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279話 「宿に足らないもの?6 縄張り争い」
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「まじ?」
「まじまじ」
目を丸くして加賀に問う八木とコクコクと頷いてギターを八木に返す加賀。
加賀が弾けないと分かり、皆の視線が八木へと集まる。
「うっ……じゃ、じゃあ俺が演奏するから加賀は歌ってくれよ……」
少し休憩を入れたお陰で多少体力が回復してきているとは言え再び歌いながら演奏するのは辛いものがある。
かと言って加賀は演奏できない事が分かっている、なので八木は自分が演奏し加賀は歌うという案を提案した。
「良いけど……まだお仕事残ってるからちょっとだけだよー」
「おう、頼むわ」
少し渋る加賀であったは、それは歌うのが嫌という訳ではなく、単に仕事が残っているからとみう理由であった。
八木もそうだったが人前で歌ったり演奏したりするのに抵抗は無いらしい。
選曲は八木任せとし、八木は女性ボーカルの曲を選んだようだ。
加賀の声質を考えれば妥当だろう。
八木が演奏し、加賀が歌い上げるのを口を開けて眺めていた探索者達。
曲が終わると一斉に拍手が湧き起こる。
「二人とも上手すぎない?」
「嬉しいけど凹むわ」
「ふひひ」
褒められ満更でもない様子の加賀。
「それじゃー厨房戻るねー」
結局その後も数曲歌い上げた加賀であったが、いい加減厨房の方へ戻らないといけないと思い、皆に手を振り厨房へと向かう。
「えっーもう戻るの? もっと歌ってきなよー。ねーねー」
「加賀……?」
だがしかし相手は既にベロンベロンのぐでんぐでんである。
戻る途中で文字通り絡まれた加賀は中々厨房へと戻れないでいた。
そんな中々戻らない加賀を心配してか厨房からアイネがひょっこり顔を覗かせる
「そう……でもこっちも一人だと……そうね、代わりにデーモン置いていくから……ごめんね」
加賀を中々話そうとしない酔っ払いから事情を聞いたアイネ。
加賀の代わりにとデーモンを置き去りにして厨房へと二人で戻ってしまう。
「むむー」
「ま、しゃあない、食いもん色々注文してるしな。時間できた時にでも頼もうぜ」
頬を膨らませるシェイラをなだめ、同時に自分も納得させるヒューゴ。
歌も聞きたいが飯も食いたいのだ。
「……ところでこれどうするのじゃ?」
「どうって……」
皆の視線の先には無言で佇むデーモンの姿があった。
心なしか涙目である。
「……どうするよ?」
誰かがそう呟くが答えるものは居ない。
取りあえず八木に次の曲をリクエストする事にしたのであった。
ちなみにデーモンは試しに歌わせて見たら無茶苦茶歌が上手かったらしい。
夏の汽水湖にて、リザートマン達の住処の側の畔にぷかぷかと浮かぶドラゴンの姿があった。
ドラゴンの朝は遅い。
朝日が昇り、街では人々が仕事へと向かう為に道を行き交い。リザートマン達の住処でも漁に向かうものや、森へと入るもの、人の街へと向かう者などが慌ただしく動き始める。
だが、ドラゴンはこれといって仕事をしているわけでは無い。ここ最近は夜になるとリザートマン達からせしめた酒と、人の街から持ってきたつまみ等を持って酒盛りを始めそのまま酔いつぶれるまで飲み続け、潰れたら潰れたでそのまま昼間で寝こける。
そんな生活を繰り返していた。
だが、その日に限っては違っていた。
『熱っつうぅぅうっ!?』
突如としてドラゴン周辺の水が沸き立ち、ドラゴンはその熱さに驚き飛び跳ねるように目を覚ました。
直ぐさま熱湯となった部分から離れたドラゴンは辺りに他漂う独特の魔力に硫黄臭から何があったかをすぐに察した。
『いきなりブレス吐いたのはどこのどいつだあああ!?』
そう叫ぶドラゴンの頭上にはじっと下を見つめる2匹の飛竜の姿があった。
「まじまじ」
目を丸くして加賀に問う八木とコクコクと頷いてギターを八木に返す加賀。
加賀が弾けないと分かり、皆の視線が八木へと集まる。
「うっ……じゃ、じゃあ俺が演奏するから加賀は歌ってくれよ……」
少し休憩を入れたお陰で多少体力が回復してきているとは言え再び歌いながら演奏するのは辛いものがある。
かと言って加賀は演奏できない事が分かっている、なので八木は自分が演奏し加賀は歌うという案を提案した。
「良いけど……まだお仕事残ってるからちょっとだけだよー」
「おう、頼むわ」
少し渋る加賀であったは、それは歌うのが嫌という訳ではなく、単に仕事が残っているからとみう理由であった。
八木もそうだったが人前で歌ったり演奏したりするのに抵抗は無いらしい。
選曲は八木任せとし、八木は女性ボーカルの曲を選んだようだ。
加賀の声質を考えれば妥当だろう。
八木が演奏し、加賀が歌い上げるのを口を開けて眺めていた探索者達。
曲が終わると一斉に拍手が湧き起こる。
「二人とも上手すぎない?」
「嬉しいけど凹むわ」
「ふひひ」
褒められ満更でもない様子の加賀。
「それじゃー厨房戻るねー」
結局その後も数曲歌い上げた加賀であったが、いい加減厨房の方へ戻らないといけないと思い、皆に手を振り厨房へと向かう。
「えっーもう戻るの? もっと歌ってきなよー。ねーねー」
「加賀……?」
だがしかし相手は既にベロンベロンのぐでんぐでんである。
戻る途中で文字通り絡まれた加賀は中々厨房へと戻れないでいた。
そんな中々戻らない加賀を心配してか厨房からアイネがひょっこり顔を覗かせる
「そう……でもこっちも一人だと……そうね、代わりにデーモン置いていくから……ごめんね」
加賀を中々話そうとしない酔っ払いから事情を聞いたアイネ。
加賀の代わりにとデーモンを置き去りにして厨房へと二人で戻ってしまう。
「むむー」
「ま、しゃあない、食いもん色々注文してるしな。時間できた時にでも頼もうぜ」
頬を膨らませるシェイラをなだめ、同時に自分も納得させるヒューゴ。
歌も聞きたいが飯も食いたいのだ。
「……ところでこれどうするのじゃ?」
「どうって……」
皆の視線の先には無言で佇むデーモンの姿があった。
心なしか涙目である。
「……どうするよ?」
誰かがそう呟くが答えるものは居ない。
取りあえず八木に次の曲をリクエストする事にしたのであった。
ちなみにデーモンは試しに歌わせて見たら無茶苦茶歌が上手かったらしい。
夏の汽水湖にて、リザートマン達の住処の側の畔にぷかぷかと浮かぶドラゴンの姿があった。
ドラゴンの朝は遅い。
朝日が昇り、街では人々が仕事へと向かう為に道を行き交い。リザートマン達の住処でも漁に向かうものや、森へと入るもの、人の街へと向かう者などが慌ただしく動き始める。
だが、ドラゴンはこれといって仕事をしているわけでは無い。ここ最近は夜になるとリザートマン達からせしめた酒と、人の街から持ってきたつまみ等を持って酒盛りを始めそのまま酔いつぶれるまで飲み続け、潰れたら潰れたでそのまま昼間で寝こける。
そんな生活を繰り返していた。
だが、その日に限っては違っていた。
『熱っつうぅぅうっ!?』
突如としてドラゴン周辺の水が沸き立ち、ドラゴンはその熱さに驚き飛び跳ねるように目を覚ました。
直ぐさま熱湯となった部分から離れたドラゴンは辺りに他漂う独特の魔力に硫黄臭から何があったかをすぐに察した。
『いきなりブレス吐いたのはどこのどいつだあああ!?』
そう叫ぶドラゴンの頭上にはじっと下を見つめる2匹の飛竜の姿があった。
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