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190話 「変わりダネと定番?メニュー」
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そろそろ夕食になりそうな頃、宿の食堂で一人もしゃもしゃと何かを食べる八木の姿があった。
「やっぱうめえな」
お皿に山盛りになったそれを口に放り込むとザクザクと小気味よい音が食堂に響く。
山盛りになった物の正体はたいりょうに揚げられた切り餅であった。一口大に切られたそれは揚げてから塩とそれに一部に胡椒が掛かっているだけと実にシンプルな物である。だがシンプルが故に単純に旨い。
「やめられない、とまらない……だったっけか。いくらでも食えそうだなこれ」
その食感と油で揚げたジャンク感が合わさり八木の手は止まることなく皿と口をいったりきたりしている。
そして山が半分ほどになった頃、食堂の扉を勢いよく開け中へ入ってくる者が居た。
「おっし、いっちばーん……じゃねーな。八木もう食ってんのか」
「ええ、まあちょっと」
一番乗りで食堂に来たと思えば八木がもう既に席に着いていた。
普段であれば皆より若干遅れ気味に来る八木がもう食堂に来ていて、しかも何かを食べている。そうなると自然と何を食べているのか気になるものある。
「お、それなんだ? 見たことねーなあ」
「これっすか? 今日入荷した食材で作ったやつでして――」
八木が食べているものに興味を示したヒューゴに対しもち米と今食べている物について説明する八木。
せっかくなので皆にも興味を持って貰いたいと結構真面目に説明しているようである。
ヒューゴも未知の食材に興味を持ったようでその視線は皿に盛られた揚げ餅に釘付けであった。
「ほーん…………いただきっ」
あっと八木が思った時にはヒューゴが手にとった揚げ餅は彼の口の中に納まっていた。
日頃の鍛錬によるものだろう、まさに目にもとまらぬ早業であった、
「いけるじゃん」
もっとも動きがゆっくりだったとしても八木に止めるつもりはなかったが。
それはともかく揚げ餅を食べたヒューゴの反応は悪くないようである。
ザクザクと咀嚼すると餅を飲み下しぺろりと唇を舐める。
「お、そうっすか?」
「食感がいいな表面サクッとしてて中はもっちり、味も変な癖ないし食いやすい。これ色んな味付けに合いそうだな」
「お? 試してみます? 加賀に頼んでいくつか作って貰うんすよ……加賀ー! ちょっといいか?」
思ってた以上に高評価なヒューゴの言葉に気をよくした八木は他のも食べてもらおうと大きな声で加賀を呼ぶ。
人間、自分が好きなものを褒められると嬉しくなるものである、加賀を呼ぶ八木の顔には満面の笑みが浮かんでいる。
「……声でかい。で、どしたの? お代わり?」
やがて厨房からひょこりと顔をだす加賀。
八木の声が厨房に響いていたのかその顔は少しむーっとしている。
「いや、ピザとか準備はしてあんだろ? あれの他にも大福とおこわ……あと他に何かあれば持ってきてくんない? ちょっと試しに食って貰おうかと思ってさ」
「……うん、いいよ。味見用って事で少なめにしとく?」
八木の言葉を聞いてちらりと視線をヒューゴに移す加賀。視線の先では八木が背中を向けているのを良い事に揚げ餅を次々口に放り込んで行くヒューゴの姿があった。
それを見なかった事にした加賀、とりあえず了承し量をどうするか八木にたずねる。
「そうだなー……じゃ、少なめで」
「ん、了解。ちょっとまっててね」
そう一言残し厨房へと戻る加賀。ほどなくしてピザの焼ける香ばしい匂い、それに燻製肉を焼いた匂いが食堂へと漂ってくる。
「ピザ……となんだろ」
「さぁなあ……お、きたきた……」
ピザは生地を用意し具を乗せてオーブンに入れれば焼けるまでそう時間は掛からない、加賀が厨房にはいりそう待たないうちに料理は出来上がったようだ。
二人の前に加賀がお皿を置いて行く。一つはピザが乗った大き目の皿でもう一つは丸めたベーコンの串焼きのようなものである。
「お、ベーコンで巻いたのか。やったぜこれ大好き」
「ほー? まあ、とりあえず温かい内に食おあつっ……ちいいいぃい!」
温かい内に食べよう、そう考えたヒューゴは何時もと同じ感覚でピザへと手を伸ばす。だが伸ばした指先にあったのは熱々のお餅である。
触れた瞬間熱さに気が付いたヒューゴはすぐさま手を引っ込める、が見事にヒューゴの指先に引っ付いた餅はヒューゴへ持続ダメージを与えていく。
「……じゃ、先にベーコン貰おうかな」
もがいて苦しむヒューゴを見てピザを後回しにする事にした八木、串に触ったベーコンを一つ口に放り込む。
「っほあーっ あっふ!」
噛んだ瞬間中からとろとろになった餅とチーズが飛び出す。あらかじめ心構えしていた為そこまで取り乱す事は無いがそれでも熱いものは熱い。
「っくはー……うめえ。むっちゃうまい、てかビール欲しい」
「ほい」
久しぶりに食べた餅とチーズのベーコン巻きはうまかったらしい。
ビールを飲みたくなった八木が手をわきわきしていると、その手に加賀がビールを渡してくれる。
どうやら事前にビール欲しがるであろうと予測し注いでくれていたようだ。
「ありがてえ、ありがてえ」
「加賀ちゃん俺にもー…‥お、ピザうめえ。ちょっと何時ものと違うけど、うんうまいよこれ」
ぐびぐびとビールを煽る八木。そして片手をぶらぶらさせながらもう片方の手で持ったピザを頬張るヒューゴ。どちらも好評なのは見てすぐわかる。
この様子なら他の人も大丈夫そうだと少し安心した加賀、これからくるであろう他の探索者達にそなえ厨房へと戻るのであった。
「やっぱうめえな」
お皿に山盛りになったそれを口に放り込むとザクザクと小気味よい音が食堂に響く。
山盛りになった物の正体はたいりょうに揚げられた切り餅であった。一口大に切られたそれは揚げてから塩とそれに一部に胡椒が掛かっているだけと実にシンプルな物である。だがシンプルが故に単純に旨い。
「やめられない、とまらない……だったっけか。いくらでも食えそうだなこれ」
その食感と油で揚げたジャンク感が合わさり八木の手は止まることなく皿と口をいったりきたりしている。
そして山が半分ほどになった頃、食堂の扉を勢いよく開け中へ入ってくる者が居た。
「おっし、いっちばーん……じゃねーな。八木もう食ってんのか」
「ええ、まあちょっと」
一番乗りで食堂に来たと思えば八木がもう既に席に着いていた。
普段であれば皆より若干遅れ気味に来る八木がもう食堂に来ていて、しかも何かを食べている。そうなると自然と何を食べているのか気になるものある。
「お、それなんだ? 見たことねーなあ」
「これっすか? 今日入荷した食材で作ったやつでして――」
八木が食べているものに興味を示したヒューゴに対しもち米と今食べている物について説明する八木。
せっかくなので皆にも興味を持って貰いたいと結構真面目に説明しているようである。
ヒューゴも未知の食材に興味を持ったようでその視線は皿に盛られた揚げ餅に釘付けであった。
「ほーん…………いただきっ」
あっと八木が思った時にはヒューゴが手にとった揚げ餅は彼の口の中に納まっていた。
日頃の鍛錬によるものだろう、まさに目にもとまらぬ早業であった、
「いけるじゃん」
もっとも動きがゆっくりだったとしても八木に止めるつもりはなかったが。
それはともかく揚げ餅を食べたヒューゴの反応は悪くないようである。
ザクザクと咀嚼すると餅を飲み下しぺろりと唇を舐める。
「お、そうっすか?」
「食感がいいな表面サクッとしてて中はもっちり、味も変な癖ないし食いやすい。これ色んな味付けに合いそうだな」
「お? 試してみます? 加賀に頼んでいくつか作って貰うんすよ……加賀ー! ちょっといいか?」
思ってた以上に高評価なヒューゴの言葉に気をよくした八木は他のも食べてもらおうと大きな声で加賀を呼ぶ。
人間、自分が好きなものを褒められると嬉しくなるものである、加賀を呼ぶ八木の顔には満面の笑みが浮かんでいる。
「……声でかい。で、どしたの? お代わり?」
やがて厨房からひょこりと顔をだす加賀。
八木の声が厨房に響いていたのかその顔は少しむーっとしている。
「いや、ピザとか準備はしてあんだろ? あれの他にも大福とおこわ……あと他に何かあれば持ってきてくんない? ちょっと試しに食って貰おうかと思ってさ」
「……うん、いいよ。味見用って事で少なめにしとく?」
八木の言葉を聞いてちらりと視線をヒューゴに移す加賀。視線の先では八木が背中を向けているのを良い事に揚げ餅を次々口に放り込んで行くヒューゴの姿があった。
それを見なかった事にした加賀、とりあえず了承し量をどうするか八木にたずねる。
「そうだなー……じゃ、少なめで」
「ん、了解。ちょっとまっててね」
そう一言残し厨房へと戻る加賀。ほどなくしてピザの焼ける香ばしい匂い、それに燻製肉を焼いた匂いが食堂へと漂ってくる。
「ピザ……となんだろ」
「さぁなあ……お、きたきた……」
ピザは生地を用意し具を乗せてオーブンに入れれば焼けるまでそう時間は掛からない、加賀が厨房にはいりそう待たないうちに料理は出来上がったようだ。
二人の前に加賀がお皿を置いて行く。一つはピザが乗った大き目の皿でもう一つは丸めたベーコンの串焼きのようなものである。
「お、ベーコンで巻いたのか。やったぜこれ大好き」
「ほー? まあ、とりあえず温かい内に食おあつっ……ちいいいぃい!」
温かい内に食べよう、そう考えたヒューゴは何時もと同じ感覚でピザへと手を伸ばす。だが伸ばした指先にあったのは熱々のお餅である。
触れた瞬間熱さに気が付いたヒューゴはすぐさま手を引っ込める、が見事にヒューゴの指先に引っ付いた餅はヒューゴへ持続ダメージを与えていく。
「……じゃ、先にベーコン貰おうかな」
もがいて苦しむヒューゴを見てピザを後回しにする事にした八木、串に触ったベーコンを一つ口に放り込む。
「っほあーっ あっふ!」
噛んだ瞬間中からとろとろになった餅とチーズが飛び出す。あらかじめ心構えしていた為そこまで取り乱す事は無いがそれでも熱いものは熱い。
「っくはー……うめえ。むっちゃうまい、てかビール欲しい」
「ほい」
久しぶりに食べた餅とチーズのベーコン巻きはうまかったらしい。
ビールを飲みたくなった八木が手をわきわきしていると、その手に加賀がビールを渡してくれる。
どうやら事前にビール欲しがるであろうと予測し注いでくれていたようだ。
「ありがてえ、ありがてえ」
「加賀ちゃん俺にもー…‥お、ピザうめえ。ちょっと何時ものと違うけど、うんうまいよこれ」
ぐびぐびとビールを煽る八木。そして片手をぶらぶらさせながらもう片方の手で持ったピザを頬張るヒューゴ。どちらも好評なのは見てすぐわかる。
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