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284話 「収穫の時期2」

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森に行くメンバーを募集し始めてから1週間が経った。
夏も終わり涼しいと言える程に気温は下がり、空は雲一つ無い快晴である。
まさに絶好のお出かけ日和と言えるだろう。

「結構な人数なったなあ」

馬車に荷物を積み込み宿の中へと戻った八木。
食堂で出発するまでの時間を潰している、本日の参加者の面々を見てそう呟く。

「貴重なものを収穫すると聞いたが……この人数で大丈夫なのかのお」

「全員には当たらないとかだと悲しい物があるわな」

手元から抜き出したトランプがテーブルの上を滑る。
回りのテーブルでも皆カードゲームに興じたり、本を読んだりと各々好きなように時間を潰している。
参加者の人数は最終的に20人を超えて30人近くまでなっていた。貴重なものと事前に聞いていた者はその参加者の数に少し心配そうな表情を浮かべていた。

「数は結構ある見たいー。お腹いっぱいになるかは分からないけど、食べられない人が出るって事はないと思う」

たまたまその会話が聞こえたのだろう、厨房から加賀が顔を覗かせる。

「うム……あ、タマゴは多めデ」

「ほいさ。 一応お弁当も持っていくしねー……って卵が溢れた。ラヴィあ~んして」

普段なら加賀とアイネ、それにうーちゃんとバクスぐらいしか居ない厨房にラヴィの姿があった。
よほど暇だったのか、弁当に入れる卵を使った料理が気になったのか。恐らくは後者だろう。

ハムで卵のフィリングを挟んで衣を付けて揚げる。
宿でも人気のある料理だが、卵を入れすぎてはみ出てしまった様だ。
そういった失敗したものはラヴィがきっちり頂いているので、決して邪魔している訳ではないのだ。

「……ウマい」

「ありがとー。 卵の量は程々に、だね」

加賀が思ってた以上に皆の支度が早く、出発の時間が迫っていた。間に合わせるべく加賀は黙々と弁当を作成していたが、厨房の扉が開かれ八木がひょいと中をのぞき込む。

「おーい、荷物積み込み終わったぞー」

八木が積み込み作業から宿の中へと戻ったのは全ての荷物が積み終わった事を伝える為だったらしい。

「あ、もう? んー……いっか、これは夕飯にしちゃおう。八木~そっちの包みも積み込んじゃって」

八木の言葉を聞いた加賀は目に前に並んだ完成前の料理へと視線を向けた。
少し考え、それらは夕飯用にする事を決める。
中身は火が通っている物とは言え、今から全て揚げるとなるとそれなりに時間が掛かってしまう。
加賀は大きめのパットに料理を詰め込みながら八木に指示を出す。

「これ?」

「うん、お弁当だからひっくり返さないようにねー」

時間は無かったがある程度弁当は作り終えていた。
森で収穫したものを食べる予定であるので少なめ……それでも十分多いが、それらを馬車に積み込むと一同は森へと向け出発するのであった。


「おー。見えてきたー」

街から目的地までは馬車であればさほど時間の掛かる距離ではない。
ある程度の深さまで馬車で乗り付け、残りは徒歩で移動となる。
程なくして先頭を歩いていた八木が以前神の落とし子の施設を見つけた馬車を発見し、声を上げる。
そこには確かに以前には無かったはずの巨木がいくつか生えていた、植えてからほんの数ヶ月で回りの樹齢数十年、ものによっては100年を越える木と遜色のない大きさまで育ったそれは、過去の神の落とし子が残した物と言うだけあって色々とぶっ飛んでいる。

「確かに見たこと無い木だ……あん?」

「……あれ?」

「待って待って! えっなんで……な、何でサンドイッチが枝から!?」

その巨木には真っ赤に熟れた美味しそうな果実……などではなく、枝から垂れ下がるように美味しそうなサンドイッチが幾つも実っていたのだ。
貴重なものとしか聞かされていなかった者達にとってその光景はかなり衝撃が大きかった、ほとんどの者が口をぽかんと開け呆然とした様子で目の前の光景をただ見詰めている。

「うはあ……すげえ事なってんな」

うー!(うひょーい)

「うーちゃーん自分で捥いでも味しないかもよ? ……えーと。あれがそうです」

事前に知っていた者は驚きはしたが取り乱すほどでは無かった。
うーちゃんなどは早速食べようと木に向かって駆け出した程である。


「皆に行き渡ったかなー?」

その後うーちゃんに手伝ってもらい、大量のサンドイッチの実?は回収された。
思ったよりも数の多かったそれは一人複数個食べても問題ない量である。
大皿に積まれたサンドイッチと、各自の手に持たされたサンドイッチであるが、

「……」

「……」

「何で誰も食べないのっ」

それを前にしても誰も手を付けようとはしなかった。

「いや、だってなあ」

「うん……」

色んな食材を口にした事がある彼らであったが、さすがに木になったサンドイッチは食べたことが無い。
あまりにも未知な食材費前にして尻込みしているのだ。
その不安に揺れる瞳がこれ食って大丈夫なのか?と言う心の声を如実に現していた。
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