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283話 「縄張り争い4」
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「……うわぁ、うーちゃん容赦ないね」
地面に叩きつけられた飛竜は生きてこそいるが翼はバッキバキにへし折れもう飛べそうに無い、その他にも全体的にダメージが入っているのだろう、起き上がろうにも起き上がれないといった様子である。
以前ドラゴンに対し蹴りを入れたときより明らかに飛竜に受けたダメージが大きい。どうもドラゴンに対しては相当手加減をしていたらしい。
「こっちに攻撃仕掛けようとしたんだもの、生きているだけまし」
そう言って2匹の竜へと近付いていくアイネ。
黒い霞がダダ漏れな辺りどう見ても話し合いに行く様には見えない。
「ちょ、ちょっと待ってくだされ!」
「む? うーちゃんステイステイ。アイネさんもー」
アイネと2匹の竜との間に滑り込むように割って入るドラゴン。
それを見て加賀はアイネの後ろを着いて行こうとしたうーちゃんにしがみつき、アイネにも声をかける。
とりあえず二人が止まったのを見てホッとした様子を見せたドラゴンであるが、姿勢を正すと皆に向かい話し始めた。
「……という訳で番となった竜が縄張りを求めて他の竜と争うと言うのは良くある事でして……その、出来れば食べるのは勘弁して頂けないかと……」
「食べないよ!?」
ドラゴンの話しが一旦終わりとりあえず突っ込みを入れる加賀。
話の内容は竜の生態に関する部分であった。今回の様な争いも長い竜生?で見れば割とある事らしく、普通はある程度実力が分かったところで弱い個体が引き下がるか、まれに若い個体に縄張りを譲ってやる事もあるそうだ。
「リザートマンの住処を襲ったのは? 怪我した者が出ていたけど」
「襲ったふり……ですが、まだ若いからでしょう。ブレスの制御が甘かった様で……」
「被害者を出すつもりは無かった……申し訳ないと思ってる」
アイネの目を見て身を竦ませ顔を伏せる飛竜達。
そして伏せた先に下から覗き込むうーちゃんを見て、泣きそうになりながら反省の言葉を述べる。
「さっきこっちにブレス吐こうとしたね」
「……警告のつもりで……地面に、当てよう……と」
飛竜以外からはその顔は見えないが、それが正解だったのかも知れない。
間近でガン見されているのプレッシャーは相当なもので途切れ途切れに言葉を発するのが精一杯といった様子である。
「……そう」
「ん?」
聞きたい事は聞き終わったのか、話を続けるのを止め加賀へ視線を向けるアイネ。
加賀へ視線を向けていたのはアイネだけでは無かった。ドラゴンやうーちゃん、それに飛竜達の視線も何故か加賀へ向いていた。
「え、何……?」
「事情は分かったけど……どうする?」
「えぇ……ボクが決めるの?」
何故か加賀が結論を出す流れとなっていた。
困惑しながらも何とか頭を回転させ答えを出そうとする加賀。やがて考えがまとまったのか皆の方を向き直して口を開いた。
「とりあえずドラゴンさんとリザートマンさんとで話しあって決めれば良いんじゃないかなーと……ボクらはドラゴンさんが危ないって聞いて来たけど、もう大丈夫そうだし……それで良い?」
加賀が結論を出すと言っても被害を受けたリザートマンやドラゴンの分については加賀が結論を出す部分では無い、そう加賀は考えたようだ。
ドラゴンとリザートマン、飛竜達で話し合う様伝えると3人は宿へと戻るのであった。
「ほー、何か疲れてると思ったらそんな事あったんだ」
そう言って分厚いステーキにかぶりついてモリモリ食べる八木。
その日の夕食時、ぐったりとした様子の加賀が気になった連中は何があったのかを夕飯を食べながら聞いていた。
「結局その2匹の竜はどうなったのです?」
「あー……そのまま汽水湖の島で生活するらしーよ。ドラゴンさんだけだと広すぎるんだって。あと留守にしがちだったから丁度良いとか何とか」
一応話し合いの結果をドラゴンから聞き及んでいた様だ。
汽水湖は広く、ドラゴン一人だけで使うには広すぎる為、ドラゴンは2匹の飛竜に対し汽水湖の中央にある島を住処とする許可を出したらしい。
ちょくちょく人里に遊びに行っては縄張りを留守にするドラゴンにとって丁度良かったのもあるだろう。
「なるほど……ところで加賀さん」
「ん?」
そんな話を加賀の向かいで聞いていたチェスター。
ところで、と前置きすると普段は開いているかも分からない糸目を開いて真剣な眼差しで加賀を見つめる。
「この肉って何の肉ですか……?」
その言葉を聞いて周りに居た者達の手が一斉にぴたりと止まる。
「あれ、美味しくなかったー?」
「いえ、美味しいのですが……初めて食べる味なので……」
汽水湖に現れたと言う2匹の飛竜と、その日の夕飯で出された初めて食べる分厚いステーキ肉。
嫌な想像が膨らみフォークをもつ手が震える。
「あれ、前にも食べたはずだけど……」
「……あ、そうなの? てっきりドラゴンの肉かと思ったぜー。うん、うめえ」
不思議そうに首を傾げそう言った加賀を見て、安心したように笑い、ステーキを口にするヒューゴ。
「あ、そっか。飛竜だから味違うのかな」
「やっぱドラゴンじゃねーかっ」
しっかりドラゴン肉だったらしい。
地面に叩きつけられた飛竜は生きてこそいるが翼はバッキバキにへし折れもう飛べそうに無い、その他にも全体的にダメージが入っているのだろう、起き上がろうにも起き上がれないといった様子である。
以前ドラゴンに対し蹴りを入れたときより明らかに飛竜に受けたダメージが大きい。どうもドラゴンに対しては相当手加減をしていたらしい。
「こっちに攻撃仕掛けようとしたんだもの、生きているだけまし」
そう言って2匹の竜へと近付いていくアイネ。
黒い霞がダダ漏れな辺りどう見ても話し合いに行く様には見えない。
「ちょ、ちょっと待ってくだされ!」
「む? うーちゃんステイステイ。アイネさんもー」
アイネと2匹の竜との間に滑り込むように割って入るドラゴン。
それを見て加賀はアイネの後ろを着いて行こうとしたうーちゃんにしがみつき、アイネにも声をかける。
とりあえず二人が止まったのを見てホッとした様子を見せたドラゴンであるが、姿勢を正すと皆に向かい話し始めた。
「……という訳で番となった竜が縄張りを求めて他の竜と争うと言うのは良くある事でして……その、出来れば食べるのは勘弁して頂けないかと……」
「食べないよ!?」
ドラゴンの話しが一旦終わりとりあえず突っ込みを入れる加賀。
話の内容は竜の生態に関する部分であった。今回の様な争いも長い竜生?で見れば割とある事らしく、普通はある程度実力が分かったところで弱い個体が引き下がるか、まれに若い個体に縄張りを譲ってやる事もあるそうだ。
「リザートマンの住処を襲ったのは? 怪我した者が出ていたけど」
「襲ったふり……ですが、まだ若いからでしょう。ブレスの制御が甘かった様で……」
「被害者を出すつもりは無かった……申し訳ないと思ってる」
アイネの目を見て身を竦ませ顔を伏せる飛竜達。
そして伏せた先に下から覗き込むうーちゃんを見て、泣きそうになりながら反省の言葉を述べる。
「さっきこっちにブレス吐こうとしたね」
「……警告のつもりで……地面に、当てよう……と」
飛竜以外からはその顔は見えないが、それが正解だったのかも知れない。
間近でガン見されているのプレッシャーは相当なもので途切れ途切れに言葉を発するのが精一杯といった様子である。
「……そう」
「ん?」
聞きたい事は聞き終わったのか、話を続けるのを止め加賀へ視線を向けるアイネ。
加賀へ視線を向けていたのはアイネだけでは無かった。ドラゴンやうーちゃん、それに飛竜達の視線も何故か加賀へ向いていた。
「え、何……?」
「事情は分かったけど……どうする?」
「えぇ……ボクが決めるの?」
何故か加賀が結論を出す流れとなっていた。
困惑しながらも何とか頭を回転させ答えを出そうとする加賀。やがて考えがまとまったのか皆の方を向き直して口を開いた。
「とりあえずドラゴンさんとリザートマンさんとで話しあって決めれば良いんじゃないかなーと……ボクらはドラゴンさんが危ないって聞いて来たけど、もう大丈夫そうだし……それで良い?」
加賀が結論を出すと言っても被害を受けたリザートマンやドラゴンの分については加賀が結論を出す部分では無い、そう加賀は考えたようだ。
ドラゴンとリザートマン、飛竜達で話し合う様伝えると3人は宿へと戻るのであった。
「ほー、何か疲れてると思ったらそんな事あったんだ」
そう言って分厚いステーキにかぶりついてモリモリ食べる八木。
その日の夕食時、ぐったりとした様子の加賀が気になった連中は何があったのかを夕飯を食べながら聞いていた。
「結局その2匹の竜はどうなったのです?」
「あー……そのまま汽水湖の島で生活するらしーよ。ドラゴンさんだけだと広すぎるんだって。あと留守にしがちだったから丁度良いとか何とか」
一応話し合いの結果をドラゴンから聞き及んでいた様だ。
汽水湖は広く、ドラゴン一人だけで使うには広すぎる為、ドラゴンは2匹の飛竜に対し汽水湖の中央にある島を住処とする許可を出したらしい。
ちょくちょく人里に遊びに行っては縄張りを留守にするドラゴンにとって丁度良かったのもあるだろう。
「なるほど……ところで加賀さん」
「ん?」
そんな話を加賀の向かいで聞いていたチェスター。
ところで、と前置きすると普段は開いているかも分からない糸目を開いて真剣な眼差しで加賀を見つめる。
「この肉って何の肉ですか……?」
その言葉を聞いて周りに居た者達の手が一斉にぴたりと止まる。
「あれ、美味しくなかったー?」
「いえ、美味しいのですが……初めて食べる味なので……」
汽水湖に現れたと言う2匹の飛竜と、その日の夕飯で出された初めて食べる分厚いステーキ肉。
嫌な想像が膨らみフォークをもつ手が震える。
「あれ、前にも食べたはずだけど……」
「……あ、そうなの? てっきりドラゴンの肉かと思ったぜー。うん、うめえ」
不思議そうに首を傾げそう言った加賀を見て、安心したように笑い、ステーキを口にするヒューゴ。
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「やっぱドラゴンじゃねーかっ」
しっかりドラゴン肉だったらしい。
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