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183話 「暇つぶし3」

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5人でトランプを始めた一同であるが、10戦目を終えたところで一度休憩を入れるようだ。

「……皆強すぎない?」

「八木が弱いだけじゃ……顔に出過ぎなんだと思うよ?」

どうも八木はババ抜きが弱いらしく負けが込んでいる。今のところ10戦して八木が7敗、他はうーちゃんを除いた3人がそれぞれ1敗となっている。

「おかしいって、何で皆あんな無表情なのさ怖えよっ! うーちゃんに至ってはもうただの兎にしか見えないしっ」

自分の手札にジョーカーが来た場合、相手にそれは出来るだけ知られたくはない。故に皆無表情でトランプをしていたようだ、特にうーちゃんは人では無い分表情を消せばただのでかい兎にしか見えない。

「くそー……次は負けんぞっ」

そう八木が悔し気に叫ぶと同時に食堂の扉がガチャリと開く。
そこには私服姿の探索者達が興味深げに八木の方を眺める姿があった。

「うぃっす。何、賭け事でもしてんの?」

「トランプですか、また懐かしい物を……」

テーブルの上に置かれたトランプを見つけ何人かの探索者達が興味を示す。

「ほんとだトランプだ。八木っち結局これにしたんだー」

「いやあ、屋外のもいくつか考えたんですけどねー、とりあえずはこれで良いかなーと」

へーと言いながら椅子に腰かけるシェイラ。他の探索者も同様に椅子に腰かけトランプの置いてあるテーブルへと近づいていく。

「お? 皆やります? ちょっと人数多いし2~3組に分けましょか、トランプ3つ買ってありますんで」

「いいぜぇ、んで何賭けんの?」

「賭けないっすよ」

ノリノリで参加したヒューゴであるが賭けないと聞いてえーっと不満げに言葉を漏らす。
それを見ていたアルヴィンがはぁと大きくため息をつくとヒューゴに向け口を開く。

「前に賭けがエスカレートしてどうなったか覚えてないのですか? 身ぐるみ剥がされた貴方を引き取りにいったのは誰だと思ってるんですか」

「だああぁ、悪かったって! 賭けはしないから勘弁してくれ……」

「分かれば良いのです」

二人の様子を見てどれだけ負けたのか気になる所であったが、そこは聞くのをぐっと我慢しトランプの用意をする八木。
適当に分かれた組にトランプを渡しテーブルに戻ると、自分と組みになった者達へ声をかける。

「それじゃ何やります? ちなみにさっきまでやってたのはババ抜きっすよ」

「そうだなあ、せっかくだし八木らの間で流行ってたやつでもやってみるか? 俺らの知らない遊び方かもしんねーし」

「良いんじゃないですか」

「そうっすか、それじゃあ――」

結果を言えばちょっとしたトランプ大会の様な盛り上がりを見せた勝負の行方であるが、勝者はばらばらであったが敗者は主に八木とヒューゴに集中していた。
決してカードの手札が悪いわけではないのだが……例えば大富豪であれば。

「――おっら! 2の2枚! どうよ、出せる奴おらんだろ~?」

と、言った感じで上がる気満々で得意気にしていると。

うっ(じょーかー2まい)

「なんでぇっ!?」

あっさり潰されてしまったり。

「――クタバレ、大富豪! 革命じゃああ」

うっ(かくめいがえし)

「やめてくれよぉ……」

と言う具合でどうもタイミングが悪いのか単に運が悪いのかここぞと言うときに潰されてしまうのであった。

「やだー、もうやだー、この兎まじ鬼畜」

「せめて平民になりたい……」

そしていい加減二人に泣きが入ってきた頃、その様子を呆れた様子で見る者がいた。

「お前ら楽しそうだな……ほれ、おやつだ。つってもありもん切っただけだがな」

「あ、バクスさんありがとう。おやつ用意するの忘れてた……」

トランプに夢中になるあまりおやつを用意するのを忘れてた加賀とアイネに代わり、バクスがおやつを持ってきてくれたようだ。

受け取ったおやつを嬉しそうに食べるヒューゴと八木。そして少し申し訳なさそうにしながら食べる加賀とアイネ。

「アイネさんがおやつを忘れるとはな……よほど面白かったのだな」

「ええとても……二人の絶望する様が」

「そっちなの!?」

どうやら鬼畜はうーちゃんだけではなかったらしい。冗談よと笑うアイネはとても楽しそうであった。

「ま、まあ……ほどほどにな? ずっと家の中にいるのも体訛るだろうし……外で出来そうなやつはなかったのか?」

「んー……あるにはありますね。これも人数いりますけど雪合戦とか、あと雪像作ったりかまくら作ってみたり……」

「雪合戦?」

「あ、興味ありますー?」

合戦と言う言葉に反応したのか何名かが八木の言葉に食いついた。
八木もここぞとばかりに調べておいたルールを皆に説明しだす。

(八木がふるぼっこになる未来しか思い浮かばない)

嬉しそうに話をする八木を見てそう思いつつも口には出さない加賀。
雪合戦は見学かなーと独り言ちながらおやつをぱくつくのであった。

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