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192話 「釣りに行くことになりそうで」

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この辺りで出来るところと言えば思い当たるのは街の北にある汽水湖だが、汽水湖が冬場に凍り付くかどうかがまず不明であった。塩分濃度が薄ければ恐らく凍るであると考えられるがその辺りの情報を加賀は持っていない。

「ラヴィに聞いてみればいいじゃんー。まだ居るはずだよ」

「あ、そかそか」

そしてその事をシェイラに尋ねてみる加賀。
返ってきた言葉にそれもそうだと頷く加賀、分からなければ知っているものに聞けば良いのである。
そして彼女の言葉通り探索者がダンジョンに向かうまでにはまだ幾らか時間がある、二人は大福片手にラヴィの部屋へと向かうのであった。


「凍るぜー」

「あ、凍るんだ」

あっさりと返ってきた返事に拍子抜けした表情を浮かべる加賀。
だがラヴィはあっさり答えはしたものの気になる事があるのか腕を組み天井を見上げ何やら考え出す。

「ただ……上に乗って釣りするんだろ」

「そだよー」

上を向いたままのラヴィの問いに答えるが彼は天井を見上げたままうなり始める。

「ど、どったの……」

「いやぁ……場所によっては氷薄いからさ危ないよなって……でもどの辺の氷が薄いとか覚えてないんよね」

そう言って頭を捻るラヴィであるがやはり思い出すことは出来なかったようだ、諦めたように軽く息を吐いて再び視線を加賀へと戻す。

「わりぃ、覚えてないや」

「だって」

ラヴィの言葉をシェイラに伝え二人でどうしたものかと頭を悩ます加賀であるが。その様子を見ていたシェイラが呆れた様子で二人へ話しかける。

「いや、だから知ってる人に聞けばいいじゃないのさー。今日辺りリザートマン達来るんでしょ?」

「やだ……シェイラさんてば天才」

「お前は優秀だと前から思ってたぜ」

「なんかすっごいむかつくんですけど」

わざとらしく驚く二人をじろりと一瞥し持ってきた大福をぱくりと食べてしまう。
加賀を通さなくても何となくラヴィが言っていることわかったらしい。

「あれ、それなに?」

「大福ってお菓子。新製品だよ」

「え、まじか……ちょ全部食わないでぇっ」

ラヴィの言葉もむなしく二人の大福もぺろり平らげてしまうシェイラ。

「私を馬鹿にした罰よー」

そう言っていーっと歯を剥いてラヴィの部屋を出て行ってしまう。
もっとも食堂に戻ればまだまだ大福は余っていたりするが……

「まじかー……」

「悪のりしすぎちゃったねー……まぁ、まだ残ってるから後で食べにおいでよ。今日はダンジョン潜るんでしょー?」

ヘコんだラヴィが少し可哀想だったのであっさり大福がまだあることをばらす加賀であった。

「あ、まだあるのね……一応潜るけど今日はそこまで奥には行かない予定だっらかな。夕飯までには戻るから悪いけど大福とっておいてくれないかなあ?」

大福をとっておいて欲しいという願いを承諾しひとまず食堂へと戻る。これから屋台も出さないといけないし。昼にはリザートマン達が来るのでその準備もしなければならないのだ。


「なるほどねー、東のほうが氷は厚いと……人が乗っても大丈夫そう? あ、大丈夫なのね」

そして何時もの屋台を出し戻ってきて少し立った頃、リザートマン達が大量の魚介類を宿へと運び込んできた。
加賀はお礼の燻製肉等を渡しながら汽水湖の情報収集を始める。
ちなみに了承しの買い物には最近一緒について行くことがなくなってきている。既になじみなって店も多くそういった所では加賀が着いて行かなくとも問題なく買い物が出来るようになっているからだ、加賀がついて行くとすればそれは始めて行く店だったり、注文内容が複雑ぐらいな時ぐらいである。
そしてそれだと魚を貰うには対価が釣り合わないと言うことで今では物々交換がメインになりつつある。

「そっかそっか、じゃあ十分釣りは出来そうだね。午後から釣り道具買いに行こうかな……あ、リザートマンさん達はご飯用意してあるから食べていってねー」

はしゃぎながら食堂の椅子へと座るリザートマン達を見てほっこりした気持ちになる加賀。汽水湖の情報も手に入ったことも有り、そのお礼と言うわけだろうかその日のリザートマン達の昼食は何時もより山盛りであった。

「……おーうまそう。加賀ぁ俺にも昼食くだせーな」

そしてリザートマン達が昼食をもりもり食べているとほ
食堂の扉を開けて八木が入ってきた。
八木は寝起きなのか少し眠たそうな目をしている、そして寝起き故に朝食はとっておらずお腹が空いているようだ、加賀の姿を見つけるとすぐにご飯のお願いをする。

「今日はずいぶん寝坊したね?」

「トランプがさあ、思ったより皆白熱しちゃってさ気が付いたら外明るくなってるでやんの」

「朝までやってたんかい……ほどほどにねー」

わははと笑う八木に呆れた様子の加賀。
いくら仕事は休みだといっても朝までやるとは思っていなかったのだ。

「あ、そうそう」

「んー?」

「汽水湖でワカサギ釣り出来るかの知れないよ。行くとしたら明日か明後日だろうから……八木も行くよね? あんま夜更かしするんでないよー」

ワカサギ釣りと聞いて目を輝かせる八木。
加賀の注意もどこへやら身を乗り出して加賀の言葉に答える。

「いくいく。てかまじか、まさかここでワカサギ釣り出来るとはなあ」

「八木はやったことあるんだ?」

「あるぜ、てか職場の連中と毎年行ってた」

八木の言葉にへーっといった表情を浮かべる加賀。
八木がワカサギ釣りをするとは知らなかったのだ。職場の連中と一緒にということで加賀を誘うことは無かったのだろう。

「それじゃあ……そうだな、暇だし道具の用意は俺がするよ」

「いいの?」

「おうよ。てか加賀は仕事あるだろ? 道具揃えるのって結構手間だぞ。行くのは明後日以降の方がいいかな、今日はとりあえず午後から店巡ってどこで取り扱ってるか確認するから、夜に行く人数確認しといて貰えるか? 明日買い揃える」

行く人数を伝えれば道具は自分が用意しておくと言う八木の言葉に甘えることにした加賀。
買い物は八木に任せて自分は坊主だったときに備えて日保ちしそうな食べ物を用意するのであった。
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