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65話 「ダンジョンで手に入るもの」

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「……そんなわけで手に入れたのがこいつよ」

「おー……おー? シール、ですか?」

夕食後につまみと酒をさしだしおねだりしたところ、加賀の目論見通り気分よさげ今日のダンジョンでの出来事を語り出したヒューゴ。
今もダンジョンで手に入れたと言う宝を自慢げに加賀へと見せている。ヒューゴ曰くそれはただのシールではなくエンチャントシールと呼ばれるもので、貼り付けた対象に一時的に魔法の効果を付与するものとの事だ。
使い勝手がよく、自分で浸かっても良いし売ってもいい値段がつく、そう上機嫌で語り酒をあおるヒューゴをしょうがないなあと言った目線で見る他のメンバー。アルヴィンがちらりと横目でヒューゴを見ると釘を刺すように口を開く。

「我々はお金に困っているわけではありませんし、売るつもりはありませんが」

「わーてるっての。まだフルメンバー揃ってねえし、これあれば大分楽になるからな。ま、この枚数だとすぐ使い切っちまうだろうが」

「……ちなみに売るといくらぐらいになるんすかね」

話を聞く限りかなり有用な魔道具であることが分かる。そうなると売ったらいくらになるのだろうと疑問が浮かんできた八木、少し声をひそめながら尋ねる。

「効果によって異なりますが、これならおおよそ100万リアと言ったところですよ、八木」

「100万……」

アルヴィンから値段を聞いて無言になる八木。
ヒューゴが持つシールの束はトランプの半分ほどの厚みしかない、つまり一枚あたり4万前後と言うことになる。
それをすぐ無くなる……つまり消耗品扱いする様を見てこれなら宿の値段も問題ないと言うわけだと納得する。
宿は追加で飲み食いした代金含めて1万前後である、他の宿と比べると4~5倍ほどの値段だが彼らに取って全く問題にならない額なのだろう。

「そんな高いのが1階? からでるんですねー。そりゃあんだけ混むよね」

「いや加賀ちゃん。普通は浅い階層じゃそんないいもんでないぜ」

「ありゃ、そーなんだ?」

加賀の言葉を否定するヒューゴ。残りのメンバーも同調するように頷いたりしている。

「普通はもっとしょぼいのが出るんだがのお、敵も妙に強いしちと他のダンジョンとは違うようだの」

「ええ……中堅以上の者には良いでしょうが、駆け出しの者は苦労しそうです」

空になったジョッキを手で弄びつつ話すアントンと同じく空になったジョッキを見詰めながら駆け出しの者を心配するイクセル。
酒好きな上に強いのだろう、明らかに他のメンバーよりも酒の消費が早い。

「実際負傷してたのもちらほら居ましたねえ……うん、これも美味しい」

「あれっ、それまだ俺食べてない! 咲耶さん俺にもあれください!」

チェスターとガイは酒よりもお菓子が余韻ようだ、酒を1杯飲んだ後はデザートばかり食べている。

「はいはーい、ちょっとお待ちくださいなあ、命お願いね」

「ほいさ」

ガイの言葉に反応しつつアントンとイクセルの前にジョッキを置く咲耶。加賀が厨房に向かったのを確認すると椅子に腰掛ける。
どうやら加賀と二人で交代しながら配膳しているようだ。


「1階層でそんなのが出るってことは、ダンジョン攻略したらとんでもないのでそうすね。そういや皆さんが攻略したダンジョン何でたんです?」

「お、聞きたい? すげーのでたぞ」

「それは俺も興味あるな」

話題はダンジョンを攻略したときの話しに移る。
これにはうーちゃんと二人? 静かに晩酌していたバクスも興味を示す。

「何出たと思う?」

「え? んー……なんか凄い剣とか」

「なんだそりゃ……いや、出ることもあるけどさ、もっとこう……何かあるだろう?」

楽しげに何が出たと思うかと問うヒューゴであったが加賀の答えにがっくりと肩を落とす。

「し、城とか……」

「どうやって外に運ぶんだよ……」

「船とかかしらねえ」

加賀の言葉に呆れた様子を見せ咲耶の船という言葉におっと反応するヒューゴ。

「咲耶さん、おしい! 出たのは飛行艇なんだなこれが」

「えっ、飛行艇ってあの飛行艇? 空飛ぶあれ?」

「……こりゃまたえらいもん引き当てたなあ」

飛行艇と聞いてまず思い浮かぶのは某ゲームに出てきたあれであろうか。加賀もそれを思い浮かべたのだろう、やや興奮気味にヒューゴに詰め寄る。
そしてかなり驚いた様子のバクスから察するにかなり貴重なものであるようだ。

「運び出すのに苦労しましたね、あれは」

「いくら最後の部屋から地上まで直通とは言えあれはのお……」

「まあまあ、その分高く売れますし。苦労した甲斐があるじゃないですか」

その言葉に驚きと次いで落胆した表情を見せる加賀。

「売っちゃうんだー……」

「いや、そりゃ俺らだって出来れば持っときたいよ? でも維持費がほんと洒落ならんぐらい高いのよ」

「あー……ならしょーがないね」

2万の品を消耗品扱いする彼らが高いと言うのだ、それなら仕方が無いと諦める加賀であるがやはり一度見てみたかったのだろう、しょんぼりした顔をしている。

「そう気を落とすな、オークションで落とす国によっては見れるかも知れんぞ?」

「んっ、期待して待っとこう」

バクスの言葉にすぐ気を取り直して笑顔になる加賀。
お代わりの言葉に足取り軽く厨房へと向かうのであった。
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