249 / 332
247話 「夢の魔道具3」
しおりを挟む
先程のショックからヒューゴは何とか立ち直ったらしい。
香箱座りを続ける加賀を光を失った目でぼーっと見つめている。
「……本当にそうしてると普通の猫にしか見えんよな」
「加賀が小柄でやせ気味だったのもあるでしょうね、太めの猫にしか見えませんよ」
猫の獣人は体長1mほどで体型はわりと丸っこいそうだ。
だが元となった加賀は小柄で痩せがたなので結果として太めの猫にしか見えなくなったのだ。
「二人とも何をしているんですか?」
他の探索者達も徐々に食堂に集まり始めていたようだ。
食堂に入ってきたチェスターであるが、入り口近くで突っ立っていたアルヴィンとヒューゴの二人を見て立ち止まる。
「もー入り口で止まらないでよー……っぎゃー!猫!」
そしてその後ろから文句を言いつつひょっこり顔を出すシェイラ。
中を確認して文句の一つでも言おうと思っていたのだろう。
顔を出した先でばっちり加賀の姿をその視界に捉え、叫ぶ。
「あん? お前猫苦手だったか?」
「いやいやいや逆、逆! むっちゃ好き!」
その叫びは拒絶のものではなく喜びから来るものであったらしい。
チェスターをぐいと押しのけソファーににじり寄るとすっと加賀に手を伸ばす。
「あー……もうこのお腹周りの手触りがたまらない」
加賀のお腹周りの毛はふかふかしていて手触りが良いらしい。
先ほどアイネもそのあたりを撫でていたがシェイラも同様であった。
「大人しいですね……それ、本当に猫ですか?」
「え?」
お腹周りを触ると嫌がる猫は多い。初対面の者が相手なら尚更だ。
だが猫は嫌がる素振りを見せず撫でられるがままであり、その姿を見たチェスターが首を傾げ呟く。
「するどいなチェスター」
「え? え?」
未だに死んだ目のままチェスターに話しかけるヒューゴ。
その死んだ目を見てチェスターは理解してしまったらしい。気の毒そうな目でヒューゴを見る。
そして何の事かさっぱりなシェイラは猫とヒューゴを交互に観るを繰り返していた。
にゃん(加賀ダヨー)
「ええええええ!?」
突然目の前の猫が喋ったことに驚き飛び退るシェイラ。
「まあ、加賀っちでもいいや」
が、猫を触れれば別に正体が加賀でも問題ないらしい。すぐにお腹を撫でるのを再開しだす。
「そろそろご飯出しても大丈夫?」
シェイラが加賀のお腹を満足いくまで撫でた頃を見計らってだろうか、アイネが皆に声を掛ける。
「お、飯か」
「加賀っちも食べればー? その様子じゃ手伝ったりも出来ないんでしょ?」
皆がテーブルに向かうのをソファーに座ったまま見送るつのりだった加賀であるが、シェイラに声をかけられちらりとアイネの顔を伺う。
「うん、加賀も食べると良いよ。今用意するね」
にゃー(ありがとアイネさんー)
アイネの了解も得た加賀はソファーからずりずりと降りるとテーブルに向かっていく。二足で。
「くっ……二足歩行の猫も可愛いな……」
にゃ(……登れない)
猫になったとしても急に運動神経が良くなったりはしないようだ。椅子の縁に爪を引っかけた加賀がぶらぶらと揺れている。
にゃんがにゃんが(うまうま)
皆に手伝ってもらい椅子に登った加賀は夕飯の煮込みハンバーグを美味しそうに食べている。
なんとか小さめのフォークを持つことは出来たので一応は自分で食べられる様だ。
「ただいまーっす」
「お? 八木か……気付くかね、あいつ」
「たぶん? フォーク使ってご飯食べてるし明らかに普通の猫じゃないって事は分かるでしょ」
皆が食事をしていると仕事を終えた八木が宿へと戻ってきたようだ。
荷物を置いてすぐに食堂へと向かった八木は入るなりいつもと違う光景に目を瞬く。
「おぉ? なんで猫……それ加賀?」
にゃー(正解)
猫がフォークを使ってハンバーグを食べている。そんな奇妙な光景を部屋に入るなり見ることになった八木であったが、見事に猫の正体が加賀である事を見抜いたようだ。
「はー、なるほどねえ。そんな魔道具あるんだなあ」
お腹一杯になり、うーちゃんのお腹の上で寝転がる加賀を興味深そうに眺める八木。
その視線はソファーに置いてある魔道具へと移っていく。
「……使ってみるかな」
にゃあ(やめた方がいいと思うよー)
興味を示し魔道具を手にした八木に片目をちらっと開いた加賀が声を掛ける。
にゃが(だってさームキムキなにゃんことか……ちょっと)
「むう……い、いやでも毛で分からないんじゃ?」
猫に変わる際に元の体型が影響される事は分かっている。
つまり八木の場合はでかくてえらく筋肉質な猫になるわけだ。
さすがにそれは八木も嫌だったが様であるが、それでも諦めきれなかったらしい。
……にゃ(スフィンクスタイプになるかもよ?)
「絵面がやべえ……てかこれランダムなのかよ」
スフィンクスタイプのでかくてムキムキな二足歩行する猫を頭に思い浮かべ顔をしかめる八木。
「……嫌な予感がするからやめとく」
それになる事は早々無いとは思うがそれでも嫌な予感が勝ったらしい。
そっと魔道具を元の場所へ戻すのであった。
香箱座りを続ける加賀を光を失った目でぼーっと見つめている。
「……本当にそうしてると普通の猫にしか見えんよな」
「加賀が小柄でやせ気味だったのもあるでしょうね、太めの猫にしか見えませんよ」
猫の獣人は体長1mほどで体型はわりと丸っこいそうだ。
だが元となった加賀は小柄で痩せがたなので結果として太めの猫にしか見えなくなったのだ。
「二人とも何をしているんですか?」
他の探索者達も徐々に食堂に集まり始めていたようだ。
食堂に入ってきたチェスターであるが、入り口近くで突っ立っていたアルヴィンとヒューゴの二人を見て立ち止まる。
「もー入り口で止まらないでよー……っぎゃー!猫!」
そしてその後ろから文句を言いつつひょっこり顔を出すシェイラ。
中を確認して文句の一つでも言おうと思っていたのだろう。
顔を出した先でばっちり加賀の姿をその視界に捉え、叫ぶ。
「あん? お前猫苦手だったか?」
「いやいやいや逆、逆! むっちゃ好き!」
その叫びは拒絶のものではなく喜びから来るものであったらしい。
チェスターをぐいと押しのけソファーににじり寄るとすっと加賀に手を伸ばす。
「あー……もうこのお腹周りの手触りがたまらない」
加賀のお腹周りの毛はふかふかしていて手触りが良いらしい。
先ほどアイネもそのあたりを撫でていたがシェイラも同様であった。
「大人しいですね……それ、本当に猫ですか?」
「え?」
お腹周りを触ると嫌がる猫は多い。初対面の者が相手なら尚更だ。
だが猫は嫌がる素振りを見せず撫でられるがままであり、その姿を見たチェスターが首を傾げ呟く。
「するどいなチェスター」
「え? え?」
未だに死んだ目のままチェスターに話しかけるヒューゴ。
その死んだ目を見てチェスターは理解してしまったらしい。気の毒そうな目でヒューゴを見る。
そして何の事かさっぱりなシェイラは猫とヒューゴを交互に観るを繰り返していた。
にゃん(加賀ダヨー)
「ええええええ!?」
突然目の前の猫が喋ったことに驚き飛び退るシェイラ。
「まあ、加賀っちでもいいや」
が、猫を触れれば別に正体が加賀でも問題ないらしい。すぐにお腹を撫でるのを再開しだす。
「そろそろご飯出しても大丈夫?」
シェイラが加賀のお腹を満足いくまで撫でた頃を見計らってだろうか、アイネが皆に声を掛ける。
「お、飯か」
「加賀っちも食べればー? その様子じゃ手伝ったりも出来ないんでしょ?」
皆がテーブルに向かうのをソファーに座ったまま見送るつのりだった加賀であるが、シェイラに声をかけられちらりとアイネの顔を伺う。
「うん、加賀も食べると良いよ。今用意するね」
にゃー(ありがとアイネさんー)
アイネの了解も得た加賀はソファーからずりずりと降りるとテーブルに向かっていく。二足で。
「くっ……二足歩行の猫も可愛いな……」
にゃ(……登れない)
猫になったとしても急に運動神経が良くなったりはしないようだ。椅子の縁に爪を引っかけた加賀がぶらぶらと揺れている。
にゃんがにゃんが(うまうま)
皆に手伝ってもらい椅子に登った加賀は夕飯の煮込みハンバーグを美味しそうに食べている。
なんとか小さめのフォークを持つことは出来たので一応は自分で食べられる様だ。
「ただいまーっす」
「お? 八木か……気付くかね、あいつ」
「たぶん? フォーク使ってご飯食べてるし明らかに普通の猫じゃないって事は分かるでしょ」
皆が食事をしていると仕事を終えた八木が宿へと戻ってきたようだ。
荷物を置いてすぐに食堂へと向かった八木は入るなりいつもと違う光景に目を瞬く。
「おぉ? なんで猫……それ加賀?」
にゃー(正解)
猫がフォークを使ってハンバーグを食べている。そんな奇妙な光景を部屋に入るなり見ることになった八木であったが、見事に猫の正体が加賀である事を見抜いたようだ。
「はー、なるほどねえ。そんな魔道具あるんだなあ」
お腹一杯になり、うーちゃんのお腹の上で寝転がる加賀を興味深そうに眺める八木。
その視線はソファーに置いてある魔道具へと移っていく。
「……使ってみるかな」
にゃあ(やめた方がいいと思うよー)
興味を示し魔道具を手にした八木に片目をちらっと開いた加賀が声を掛ける。
にゃが(だってさームキムキなにゃんことか……ちょっと)
「むう……い、いやでも毛で分からないんじゃ?」
猫に変わる際に元の体型が影響される事は分かっている。
つまり八木の場合はでかくてえらく筋肉質な猫になるわけだ。
さすがにそれは八木も嫌だったが様であるが、それでも諦めきれなかったらしい。
……にゃ(スフィンクスタイプになるかもよ?)
「絵面がやべえ……てかこれランダムなのかよ」
スフィンクスタイプのでかくてムキムキな二足歩行する猫を頭に思い浮かべ顔をしかめる八木。
「……嫌な予感がするからやめとく」
それになる事は早々無いとは思うがそれでも嫌な予感が勝ったらしい。
そっと魔道具を元の場所へ戻すのであった。
0
お気に入りに追加
824
あなたにおすすめの小説
異世界に転生!堪能させて頂きます
葵沙良
ファンタジー
遠宮 鈴霞(とおみやりんか)28歳。
大手企業の庶務課に勤める普通のOL。
今日は何時もの残業が無く、定時で帰宅途中の交差点そばのバス停で事件は起きた━━━━。
ハンドルを切り損なった車が、高校生3人と鈴霞のいるバス停に突っ込んできたのだ!
死んだと思ったのに、目を覚ました場所は白い空間。
女神様から、地球の輪廻に戻るか異世界アークスライドへ転生するか聞かれたのだった。
「せっかくの異世界、チャンスが有るなら行きますとも!堪能させて頂きます♪」
笑いあり涙あり?シリアスあり。トラブルに巻き込まれたり⁉
鈴霞にとって楽しい異世界ライフになるのか⁉
趣味の域で書いておりますので、雑な部分があるかも知れませんが、楽しく読んで頂けたら嬉しいです。戦闘シーンも出来るだけ頑張って書いていきたいと思います。
こちらは《改訂版》です。現在、加筆・修正を大幅に行っています。なので、不定期投稿です。
何の予告もなく修正等行う場合が有りますので、ご容赦下さいm(__)m
女神スキル転生〜知らない間に無双します〜
悠任 蓮
ファンタジー
少女を助けて死んでしまった康太は、少女を助けて貰ったお礼に異世界転生のチャンスを手に入れる。
その時に貰ったスキルは女神が使っていた、《スキルウィンドウ》というスキルだった。
そして、スキルを駆使して異世界をさくさく攻略していく・・・
HOTランキング1位!4/24
ありがとうございます!
基本は0時に毎日投稿しますが、不定期になったりしますがよろしくお願いします!
異世界で魔法使いとなった俺はネットでお買い物して世界を救う
馬宿
ファンタジー
30歳働き盛り、独身、そろそろ身を固めたいものだが相手もいない
そんな俺が電車の中で疲れすぎて死んじゃった!?
そしてらとある世界の守護者になる為に第2の人生を歩まなくてはいけなくなった!?
農家育ちの素人童貞の俺が世界を守る為に選ばれた!?
10個も願いがかなえられるらしい!
だったら異世界でもネットサーフィンして、お買い物して、農業やって、のんびり暮らしたいものだ
異世界なら何でもありでしょ?
ならのんびり生きたいな
小説家になろう!にも掲載しています
何分、書きなれていないので、ご指摘あれば是非ご意見お願いいたします
システムバグで輪廻の輪から外れましたが、便利グッズ詰め合わせ付きで他の星に転生しました。
大国 鹿児
ファンタジー
輪廻転生のシステムのバグで輪廻の輪から外れちゃった!
でも神様から便利なチートグッズ(笑)の詰め合わせをもらって、
他の星に転生しました!特に使命も無いなら自由気ままに生きてみよう!
主人公はチート無双するのか!? それともハーレムか!?
はたまた、壮大なファンタジーが始まるのか!?
いえ、実は単なる趣味全開の主人公です。
色々な秘密がだんだん明らかになりますので、ゆっくりとお楽しみください。
*** 作品について ***
この作品は、真面目なチート物ではありません。
コメディーやギャグ要素やネタの多い作品となっております
重厚な世界観や派手な戦闘描写、ざまあ展開などをお求めの方は、
この作品をスルーして下さい。
*カクヨム様,小説家になろう様でも、別PNで先行して投稿しております。
暇つぶし転生~お使いしながらぶらり旅~
暇人太一
ファンタジー
仲良し3人組の高校生とともに勇者召喚に巻き込まれた、30歳の病人。
ラノベの召喚もののテンプレのごとく、おっさんで病人はお呼びでない。
結局雑魚スキルを渡され、3人組のパシリとして扱われ、最後は儀式の生贄として3人組に殺されることに……。
そんなおっさんの前に厳ついおっさんが登場。果たして病人のおっさんはどうなる!?
この作品は「小説家になろう」にも掲載しています。
1×∞(ワンバイエイト) 経験値1でレベルアップする俺は、最速で異世界最強になりました!
マツヤマユタカ
ファンタジー
23年5月22日にアルファポリス様より、拙著が出版されました!そのため改題しました。
今後ともよろしくお願いいたします!
トラックに轢かれ、気づくと異世界の自然豊かな場所に一人いた少年、カズマ・ナカミチ。彼は事情がわからないまま、仕方なくそこでサバイバル生活を開始する。だが、未経験だった釣りや狩りは妙に上手くいった。その秘密は、レベル上げに必要な経験値にあった。実はカズマは、あらゆるスキルが経験値1でレベルアップするのだ。おかげで、何をやっても簡単にこなせて――。異世界爆速成長系ファンタジー、堂々開幕!
タイトルの『1×∞』は『ワンバイエイト』と読みます。
男性向けHOTランキング1位!ファンタジー1位を獲得しました!【22/7/22】
そして『第15回ファンタジー小説大賞』において、奨励賞を受賞いたしました!【22/10/31】
アルファポリス様より出版されました!現在第四巻まで発売中です!
コミカライズされました!公式漫画タブから見られます!【24/8/28】
よろしくお願いいたします。
マツヤマユタカ名義でTwitterやってます。
見てください。
拝啓、お父様お母様 勇者パーティをクビになりました。
ちくわ feat. 亜鳳
ファンタジー
弱い、使えないと勇者パーティをクビになった
16歳の少年【カン】
しかし彼は転生者であり、勇者パーティに配属される前は【無冠の帝王】とまで謳われた最強の武・剣道者だ
これで魔導まで極めているのだが
王国より勇者の尊厳とレベルが上がるまではその実力を隠せと言われ
渋々それに付き合っていた…
だが、勘違いした勇者にパーティを追い出されてしまう
この物語はそんな最強の少年【カン】が「もう知るか!王命何かくそ食らえ!!」と実力解放して好き勝手に過ごすだけのストーリーである
※タイトルは思い付かなかったので適当です
※5話【ギルド長との対談】を持って前書きを廃止致しました
以降はあとがきに変更になります
※現在執筆に集中させて頂くべく
必要最低限の感想しか返信できません、ご理解のほどよろしくお願いいたします
※現在書き溜め中、もうしばらくお待ちください
ぐ~たら第三王子、牧場でスローライフ始めるってよ
雑木林
ファンタジー
現代日本で草臥れたサラリーマンをやっていた俺は、過労死した後に何の脈絡もなく異世界転生を果たした。
第二の人生で新たに得た俺の身分は、とある王国の第三王子だ。
この世界では神様が人々に天職を授けると言われており、俺の父親である国王は【軍神】で、長男の第一王子が【剣聖】、それから次男の第二王子が【賢者】という天職を授かっている。
そんなエリートな王族の末席に加わった俺は、当然のように周囲から期待されていたが……しかし、俺が授かった天職は、なんと【牧場主】だった。
畜産業は人類の食文化を支える素晴らしいものだが、王族が従事する仕事としては相応しくない。
斯くして、父親に失望された俺は王城から追放され、辺境の片隅でひっそりとスローライフを始めることになる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる