247 / 332
245話 「精霊3+魔道具」
しおりを挟む
部屋の中央に暗がりが集まっていく。
「おおおお?」
「なんかすごいねー」
「な、なんで二人ともそんな暢気なのっ!?」
明らかに他の精霊と違う登場の仕方である。
その様子を暢気に眺める二人に対し、半ば悲鳴気味に叫ぶシェイラ。
「闇の精霊さんかな?」
「多分そうだろうな」
気がつけば暗がりの中に暗い小さな子供ぐらいの人影がぽつりと佇んでいた。
その頭部には妙に二つの瞳がはっきりと浮かび、呼び出した加賀の方をじっと見つめている。
あたりが暗くなった事やその容姿から二人は闇の精霊だろうとあたりをつけたようである。
「……し、知らないそんなの」
「シェイラさん知らないんだ?」
闇の精霊と言えば加賀や八木の感覚で言えば割と有名どこであるがシェイラは知らない様子である。
(ふだん姿見せないから)
「あーそうなのね」
加賀の疑問にシェイラが答えるよりも早く、頭に直接語りかけるように闇の精霊がその理由を伝える。
どうもこの精霊は恥ずかしがり屋というか面倒くさがり屋というか。とにかくあまり人前に出ることはないらしい。シェイラが知らなかったのもその為だ。
そんな闇の精霊であるが実は前に一度だけ加賀の前で姿を現した事がある。
「闇の精霊さんもあの時助けてくれたよね? ありがとう」
(気付いてたんだ?)
「うん、ちらっと黒い靄みたいのが……あれそうだよね?」
(そうだよ)
異世界にきた初日にウォーボアに襲われた加賀は精霊に助けを求めた。そのさい動いた精霊の内、目を覆って視界を奪ったのが闇の精霊であった。
「でもなー……こんなに居たとはねー」
一通り精霊の姿を見て満足した加賀であるが周りを囲むように存在する精霊達を見渡して呟くように言葉を口にする。
「どうかしたのか?」
「やー……あのご飯の量じゃ絶対たらないよねー……」
加賀は精霊に助けられて以来毎日欠かさずご飯を精霊達に供える様にしているが、その量は精々4人前程度。
今居る精霊の数や、火トカゲの本来の大きさなどを考えれば絶対足らないだろうと考えた様だ。
「あーたしかに」
(ほとんど何もしてないのに貰える量としては十分すぎる)
闇の精霊が言うには魔力代わりにご飯を貰っているが、それは働きからすれば貰いすぎになるらしい。
「んー……でも満腹ではないんだよね」
ただそうは言われても実際精霊の姿を見てしまった後では納得し難い部分もある。
「バクスさんに相談して増やすようにするよ」
結局加賀はバクスの相談の上量を増やす事にしたようだ。
精霊達も喜んでいるので魔力の代わりとしてはともかくもっと食べたいとは思っていたのだろう。
「……今気がついたけどさ」
呼んだ精霊達に礼を言い元に戻って貰った後、八木が何かに気がついたようにポツリと呟く。
「加賀が作ったお菓子あたりを対価にすれば俺も精霊魔法使えるんじゃ……」
「たぶんいけると思う」
闇の精霊のご飯を魔力代わりに貰っているとの発言から、それを利用すれば魔力が少ない自分でも精霊魔法が使えることに気がついた八木。
加賀も同じ考え……と言うよりかは薄々感づいていたのかも知れない。
ちらりと加賀がシェイラの様子を窺う。
「……私には無理かな。うまく伝えられないもん」
もしそんな事が皆出来るなら影響はでかそう……そう考えたが、シェイラ曰くそうはならないらしい。
精霊に話しかける為の言葉は非常に難しく、ちょっとした発音、その時の感情など様々な要因で意味が変わってしまったり、まったく通じなくなってしまったりするようだ。
現在でも特定の行動に対する言葉しか分かっておらず、とてもご飯を対価に~等といった事は言葉に出来ないとの事。
ひとまず周りには内緒にしようと結論付け、その場は解散となった。
時は少し流れ、ある日の夕方。
食堂でダンジョン戦利品を広げるアルヴィンの姿とそれをわくわくしながら眺める加賀の姿、そしてお菓子に夢中なアイネとうーちゃんの姿があった。
「今日はアルヴィンさんなんだー?」
誰が加賀に戦利品を見せるかはその日によって様々だ。
大抵は複数人で来ることが多く、今日のようにアルヴィン一人だけ、と言うのはあまりなかったりする。
「ええ、他の連中は風呂に時間掛かるでしょうから」
アルヴィンに話を聞いてあー、と納得したような顔をする加賀。
少し前に帰ってきた探索者達であったが、返り血なのかそれとも別の何かなのかは分からないが、アルヴィンを除いた皆が何かしらの液体を全身に盛大に浴びた状態で帰ってきたのだ。
恐らく今頃風呂場で必死になって体を洗っているところだろう。
「今日もいろいろあるけど……これ、むっちゃ気になる」
いくつかある魔道具の中で特に目を引いたのは先端にデフォルメされた猫の手の様なものがついたステッキである。
あまりにも異色なその魔道具。興味を惹くなと言う方が無理がある。
「それは獣人に一時的に姿が変わる魔道具ですね」
「へー、ガイさんみたいになるのかな……でもそれって見た目ほぼ変わらないような」
獣人と言えば宿にも一人居る。
ただその見た目は普段は人とほとんど変わらず、仮に魔道具で獣人になったとしても誰も気がつかないだろう。
「見た目も変わりますよ、ガイとは種族が異なりますからね。それは猫の獣人になる魔道具です」
だが、この魔道具で変われるのはガイとは違う種族のようだ。
見た目も変わると聞いて加賀の目がキランと光る。
「えっ……も、もしかして耳とか尻尾とか生えたり?」
「ええそうですね」
「お、おぉぉ……」
この世界の獣人は皆ガイと同じタイプかと思っていたがどうやら違うらしい。
「おおおお?」
「なんかすごいねー」
「な、なんで二人ともそんな暢気なのっ!?」
明らかに他の精霊と違う登場の仕方である。
その様子を暢気に眺める二人に対し、半ば悲鳴気味に叫ぶシェイラ。
「闇の精霊さんかな?」
「多分そうだろうな」
気がつけば暗がりの中に暗い小さな子供ぐらいの人影がぽつりと佇んでいた。
その頭部には妙に二つの瞳がはっきりと浮かび、呼び出した加賀の方をじっと見つめている。
あたりが暗くなった事やその容姿から二人は闇の精霊だろうとあたりをつけたようである。
「……し、知らないそんなの」
「シェイラさん知らないんだ?」
闇の精霊と言えば加賀や八木の感覚で言えば割と有名どこであるがシェイラは知らない様子である。
(ふだん姿見せないから)
「あーそうなのね」
加賀の疑問にシェイラが答えるよりも早く、頭に直接語りかけるように闇の精霊がその理由を伝える。
どうもこの精霊は恥ずかしがり屋というか面倒くさがり屋というか。とにかくあまり人前に出ることはないらしい。シェイラが知らなかったのもその為だ。
そんな闇の精霊であるが実は前に一度だけ加賀の前で姿を現した事がある。
「闇の精霊さんもあの時助けてくれたよね? ありがとう」
(気付いてたんだ?)
「うん、ちらっと黒い靄みたいのが……あれそうだよね?」
(そうだよ)
異世界にきた初日にウォーボアに襲われた加賀は精霊に助けを求めた。そのさい動いた精霊の内、目を覆って視界を奪ったのが闇の精霊であった。
「でもなー……こんなに居たとはねー」
一通り精霊の姿を見て満足した加賀であるが周りを囲むように存在する精霊達を見渡して呟くように言葉を口にする。
「どうかしたのか?」
「やー……あのご飯の量じゃ絶対たらないよねー……」
加賀は精霊に助けられて以来毎日欠かさずご飯を精霊達に供える様にしているが、その量は精々4人前程度。
今居る精霊の数や、火トカゲの本来の大きさなどを考えれば絶対足らないだろうと考えた様だ。
「あーたしかに」
(ほとんど何もしてないのに貰える量としては十分すぎる)
闇の精霊が言うには魔力代わりにご飯を貰っているが、それは働きからすれば貰いすぎになるらしい。
「んー……でも満腹ではないんだよね」
ただそうは言われても実際精霊の姿を見てしまった後では納得し難い部分もある。
「バクスさんに相談して増やすようにするよ」
結局加賀はバクスの相談の上量を増やす事にしたようだ。
精霊達も喜んでいるので魔力の代わりとしてはともかくもっと食べたいとは思っていたのだろう。
「……今気がついたけどさ」
呼んだ精霊達に礼を言い元に戻って貰った後、八木が何かに気がついたようにポツリと呟く。
「加賀が作ったお菓子あたりを対価にすれば俺も精霊魔法使えるんじゃ……」
「たぶんいけると思う」
闇の精霊のご飯を魔力代わりに貰っているとの発言から、それを利用すれば魔力が少ない自分でも精霊魔法が使えることに気がついた八木。
加賀も同じ考え……と言うよりかは薄々感づいていたのかも知れない。
ちらりと加賀がシェイラの様子を窺う。
「……私には無理かな。うまく伝えられないもん」
もしそんな事が皆出来るなら影響はでかそう……そう考えたが、シェイラ曰くそうはならないらしい。
精霊に話しかける為の言葉は非常に難しく、ちょっとした発音、その時の感情など様々な要因で意味が変わってしまったり、まったく通じなくなってしまったりするようだ。
現在でも特定の行動に対する言葉しか分かっておらず、とてもご飯を対価に~等といった事は言葉に出来ないとの事。
ひとまず周りには内緒にしようと結論付け、その場は解散となった。
時は少し流れ、ある日の夕方。
食堂でダンジョン戦利品を広げるアルヴィンの姿とそれをわくわくしながら眺める加賀の姿、そしてお菓子に夢中なアイネとうーちゃんの姿があった。
「今日はアルヴィンさんなんだー?」
誰が加賀に戦利品を見せるかはその日によって様々だ。
大抵は複数人で来ることが多く、今日のようにアルヴィン一人だけ、と言うのはあまりなかったりする。
「ええ、他の連中は風呂に時間掛かるでしょうから」
アルヴィンに話を聞いてあー、と納得したような顔をする加賀。
少し前に帰ってきた探索者達であったが、返り血なのかそれとも別の何かなのかは分からないが、アルヴィンを除いた皆が何かしらの液体を全身に盛大に浴びた状態で帰ってきたのだ。
恐らく今頃風呂場で必死になって体を洗っているところだろう。
「今日もいろいろあるけど……これ、むっちゃ気になる」
いくつかある魔道具の中で特に目を引いたのは先端にデフォルメされた猫の手の様なものがついたステッキである。
あまりにも異色なその魔道具。興味を惹くなと言う方が無理がある。
「それは獣人に一時的に姿が変わる魔道具ですね」
「へー、ガイさんみたいになるのかな……でもそれって見た目ほぼ変わらないような」
獣人と言えば宿にも一人居る。
ただその見た目は普段は人とほとんど変わらず、仮に魔道具で獣人になったとしても誰も気がつかないだろう。
「見た目も変わりますよ、ガイとは種族が異なりますからね。それは猫の獣人になる魔道具です」
だが、この魔道具で変われるのはガイとは違う種族のようだ。
見た目も変わると聞いて加賀の目がキランと光る。
「えっ……も、もしかして耳とか尻尾とか生えたり?」
「ええそうですね」
「お、おぉぉ……」
この世界の獣人は皆ガイと同じタイプかと思っていたがどうやら違うらしい。
0
お気に入りに追加
824
あなたにおすすめの小説
異世界転生モノの主人公に転生したけどせっかくだからBルートを選んでみる。
kaonohito
ファンタジー
俺、マイケル・アルヴィン・バックエショフは、転生者である。
日本でデジタル土方をしていたが、気がついたら、異世界の、田舎貴族の末っ子に転生する──と言う内容の異世界転生創作『転生したら辺境貴族の末っ子でした』の主人公になっていた! 何を言ってるのかわからねーと思うが……
原作通りなら成り上がりヒストリーを築くキャラになってしまったが、前世に疲れていた俺は、この世界ではのんびり気ままに生きようと考えていた。
その為、原作ルートからわざと外れた、ひねくれた選択肢を選んでいく。そんなお話。
──※─※─※──
本作は、『ノベルアップ+』『小説家になろう』でも掲載しています。
異世界に転生!堪能させて頂きます
葵沙良
ファンタジー
遠宮 鈴霞(とおみやりんか)28歳。
大手企業の庶務課に勤める普通のOL。
今日は何時もの残業が無く、定時で帰宅途中の交差点そばのバス停で事件は起きた━━━━。
ハンドルを切り損なった車が、高校生3人と鈴霞のいるバス停に突っ込んできたのだ!
死んだと思ったのに、目を覚ました場所は白い空間。
女神様から、地球の輪廻に戻るか異世界アークスライドへ転生するか聞かれたのだった。
「せっかくの異世界、チャンスが有るなら行きますとも!堪能させて頂きます♪」
笑いあり涙あり?シリアスあり。トラブルに巻き込まれたり⁉
鈴霞にとって楽しい異世界ライフになるのか⁉
趣味の域で書いておりますので、雑な部分があるかも知れませんが、楽しく読んで頂けたら嬉しいです。戦闘シーンも出来るだけ頑張って書いていきたいと思います。
こちらは《改訂版》です。現在、加筆・修正を大幅に行っています。なので、不定期投稿です。
何の予告もなく修正等行う場合が有りますので、ご容赦下さいm(__)m
女神スキル転生〜知らない間に無双します〜
悠任 蓮
ファンタジー
少女を助けて死んでしまった康太は、少女を助けて貰ったお礼に異世界転生のチャンスを手に入れる。
その時に貰ったスキルは女神が使っていた、《スキルウィンドウ》というスキルだった。
そして、スキルを駆使して異世界をさくさく攻略していく・・・
HOTランキング1位!4/24
ありがとうございます!
基本は0時に毎日投稿しますが、不定期になったりしますがよろしくお願いします!
異世界で魔法使いとなった俺はネットでお買い物して世界を救う
馬宿
ファンタジー
30歳働き盛り、独身、そろそろ身を固めたいものだが相手もいない
そんな俺が電車の中で疲れすぎて死んじゃった!?
そしてらとある世界の守護者になる為に第2の人生を歩まなくてはいけなくなった!?
農家育ちの素人童貞の俺が世界を守る為に選ばれた!?
10個も願いがかなえられるらしい!
だったら異世界でもネットサーフィンして、お買い物して、農業やって、のんびり暮らしたいものだ
異世界なら何でもありでしょ?
ならのんびり生きたいな
小説家になろう!にも掲載しています
何分、書きなれていないので、ご指摘あれば是非ご意見お願いいたします
暇つぶし転生~お使いしながらぶらり旅~
暇人太一
ファンタジー
仲良し3人組の高校生とともに勇者召喚に巻き込まれた、30歳の病人。
ラノベの召喚もののテンプレのごとく、おっさんで病人はお呼びでない。
結局雑魚スキルを渡され、3人組のパシリとして扱われ、最後は儀式の生贄として3人組に殺されることに……。
そんなおっさんの前に厳ついおっさんが登場。果たして病人のおっさんはどうなる!?
この作品は「小説家になろう」にも掲載しています。
システムバグで輪廻の輪から外れましたが、便利グッズ詰め合わせ付きで他の星に転生しました。
大国 鹿児
ファンタジー
輪廻転生のシステムのバグで輪廻の輪から外れちゃった!
でも神様から便利なチートグッズ(笑)の詰め合わせをもらって、
他の星に転生しました!特に使命も無いなら自由気ままに生きてみよう!
主人公はチート無双するのか!? それともハーレムか!?
はたまた、壮大なファンタジーが始まるのか!?
いえ、実は単なる趣味全開の主人公です。
色々な秘密がだんだん明らかになりますので、ゆっくりとお楽しみください。
*** 作品について ***
この作品は、真面目なチート物ではありません。
コメディーやギャグ要素やネタの多い作品となっております
重厚な世界観や派手な戦闘描写、ざまあ展開などをお求めの方は、
この作品をスルーして下さい。
*カクヨム様,小説家になろう様でも、別PNで先行して投稿しております。
拝啓、お父様お母様 勇者パーティをクビになりました。
ちくわ feat. 亜鳳
ファンタジー
弱い、使えないと勇者パーティをクビになった
16歳の少年【カン】
しかし彼は転生者であり、勇者パーティに配属される前は【無冠の帝王】とまで謳われた最強の武・剣道者だ
これで魔導まで極めているのだが
王国より勇者の尊厳とレベルが上がるまではその実力を隠せと言われ
渋々それに付き合っていた…
だが、勘違いした勇者にパーティを追い出されてしまう
この物語はそんな最強の少年【カン】が「もう知るか!王命何かくそ食らえ!!」と実力解放して好き勝手に過ごすだけのストーリーである
※タイトルは思い付かなかったので適当です
※5話【ギルド長との対談】を持って前書きを廃止致しました
以降はあとがきに変更になります
※現在執筆に集中させて頂くべく
必要最低限の感想しか返信できません、ご理解のほどよろしくお願いいたします
※現在書き溜め中、もうしばらくお待ちください
転生魔法伝記〜魔法を極めたいと思いますが、それを邪魔する者は排除しておきます〜
凛 伊緒
ファンタジー
不運な事故により、23歳で亡くなってしまった会社員の八笠 美明。
目覚めると見知らぬ人達が美明を取り囲んでいて…
(まさか……転生…?!)
魔法や剣が存在する異世界へと転生してしまっていた美明。
魔法が使える事にわくわくしながらも、王女としての義務もあり──
王女として生まれ変わった美明―リアラ・フィールアが、前世の知識を活かして活躍する『転生ファンタジー』──
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる