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328話 「バクスのお願い3」

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バクスのあてとは一体何だったのだろうか? それは数日後分かることとなった。

早朝、宿の入り口近くに集まる探索者達……その中に普段見ぬ人影が一つ。 バクスである。
バクスのあて、それは依頼者である本人が行くことであった。
ダンジョンを踏破するだけの実力者でありかつ長い探索者活動で培った信頼。
バクスは自身も参加することでそれらを利用して参加者を集めようとしたのだ。

「本当に行くんすか?」

「ああ」

探索者がバクスに問いかけるが、バクスはとくに気負う様子もなく肯定する。
バクスは普段はすでに普段着ている咲耶製の服ではなく、探索者時代に使用していた装備を装着している。
どれも手入れはしていたようで埃をかぶっている……なんてことはない。

ちなみに探索者達もすでに完全装備である。
バクスはギルドで同行者を募集していたのだが、バクスが行くとしった探索者達がじゃあなら俺も俺もと参加していき、結果いつもの探索者メンバー+バクスというパーティが結成されたのであった。

「お前たちに頼りきりって訳にもいかんだろ」

「もう引退してるんだし、私たちに任せてって言ったんだけどねー」

「うわ……さすがえぐそうな装備持ってますね」

「どんな効果ついてんすか?」

これから冬山を登り強敵と戦うというのに皆いつも通りである。
彼らの興味は初めてみるバクスのフル装備へと移っていったようで、直接触れたりはしないもののを皆興味深そうな視線を向け、装備を指さしてはその詳細について尋ねている。

「全ての魔法ダメージ半減、それに矢除け、身体能力向上、呪詛返し……あとは時間経過でダメージの回復もあるな。 鎧自体も自動修理がついている」

「予想以上にえぐいっすね……」

バクスの説明を聞いて驚くというよりか若干引き気味な探索者達。
加賀や八木、咲耶が聞いても何となくすごいんだろうなーとぐらいにしか分からなかったが、相当な性能をもった装備であるらしい。

「まさかその剣も……?」

興味は鎧から剣へと移っていく。
バクスは剣へ視線をやり、ああと答え鞘をぽんと叩く。

「これはやたら丈夫で切れ味が良い剣でな、気合いれて斬れば幽体でも切れるし、魔法もうまくやればはじく。 刃こぼれしようが曲がろうが時間が立てば直るおまけ付きだ」

「やっば」

剣は剣でやばい性能のようだ。
幽体は普通切れるものじゃないだろう、それに魔法も火や水あたりであればはじく……というか散らすことは出来るかもしれない。
だが、バクスがあえて言ったということはそうではないのだろう、実際のほどは見てみないと分からないが火や水以外の魔法もはじくことが出来るはずだ。

「それってダンジョン踏破したときに出たんで?」

「いや、これは元から持っていたものだ」

「うへぇ」

つまりはダンジョン踏破したときの装備なり何なりが他にもあるということだ。
探索者達はお手上げといった感じで手を挙げ、そして宿の外へと出ていく。 そろそろ出発の時間のようだ。

「結局バクスさんが狩りにいくんだもんねー……だいじょぶ?」

てっきり誰かに依頼をするとばかり思っていた加賀は心配したようすでバクスへ声を掛ける。
バクスが強いのは知っているが、ブランクもあるということも知っている。 現役の探索者達と一緒とはいえやはり不安があるのだ。

「まあ何とかなる。 別に一人で行くわけじゃないからな」

「そりゃそーだよっ」

「それじゃ留守の間頼む」

脇腹をびすびすと突く加賀に軽くチョップするバクス。
頭を押さえる加賀に留守を頼むとバクスも外へと向かっていく。

「……はーい。 ほんとに気を付けてね? 皆もバクスさんのことお願いねっ」

「へいへい」

「まー。 たぶん大丈夫だよー。 行ってくるねー」

頭をさすりつつ他の探索者達へとバクスのことをお願いする加賀。
探索者達は大丈夫だと言うが、加賀の表情は暗いままである。心配性なその様子に苦笑いしつつ彼らは山へと向かい出発するのであった。
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