覗かせた加賀であるが、もう出ると聞いて食器を下げ始める。
食器を片付け終わりチェスターがそろそろ席を立とうかと言うところでふいに宿の外が騒がしくなる。
「噂をすればと言うやつですかねえ」
「えっ、てことは……」
「ええ、残りのメンバーが来たようですね」
そう話している間にもがやがやとした音は徐々に大きくなっていき、ふい八木が何かに反応したようにピクリと動く。
「……いま女の人の声が聞こえたような」
「ああ、全部で4人ですがいますよ」
「あ、やっぱ少なめなんですね?」
「ええ、体を使う職業なんでそのへんはしょうがないですねえ」
では、ちょっと挨拶してきますね、と言い席を立つチェスターとそれを追うように同じく席を立つ八木。
扉の手前まできたところで加賀が八木をよびとめる。
「どうした? 加賀は行かんの?」
「行くけどその前に言っておこうと思って」
「うん?」
加賀の言葉に怪訝そうな顔をする八木。
加賀はチェスターが部屋から出たのを確認するとやや声のトーンを落とし八木へと話しかける。
「チェスターさんから聞いたんだけど、この世界だとモンスターを倒すことによって強くなるそうなのね」
「へえ、やっぱそう言うのあるんだなあ」
「それでね……」
加賀の言葉を聞いて感心した様子の八木。加賀はそれを見てちょっと言いにくそうに言葉を句切る。
「後衛でも女性でも倒すだけでむきむきになると思うの」
「………………」
「だからショック受けても大げさに驚かないように気をつけてね?」
おう、と小さく返事する八木を押すように玄関へと向かう二人。
玄関ではバクスと咲耶の二人が対応しているところであった。
玄関へと出てきた八木と加賀に気付いたバクスが声を上げる。
「二人とも良いところに来た! すまんが鍵渡したお客さんから部屋に案内してやってくれ」
「はーい。それじゃそちらの方から案内しますねー」
「……はっ えっとじゃあそちらの方案内します、こちらです」
二人が最初に案内したのはどちらも女性でしかもエルフであった。
八木の方は肌が浅黒く恐らく違う種族……ダークエルフと呼ばれる存在のようだ。
気にしていた体格のほうはやはり筋肉質ではあったがアルヴィンらよ比べると大分普通である。
軽い足取りで案内する加賀とやや足取りの重い八木を見るに、加賀としては範囲内で八木としては範囲外だったのかも知れない。
一人は八木、もう一人はチェスターである。
八木はもう朝食を食べ終えたのだろう、空になった食器を前にぼーっとチェスターのほうを眺めていた。
それに気がついたチェスターは手を止めると八木へと声を掛ける。
「どうしました? ぼーっとして」
「あ、失礼。いやあチェスターさんのその格好も見慣れてきたなと思って……」
「着るようになってから一月たちますしね、最近は外でもじろじろ見られることが減ってきました。代わりにどこで売っているのかと聞かれることが増えましたけど」
そう話しながら食事を再開するチェスター。
咲耶が作った服を着るようになってからもう一月である、宿の中でも外でも見慣れた光景となっていた。
「へえ、まわりの評判どんな感じです?」
「悪くないですよ、じろじろ見られるといってもどちらかというと興味引かれてといった感じですし。先ほども言った通りどこで売っているのかと聞かれますから、購入したいと考えてる人も結構いるようですよ。他のメンバーも話し聞く限り似たり寄ったりといった感じですね」
チェスターの言葉の通り、咲耶は一月の間にチェスターだけではなく他のメンバーの服も作成していた。
どれも咲耶の趣味全開で作られたものであり、作った本人は作りたいものを思う存分つくれて満足。チェスターたちも安く上等な服が手に入りこちらも満足と実にウィンウィンな関係となっている。
「ここだけの話し最初はちょっと恥ずかしかったんですけどね、慣れると前の服には戻れません」
「大分気に入ったんですね、それきいたら咲耶さんもっと張り切りそうすね」
「たしかに……張り切りすぎて無理しないといいんですが」
チェスターの言葉に天井を見る八木。
再び視線を戻すと口を開く。
「今の所暇なときに作ってるだけみたいなんで大丈夫とは思いますよ?」
「そうですか……他のメンバーきた時にどうなるかですね、おそらく皆ほしがるでしょうから……」
「そこは咲耶さんに自重して貰うしか……そういやそろそろ他のメンバーさん来るんでしたね」
ガイたちが来てからそろそろ一月がたつ、もう他のメンバーいつ来てもおかしくはない。
布巾で口を軽くぬぐいコップを手に取るチェスター。
コップの中身は絞りたての牛乳だ、コップを傾け一気にあおると満足げに息を吐く。
「そろそろ来るはずですね、来たらギルドで待つよう言付けてあるので、もう街に来ているのなら夕方には宿に来るでしょうね。もし昨晩来てたのなら今朝ギルドに向かった彼らと合流しているはずなので……あ、ごちそうさまです」
「お粗末様でした。下げちゃいますね、飲み物のお代わりはいりますかー?」
「ありがとうございます。もう少しで出るのでお構いなく」
お代わりが必要かなと厨房から顔を覗かせた加賀であるが、もう出ると聞いて食器を下げ始める。
食器を片付け終わりチェスターがそろそろ席を立とうかと言うところでふいに宿の外が騒がしくなる。
「噂をすればと言うやつですかねえ」
「えっ、てことは……」
「ええ、残りのメンバーが来たようですね」
そう話している間にもがやがやとした音は徐々に大きくなっていき、ふい八木が何かに反応したようにピクリと動く。
「……いま女の人の声が聞こえたような」
「ああ、全部で4人ですがいますよ」
「あ、やっぱ少なめなんですね?」
「ええ、体を使う職業なんでそのへんはしょうがないですねえ」
では、ちょっと挨拶してきますね、と言い席を立つチェスターとそれを追うように同じく席を立つ八木。
扉の手前まできたところで加賀が八木をよびとめる。
「どうした? 加賀は行かんの?」
「行くけどその前に言っておこうと思って」
「うん?」
加賀の言葉に怪訝そうな顔をする八木。
加賀はチェスターが部屋から出たのを確認するとやや声のトーンを落とし八木へと話しかける。
「チェスターさんから聞いたんだけど、この世界だとモンスターを倒すことによって強くなるそうなのね」
「へえ、やっぱそう言うのあるんだなあ」
「それでね……」
加賀の言葉を聞いて感心した様子の八木。加賀はそれを見てちょっと言いにくそうに言葉を句切る。
「後衛でも女性でも倒すだけでむきむきになると思うの」
「………………」
「だからショック受けても大げさに驚かないように気をつけてね?」
おう、と小さく返事する八木を押すように玄関へと向かう二人。
玄関ではバクスと咲耶の二人が対応しているところであった。
玄関へと出てきた八木と加賀に気付いたバクスが声を上げる。
「二人とも良いところに来た! すまんが鍵渡したお客さんから部屋に案内してやってくれ」
「はーい。それじゃそちらの方から案内しますねー」
「……はっ えっとじゃあそちらの方案内します、こちらです」
二人が最初に案内したのはどちらも女性でしかもエルフであった。
八木の方は肌が浅黒く恐らく違う種族……ダークエルフと呼ばれる存在のようだ。
気にしていた体格のほうはやはり筋肉質ではあったがアルヴィンらよ比べると大分普通である。
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